最寄り駅の城陽駅から自宅までは歩いて15分ほどなのだけど、仕事の帰りにはついバスに乗ってしまいます。
バス停で3つめ。降りるとちいさな流れがあって、水の音と匂いがします。
息子が小さいときはスイミングスクールのバスをこの場所で待ちました。水度神社の鳥居のすぐそばで、古い参道の突当りになるその場所は昼と夕方の、夕方と夜の境目のようなところで、茂った大木のむこうにある空を眺めるのが好きでした。
それでなくても水の音や匂いであふれているのに、プールからあがったばかりの子供がバスから降りてくると、いっそう水の匂いは強くなります。髪からも冷えた身体からも水の匂いがして、そこらじゅう水でいっぱいなのでした。
息子がふざけて走って帰ってしまうので、私は取り残されてしまって、息子の撒いていった水の匂いをたどりながら帰るのはなんとなく寂しくて、
「ひとりで帰れるんだったら、もう迎えにいかなくていいでしょ」と家に着いてからいうのですが、スイミングの日がくると、やっぱり私は水の匂いのする場所でバスを待つのでした。
補助輪なしで自転車に乗れるようになったときの息子には、背中に羽がはえたのかと思うほどすごいスピードで細い橋を渡っていくので、ほんとうにひやひやしてみていました。
そういえば、私はずっと水のそばで息子の背中を追いながら、この20年を暮してきたのだなとしみじみ思いながら、きょうはバス停から家までゆっくりと歩いて帰りました。