ビアンカの  GOING MY WAY ♪

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   人生は ・・・ダバダバダ・・・

ロダンとカリエール

2006-04-16 | art/exhibit/museum

この展覧会を知ったのは、昨秋プーシキン展に行った時。
カリエールの絵に魅せられて会場を出た所で偶然、パンフレットを見つけたのです。
それ以来、ずっと楽しみにしていたのですが、今週やっと国立西洋美術館まで行って
来ました。それにしてもこの美術館、入ったところにすでにロダンの「カレーの市民」像、
右に「地獄の門」、左奥に「考える人」と、ロダン尽くしなのです。

1840年生まれのロダンと1849年生まれのカリエールは、カリエールが57才で亡なる
までの20年以上もの間 、お互いに最も親しい友人として尊敬し合い親交を深めました。
1900年、パリ万博の時の「ロダン展」のカタログの表紙のデザインや序文をカリエールが
手掛け、ロダンはカリエールが亡くなった時、彼の「デスマスク」と「結んだ手」を石膏で
型取りすることを遺族に依頼したのです。(今回、これらの作品を目にすることが出来ます)

この展覧会は、作品を年代順に追うのではなく、二人の間にある共通点をテーマごとに
並置してあり、特にカリエールは、個人的な展覧会としては日本初デビューですので
私にとって、とても興味深いものでした。ただ、それぞれの作家の代表作と言われる
作品がが欠けた点が残念、と言えば残念でしたが、それほど詳しくない私にとっては
充分すぎるほどでした。

 
 瞑想(カリエール婦人)               回復   

右側はロダンの〈愛人〉だった若き彫刻家、カミーユ・クローデルです。 

彼女の事を去年の11月の朝日新聞、[愛の旅人]の特集記事で知り、ショックを
受けました。1346年の英仏百年戦争での悲劇の6人の群像「カレーの市民」。
(この悲劇的な話もとってもショックでした!)
この群像を頼まれたとき、カミーユが助手として手と足を担当し、それをロダンが
仕上げたそうです。当時は手足は弟子のする仕事だったと言います。制作に10年
以上かかり、除幕式が遅れたのは2人のあいだで別れ話があったからのようでした。
カミーユの情熱、そして絶望。それは彼女の作品「ラージュ・ミュール(熟年)」に
表れます。老女(ロダンの長年の妻)に腕を引かれて去っていく男に、女が悲しみ
いっぱいに手を伸ばしている作品です。1893年ころの習作では男と繋がっていた手が、
98年の完成作では離れたのです。その作品の一部「嘆願する女」を見て、ロダンは
動けなくなりブロンズを撫でながら泣いていたのです。カミーユはその後、ロダンへの
脅迫観念と貧困に苦しみ、孤立していき、父親が亡くなった8日後に精神病院に
収容された。と、そこに書いてありました。なんで・・・・そうなるの?
又、カミーユの愛した弟、ポール・クローデルは詩人でもあり外交官でもあったそうで、
1921年から6年間のあいだ、駐日大使を務めたとのことでびっくりでした。
「カミーユ・クローデル」 映画化されていたのですね。知っていましたか?

横道に反れましたが、ロダンの作品の中に出てくる女性が皆、カミーユに思えて
なりません。なかでも「永遠の偶像」の生命力を、一時期ロダンの秘書を勤めた事の
ある!ライナー・マリア・リルケが、「美しい文章で綴っている」ので、今度その本を
探してみましょう。
ロダンは若きカミーユから、彼女へ与えたものよりも多くの〈創造力〉を吸収したに違い
ありません。
彼女と別れてからのロダンの作品にはとくに優れたものがなかった、というのですから。

 
最後の幻影                                        カミーユ・クローデル

カリエールの絵はすべてが暗褐色系統の僅かな色彩で、
輪郭の曖昧な中に幻影のように人物が浮かんで見えます。
母性を感じさせる幻想的な絵を多く描いていますが、肖像画や
自画像も沢山ありました。肖像画では「男であろうと、女であろうと、自分が
好きではないあるいは評価しない相手の肖像画は制作しなかった」ようです。
今回の展覧会は、カリエールがロダンを食ってしまったみたいです。
それだけ私には魅力的。でも一緒に行った友人は、
「すごくいいけど、暗いねぇ~。1度見ればいいかな。」
私はと言えば、「もう一度見に行きたい、今度は一人で!」

     

《カリエールもまた彫刻家なのだ!》  
ロダン自身がそう言っているように、彫刻、絵画等という技法の枠をこえて、
ロダンはカリエールの芸術に対して、自分との共通点を多く見出していたと言います。

    両者の作品において、形を通して表現されるのは、
    対象の外見ではなく、その内側にあるもの
    ―それらはしばしば「真実」や「内なる生」、「魂」などと呼ばれた―
    であるという言及、さらにはロダンとカリエールが繰り返し詩人に
    例えられたことなどは、その奥にヴェルレーヌやマラルメが書いたような
    象徴主義の定義が働いていた事を示している。
         
 (「ロダンとカリエールにおける象徴主義」よりの抜粋)

企画展の後、常設展をさっと見て回り、懐かしき“松方コレクション”の絵たちと
久しぶりに会って来ました。私が若き頃、最初にモネの睡蓮の絵を見て
感動した場所が、此処だったのです。今でもとても落ち着く場所です。


 

遅い時間の昼食処です。 駅からすぐの「緑の相談所」(でしたっけ?)
のあった建物の食堂で、〈大和芋の山かけうどん〉650円也。


 
 

 

    

 

 


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7 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (poppy)
2006-04-16 20:10:17
biancaさんの好きな芸術美術鑑賞、私ほんとに知らないことがあまりに多くです、ほんとに美術が好きなんだなーとブログを読んでいて思います。

分からないけどこのカリエールの絵、女性の顔が印象的ね。

カミーユ・クローデルのビデオも見たくなっちゃった・・・
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嬉しいわ! (bianca)
2006-04-16 21:39:42
poppyさん

ブログを始めたから、書くことを意識して見るように

なったと言う事は、良かったのかなぁと思います。

今までは、好きなものをただ見ていただけですからね。でも、自分の言葉だけで、簡潔に、絵に興味をさほど持っていない方でも楽しめる文章を目指すのは私の能力外のことで、書くことで生計を立てていらっしゃる文筆家はさすがだなぁ・・・と、今更ながら感心してしまいます。(コメントの返事でもうこんな長文なんだから、困ったbiancaさんです。)でもpoppyさん、読んでくださってありがとう!私も、カミーュのこと、もっと知りた~い!コメントゼロでも、私は書くことだけで満足しています。最近、そうなんだ!

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Unknown (Unknown)
2006-04-16 23:03:12
 ロダンとカリエール展、見に行きたいと思っていました。

それぞれの人々の背景を知ってから見に行くと見方が大分違いますね。

カミーユ・クローデルの話も始めて知りました。

6月4日までの間に、ちょっと予備知識を頭に入れて

見に行きます。

上野の精養軒も何度か行きましたが、いつも混んでいて、

美味しい!ってほどでもないので、私も今はビアンカさんと

同じところに行っています。

いつも必ず座れるし、安いし、美味しいし良い所です。
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Unknownになってしまいました。 (ネイビー)
2006-04-16 23:04:50
今のコメントはネイビーです。すみません。
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興味深く読みました~ (テレーサ)
2006-04-17 08:48:27
「へぇーそうなんだぁ~どんなARTなんだろうー」と興味がフツフツと湧きながら読ませていただきました。

 娘の入学式で、校長先生が話されたんですが・・

「例えば、コップを描こうとするとなかなか上手く描けない。でも、コップの周りには空気があり、コップは空気と触れている・・そう思ったら、コップが上手く描けるようになってきました。・・・」

「世の中に美しいと言われている物だけが美しいのではなくて、美しいとは言われていない物の中にも、美しいものがあります。・・なかなか見えないところにも「美」があります。それを見る目、見つける目・・それを知りうるには、色々な「お勉強」をする意味があります。・・」



ふ~んと、感心して「娘をこの学校に入れて良かった!」と思ったのです。



biancaさんの

 「自分の目・自分の表現」楽しみにしています。
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ふ~~む! (netton)
2006-04-17 20:18:34
biancaさん そしてみなさんなかなか美術に造詣が深いですねぇ

そしてよく美術を沢山鑑賞していらっしゃるんですね

もう作者も忘れてしまったのですが、グレーで描かれたすご~く寂しげな小船と人の絵画を見て泣いちゃったのを思い出しましたけど、あれってなんだったんだろう???

夫婦で美術館へ行くと私は作品に釘付けになり、おじさんは説明書きを細かく見てきます。

そっかぁ 二人で一人前

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Unknown (bianca)
2006-04-17 23:38:12
ネイビーさん

この展覧会に行く経緯も、カミーユについての記事を読んだのも偶然のことでした。だって新聞に目を通さない日だってある私ですからね!あの新聞記事は捨てられずに切り抜き、取ってあったのです。そうそう、あそこの食堂、一瞬迷いましたがおなかが空き過ぎで、ここでいいや~!と、入りましたが意外と美味しかったです。外見はパリ風なのに中は大衆食堂ですね!



テレーサさん

お嬢さんの学校の校長先生のお話は素晴らしい!

こういうお話を若い人たちにもっと沢山して欲しいです。私が母親だとしても、「入れてよかった!」と思ったでしょうね。でも、テレーサさんブログには書いてなかったので、お聞きできて良かったです。お嬢さんの成長を心から楽しみにしておりま~す。



nettonさん

その絵は誰の何かしら?ウヮ~nettonさんが泣いちゃったその絵を突き詰めた~~い!(グレーの・・・小船と人ですね。頭の隅に入れておきます。)それから、二人で一人前とはすごいことですよ。一心同体ではありませんか!うちでは有り得ないことだわ。二人でも一人前どころか、すれ違いあるのみ・・・意識してすれ違っていたりしてね。
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