楽しみにしていたこの映画、週末にイクスピアリで観てきました。
フランスのルイ14世の時代に創設された世界最古のバレエ団パリ・オペラ座。
エトワールと呼ばれる最高位のダンサーたち154名と
1500名のスタッフを抱えた350年の歴史あるバレエ団の現在の日常風景を、
ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマンが、
オペラ座の全面協力を取り付け、84日間に及ぶ密着撮影を完結させました。
ワイズマンの映画をみるのは初めてでしたが、字幕説明やナレーション、
インタビュー、効果音などを全て排除したドキュメンタリー作品をみるのも
確か初めての気がします。被写体となるのは一般人が見れない部分のみ。
淡々とした視線でオペラ座の内部を、様々な角度から映し出しています。
館内を掃除する人、修理する人、美術や衣装の係、事務局の人、芸術監督など、
オペラ座で仕事をしていても表面には出てこない人々。そして
現役ダンサーによる、あるがままの練習風景やリハーサルの数々。
昔の16mmをみているように感じたのは、余りにも演出さがないから
でしょうか。同じような場面がいつまでも続いたか、と思えば
逆に場面がちゃっちゃっと変る。踊っている演目がごちゃごちゃに
なりそうでした。興味津々なのに正直な話、途中一瞬ですが眠くなりました。
つまらないからではなく、前の晩の寝不足も影響していたと思いますが、
この撮り方で160分というのはちょっと長いな、と感じたのです。
5分ほどのトイレ休憩があれば・・と思ったのは、年のせいですかぁ?
オペラ座のダンサーは国家公務員で、定年が40歳。年金も40歳から
即、受け取れるという特別待遇があることを映画のミーティングの
場面で知りました。
しかし制度というのは今後どう変るかわからないので、
常に危機感を持ち、今受けている待遇を今後も維持できるように
各人が意識して質を高める努力を決して怠らないこと、そうでないと
あなた達に安定という未来はないのよ、今の立場が別のバレエ団に
すりかえられてしまうのよ、といったニュアンスの内容を、
芸術監督のブリジット・ルフェーブルが再三ダンサーたちに訴える
場面が印象的でした。又、別のミーティングでは大口寄付者である、あの
リーマンブラザースの名前が出て、彼らを招待する為の特典を考えたりと、
営業・経営面でのオペラ座としての姿もチラッと垣間見れたりするので
説明など一切なくてもバレエ団の実態が少しずつ浮き彫りにされるのです。
練習の演目などは「パリ・オペラ座のすべて」HPに載っていますが
簡単には以下のとおりです。(パンフレットより)
ジェニュス
*
くるみ割り人形
*
メディアの夢
*
パキータ
*
ロミオとジュリエット
*
ベルナルダの家
*
オルフェオとエウリディーチェ
メッセージを伝えたいなら電報で事足りる。
私は観客が考える為の情報を伝える為に映画を撮る。
というワイズマン監督は37歳のときに弁護士から
ドキュメンタリー監督になった変り種。
その理由は弁護士より映画のほうが好きだったから、だとか。
なぜテロップやナレーションを使わないのか、との問いに、
説教くさい説明は実は作り手が観客をバカにした行為だと思う。
私は自分の目で見た事実をそのまま観客に伝えたい。
観客とともに考えたいのです
自分の信念どおりに作品をつくりだすワイズマン監督。
「もと弁護士」の視線が映画作りにも反映しているのかもしれませんね。
それにしても日常の練習と比べ、本番は別人のように変身する
エトワール(星)たちの優雅な姿に惚れ惚れさせられた映画でした。
今度はレンタルで再度ゆっくり(トイレタイム付きで!)観たいです。
ですが、この映画はバレエ映画というより、オペラ座の内側がどのように
なっているのか、オペラ座バレエ団とはどんなものなのか、そして
指導方法は・・などなど・・を見るつもりで行ったほうが正解でしょう。
失敗を怖がり、ダンサー達が古典ばかりを踊りたがることに疑問を感じる
芸術監督は、現代ダンスへの挑戦を薦めます。それが吉と出るか凶と出るか
全く想像できないのは、バレエ界が、そしてバレエ愛好家がいまだに
古い考えを持った人ばかりだってことだから。
しかし、オペラ座も少しずつ新しい試みを取り入れているようです。
どの職種にしても、相手はお客さまです。古いものの上に胡坐をかいていては
愛想付かされ取り残されますよね。古き良き物は大切に残し、現在に
相応しい発想を取りいれられる柔軟性は、バレエ界においても
求められていることなのだ、と、、、、
このような感想になるような映画とは思わず、去年のパリ旅行で
見れなかった部分を再発見したい気持ちで見に行ったbiancaでした。
来月下旬で一年が経つのに、まだ旅行記が2回分残っているなんて、
どういうつもりでしょう。あはは・・そろそろ終わらせなくては!