観測にまつわる問題

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京都観光考

2019-11-04 12:50:13 | 日本地理観光
 最近オーバーツーリズムで話題もある京都の観光について考察してみました。結論から言うと、リピーター重視の戦略を柱に据えてみてはどうかと思います。というのも京都は日本で一極集中とも言える伝統文化の集積を見せる地であって、つまり観光名所が多過ぎて的が絞れない地域だからです。仮に漠然と京都の魅力を高め、観光客を増やしたとして、オーバーツーリズムの問題が台頭するだけであり、現に今そうなっていると言われています。これに対して顧客重視のハイエンドの戦略なら、単価を高めるでしょうし、オーバーツーリズムの弊害を緩和することが出来ます。京都は元来5回以上の訪問の観光客が8割を超えており、最初からそういうヘビーユーザー層が訪れる観光都市と言えるようですが、修学旅行のイメージや日本の伝統的文化の中心地のイメージやインバウンド増の文脈でその特色があまり意識されないまま、議論されている気がしてなりません。京都は伝統と革新が並存する街とも言われますが、伝統もただ残すだけではなく、戦略的な発想で元々あるものを活かしていかないと、千年都市としての尊敬を取り戻せない時代になってきたと考えます。あえて刺激的な言い方をすると、売り出すのは京都では実はなく、京都に集積している文化伝統それぞれではないでしょうか?
 例えば代表的日本文化の茶道で言えば、裏千家の活動は海外に広がっており、裏千家の茶道総合資料館が上京区にあるようで、日本全国、世界中から茶道を志す良質の「観光客」を集めていると思う訳です。京都府のインバウンド需要 | 訪日ラボを参照すると、京都府のインバウンド消費金額は全国33位ですが、京都府に来ている訪日外国人TOP5のインバウンド消費金額で断トツなのはアメリカです。京都府に来ている外国人の数だけで言えば、中国人が4割で断トツであり、京都の観光客数は容量の問題で頭打ちだと言われる中、中国人も含めて注目されるべきは質の方です。中国人は古き良き唐の文化を京都に投影しているとも言い、確かにそういう見方も成り立つでしょうが、例えば裏千家の茶道をアメリカでやっていて、京都に観光に来ましたという方が、京都でなければならない動機を持つ京都が大切にしなければならない顧客なのではないかと思います。京都は日本が誇る伝統文化の集積地なのであって、ヘビーユーザーを誘うコンテンツに事欠きません。
 京都観光の問題点に足があると言われます。電車の便は悪く、バスの路線は複雑で、広大な京都であれば、もっとも良い観光客の足はタクシーなのかもしれません。観光客を案内する観光タクシーも有名なようですが、流しのタクシーが8,500台京都市内を走っていると言い、タクシーが捉まらないということはない世界だそうですが、春秋の観光ピーク時には空車がほとんど無くなるのだそうです(タクシーに関する疑問はココで解決 プロが語る!タクシー観光のコツ All About)。ピークにあわせたギリギリの数かもしれませんが、通常時に捉まらないといことがないのであれば、利便性だけで言えば、流しのタクシーで観光は事足りると言えます。戦略は総花的になっては意味がありませんから、観光を意識した京都の都市政策とはタクシー・車を意識した政策になるのではないでしょうか?つまり交通渋滞がなるべく起こらない交通政策・都市政策を意識するべきですし、北陸新幹線駅の周辺には広い駐車スベースや広い道が必要ですし、首都圏に三環状道路がありますが、空港や人口集積地からの導線と通り抜け需要がバッティングしないようにするのも一案です。観光ピーク時だけ営業する安い観光タクシーという考え方があってもいいかもしれません(短期バイトのようなもので探せば成り手はいそうです)。京都は知りませんが、タクシーは通常個別の会社にかけるものだと思いますが、近頃はタクシー配車アプリもあるようですので、そうしたネットワークが機能するようにしていけば、顧客の利便性・満足度は高まるはずでしょう。
 泊食分離という考え方も最近、注目されていますが(泊食分離(はくしょくぶんり)で旅館の稼働率をアップ。 インバウンドNOW)、京都こそ伝統的な都市であり、また一方で新し物好きの一面もあるようですから、泊食分離を意識した観光政策も有り得そうです。泊食分離とは要は宿泊施設が食部門を抱えず、周辺のレストラン等を利用するという考え方ですが、餅は餅屋で京都には良い食文化がそもそもあると思います。宿泊施設不足が言われて久しい京都ですが、宿泊施設を例えば寧ろ良い食べ物屋が集積している地域につくってしまう訳です。そうすれば、長期滞在してくれる質の高い顧客が京都の食文化をジックリ楽しめるという次第です。京都はインバウンドにおいては(米食圏の)アジアの観光客が多いようですが、京都人にはパン好きの一面もあると言い、旅行先で食べ慣れたものを食べたいという需要は多いと思われ、あるいはインバウンドが京都の美味しいパン文化を拡張するきっかけにもなるのかもしれません。ハラルミートも言われる昨今ですが、旅行における食の比重は大きいと思われ、選ばれる観光地、飽きの来ない観光地を目指すには分厚い食文化を選んでいけることも大切だと思われます。ドバイで茶道の売り込みもあるようですが、自家用ジェットで京都に来る日が来るかもしれません。そもそも宿泊施設が足りない環境下においては、泊まるために食を我慢するケースも多いと思われ、そのような状況下で顧客満足度は高まってきません。
 宿泊施設不足そのものに関して言えば、長期滞在型施設の周辺での規制緩和が考えられます。逆に言えば、駆け足型の観光に関して言えば、最悪宿泊施設が京都になくてもいい訳ですし、京都につくるのであれば、最近は朝観光・夜観光の取り組みがあるようですが、景観に配慮しながらも、そうした宿泊と一緒に京都ならではの散策が楽しめる地域につくってしまうのも一案です。
 あるいは寺に泊まる動きも最近はあるようですが(お寺や神社で修行体験!一度は泊まってみたい宿坊5選 一休コンシェルジュ)、京都ならではの伝統的宿泊を創造してみることも考えられます。宿泊施設が足りないようですし、広いスペースはあって、提供する宿泊文化や食文化、体験できる文化もあるのですから、チャレンジしてみて損はなさそうです。何事も最初は始まりがあります。京料理は和食ですが、寺社仏閣とも密接に結びついており、京野菜の需要が伸びれば、京都府にも恩恵があります。精進料理と禅宗が密接に結びついていることはよく知られる通りです。
 イベントで言えば、例えば平安神宮の時代祭は最初は明治維新、ついで江戸、安土桃山、室町、吉野、鎌倉、藤原、延暦と時代を遡って続くようですが、明治維新の主要な舞台の一つに京都があり、藤原時代/平安時代がもっとも京都が日本の中心だった時代であって、明治維新まで皇居があったという意味では首都であり続けた訳であり、それぞれの時代の文化施設・見るべきものが京都には多いのは勿論ですが、延暦時代とは平安京を造った桓武天皇の時代で昭和、明治、応永、平成に次いで、歴代で5番目に長い元号なのだそうです。応永は金閣寺の足利義満の時代で室町時代であり武士の都が京都にあった時代ですが、安土桃山時代の桃山は京都市伏見区桃山地区の伏見桃山城のことであり、豊臣秀吉の築城であって、一時代を築いて時代名にもなっています。足利氏の邸宅を花の御所とも言い、足利義政の銀閣寺もそうですが、室町時代は京都が特に日本の文化の中心地と言えたもう一つの時代であり、豊臣秀吉は近場の巨大都市大阪府の象徴的存在でもあって、大阪京都にライバル的な関係があるにせよ、大きな内需もあるかもしれません。もっとも著名な茶人は千利休で後世の茶道に与えた影響は極めて大きなものがあると思いますが、千利休は最期は悲劇でしたが豊臣秀吉に仕えてズバ抜けた存在になったところもあります。京都の郊外と言えば宇治はブランド化しているとも言えますが、桃山文化の桃山(伏見)も市内とは言え、本来的には郊外のはずで、伏見稲荷大社の千本鳥居など見るべきものは多く、このあたりも京都が日本文化の中心とも言えた時代だと言えるかもしれません。江戸は上方文化があり、吉野は皇室贔屓で武家から政権を奪還したと言える後醍醐天皇を意識しているのでしょうが、鎌倉時代というか(源平)武士の時代の起こりは京都にあるとも言え院政時代は京都が舞台で、京都で武家を意識するのは意外と本質的で根源的なところがあると思います。結局のところ千年の都には所謂平安文化だけに収まらない伝統や魅力もあって、テーマ別に時代背景を深く知っていれば、時代祭もより楽しめるのかもしれませんが、言いたいことは人気観光地を廻る修学旅行的旅行のその先に京都に関心を持って個別のテーマを廻る観光も有り得るのではないかと思います。そう考えると、京都観光に求められるのはブ厚い事典のような観光ガイド本・データベース・アプリなのかもしれません。何でも西欧とは思いませんが、彼の地のガイドブックはブ厚いと言い、研究熱心な観光に潜在需要はある可能性もありますし、そうでなくても京都は京都検定の地ですし、文化遺産を守るのに目録は必須でしょう。多言語対応も視野にあっていいはずです。
 清水寺は京都の代表的観光地ですが(KYOTOdesign)、戦火や火事で焼失した歴史もあり、現在の本堂は徳川家光の寄進によるものだそうで、千年の都が千年の都たる所以とも言えそうです。伝統で風雪に耐えた古さは重要ですが、失われても蘇るところに伝統文化の強さがあって、新しい技術によるバージョンパアップに見るべきものもあると思います。清水寺の懸造りが何時からある技術か定かではないようですが、山岳寺院で見られる建築様式であり、江戸時代の町家にも見られるようですが、さすがに元々あった様式を復活させたのでしょうが、その技術のルーツを探ってみるのも面白く、日本に波及効果もありそうです。京都が伝統建築の集積地なのですから、技術史的視点で京都の建築を解明できれば、日本の伝統建築そのものを半ば見切ったと言えるのかもしれません。歴史を知るのは今を知る一面もあると思います。
 事典を書ける知識もありませんし、以上としますが、京都の深い魅力を掘り下げることで、京都の観光の問題の解決の一助となり、日本や世界に波及効果もあろうかと思った次第です。

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