どうも本白根山の山頂から外れた鏡池北側での噴火を本白根山の噴火で想定外と言われていることに違和感があったのですが、ようやく位置関係など分かってきました。
本白根山に登ろう!(ぐるっと浅間楽名山)の図が分かり易いと思います。国土地理院の地図を使用してホームページ作者がつくったようですが、本白根山の火口が明記されています(鏡池火口、北火口、中央火口が明記されていますが、その出典は確認できていません)。
白根火山ロープウェイに山頂駅があるので、近くの山が白根山の山頂かと思いきやそうではなく、山頂駅の近くの山は逢の峰というようです。更にその北側が白根山になります。
読売新聞 2018年01月24日 15時26分「草津白根噴火、複数火口か…1メートルの噴石も」によると・・・
>本白根山は約5000年前~1500年前に火山活動があり、これまでに五つの主な火口が確認されている。
時事通信 噴火は新たな「火口列」=「半年から1年は警戒」-草津白根山・気象庁予知連(2018/01/26-19:31)によると・・・
>火口の大半は約1500年前に噴火したとの学説がある「鏡池北火砕丘」に隣接している。
>予知連は「火山活動は高まった状態で、当面は23日と同程度の噴火が発生する可能性がある」と分析。石原和弘会長(京都大名誉教授)は記者会見で「今後半年ないし1年は厳重な警戒が必要だろう」と話した。気象庁は噴火警戒レベル3(入山規制)を維持し、警戒を呼び掛けている。
ですから噴火場所は全くの想定外という訳ではなく、活火山(気象庁「火山噴火予知連絡会による新たな活火山の選定について」>火山噴火予知連絡会では、活火山の定義を国際標準に則した「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」とし、活火山の選定を行っています)であるところの本白根山の鏡池北火砕丘(恐らく北火口)(とされるところに隣接した地区)が1500年ぶりに噴火したということになるのではないかと思います。
噴出物の層序と全岩組成からみた草津白根火山本白根火砕丘群の完新世の噴火履歴という日本火山学界のpdfを見ますと、「本白根火砕丘群の活動は、本白根火砕丘、鏡池火砕丘、鏡池北火砕丘の順に、活動位置が南から北へと移動した可能性が高い」とありますので、想定外どころか、全くの想定どおりに噴火したことになります。この結論は、筆者も驚きました。学者の方も分かっている人は分かっていたんでしょうが、ロープウェイの方に向かって噴火口が北上しているという結論が不味いので、言い出しづらかったのかもしれないと考えます。1500年ぶりの噴火を予想しろというのが不可能に近いこともあると思いますが、まぁ地質学的な視点で見れば、何ら驚くべきところの無い噴火とは言えるのではないでしょうか?活火山の定義によれば、活火山が噴火しただけということになります。
しかしながら、草津白根山は活火山と認定されていますし、本白根山は草津白根山に含まれて数えられていると考えられますが(活火山として本白根山の名前は見当たりません)、警戒されていたのは湯釜という地区です(草津白根山 有史以降の火山活動 気象庁)。湯釜地区の火山活動は活発ですから、ここを重点的に警戒するのは勿論間違っていません。ですが、人が多く訪れる観光地の活火山が全くの無警戒はどうでしょうか?本白根山が如何に有史以来の活動が活発でないにしろ、地質学的に見れば活動している火山です。
水蒸気爆発の可能性 御嶽山と同タイプ、前兆検出は困難(産経ニュース 2018.1.24 00:40)
>今回の噴火のメカニズムについて専門家は、マグマからの熱で地下水が沸騰し、水蒸気が爆発的に発生する「水蒸気爆発」の可能性が高いとみている。地殻変動などの前兆を検出しにくく、平成26年の御嶽山噴火と同じタイプだ。
>気象庁によると、草津白根山はマグマだまりの明確な場所が確認されておらず、これも噴火予測が難しい一因となっている。
爆発の種類について知るため、安全に火山を楽しむために(日本火山学会編集)を参照しました。水蒸気噴火は噴火の中では最も頻度が高いですが、噴出量が非常に少なく、噴火の前兆現象がわずかで、噴火にいたらない現象との見分けが難しいということのようです。まぁ噴出量が非常に少ないのであれば、前兆現象が大きい訳がないので予測は難しいに決まっていると思いますが、小規模だけに頻度が高いのであれば、対策の必要性はそれなりにあると思いますから、中々難しいところだと思います。マグマだまりも研究してつきとめてほしいですね。
死者の数(58名)から考えると、戦後最悪の火山災害は2014年の御岳山の噴火になるようです(水蒸気爆発と分析されているようです)。
御嶽山の火山活動に関する火山噴火予知連絡会拡大幹事会見解(気象庁)によると、11分前から火山性微動、7分前から山側が隆起したとのことです。その辺が観測されているなら、その前兆を感じ取った時点で警報を出し、噴石に対応できるシェルターを建設しておけば、ある程度命は守れるということになると思います。コスト面を考慮すれば、入山者の多い活火山の火口付近に限って整備するのも一案だと思います。噴石は遠く飛びますが、実際問題死者が多く出るのは火口付近に限られているように思えます(次の図は毎日新聞2014.10.2)。本白根山の噴火も多分同じです(観測機が設置されていたならば、前兆が後で明らかになる可能性はあると思います。設置されていなかったならば、活火山特に人の出入りが多い火山には設置していくべきです)。
警報の出し方としては、多分人が判断して出さない方がいいと思います。1500年間噴火しなかった火山に人をはりつけていたらキリがありません。10分程度で噴火するなら判断する時間も惜しいですし、誰しも難しい仕事で判断ミスの責任をとれるはずもありません。「誤報」でオオカミ少年扱いされても堪りません。今時、計算機も統計も発達しているのですから、有史以来ずっと観測している訳では勿論ありませんから難しいのは分かりますが、できる人がプログラムを組んで、機器のデータを利用して機械が自動的かつ即時に警報を出した方がいいと考えられます(ハッキングや誤作動等の問題はここでは検討しません)。火口周辺規制や入山規制といった噴火警戒レベルの話ではなく、噴火直前警報みたいな警報をつくれないかという話ですね。火山性微動は噴火に至るかどうか判断が難しいかもしれませんが、山が隆起したならまだ危険性は高いような気はするものの先の日本火山学会のpdfでは山が膨らんでも噴火に至らないことはよくあるようです。ただ、たまにしか起こらない噴火のデータを集めるのも大変ですが、世界が協力すれば、精度は上がっていくとも考えられます。2014年御岳山噴火に関しては訴訟もあるようです。
国・県「警戒レベル」反論 御嶽山噴火訴訟 準備書面を提出 長野(産経ニュース 2017.5.20 07:04)
>原告側は訴状などで、気象庁が噴火警戒レベルを1から2に引き上げる基準の一つとして、火山性地震の回数を「1日50回以上」としていたと説明。しかし、同庁は噴火前の9月10日に52回、翌11日に85回の火山性地震を観測したにもかかわらず、当時は平常を示す1だった噴火警戒レベルを2に引き上げず、山頂一帯を立ち入り規制しなかったなどと主張した。
>一方、国は「1日50回以上」とした基準は目安だとし、気象庁が警戒レベルを引き上げなかったのは、噴火履歴やデータを考慮して「総合的に判断した結果だ」と反論する。
やはりこちらも(火口周辺規制や入山規制といった既存の噴火警戒レベルの話も)人が判断しない方向性の方がいいのではないかと思いますね。国にも言い分はあると思いますが、この記事だけを見ると基準を超えて実際に噴火しているのだから、原告側の主張が理に適っているようにも見えます。前兆があっても災害が確実でないなら、警告は誤報になりかねず、よほど確実じゃない限り、規制しにくいと考えられます。安全のために最大限の警戒するべきだと正論を言ったところで、「危ないですよ、何も無かったです」のような仕事を誰がやりたいと思いますか?統計学的手法で機械が正確に判断し確率が高ければ規制みたいなことの方が望ましいと考えますが、その辺も実際の精度の問題でしょうが、技術の進歩は考えた方がいいと思います。
機械・機械と言っていますが、草津白根山湯釜のような特に活発なところは人の併用もあっていいとは思いますが、兎に角言いたいのは地質レベルの期間を見据えた防災で人が対応するということ自体有り得ないだろうということですし、機械を活用すれば、もっと防災は進むのではないだろうかということです。気候変動でスパコンを使うなら、火山予知でスパコン使用もあるんじゃないですか?特にマグマ噴火は地震予測よりはまだありそうですよね。大規模噴火ほどあるいは予兆も大きくなるかもしれませんし(マグマだまりが観測できれば噴出もある程度予測できそうです)(溶岩が届く原発もないと思いますが、火砕流は想定してもいいかもしれませんね。皆さん考えているようですが。原発が火砕流で埋まったらどうなるか togetter)、何ら想定していない(?)というのが不味いんだろうと思います(第5回 カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか? NHKそなえる防災 2013年3月29日)。
もうひとつ火山の実例ですが、筆者には戦後の噴火と言えば、雲仙普賢岳の噴火の方が実は印象が強いです。死者は43名でしたが、火砕流を伴うマグマ噴火の印象は強いものだったと思います(雲仙岳 有史以降の火山活動)。地震という前兆はずっと以前からあったようですが、マグマ噴火の前に水蒸気噴火はあったようです。本白根山も警戒するに越したことはないと考えます。溶岩噴火はかつてあったようで、今後も無いと考える方がおかしいはずです(下図は草津白根火山の噴火に関する情報 地質調査総合センター)。
雲仙普賢岳の噴火で大きな被害が出たのは6月3日の大火砕流のようですが、その前の小規模火砕流の映像が撮れたことが当時珍しく学者や報道関係者などがあえて避難勧告地域に入って警戒していたものの天候不順などもあり、大きな犠牲が発生したということのようです。逆に言えば、大きな噴火ほど前兆はあって対応可能な気はしますね。まぁこの辺は素人の感想と思ってください。
草津白根山噴火 “想定外”の火口(NHK 2018年1月23日(火))
>気象庁 齋藤誠火山課長
>「カメラであるとか、そういうものでの観測・監視は(噴火した)鏡池には向かっていなかった。」
この記事では3000年と書いていますが、いずれにせよそんなに長期間噴火していなかったものをカメラで監視していなかったといのは、止むを得ないとも考えられます。
>気象庁 齋藤誠火山課長
>「今回、残念ながら噴火速報を発表できなかった。出すチャンスはなかった。」
>「噴火速報」。
>御嶽山の噴火を教訓に気象庁が導入した、登山者に噴火の事実をいち早く伝えるものですが、今回、出されませんでした。
>気象庁によりますと、噴火が発生した時刻には振幅の大きな火山性微動が観測されていましたが、このデータだけでは噴火と判断していませんでした。
>その後、地元の火山の専門家や草津町から「噴煙が上がっている」という情報が寄せられましたが、噴火を捉えた監視カメラの映像がなかったため、すぐに確認できず、噴火から5分以内をめどに発表する「噴火速報」は出せなかったということです。
噴火速報の説明(気象庁)を確認しましたが、噴火した事実を伝える噴火速報は出せたらその方がいいと思いますが、事後の情報はそれほどは意味が無いかもしれませんね。ただ、火口があるのは分かっているのですから、監視カメラひとつぐらいはあっていいのかもしれません。常時監視しなくても、情報を寄せられて確認できればそれでいいはずです。これぐらいは地元の火山の専門家や草津町に言われて出してもいいとも思いますが。
草津白根山噴火 無警戒火山どう対処 予算限られ…(毎日新聞 2018年1月26日 20時16分)
>今回の噴火を教訓とするため、名古屋大の山岡耕春(こうしゅん)教授は「火山の活動度に縛られず、まず観光客が行くような被害が大きくなる活火山を改めて選び出すことが必要。そして優先順位を付け、今回のような前触れが少ない水蒸気噴火を起こす可能性を調べるべきだ。地熱開発技術など、従来重要視しなかった手法を活用することも大切だ」と提案する。
火山の地下を探る火山噴火予知を目指した科学掘削サービス(地熱エンジニアリング株式会社)・・・こんなのもあるんですね。素人考えではマグマというか噴火を掘り当てたりしないの?って思っちゃいますが。
>野上教授は「噴火前にあるはずの兆候がない噴火。火山観測の哲学が覆された。何を測ればいいのか考えることからスタート。静かな火山に有限の研究資源を投入するのは簡単ではない」という。文部科学省の竹内英地震・防災研究課長は、「研究者にとって、静かな火山は成果が上がらず研究対象にしづらい」との背景も指摘する。
静かな火山と言っても活火山です。最近の活動が無ければ警戒しないなら活火山に指定する意味がありません。観測してないから前兆が分からない可能性もあるかもしれません。そもそも水蒸気爆発の前兆は小さいですが、水蒸気爆発を研究すれば一定のパターンは分かっていいかもしれません。日本でデータが足りなければ、外国のデータも活用して、コンピュータも計算手法も予算さえあれば幾らでもいいものがありそうです。戦後最大の災害が数十人規模の犠牲ですし、それほどは人里に近くないんで、地震に比べて後回しになっているということはありそうですが、予測可能性が地震に比べたらありそうなこと、大規模噴火の影響が計り知れないこと、地熱など周辺技術の応用可能性はありそうなことを考えると、もう少しやっていいのかもしれませんね。火山性地震もありますし、火山をやって地震が分かるということも無くもなさそうです。
最後に火山(周辺)の確率予測に関して検索して出てきたpdfにリンクしてこの記事を終わりとします。
噴火シナリオと確率論的予測(日本火山学会)
地震の確率予測の研究—その展望 (統計数理研究所)
数値予報の精度向上(気象庁)
気象庁における数値予報の 利活用と技術開発(気象庁)
本白根山に登ろう!(ぐるっと浅間楽名山)の図が分かり易いと思います。国土地理院の地図を使用してホームページ作者がつくったようですが、本白根山の火口が明記されています(鏡池火口、北火口、中央火口が明記されていますが、その出典は確認できていません)。
白根火山ロープウェイに山頂駅があるので、近くの山が白根山の山頂かと思いきやそうではなく、山頂駅の近くの山は逢の峰というようです。更にその北側が白根山になります。
読売新聞 2018年01月24日 15時26分「草津白根噴火、複数火口か…1メートルの噴石も」によると・・・
>本白根山は約5000年前~1500年前に火山活動があり、これまでに五つの主な火口が確認されている。
時事通信 噴火は新たな「火口列」=「半年から1年は警戒」-草津白根山・気象庁予知連(2018/01/26-19:31)によると・・・
>火口の大半は約1500年前に噴火したとの学説がある「鏡池北火砕丘」に隣接している。
>予知連は「火山活動は高まった状態で、当面は23日と同程度の噴火が発生する可能性がある」と分析。石原和弘会長(京都大名誉教授)は記者会見で「今後半年ないし1年は厳重な警戒が必要だろう」と話した。気象庁は噴火警戒レベル3(入山規制)を維持し、警戒を呼び掛けている。
ですから噴火場所は全くの想定外という訳ではなく、活火山(気象庁「火山噴火予知連絡会による新たな活火山の選定について」>火山噴火予知連絡会では、活火山の定義を国際標準に則した「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」とし、活火山の選定を行っています)であるところの本白根山の鏡池北火砕丘(恐らく北火口)(とされるところに隣接した地区)が1500年ぶりに噴火したということになるのではないかと思います。
噴出物の層序と全岩組成からみた草津白根火山本白根火砕丘群の完新世の噴火履歴という日本火山学界のpdfを見ますと、「本白根火砕丘群の活動は、本白根火砕丘、鏡池火砕丘、鏡池北火砕丘の順に、活動位置が南から北へと移動した可能性が高い」とありますので、想定外どころか、全くの想定どおりに噴火したことになります。この結論は、筆者も驚きました。学者の方も分かっている人は分かっていたんでしょうが、ロープウェイの方に向かって噴火口が北上しているという結論が不味いので、言い出しづらかったのかもしれないと考えます。1500年ぶりの噴火を予想しろというのが不可能に近いこともあると思いますが、まぁ地質学的な視点で見れば、何ら驚くべきところの無い噴火とは言えるのではないでしょうか?活火山の定義によれば、活火山が噴火しただけということになります。
しかしながら、草津白根山は活火山と認定されていますし、本白根山は草津白根山に含まれて数えられていると考えられますが(活火山として本白根山の名前は見当たりません)、警戒されていたのは湯釜という地区です(草津白根山 有史以降の火山活動 気象庁)。湯釜地区の火山活動は活発ですから、ここを重点的に警戒するのは勿論間違っていません。ですが、人が多く訪れる観光地の活火山が全くの無警戒はどうでしょうか?本白根山が如何に有史以来の活動が活発でないにしろ、地質学的に見れば活動している火山です。
水蒸気爆発の可能性 御嶽山と同タイプ、前兆検出は困難(産経ニュース 2018.1.24 00:40)
>今回の噴火のメカニズムについて専門家は、マグマからの熱で地下水が沸騰し、水蒸気が爆発的に発生する「水蒸気爆発」の可能性が高いとみている。地殻変動などの前兆を検出しにくく、平成26年の御嶽山噴火と同じタイプだ。
>気象庁によると、草津白根山はマグマだまりの明確な場所が確認されておらず、これも噴火予測が難しい一因となっている。
爆発の種類について知るため、安全に火山を楽しむために(日本火山学会編集)を参照しました。水蒸気噴火は噴火の中では最も頻度が高いですが、噴出量が非常に少なく、噴火の前兆現象がわずかで、噴火にいたらない現象との見分けが難しいということのようです。まぁ噴出量が非常に少ないのであれば、前兆現象が大きい訳がないので予測は難しいに決まっていると思いますが、小規模だけに頻度が高いのであれば、対策の必要性はそれなりにあると思いますから、中々難しいところだと思います。マグマだまりも研究してつきとめてほしいですね。
死者の数(58名)から考えると、戦後最悪の火山災害は2014年の御岳山の噴火になるようです(水蒸気爆発と分析されているようです)。
御嶽山の火山活動に関する火山噴火予知連絡会拡大幹事会見解(気象庁)によると、11分前から火山性微動、7分前から山側が隆起したとのことです。その辺が観測されているなら、その前兆を感じ取った時点で警報を出し、噴石に対応できるシェルターを建設しておけば、ある程度命は守れるということになると思います。コスト面を考慮すれば、入山者の多い活火山の火口付近に限って整備するのも一案だと思います。噴石は遠く飛びますが、実際問題死者が多く出るのは火口付近に限られているように思えます(次の図は毎日新聞2014.10.2)。本白根山の噴火も多分同じです(観測機が設置されていたならば、前兆が後で明らかになる可能性はあると思います。設置されていなかったならば、活火山特に人の出入りが多い火山には設置していくべきです)。
警報の出し方としては、多分人が判断して出さない方がいいと思います。1500年間噴火しなかった火山に人をはりつけていたらキリがありません。10分程度で噴火するなら判断する時間も惜しいですし、誰しも難しい仕事で判断ミスの責任をとれるはずもありません。「誤報」でオオカミ少年扱いされても堪りません。今時、計算機も統計も発達しているのですから、有史以来ずっと観測している訳では勿論ありませんから難しいのは分かりますが、できる人がプログラムを組んで、機器のデータを利用して機械が自動的かつ即時に警報を出した方がいいと考えられます(ハッキングや誤作動等の問題はここでは検討しません)。火口周辺規制や入山規制といった噴火警戒レベルの話ではなく、噴火直前警報みたいな警報をつくれないかという話ですね。火山性微動は噴火に至るかどうか判断が難しいかもしれませんが、山が隆起したならまだ危険性は高いような気はするものの先の日本火山学会のpdfでは山が膨らんでも噴火に至らないことはよくあるようです。ただ、たまにしか起こらない噴火のデータを集めるのも大変ですが、世界が協力すれば、精度は上がっていくとも考えられます。2014年御岳山噴火に関しては訴訟もあるようです。
国・県「警戒レベル」反論 御嶽山噴火訴訟 準備書面を提出 長野(産経ニュース 2017.5.20 07:04)
>原告側は訴状などで、気象庁が噴火警戒レベルを1から2に引き上げる基準の一つとして、火山性地震の回数を「1日50回以上」としていたと説明。しかし、同庁は噴火前の9月10日に52回、翌11日に85回の火山性地震を観測したにもかかわらず、当時は平常を示す1だった噴火警戒レベルを2に引き上げず、山頂一帯を立ち入り規制しなかったなどと主張した。
>一方、国は「1日50回以上」とした基準は目安だとし、気象庁が警戒レベルを引き上げなかったのは、噴火履歴やデータを考慮して「総合的に判断した結果だ」と反論する。
やはりこちらも(火口周辺規制や入山規制といった既存の噴火警戒レベルの話も)人が判断しない方向性の方がいいのではないかと思いますね。国にも言い分はあると思いますが、この記事だけを見ると基準を超えて実際に噴火しているのだから、原告側の主張が理に適っているようにも見えます。前兆があっても災害が確実でないなら、警告は誤報になりかねず、よほど確実じゃない限り、規制しにくいと考えられます。安全のために最大限の警戒するべきだと正論を言ったところで、「危ないですよ、何も無かったです」のような仕事を誰がやりたいと思いますか?統計学的手法で機械が正確に判断し確率が高ければ規制みたいなことの方が望ましいと考えますが、その辺も実際の精度の問題でしょうが、技術の進歩は考えた方がいいと思います。
機械・機械と言っていますが、草津白根山湯釜のような特に活発なところは人の併用もあっていいとは思いますが、兎に角言いたいのは地質レベルの期間を見据えた防災で人が対応するということ自体有り得ないだろうということですし、機械を活用すれば、もっと防災は進むのではないだろうかということです。気候変動でスパコンを使うなら、火山予知でスパコン使用もあるんじゃないですか?特にマグマ噴火は地震予測よりはまだありそうですよね。大規模噴火ほどあるいは予兆も大きくなるかもしれませんし(マグマだまりが観測できれば噴出もある程度予測できそうです)(溶岩が届く原発もないと思いますが、火砕流は想定してもいいかもしれませんね。皆さん考えているようですが。原発が火砕流で埋まったらどうなるか togetter)、何ら想定していない(?)というのが不味いんだろうと思います(第5回 カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか? NHKそなえる防災 2013年3月29日)。
もうひとつ火山の実例ですが、筆者には戦後の噴火と言えば、雲仙普賢岳の噴火の方が実は印象が強いです。死者は43名でしたが、火砕流を伴うマグマ噴火の印象は強いものだったと思います(雲仙岳 有史以降の火山活動)。地震という前兆はずっと以前からあったようですが、マグマ噴火の前に水蒸気噴火はあったようです。本白根山も警戒するに越したことはないと考えます。溶岩噴火はかつてあったようで、今後も無いと考える方がおかしいはずです(下図は草津白根火山の噴火に関する情報 地質調査総合センター)。
雲仙普賢岳の噴火で大きな被害が出たのは6月3日の大火砕流のようですが、その前の小規模火砕流の映像が撮れたことが当時珍しく学者や報道関係者などがあえて避難勧告地域に入って警戒していたものの天候不順などもあり、大きな犠牲が発生したということのようです。逆に言えば、大きな噴火ほど前兆はあって対応可能な気はしますね。まぁこの辺は素人の感想と思ってください。
草津白根山噴火 “想定外”の火口(NHK 2018年1月23日(火))
>気象庁 齋藤誠火山課長
>「カメラであるとか、そういうものでの観測・監視は(噴火した)鏡池には向かっていなかった。」
この記事では3000年と書いていますが、いずれにせよそんなに長期間噴火していなかったものをカメラで監視していなかったといのは、止むを得ないとも考えられます。
>気象庁 齋藤誠火山課長
>「今回、残念ながら噴火速報を発表できなかった。出すチャンスはなかった。」
>「噴火速報」。
>御嶽山の噴火を教訓に気象庁が導入した、登山者に噴火の事実をいち早く伝えるものですが、今回、出されませんでした。
>気象庁によりますと、噴火が発生した時刻には振幅の大きな火山性微動が観測されていましたが、このデータだけでは噴火と判断していませんでした。
>その後、地元の火山の専門家や草津町から「噴煙が上がっている」という情報が寄せられましたが、噴火を捉えた監視カメラの映像がなかったため、すぐに確認できず、噴火から5分以内をめどに発表する「噴火速報」は出せなかったということです。
噴火速報の説明(気象庁)を確認しましたが、噴火した事実を伝える噴火速報は出せたらその方がいいと思いますが、事後の情報はそれほどは意味が無いかもしれませんね。ただ、火口があるのは分かっているのですから、監視カメラひとつぐらいはあっていいのかもしれません。常時監視しなくても、情報を寄せられて確認できればそれでいいはずです。これぐらいは地元の火山の専門家や草津町に言われて出してもいいとも思いますが。
草津白根山噴火 無警戒火山どう対処 予算限られ…(毎日新聞 2018年1月26日 20時16分)
>今回の噴火を教訓とするため、名古屋大の山岡耕春(こうしゅん)教授は「火山の活動度に縛られず、まず観光客が行くような被害が大きくなる活火山を改めて選び出すことが必要。そして優先順位を付け、今回のような前触れが少ない水蒸気噴火を起こす可能性を調べるべきだ。地熱開発技術など、従来重要視しなかった手法を活用することも大切だ」と提案する。
火山の地下を探る火山噴火予知を目指した科学掘削サービス(地熱エンジニアリング株式会社)・・・こんなのもあるんですね。素人考えではマグマというか噴火を掘り当てたりしないの?って思っちゃいますが。
>野上教授は「噴火前にあるはずの兆候がない噴火。火山観測の哲学が覆された。何を測ればいいのか考えることからスタート。静かな火山に有限の研究資源を投入するのは簡単ではない」という。文部科学省の竹内英地震・防災研究課長は、「研究者にとって、静かな火山は成果が上がらず研究対象にしづらい」との背景も指摘する。
静かな火山と言っても活火山です。最近の活動が無ければ警戒しないなら活火山に指定する意味がありません。観測してないから前兆が分からない可能性もあるかもしれません。そもそも水蒸気爆発の前兆は小さいですが、水蒸気爆発を研究すれば一定のパターンは分かっていいかもしれません。日本でデータが足りなければ、外国のデータも活用して、コンピュータも計算手法も予算さえあれば幾らでもいいものがありそうです。戦後最大の災害が数十人規模の犠牲ですし、それほどは人里に近くないんで、地震に比べて後回しになっているということはありそうですが、予測可能性が地震に比べたらありそうなこと、大規模噴火の影響が計り知れないこと、地熱など周辺技術の応用可能性はありそうなことを考えると、もう少しやっていいのかもしれませんね。火山性地震もありますし、火山をやって地震が分かるということも無くもなさそうです。
最後に火山(周辺)の確率予測に関して検索して出てきたpdfにリンクしてこの記事を終わりとします。
噴火シナリオと確率論的予測(日本火山学会)
地震の確率予測の研究—その展望 (統計数理研究所)
数値予報の精度向上(気象庁)
気象庁における数値予報の 利活用と技術開発(気象庁)