大阪・東京がピークアウトしている今、緊急事態宣言を超える欧米並みの強い対策であるところの非常事態宣言を制定する機運がないと思いますが、感染が拡大傾向が明らかになってきている現在、欧米並みの強い対策の必要性はまた明らかだと思いますから、非常事態宣言をするには憲法改正が必要であるという言説(例えば、高橋洋一チャンネル 第167回 東京都vsグローバルダイニング!休業命令は違憲なのか?罰金ではなく過料のわけ)について検討してみたいと思います。
まず、理屈から言って、非常事態宣言に準じる効力を持つ防疫に関する法律を制定することは可能です。問題はこれが違憲立法審査で違憲とされるかになるはずです。本来的な話をすれば、立法サイドに違憲かどうか判断する権能はなく、これは司法の仕事です(日本の官僚組織は良くも悪くも無謬性の原則で間違えないよう慎重な判断をしているかもしれませんが。本来的な話をすれば、実際にやってみて(やって分かることは多いと思われます)、然るべき場所で議論するという考え方は有り得る訳です)。実際に法律をつくっている官僚(本来は立法府の議員・スタッフが法律をつくるはずですが)視点では、非常事態宣言は違憲だろうという判断があるのかもしれませんが、本来立法するべき政治視点で見ると、必要な法律はつくるべきであって、それが違憲かどうかは最終的には司法の判断になるということだと思います。勿論無暗に司法に違憲と判断される法律をつくるべきではありませんが、非常事態に適用される法律をつくるのに、(司法でもないのに)これは違憲だと勝手に線引きするのは筋違いですし、(最終的な責任者であるところの)政治の役割を果たしているとも言えません。
それでは本当に司法で違憲だと判断される見込みなのかと言えば、微妙なところではないでしょうか。日本国憲法にも公共の福祉による私権の制限は書かれている訳ですし、防疫政策は公共の福祉を守るためにまさに必要なものと言えます。疫病が蔓延して公共の福祉も何もあったものではないはずです。そう考えると防疫政策に関わる私権の制限は日本国憲法に書かれているとも言えます。事実、感染症法には行政罰のみならず重い刑事罰も書かれています。刑事罰は私権の制限の最たるものでしょう。つまり日本に防疫に関して非常事態宣言の類がないのは、想定されていなかっただけで、憲法上不可能だったからではないようです。高橋洋一氏ほどの元官僚に違憲だと言われると、そうなのかと思ってしまいそうになりますが、よくよく考えてみれば、防疫政策で私権を制限しても過剰でなければ違憲と判断されることはなさそうだということになります。訴訟はあるかもしれませんが、適切な防疫政策であれば、(政治に影響する)世論の同情もないと思われます。違憲の疑いがあるなら、(非常事態宣言を可能にする)緊急事態条項の明記があるに越したことはありませんが、防疫政策に限って言えば、非常事態宣言は違憲の疑いがない可能性もあるでしょう。
ここで非常事態宣言が適切な防疫対策であるのか考えてみると、(時宜を得れば)適切な防疫対策であると言えます。何でそんなことが言えるのかと言えば、海外で効果が顕著に認められているからです。日本ではこれまで非常事態宣言がなくても、何とか新型コロナウイルス感染症の野放図な拡大を防いできましたが、感染拡大傾向にあったことは明らかです。今から考えてみますと、この感染症の流入が明らかになった段階で強い対策を打って、鎖国に準じる体制をとれれば(これもまた議論がありますが)、オーストラリアやニュージーランドや台湾のような状況に持っていくことは可能だったと思われます。これからまた新しい感染症が流行しないとも限りませんし、次はいいワクチンが出来るかも分かりません(mRNAワクチンに期待したいところですが)。ワクチンに3回目のブーストが必要という議論もある等、新型コロナにこれからも付き合う必要がないとも限りません。日本に海外で効果があった防疫対策を導入しない選択肢はないと言えるのではないでしょうか。
この記事を書くにあたって野党の主張は参考にしていませんが(検索してみたところ災害対策基本法を使えばいいというロジックのようです。立憲・枝野氏「強い外出制限に賛成の余地は十分ある」(朝日新聞 2021年5月9日)、強い対策に憲法改正は必要ないは野党のロジックという指摘があります。しかし緊急事態条項に反対し、検査による感染対策と今思うと的を外した対策を強く主張していた(している)野党と同じと言われるのも釈然としません。憲法改正は事実上、出来ないのですし、欧米標準の防疫対策の導入を主張するのに野党も与党もないというべきでしょう。保守派に防疫対策を軽くみる意見があるのは承知していますが、公平に見て少なくとも日本の地理的環境なら強い対策派に分があることは否めないと思います(筆者も当初は強い対策に拒絶反応がありましたが)(何も中国のようにしろと言っているのではありません)。
問題は非常事態宣言が経済に与える影響ですが、欧米での事例を見ると、同じ期間なら、より強いマイナスの影響が当然あると思います。しかしオーストラリア経済がそれほど落ち込んでいないことを考えると、トータルで見て経済の落ち込みは少なく済んだ可能性があると思います。強い対策は対策の期間を短くすると思われるからです。欧米の対策が長期に渡った原因はそれだけ感染が拡大していたということなのでしょう。
ワクチンは今の状況を一変させるゲームチェンジャーですが、直ぐに効果が出る訳ではありません。次の感染症で直ぐにワクチンが出来るとも限りません。上手く対策がいくと被治験者が足りなくなる可能性があるからです。政府としては今の対策をワクチンの効果が出るまでやるつもりかもしれませんが・・・。
まず、理屈から言って、非常事態宣言に準じる効力を持つ防疫に関する法律を制定することは可能です。問題はこれが違憲立法審査で違憲とされるかになるはずです。本来的な話をすれば、立法サイドに違憲かどうか判断する権能はなく、これは司法の仕事です(日本の官僚組織は良くも悪くも無謬性の原則で間違えないよう慎重な判断をしているかもしれませんが。本来的な話をすれば、実際にやってみて(やって分かることは多いと思われます)、然るべき場所で議論するという考え方は有り得る訳です)。実際に法律をつくっている官僚(本来は立法府の議員・スタッフが法律をつくるはずですが)視点では、非常事態宣言は違憲だろうという判断があるのかもしれませんが、本来立法するべき政治視点で見ると、必要な法律はつくるべきであって、それが違憲かどうかは最終的には司法の判断になるということだと思います。勿論無暗に司法に違憲と判断される法律をつくるべきではありませんが、非常事態に適用される法律をつくるのに、(司法でもないのに)これは違憲だと勝手に線引きするのは筋違いですし、(最終的な責任者であるところの)政治の役割を果たしているとも言えません。
それでは本当に司法で違憲だと判断される見込みなのかと言えば、微妙なところではないでしょうか。日本国憲法にも公共の福祉による私権の制限は書かれている訳ですし、防疫政策は公共の福祉を守るためにまさに必要なものと言えます。疫病が蔓延して公共の福祉も何もあったものではないはずです。そう考えると防疫政策に関わる私権の制限は日本国憲法に書かれているとも言えます。事実、感染症法には行政罰のみならず重い刑事罰も書かれています。刑事罰は私権の制限の最たるものでしょう。つまり日本に防疫に関して非常事態宣言の類がないのは、想定されていなかっただけで、憲法上不可能だったからではないようです。高橋洋一氏ほどの元官僚に違憲だと言われると、そうなのかと思ってしまいそうになりますが、よくよく考えてみれば、防疫政策で私権を制限しても過剰でなければ違憲と判断されることはなさそうだということになります。訴訟はあるかもしれませんが、適切な防疫政策であれば、(政治に影響する)世論の同情もないと思われます。違憲の疑いがあるなら、(非常事態宣言を可能にする)緊急事態条項の明記があるに越したことはありませんが、防疫政策に限って言えば、非常事態宣言は違憲の疑いがない可能性もあるでしょう。
ここで非常事態宣言が適切な防疫対策であるのか考えてみると、(時宜を得れば)適切な防疫対策であると言えます。何でそんなことが言えるのかと言えば、海外で効果が顕著に認められているからです。日本ではこれまで非常事態宣言がなくても、何とか新型コロナウイルス感染症の野放図な拡大を防いできましたが、感染拡大傾向にあったことは明らかです。今から考えてみますと、この感染症の流入が明らかになった段階で強い対策を打って、鎖国に準じる体制をとれれば(これもまた議論がありますが)、オーストラリアやニュージーランドや台湾のような状況に持っていくことは可能だったと思われます。これからまた新しい感染症が流行しないとも限りませんし、次はいいワクチンが出来るかも分かりません(mRNAワクチンに期待したいところですが)。ワクチンに3回目のブーストが必要という議論もある等、新型コロナにこれからも付き合う必要がないとも限りません。日本に海外で効果があった防疫対策を導入しない選択肢はないと言えるのではないでしょうか。
この記事を書くにあたって野党の主張は参考にしていませんが(検索してみたところ災害対策基本法を使えばいいというロジックのようです。立憲・枝野氏「強い外出制限に賛成の余地は十分ある」(朝日新聞 2021年5月9日)、強い対策に憲法改正は必要ないは野党のロジックという指摘があります。しかし緊急事態条項に反対し、検査による感染対策と今思うと的を外した対策を強く主張していた(している)野党と同じと言われるのも釈然としません。憲法改正は事実上、出来ないのですし、欧米標準の防疫対策の導入を主張するのに野党も与党もないというべきでしょう。保守派に防疫対策を軽くみる意見があるのは承知していますが、公平に見て少なくとも日本の地理的環境なら強い対策派に分があることは否めないと思います(筆者も当初は強い対策に拒絶反応がありましたが)(何も中国のようにしろと言っているのではありません)。
問題は非常事態宣言が経済に与える影響ですが、欧米での事例を見ると、同じ期間なら、より強いマイナスの影響が当然あると思います。しかしオーストラリア経済がそれほど落ち込んでいないことを考えると、トータルで見て経済の落ち込みは少なく済んだ可能性があると思います。強い対策は対策の期間を短くすると思われるからです。欧米の対策が長期に渡った原因はそれだけ感染が拡大していたということなのでしょう。
ワクチンは今の状況を一変させるゲームチェンジャーですが、直ぐに効果が出る訳ではありません。次の感染症で直ぐにワクチンが出来るとも限りません。上手く対策がいくと被治験者が足りなくなる可能性があるからです。政府としては今の対策をワクチンの効果が出るまでやるつもりかもしれませんが・・・。