小林よしのり氏が「脱原発論」を発表した(SAPIO 2011/12/7)。「国民に理論的根拠を与える」(56p)そうだ。ツッコミどころしかないところが以前批判した広瀬氏に似ており、あんまり相手にするべきではないのだが、あれでも売れっ子漫画家なので、一応批判しておこうと思う(批判する理由まで広瀬氏に似ている)。あまりツッコミどころが多いと、書くのに時間がかかって面倒くさいのだが。
既得権益者に説得力なしなどと銘売ってるが、原発維持推進派は「既得権益者」ばかりじゃないと思うよ。大体、原発体制内部の意見を既得権益者が言うことと切り捨ててしまって、どうやって冷静に判断するつもりなんだろうね。「アホウだから、既得権益者の意見を聞くと騙されてしまうので、聞かんのです」っていこうとなら分らんでもないが、右から左までの論考を精査した(56p)そうだから、そういうことではないらしい。
「「脱原発」は左翼が唱えていると自称保守派は言うが」(55p)・・・シタリ顔で喋っている一コマ目からツッコまざるを得ない。脱原発は左翼が唱えている・・・間違いないじゃないか。氏も引用する小出氏もド左翼だし、広瀬も左翼、その他もろもろ何処からどう見ても脱原発でキーキー言ってるのは左翼がほとんど。武田・西尾・小林ぐらいじゃないか、何か寝返って、キーキー言ってるのは。本屋に言って脱原発に一生懸命になっている連中の名前を調べてくるといいと思うよ。元々脱原発は左翼運動だから、ずっとやってきているのは左翼しかいないわけで。軽率な転向にわかが保守を名乗る(西尾・小林)ことこそ失笑モノだと思うのだが。せいぜい左翼や武田の本でも読んで勉強すればいい。ガイガーカウンターを買って放射能に卒倒しそうになってる層は元々食品添加物が~と言っているのと同じで、左翼系統市民だよ。小林は世間知らずなのかな。漫画ばかり描いてないで、世間に交わろう。普通の保守派はそうした経緯ぐらい知ってるから、脱原発は左翼と指摘してるだけ(別に誰も全員左翼とは言ってないな)。自称保守連発も恥ずかしいぞ。この前のSAPIOで保守派は原発維持推進ばかりでガッカリしてただろ。ハブられて混乱してるのかもしれないが、転向した少数派の小林が自称保守になってしまったんだと思う。現実を直視しよう。
「人為ミス、あるいは自然災害で国家を崩壊させるリスクのある技術は認められない!」(55p)・・・プロメテウスの火ですな。菅と似たようなことを言っているが、今の原発は言うほど危険ではない。
繰り返しになるので詳細は省くが、チェルノブイリは黒鉛型でシステムが全然違うし、従って事故の規模も全然違う(エ?「既得権益」の言うことは説得力がないって?それで済むのだからラクな商売だな、脱原発は)。当のチェルノブイリでも郷を捨てられなかったとても保守的な方々はピンピンしているらしい。事故はあってはならないが、被害を誇張して「止めろ」というのもどうだろう。ちまたには肩が当たったぐらいで「イテテテ。骨が折れた。どうしてくれる」という人もいるらしいがそれはともかく、リスクという言葉を使うなら、正確にリスクを算定してほしい。
もうひとつ重要なのは、
おまえは反核・反軍事でいいんだな?ということ。暴走したら、人為的に国家を崩壊させる技術を含むかもよ。発言は取り消せないから、そこんとこヨロシク。軍事をデオドラント化するな!とか言ってたような気もするが、多分気のせい、そこは見なかったことにしてもいいよ。中韓は原発を止めないらしいんで、中韓に甘い左翼どもを引きつれ、是非、国家を崩壊させるリスクのある技術は認められない!とかましてやってくれ。お隣でそんな危ない技術を使われたら困るだろう?特に中国は日本と同じ地震国だから。原子力潜水艦の反対も頑張れよ。こっちは左翼のお仲間が歓迎してくれる。暴走したら大変なことになるに違いない。サア頑張れ。人為的に国家を崩壊させるリスクのある技術を認められない小林は多分昔は反核の闘士だったんだろうね。知らんかったな。あ、転向しただけだっけ。ゴメン。
「「除染」というのも基本的に出来るわけないのに!」(56p)・・・じゃぁ除染除染と言ってる連中は何をやれと言ってるのかね?自分は神経質に除染しなくていいという立場だが、まさか除染しても何も変らないとは思ってないよ。核物質は崩壊するのを待つしかない(化学反応しない)の類の言説を元に知ったかぶりしているということかね。でも、除染は出来ると思うよ。どう除染出来ないか、勉強の成果をいずれ見せてくれるものと思う。
「最近、自称保守派は「放射能は健康にいい」と極論を言い出している」(56p)・・・大方の保守派がこれを言い始めたのは最近かもしれないが、放射線ホルミシス自体は昔から言う学者はいたらしい(例えば、「人は放射線になぜ弱いか 第3版」近藤宗平大阪大学名誉教授 講談社ブルーバックス 1998年第1刷発行)。放射線医学も「既得権益」だからダメ?あっそう。ちなみに後で小林が主張している温暖化懐疑論も世間的には極論とされていると思う。脱原発+温暖化懐疑論って何が何でも反原発(でも中国の原発は綺麗な原発)のド左翼コンボだと思うのだが、そこはまぁいいや。
「おいおい、「エネルギーはいらないから原発を停止しろ」なんて言っている者がいるのか?」(57p)・・・いる。小林が大好きな小出裕章その人なんだが・・・よく読めよ。小林が紹介する「原発のウソ」にも何よりも必要なのはエネルギー消費を抑えることという一節(180p~182p)があるからそれで大体分ると思うが、「原発はいらない」(幻冬舎ルネサンス新書)では、「たとえ電力なんか足りなくなっても原発は止めるべきだ」(207p)とちゃんと書いている。頼むよ、ホント。ちなみに、火力で代替するとコストがベラボーにかかるから再稼動すべしという
論者もいるから、そこんとこヨロシク。無視?あっそう。残念。
「この山名なる教授、原発関連企業や機関から多額の寄付金や研究費を受け取っている「御用学者」だと「別冊宝島」で暴かれ、ネットなどでも非難囂々の人物である」(58p)・・・金がないと研究できないだろ。特に理科系は。システムに一長一短はあると思うが、実際どうすればいいと?まぁそこまで考えてモノを言ってないのだろうが。別冊宝島で暴かれ、ネットなどで非難囂々が小林脳では悪人になるらしいというのは了解した。「別冊宝島」どころかマスコミほぼ全体からいろいろ暴かれ、ネットを見ない層にまで非難囂々だった人物菅直人の危機感は正しいらしいが。脱原発は神聖不可侵、分ります。
「ところが山名氏は、そんな自らの立場について何の釈明もしないまま、自分が「技術者」であることを強調し、あたかも公正・中立であるかのような口ぶりでヌケヌケと「原発推進」を唱える本を出している。」・・・よく読め。その本「それでも日本は原発を止められない」のカバーの人物紹介の肩書きを。自分の立場は隠してないし、「原発推進派」が「原発推進」を訴えるのに釈明するはずがない。ましてや釈明したら、揚げ足とって脱原発に持って行こうという方々がウヨウヨいる中で。
「原発がなければ、エネルギー安全保障が保てない!」(59p)・・・引用がない。誰の発言だよ。でも、原発がエネルギー安全保障になるのは間違いないよ。エネルギーの多様化自体、エネルギー安全保障と言えるが、政情不安定な国の産出が多い化石燃料と違って、ウランはカナダ・オーストラリアなど政情が安定している国の産出が多いから。イラン情勢ひとつで原油が値上がりしたりそういうリスクはないよな。基本中の基本。イロハのイ。だから石炭・天然ガス?・・・そういうふうにエネルギーが偏ることをエネルギー安全保障に反すると言う。また、天然ガスは輸送コストが高いため、近場に大産地がないアジアではプレミアムがついて高いという事実もある。自分はベストミックスがエネルギー安全保障の観点からもいいと思う。リスクは分散が基本。選択肢を消すのは宜しくない。
「核燃料リサイクル計画は完全に破綻している!!」(60p)・・・
いや、まだやるべき。
「この「もんじゅ」が事故を繰り返し1兆円以上もの国費を投じながら未だ1kWの発電もできないというのが現状だ。」(61p)・・・事実誤認も甚だしい。
もんじゅは発電をしている。推測するに、商業用として電力会社に売電してないことを嘘つき左翼が「発電してない」とか言って、そのまま引きうつしたんじゃないか。デマも甚だしいのだが、釈明すべし。その一コマ前の「まだ2番目の原型炉」はその通りでも、もう3番目の実証炉を設計していることは書いてない(ウィキペディア「もんじゅ」参照、元は国際原子力協会)。小林は後に(63p)で高速増殖炉を錬金術のように書いているが、山名氏は「技術原理としては確立しているが、経済性が課題だ」(それでも~87p)と言っており、小林がろくに読まず(理解できず)批判していることは明らかである。
「今どき「この放射能は人体にはそれほど影響はありません」と言われて納得するのは、自称保守の極論言論人だけだと思うが。」(62p)・・・これは酷すぎる。まず山名氏のものとされる発言自体が小林の頭で捏造された勝手な要約であり、小林自身が小林の言う卑怯者(57p)と化している。山名氏が言っているのは、(放射性物質の活動の状態を時間当たりの崩壊数で示す※「正しく知る放射能」学研15p)ベクレルという単位で見るのではなく、生体への影響度(いわゆるシーベルトのことと思われる)で見るべきで、それで見るなら、再処理工場の方が危険ということはない、ということ。説明が詳しくないとは言え、
生体への影響度/シーベルトなんて基本中の基本かと思っていたが。はよ、勉強せえよ。理論的根拠を与えるために。保守派はバカと左翼は思ってるらしい(確かに小林はバカのように見える)から、左翼本ばかり読んでると変な癖がうつるぞ。編集もこれぐらい教えてやればいいのに。聞く耳持たないんだろうが。
・・・そろそろ時間切れ中断。気が向いたらまたやる。「自称保守がぐうの音も出ないぐらい苛めてやらねばならない」(70p)だそうだが、頑張れよ。逆に苛められても、自殺してはいけない。が、恥じる心があるなら、釈明して脱原発なんて止めた方がいいだろう。