観測にまつわる問題

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躍進するインバウンドから

2019-11-15 16:33:38 | 日本地理観光
訪日客が過去最高 インバウンド取り込みで佐賀、青森が躍進(2019/09/11 J PRIME)

 2013年~2018年の訪日客数増加率が最も高かったのは佐賀県で6.75倍に増えています。タイの映画ロケを誘致したことなどが功を奏したようですが、タイは成熟しつつあるとはいうものの、だからこそ旅行する余裕があるとも言え、親日度ランキング1位で旅行先として日本は4位だそうですから、まだまだ潜在的に旅行者が伸びる国ではないかと思います。旅行先で多いのは東京でタイは暑いのであまり歩かず、公共交通網が充実している地域を選んでいるそうです。佐賀が伸びたのはロケ地を中心にしたツアー商品が人気だからのようですが、伸びる東南アジアをターゲットにする場合は、あまり歩かないを意識するべきなのかもしれません。同じく暑さで甘いものが好きなど特徴があって、戦略的な対応でタイ人に選ばれる観光地をつくっていける可能性もあります。タイ自体旅行先では日本の先輩とも言える観光大国で、インスタ映えする観光地が多いだけでなく、新しい観光スポットも強化されている最中のようです。貿易収支は日本の黒字で来てもらうだけでなく、こちらから行くという意味でも注目の国だと考えます。
 2位の青森県は台湾で注目があり、特に10,11月の奧入瀬渓流の人気が高いようです。台湾人の日本観光の最大の目的は風景・景色の観光だということですが、台湾の場合は緯度が高く四季がハッキリしてないから紅葉に注目があると見られます。漢民族で風景と言いますと、山水画が想起されます。山水画とは再構成した「創造された景色」なのだそうですが、矛盾するようですが、身近な自然というより、言わばある種不自然な自然に興味があるとも言えるのかもしれません。紅葉に関する観光需要は台湾に限らずあって、香港人は都市生活で(香港では自由に出来ない)サイクリングが好きなど日本の自然でノンビリしたい需要があるようです。グランピング(ラグジュラリーなアウトドア体験)需要もあるとか。対して台湾人は鉄道好きで紅葉だけでなく温泉や日本庭園といった日本文化に興味があるとか。タイ人にも紅葉ツアー人気があるようですが、やはり四季が明快でないところに需要があるのかもしれません。欧米人にも日本の紅葉ツアーへの注目があるようで、日本は長期休暇を利用した国内需要が比較的秋に少ないと考えられますから、観光地にとっては開発に取り組む意味は小さくないのではないかと考えられます。台湾人が鉄道好きの理由はよく分かりませんが、台湾は日本と同じく人口過密の島とも言え、観光の足としても鉄道が成功していることが理由として挙げられるのかもしれません。八田ダム(烏山頭ダム)に対する注目もあると思いますが、公共投資に対する興味があるとすれば、インフラツーリズムなんかも興味ないかのかと思わないでもありません。
 3位の香川は瀬戸内国際芸術祭に注目があるようです。芸術祭で検索するとさすがに瀬戸内が上位を独占していますが、東瀬戸内も自然環境や歴史と文化では負けていないでしょうし(芸術祭ファクターを脇におけばポテンシャルはあるという意味です)、種子島宇宙芸術祭なるものも2017年からスタートしているらしく、日本各地の地域の特色を活かした芸術祭が他にあってもいいんじゃないかと思います。瀬戸内芸術祭は3年に1度で春から秋にかけてのイベントですが、知名度向上による香川人気という波及効果があるらしく、瀬戸内芸術祭は成功事例として注目があるようですが、上からのトップダウンのボランティアを募るやり方ではなく、ボトムアップの瀬戸芸サポーターの「こえび隊」の役割が大きいとされています。住民主導で(傍観者にならない)自分ゴト化や地域ゴト化が鍵だという見方があるようです。
 4位の岡山はLCCによる拡大だそうですが、白桃ツアーに人気があるとか。岡山では他にブドウも全国ランキング上位の産地のようですが、観光農園の主たる課題はオフシーズンの取り組みだと思います。値段を下げてバーベキューをやる観光農園も検索上位(観光果樹園 オフシーズン)で出てきますし(アウトドアは近年好調のようで、車なんかもRV人気の時代です)(シーズン中でもやっているバーベキューの取り組みをオフシーズンでも値段を下げてやるという形のようで、経済原理に則った取り組みに見え、にわか感がないのがいいのかもしれません)、イチゴ農園でジャム作りのような可能性を探る動きもあるようです。また中四国に向かう玄関口としての位置づけもあるようです。広島市との行き来は船が便利だよねという中予人としては、まぁ地理的にそうなるかという気もしますが(岡山を基点に周遊するのが利便性が高いという意味で、あるいは岡山に隣接する地域に岡山から行く需要があるという意味で、直接中予に来るのに岡山から来ているという意味ではさすがにないんだろうと思います)(瀬戸大橋が中四国の底上げに繫がっているのは明らかで、第二国土軸に特に関空からの人の流れの潜在需要もありそうで、神戸とあわせて徳島だけでなく関西と四国もテーマであっていいとは思いますが)(しまなみ海道は周遊ルートに使えますし、島自体の魅力も高く、潜在性は高いと思っていますが、建設前から広島市と松山市を繋ぐルートとしては遠回りになることは前提で建設したと思います)(大和ミュージアムの呉と松山を結ぶフェリーもあり、船旅もそれはそれでいいものです)、瀬戸内芸術祭に対する拠点として岡山県宇野市に対する注目もあるようで、県域を跨いだ移動も視野に入れないと観光政策は難しい時代なんだろうと思います。
 訪日客の数的には東京が多いようです。元々首都圏で人口が多い上に、LCCへの取り組みでも関西に遅れた感じですから、一極集中の流れも今のところ止まるところを知らないようですので、やればやるだけ成果が出るんでしょう。新宿・新大久保、銀座、浅草といった定番が人気のようですが、東京というのは首都ですから課題も多く観光開発は二の次になっているとも考えられます。アジアはおろか世界最大の都市としてパリやロンドン並みの注目があっても筆者はいいと思っていますが、夢は大きくワシントンD.C.兼NYぐらいを目指して欲しいところです。五輪後云々なんてものは偏差値秀才の勉強してないぐらいの眉唾ではなのかもしれません。
 2位は大阪で、関西の盟主として他県との連携や波及効果はどうなってるの?という気が少ししていますが(隣県どうしの緊張感あるあるは良く分かるのですが、東京は隣県同士のライバル意識はともかく東京に対するライバル意識はあまり見らないような気がします。首都じゃない・規模が違う・伝統が違うと言われればそれまでかもしれませんが、京都や奈良のような大阪に対して上に立てるだけの文化遺産がある県ばかりではありません)、忽ちは百舌鳥古市古墳群で奈良県との連携も気になるところで、リニアや北陸新幹線、万博といった新しい話題も絶えない今後も要注目の地域だと思います。
 3位は福岡で福岡空港も拡大しますし、これまた注目の地域ですが、福岡県というより福岡市に勢いがあって、九州の首都的な位置づけで成長する福岡市がどう九州と共存していくかがテーマではないでしょうか?アジアに近いことに優位性はありますが、アジアの玄関口としては今の時代飛行機でひとっとびですし、中々難しいところもありそうですが、スタートアップに対する取り組みがあるように、恐らくアメリカ西海岸がモデルと思いますが、玄関口として実質的に機能することを目指すのであれば、まずは福岡市に1度止まらなければならないのではないかと思います。ただ世界の玄関口を目指すのであれば、広島にも神戸にも中部にも仙台にも国際空港はありますし、北海道や沖縄も国際的な拠点としてポテンシャルはあろうかと思います。確かにそうした地方の拠点都市は放っておいても内需で食べてはしばらく食べてはいけます。しかしながら、増える人口は何処からか移動してきているのであって、大都市が自ら子育て環境等を整備して産み出したものではありません。地方の方が国際都市になるのはよほど特徴がないと事実上不可能でしょうし、可能としてもアクセスする交通手段の問題があります。責任野党という何だかよく分からない言葉がかつてありましたが、国際都市の取り組みは国際的活動をする能力がある都市の責任でもあるんじゃないかと思いますが、如何でしょうか。
 米国の旅行者が宿泊費にお金をかけているということで宿泊費に注目してみますと、日本人の平均宿泊費の上昇に対して、訪日客の平均宿泊費は下がっていますから、全体的な流れで言えば、裾野を広げるのがインバウンドで(賑わいをつくるとも言い換えることも出来ます)、ハイクオリティを目指すのが内需という位置づけになっていると思います(ただし休みがとれない日本人のオフシーズンの問題も依然としてあると思います)。円高傾向で海外旅行を謳歌しているのも実は日本人なのかもしれず、能ある鷹は爪を隠すとは言いますが、目の肥えた日本人が多いのだとしたら、逆輸入で真摯に他人の意見を聞ける日本人は一方で素晴らしいとも思うものの日本に対する目利きとしての実力も発揮してほしいところです。贅沢禁止令で裏地に金をかけた江戸っ子の末裔がどれだけいるか分かりませんが、上に倣えで皆節約倹約では一番大きい内需が詰んでしまうのは火を見るより明らかです。ノーブレスオブリュージュとはよく言ったもので、お金がある人ほど変な話お金を使う責任があるという見方が生じた時、日本経済は劇的に復活するのかもしれません(反対とかヘイトとか嫉妬とかのマイナスパワーは賛成とかのプラスパワーを吹き飛ばしかねない力があるように見えます)。金は天下の回り物とは言いますが、税収を直接は産まない公共事業の文脈で使われる言葉なのが気になっている次第です。米国の旅行者の宿泊費に戻ると、内需主導でハイクラスの観光需要が伸びれば、世界は広いですから、後からついてくる面もありそうで、海外評価で逆輸入ばかりに期待するのは円高トレンドで難しいのかもしれません。客観的評価を忘れる必要はありませんが、一種の自己評価に取り組むのが今の日本に必要ではないでしょうか?なお円高トレンドは日本の輸出産業が強い証拠なので、弱くならないと円安トレンドには基本的にはならないはずであり、日本の強い輸出産業が没落したら少なくとも現状で日本経済自体が底抜けしかねませんから(お家芸とも言える自動車でも自動運転の波もある等、厳しい国際経済で何があるか分からない部分もありますが)、円安を前提とした政策なんてものは危機管理の部類であり、変動の一部を切り取ったものにしかならないと考えます。

※筆者のfacebookコメントより転載


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