観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「保険」「相続」「農業」「医者の給与」「解雇規制」「国民年金」を考察する予定。

尖閣ビデオを公開すべき理由と情報流出

2010-11-07 15:38:55 | 政策関連メモ
尖閣ビデオを公開すべき理由

A多くの国民が望むから。

B中国の非を明らかにし、国際社会で有利な世論を形成するため。


Aに対する代表的な反論

→刑事訴訟法47条:公判の開廷前に書類は公にしてはいけない。

※船長は釈放され、中国に帰国した。当然不起訴となる見込みであり、公判は開廷されないので、情報は公開されない。

再反論

→同47条:公益の事由があればその限りではない。

要するに情報公開に公益の事由があるかないかが肝であるが、今回の事件は那覇地検が船長釈放の際「日中関係を考慮」としたように、外交安全保障に大きく関わる事件(中国は強硬に「報復」を示唆していた)であり、主権者たる国民が事件のビデオを見ることはそれ自体公益であると考えられる(9月30日衆院予算委員会にて菅首相はビデオ映像を見ていないと答弁しており、政権がビデオの重要性に気付いていないと考えれば、その後の展開はスムーズに理解できる)。一般には、重大な事件があれば通常その映像は公開されるのであって、寧ろ公開しないことに理由が必要だということを注意しなければならない。

※そもそも映像を撮ったのは海保である。刑事事件云々に関係なく、情報公開請求で開示は要求できるのではないかと思い調べてみた。海上保安庁における情報公開窓口等の案内を見てみよう。

7 開示・不開示の決定
 各省庁は、請求された文書を開示するかどうかの判断を原則30日以内に行い、請求者に文書で通知します。法により不開示とされているものは次のとおりです。
1)特定の個人を識別できるような個人情報
2)事業を営む個人、法人、団体に関する情報で公にすると財産権などを侵害するおそれのあるもの
3)公にすると外交や国防に不利益を生じさせるおそれのあるもの
4)公にすると公共の安全や秩序の維持に支障を及ぼすおそれのあるもの
5)国の機関や地方公共団体の情報で、公にすると意思決定などの中立性を損なうおそれのあるもの
6)国の機関や地方公共団体の情報で、公にすると事務や事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの

以上案内よりコピペ(番号が記事にそのままコピーできないためその部分は改変)。以下、番号ごとにチェック。

1→少なくとも流出した映像では個人は判別できない
2→侵害されたのはこちら側なので、侵害するおそれはない
3→被害を明らかにして、外交や国防に不利益が出るとは考えられない
4→中国の言っているのは報復。こちらから手を出していないのだから、攻撃は無いだろう。勘違いに違いない。大丈夫だ。実際にビデオの公開はでは「事実の真相を変えられない」と言っているではないか。公開しようがしまいが、中国自身がどちらでも同じと表明しているのである。
6→流出したものを見る限り支障は無いだろう。ある部分を公開しなければいい。

4は勿論冗談である。やはり政治の判断で公開は決めなければいけないようだ。菅政権は釈放を地検の判断としたが、政治の判断でなければならないことを末端に押し付ける癖があるようなので、冗談のような理由でも通るかもしれないが。5は菅政権が公開しないとしている以上、海保の判断で公開は出来ないということになるだろう。どうやら情報公開請求の線でビデオ公開を要求するのは難しいようである。


Bに関しては、体当たりビデオ公開が日本に有利は明らかであると考える。

代表的反論「カードとして使う」

→再反論甲:使えていない。日本はずっと領有権に争いはないとしつつ、国民に上陸を認めていない。菅政権の一連の事勿れ主義から見て、カードとして使う気は無いと見ていいだろう。また、使う気があるとしても、中国自身がビデオの公開で「事実の真相を変えられない」としている。実効支配の強化を目的と考えれば(実効支配が弱いと見られたことで、中国の増長があったことは否めない。ならば、採るべき対策は実行支配の強化しかない)、ビデオの公開非公開が取引材料になるとは考えにくい。国際世論を日本に有利に導くことが、実効支配の強化に繋がるのであり、ビデオは速やかに公開すべきであった。

→再反論乙:カードとして使うと言っても、それは政府の言う日中友好と矛盾する。「カードとして使う」というのは枝野氏の発言に過ぎず、政府としてそういう行動をとるとは考えにくい。表で日中友好と言いいつつ、裏では「ビデオ公開するぞ」と脅すということになるが、幾らなんでもそんな友好は有り得まい。


以上ビデオを公開すべき理由をふまえてビデオ流出について考えてみると・・・。

某所にも書いたが、情報流出は良くないが、菅政権の方がもっと良くないということに尽きる。ビデオは元々速やかに公開すべきであった。犯人を捜して罰して見せたところで、情報公開すべきであったという意見が否定されることにはならない。寧ろ、犯人を罰することで菅政権が何か誤魔化すつもりであるならば、逆効果を覚悟しておいた方がいいだろう。元々世論は情報公開すべしであった。情報を隠した政権が情報を流したものを罰する姿が国民にどう映るか。鈍感内閣は気付かないのかもしれないが、どちらに共感するかは明白である。

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