観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「保険」「相続」「農業」「医者の給与」「解雇規制」「国民年金」を考察する予定。

憲法76条2項と軍法会議・軍刑法の議論

2017-08-23 00:37:47 | 政策関連メモ
佐藤正久氏ツイッター経由で産経ニュース

“素人”裁判 国防が「殺人罪」 一般法廷 軍事的知識なく…「これでは戦えない」(産経ニュース 2017.8.22 01:00)

>仮に米軍と北朝鮮が戦火を交えれば、北朝鮮からボートピープルが日本に押し寄せる事態が想定される。この中に武装工作員が紛れ込んでいれば、海上保安庁や海上自衛隊が対処に当たるが、武装工作船と間違えて避難民が乗ったボートを撃沈すればどうなるか。

>非戦闘員の殺害は戦時国際法に反する。だが、日本にはこれを裁く軍法会議も軍刑法もない。市民団体などが「殺人罪」で告発すれば、自衛官は一般裁判所の法廷に立たされかねない。

こういう論点は外交安全保障に関心のある保守派の方々には理解されると思うんですが、9条2項でも苦労していますからね・・・。多分軍人が軍人を裁くと甘くならない?というイメージが導入を邪魔するんだと思います。また在日米軍の犯罪の処分が甘いというイメージ(アメリカ自身が認めているようにも思います)が軍法会議の有用性を訴える上で強力な足枷になるでしょう。沖縄に反米闘争があるのも全くの無根拠ではないと思います。日本は地位協定に関してアメリカに言うべきことは言ってきているとは思うんですけどね。まぁアメリカがもうちょっとハッキリした沖縄に対するメッセージを送ってくれればやり易いんですけどね。米軍は沖縄県民の理解を得る活動をやっているのは知っていますが、犯罪に対する甘い処分はそういう努力を結構台無しにしてしまうと思います。

在日米軍だけ処分が甘い? 性犯罪の3分の2が不起訴とAP報道(NewSphere Feb 10 2014)

>国を守るため、あるいは海外での人道支援のために働く自衛官が命令で行った行為が「殺人罪」に問われかねない。しかも、その罪を裁くのは、必ずしも軍事的知識を備えているとはいえない裁判官だ。そんな不条理が存在する一因が憲法76条2項だ。

自民党憲法改正案も76条2項の問題を指摘していないですね。筆者も言われるまで気付きませんでした。気付いている人は勿論いるんでしょうけど、まぁ常識的に考えて実現は難しいということで言ってないのかな?事情は良く分かりませんが。でもどんなに困難でも提案しないと実現もないですからね。筆者は76条2項も改正したらいいと思いますが。下手に動くと政権運営の邪魔になりかねないので、政治家の皆さんが様子を見ながらになるんじゃないかと思います。国民の否定的世論が明確に打ち出されてしまうと巻き返しが面倒になりますからね。ヒダリーな方々が鬼の首をとったようにガンガン旗を振るのも世論と同調してしまえば非常に厄介です。

>結局は刑訴法の例外規定で送検までの時間を延長できることで落ち着いた。だが、逮捕した海賊を日本で裁いたケースは、23年3月に発生した商船三井タンカー襲撃事件の1件にとどまっている。

その一件は確認できましたが、他に逮捕があったかあったらどうしたかが良く分からないですね。また、この海賊は日本の船に侵入した海賊を米軍が逮捕して日本に引き渡したものであるようです。2016年 海賊対処レポート - 内閣官房(30p) 海賊は自動小銃を発射しながら操舵室に押し入り操舵までしていますから、軍法も無く環境整備が十分ではない自衛隊が対処するのは難しい任務なのかもしれません。でも、ソマリア沖を通らないとヨーロッパに行けないですからね。一々喜望峰周りや北極航路・太平洋~パナマ運河~大西洋を通ってヨーロッパに行く訳にもいかないでしょう。失礼ながらソマリア人も海賊ぐらいしかやることがないんでしょうから、中々自ら取り締まらせることは難しいですね。安定した政権ができて援助でもしておけば自分で取り締まってくれるのかもしれませんが。ソマリア内戦(ウィキペディア)ソマリア派遣が悪い政策だったと言うつもりもないですが(当時筆者は肯定的だったように思います)、海賊に十分対応できる体制かどうかは疑問ありますね。諸悪の根源は憲法改正を真摯に話し合わず聖域をつくろうとしているゴケンな方々だと筆者は思います。自分達が通る海域の海賊の対処ぐらい自分でやるべきで(あるいは手段があるなら現地政府にやらせるべきで)、寧ろ米大陸のアメリカがここまで出張ってるのはさすがやなって感じですね。ヨーロッパ-アジア航路でヨーロッパやアジアが頑張るのは普通だと思いますがね。スーダンもイラクも然りでなし崩し批判は一定の意味はあると思いますが、そもそも必要な法改正をさせない方々が批判してますからね。二度とマッチポンプという言葉を使うなよって感じですね。筆者的には奴らがマッチポンプという言葉を使う度に氏刑にしたいぐらいです。分かんねーなら黙ってろ。あくまで抵抗するなら確信犯はスパイ法でも作って自発的な国外退去まで追い込むよ。好きなだけ心の祖国で喚いてろ。失敗した諜報員に優しい国かは知らないが。

>20年2月、海上自衛隊のイージス艦「あたご」が千葉県の野島崎沖で漁船と衝突する事故が発生した。この際、業務上過失致死罪などで起訴されたのは、当直だった水雷長と航海長だった。2人は最終的に無罪判決が確定したが、あたご艦長は自衛隊法に基づく懲戒処分を受けたものの起訴されることはなかった。

>米軍で同じような事故が発生すればどうなるか。13年2月、愛媛県立宇和島水産高校の実習船えひめ丸が米原子力潜水艦に衝突され9人が死亡した事故では、原潜艦長らが査問会議にかけられ、名誉除隊に追い込まれた。指揮官が責任を負うのが、軍事組織の常識だ。

>元海将の伊藤俊幸は「艦長が何ら罪を問われない状態は軍事組織としてはありえない」と指摘する。戦う組織にとって、指揮官の命令が隊員に徹底されることは不可欠だ。伊藤は「いざというときに責任を取れない艦長に、なぜ偉そうに命令されなければならないのか、ということになる」と警鐘を鳴らす。

イージス艦衝突事故(ウィキペディア)

>当時最新鋭であったイージス護衛艦「あたご」(乗組員281名、基準排水量7,700トン)と新勝浦市漁業協同組合所属の漁船「清徳丸(せいとくまる)」(乗組員2名、総トン数7.3トン、全長16.24m、幅3.09m、深さ1.18m、ディーゼル機関 出力435kW)が衝突。

>「清徳丸」は2月19日0時55分にマグロのはえなわ漁目的で川津漁港(勝浦東部漁港の付属港、千葉県勝浦市 北緯35度9分18秒 東経140度19分48秒)を出港し、三宅島北方へ向けて航行中だった。なお父子のどちらが操船していたかは特定されていない。
※息子は船舶免許を取得していなかった。尚、港湾法、海上交通安全法の適用されない海域、又は小型船舶操縦指導員の資格をもつ者が同乗している場合に限り、免許未保有者の操縦が認められている。これに違反した場合、免許所持者は無免許運転幇助、免許未保有者は無免許運転の罪となる。

>当時の海上自衛隊は、イージス艦情報漏出事件や「しらね」の火災事故などが続いており、これらの責任を取って3月24日に海上幕僚長の吉川榮治を退任させ、石破茂防衛大臣が2か月分の給与返納、増田好平防衛事務次官を減給2か月など、計88人を処分した。
内閣改造を控えた2008年8月1日、石破は「(イージス艦と漁船の)衝突事故以来、けじめをつけたいと思っていた」と語り、この事件をきっかけに職を辞する考えを固めていたことを明らかにした。さらに、内閣官房の「防衛省改革会議」で改革案が策定されたことに触れ、石破は「改革会議報告書がけじめになるという気持ちを間接的に首相に伝えていた」と述べた。内閣総理大臣の福田康夫も石破からの申し出を受け入れ、福田改造内閣では石破を留任させず、後任に林芳正を任命した。

イージス艦衝突事件の時、軍法会議などちゃんとしたシステムがあったら、戦後レジームの空気によるバッシングはあったと思いますが、それなりの結論は出たでしょうね。こう言っちゃなんですが、衝突事件が起きたから幕僚長が辞任するとか防衛大臣が(内閣改造時ですが)職を辞するとか寧ろあまりにもトップに責任をとらせすぎる問題の方が日本の問題のようにも思えます。柳条湖事件(ウィキペディア)でも政府方針に逆らった軍部が裁かれることなく、何故か閣内不一致とかいう良く分からない理由で当時の若槻内閣が倒れています。世論の支持が軍部にあったようですが、軍部をコントロールできない政治は危険と見られてもしょうがないですね。また、イケイケドンドンで軍部を支持してしまう世論も当然諸外国に危険と見られてもしょうがない。ただ、日露戦争で血を流したことから満蒙は日本であるという意識が日本人にあったようであり、諸外国は日本に当初融和的であったようです。それが覆ったのは中国人の日本に対する蜂起が相次いだからなのでしょう。結局日本は国際世論から総スカンをくらい国際連盟を脱退することになります。日本は民主主義を勘違いして世論に合わせ過ぎるところがあるでしょう。世論に迎合してようが何だろうが、政府の方針に逆らったら軍部は処罰されるのが当たり前です。世論はそのことを分からないといけません。分からないなら法治国家の資格が無いから、アメリカでも中国でもロシアでも○○を舐めてろってことですね。処罰を受け入れ逆らうのは問題ないんですけどね。俺達の気持ちに近いから処罰なしという考えが×だということです。法は法だから曲げられないはずです。イージス艦衝突事件も必要なら艦長(及び必要なら責任者)を処罰して終わりでしょう。防衛大臣まで辞任してコントでもやってんのか?って話ですね。本当のところ。勿論事故はあってはならないと思いますが、漁船が周囲を見ていたかは疑問があるでしょう。死人に口なしではありますが、漁船は小回りが利いてよけられますが、大型船は相当早くから動かないと避けようがないので、ぶつかるまでいったのは、少なくとも漁船は周りを全く見ていなかったからだと思います。二人乗りの漁船で片方は免許なしですからね。イージス艦に責任なしとも思いませんが、判官びいきで叩き過ぎの印象です。いずれにせよ、軍法会議ないし軍刑法があったら責任の所在は明らかにし易いと思います。法が無いからあまり関係ない上の上まで飛び火したとも言えると思います。三審制の普通の裁判は責任を明らかにする用途としては時間がかかりすぎですね。ですからマスコミは世論を煽るべきなのかという疑問が生まれます。責任をとるのは理不尽なところがあっても艦長しかないと思います(人員不足とか言っていたら軍に予算を回さない政治家の責任になり政治家を選んだ国民の責任になります。戦後レジームの空気は必ずしも軍拡に融和的じゃないと思いますので、ほとんど無茶苦茶言うな。どうせい?ってことになります。政治家は選挙で責任をとるのが本来の筋ですね)。ですから、裁判は裁判としてやって、艦長を普通に処罰してさっさと幕引きにするのが正解だったと思います。企業でも不祥事が起きたら裁判を待たずに責任者を処罰するでしょう。トップの責任は然るべきところでとればいいのであって、艦船の事故は艦長までに責任を止めるしかありません。よー分かりませんが、人事配置とか教育の権限ぐらいはあるんでしょう?体制が十分でないと考えるなら、上に報告を上げて改善を促すのが筋でしょう。何もかも全てをトップのトップが判断できないですからね。

えひめ丸事故(ウィキペディア)

>愛媛県立宇和島水産高等学校に所属する漁業練習船えひめ丸(499トン)が浮上したアメリカ海軍所属のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦グリーンビルと衝突し、エンジン周辺を損傷、5分程度の間に沈没した。えひめ丸側35名の乗務員の内9名が死亡、衝突の際に海上に投げ出された26名は救出されたが、その内の1名が鎖骨骨折、11名が軽傷を負った。

>この事故の際、浮上以前からソナーでえひめ丸の存在に気付いてはいたが、グリーンビルは民間人16名を乗せており、グリーンビルのクルー等はこの民間人の対応に追われて、ソナーによる確認作業が等閑になっていたとされ、それ以外のいくつかのミスが事故の原因とされている。

>また当時の森喜朗首相は事故発生時に休暇を取りゴルフをプレーしていたが、事故の一報を聞いた後もそのままゴルフ場に留まったことが大きな問題となり、森首相は内閣総理大臣を辞任した。

>この引き上げ・曳航作業の資金として、アメリカは6,000万ドルを投入した。このことはアメリカ国内で議論を呼び、拠出の事実のみを批判するアメリカ人も存在した。なお、英語圏のマスコミ報道ではえひめ丸について「漁船」 (fish boat)と紹介され、高校生が乗っていた実習船であることを報道した記事は少なかった。前述の産経新聞も「こうしたアメリカへのある種の“甘え”はこれきりにしたい」など、終始批判的だった。

>当時のグリーンビルの艦長であるスコット・ワドル中佐(当時)は事故の責任について軍法会議で審議されることはなく、司令官決裁による減俸処分を受けただけで、後に軍を名誉除隊した(懲戒解雇に相当する不名誉除隊ではなく、軍人年金などの受給資格のある一般退職。退職後ただちに海軍関連の企業に再就職した)。2002年12月には愛媛県宇和島市を訪れ、同市内にあるえひめ丸慰霊碑に献花した。

>時期不明、アメリカのジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領は電話で森首相に謝罪し、アメリカの責任を全面的に認めた。

こちらは責任は全て軍(原潜)にあるでしょうね。船の方が浮上してくる原潜なんて分からない訳ですから。アメリカは艦長が責任をとっており、それで本来は終わりにするべきでしょう。森首相のゴルフは日本の首相として不適切な行為だったとは思いますが、辞任はやり過ぎと思いますね。米軍と水産高校の練習船との衝突で首相がやれることは実際にはそんなにないでしょう。まぁ支持率が低いから責任をとらされただけなんでしょうが。米軍相手に高校生が死亡したことで世論が敏感になったこともあるんでしょうね。米大統領・米軍はそれなりに日本の世論に配慮しているように見えます。英語圏のマスコミは日本の世論の反応の意味が分からなくなるので、生徒が乗っている実習船であることぐらいは報道すべきだったと思います。

後、産経の今回の記事では査問会議でとありますが、えひめ丸事件のウィキペディアでは軍法会議にはかけられてないとあります。ですから、今回の指摘でえひめ丸を出すのは文脈上必ずしも適切ではないように見えます。

軍法会議(ウィキペディア)

>軍法会議には以下のような問題点も指摘される。
軍という狭い組織の中で行われるため、どうしても「身内同士かばい合い」や「組織防衛」が起こりがちで、外部からの不信を招きやすい(ソンミ村虐殺事件、えひめ丸事故)。果ては占領中の沖縄で1945年、軍法会議の有罪評決をワシントンの本省が破棄し無罪とした事例があった事も確認された。

>下士官兵などは厳格に裁かれることが多い一方、将校、特に高級将校に対する判決は寛大であることが多く、軍内部で上層部への反感が生まれること多い(富永恭次など)。

>政治的な理由などにより、法や量刑相場にそぐわない恣意的な判決が出ることがある(チャールズ・ジェンキンス)。このような問題点があるため、現在のドイツ連邦共和国のように「軍刑法」のみ定め、「軍法会議」自体は廃止している国もある。

以前の記事でも紹介しましたが、まずはドイツ式で軍刑法だけでもやるのがいいかもしれませんね。いろいろと批判もあるようですから。

軍法(ウィキペディア)

>軍法の適用範囲は国によって異なるが、主に軍人、軍属、捕虜であり、その軍事犯罪の定義は国によって異なるが、一般的に無断の任務放棄、敵前逃亡、命令違反、敵前での許すべからざる行為、利敵行為などが挙げられる。軍法会議では殺人、強盗、強姦なども犯罪であるが、これを軍事犯罪とするかどうかは一様ではない。

法的には日本の現状では敵前逃亡を処罰することは難しいということですね。これは有り得ない不備でしょう。自衛隊には高いモラルはあると思いますが、万一の時に私的制裁に頼るようでは、法治国家の名折れです。私的制裁が発動されれば兵士にとってより危険な状態でもあります(戦前そうだったように事故死として処理されるでしょう)。また、軍刑法だけ定める場合、敵前逃亡を裁判所に送って処罰するのは難しいとも考えられます。本来は有事には現場で処分するべきではないかとの疑問はあります。軍法会議によって民間人に対する強盗、強姦への処分が甘くなるようなことがあってはならないと思いますね(平時の自国民・同盟国に対しておきれば、軍に対する支持が落ちるでしょう)(有事の敵国民への無法は自国民の支持は落ちないかもしれませんが、敵国民の反発を呼びろくなことにはなりません)。便衣兵の類を誤射してしまうのは免責されるべきと思いますが。それを厳罰化すると便衣兵戦術が横行して戦争がより無法地帯になります。

政治家が議論しないことを決めているとか反対ありきで議論するとか有り得ないんですけどね。専門的な話ですから国会で真摯に話し合い、マスコミは冷静に報道することだと思います。

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