辰巳芳子さんがひとり身に推す「滋味のスープ」
辰巳芳子さん。御年94歳。まだまだ現役の料理家だ。辰巳さんといえば、「命のスープ」で知られる。
「スープは離乳食から介護食まで、そして疲れた人たち、万人にとてもいいものだと思うの」という。
「おひとりで暮らす男性の食生活をなんとかしてあげたいの」とも。
辰巳さんのスープを作るのは、決して難しくない。
よい素材を選べば、あとは丁寧に素材に向き合うだけだ。
丁寧に、ゆっくりと。
自分のためにスープを作る時間。自分のために味わうひととき。
そんな時間がなんともいえない、癒やしの時間になる。
ひとくち飲むと、頭に浮かぶ「滋味」

デミカップに注がれた琥珀色の液体。
なんだと思いますか?
紅茶?
ウーロン茶?
いえいえ、これ、スープなんです。
干ししいたけを使った「しいたけスープ」。
「頭を使ったとき、精神的に疲れたときには、とてもいいスープよ」と辰巳さん。
ぜひ、ご自分の「癒やし」に作ってみませんか? ひとくち飲むと、心からほっとします。
まずはレシピを紹介します。
《しいたけスープレシピ》
日本産原木干しシイタケ…………30~40g
昆布5㎝角…………3、4枚
梅干し………………………2個
水………………………カップ6
シイタケと昆布を分量の水に浸し1時間戻す。
シイタケ、昆布、梅干しを別の容器に入れる。
戻し汁は鍋に移し火にかける。
蒸気の上がった蒸し器に食材の入った容器を入れる。
熱した戻し汁を容器に注ぐ。
蒸し器のふたをして、40分ほど蒸す。
蒸し上がったら、すぐに昆布、シイタケ、梅干しを取り出す。
スープを器に注ぐ。
どうでしょう。
材料は干ししいたけ、昆布、梅干しのみ。
特に難しい調理技法も要りません。
辰巳さんの「しいたけのスープ」を初めていただいたときの感動は忘れられません。
コース料理の「前菜」として、デミカップに1杯出てきました。
一口飲むと、「滋味!」。
この言葉がじんわりと脳裏に浮かびました。
「滋味」を辞書で調べると、①栄養があって味のいいこと。
栄養豊富でおいしい食べ物②豊かで深い精神的な味わい、という二つの意味があります。
②は文学作品などの評価に用いられますが、「しいたけスープ」は①の意味はもちろん、まさに、「豊かで深い精神的な味わい」なんですね。
この1杯で食が進み、その後のお料理をおいしくいただけました。
別名「シイタケのコンソメ」と言われるゆえんでしょう。
実はこのシイタケのスープ、「煮る」ではなく、レシピにもあるように、「蒸す」という手法を使っています。
辰巳さんは言います。
「最初、干ししいたけを煮出してみたけど、くせまで出てしまったの」。
そこで、シイタケの戻し汁とともに、具材を蒸してみたそうです。
すると、シイタケの滋味だけがうまく出ました。
シイタケと昆布のうまみに、梅干しのほのかな塩味がのった黄金色のスープ。
このスープも含め、もっと気軽に「蒸し料理」ができる調理器具はないか?
辰巳さんは、調理器具メーカー「野田琺瑯」の社長の奥さんでスープ教室にも通って
いた野田善子さんに相談しました。
そして生まれたのが、ほうろう蒸気調理鍋「ミモザ」です。
しいたけスープに合う鍋の共同開発
二重鍋になっている「ミモザ」は琺瑯性なので、金気を嫌う食材にはうってつけです。
この鍋には辰巳さんのレシピ集が入っており、辰巳さんはこう書いています。
蒸し料理については、「金気をおびぬ蒸気は、ものの質をゆがめず、穏やかに食材の持ち味を引き出すと思う」。
また、琺瑯の特性にも触れ、「この鍋のほうろう鋼板は、1mmと厚手。
ゆったりした鍋で炊いた煮もの、汁ものは味はよく、仕上がりも美しい」と。

しいたけスープの材料と二重鍋ミモザ
面倒そうに思える「シイタケのスープ」も内鍋に具材と戻し汁を入れて40分ほど蒸すだけ。
余ったらスープは冷凍保存できます。
食材のうち、昆布は、だし取りに一番の「利尻昆布」を使いやすい5センチにカットしたものを、
シイタケは大分県産の「有機JAS」認証をとった「スープ用しいたけ昆布セット」をご用意しました。
二重鍋「ミモザ」は、数々の蒸し料理に大活躍してくれます。
蒸し器には欠かせないのが、すのこ。ミモザには3種類入っています。
すのこの目の粗さで蒸気の量が変わってきます。
茶碗蒸し、野菜蒸し。料理に合った蒸気量を調節できくるのもうれしいですね。
辰巳芳子さんのレシピブックつきです。
もちろん、しいたけスープの詳しいレシピも。
《たつみ・よしこ》 料理研究家の母・辰巳浜子さんに家庭料理の教えを受けて料理家に。
「蒸らし炒め」「展開料理」など独自の調理法を提唱する。
父親の介護体験をもとにスープ料理の普及に取り組むほか、食料の自給や安全についても、幅広く提言している。
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