鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

霊獣図鐔 後藤 Goto Tsuba

2020-06-15 | 鍔の歴史
霊獣図鐔 後藤


霊獣図鐔 後藤

 10年ちかく経ただろうか、ずいぶん前にこのブログで龍の図柄を採りあげたことがあった。以降、当時とは異なる龍図金具を扱っているので、もう一度興味深い作品を鑑賞してみようと思う。龍の図というと、獅子や虎と同様に後藤家の伝統的な図柄として有名で、その作風に倣った金工作品も多いのだが、一方で個性的な作風もあり、それはそれは楽しい。
 さて、これも楽しい作品である。全面に散らし配されているのは後藤の典型的彫口からなる動物群。引き締まった赤銅魚子地に、これも龍虎を中心に意匠している。後藤家は小柄笄目貫の三所物を専らとし、鐔を製作しなかったが、江戸時代に入ると、加賀後藤などが鐔を製作し始める。世の要求もあったのであろう。高彫の描法は伝統的。



刀剣類の更新の希望が多くありましたので、すこしずつですが出してゆきます。
併せてごらんください。
《刀剣鑑賞の基礎》 https://blog.goo.ne.jp/nihontokansho

十二支図鐔 宗典 Souten Tsuba

2020-06-13 | 鍔の歴史
十二支図鐔 宗典


十二支図鐔 宗典

 十二支が題材なのだが、主題はどうやら龍虎のようだ。その対峙する様子が鐔の表全面を使って描かれている。宗典は、美濃彫様式の秋草図などを描き、鉄地肉彫地透金銀素銅の象嵌で合戦図や中国の人物図を描くを得意としている。この鐔の描法はどちらとも異なるのだが、宗典には稀にある。ただし、図柄の構成は、鐔全面に主題を散し配し、山水図のように風景の一部としているところは中国の人物図に似ている。一柳友善でも龍虎図鐔を紹介したように、この図は迫力があって広く好まれたようだ。


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猛虎図小柄 赤文 Sekibun Kozuka

2020-06-12 | 鍔の歴史
猛虎図小柄 赤文


猛虎図小柄 赤文

 竹林に潜む虎。激しく動いているあるいは何かに襲い掛かろうとしている躍動的な場面ではないのだが、背を低くしてじっと獲物の動きを見つめ、その瞬間を待っているような・・・。手の爪が地に食い込んでいるようなところに力が感じられる。目玉のみ金で、闇に光っているような、怖さが感じられる。

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豊干禅師留守模様図鐔 勝珉 Shomin Tsuba

2020-06-11 | 鍔の歴史
日本刀買取専門サイト 銀座長州屋

豊干禅師留守模様図鐔 勝珉


豊干禅師留守模様図鐔 勝珉

 寒山、拾得の両詩人と、虎を手なずけていた豊干禅師の四者が眠る図(四睡図)があり、これも禅画として好まれている。この鐔は、高彫の寒山拾得に対して片切彫のみによる虎の描写がすごい。太く細くと切り施した片切彫の線描写だけを見ると、赤文の片切彫ほど強くはないのだが、線に独特の表情がある。虎の顔つきがまたいい。


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猛虎図小柄 常代 Tsuneyo Kozuka

2020-06-10 | 鍔の歴史
猛虎図小柄 常代


猛虎図小柄 常代

 藪常代は長常の門人で紀州和歌山の名工。虎の描写や表情などに独創がみられる。「藪にらみ」の言葉そのまま図柄としたようだ。背後に気をくばりながら虎が睨んでいるのはこれを鑑賞する者であろうか、小柄の中からこちらを窺う視線のあり様が面白い。これも迫力ある作品である。

親子虎図目貫 長常

2020-06-09 | 鍔の歴史

親子虎図目貫 長常

親子虎図目貫 長常

 一宮長常の目貫。後藤を下地としていることは間違いないのだが、明らかに風合いが異なる。長常は町彫金工の中でも技術力が最上位に位置付けられる一人。図の採り方が後藤とは異なる。阿吽の相を示す図が多いのだが、この目貫は雌雄対峙としている。恐れて母にすり寄る子虎の様子もいい。親子図は、鶏を題にした作でもみられる。子を守る親の存在感が主題か。


猛虎図小柄 吉岡因幡介 Yoshiokainabanosuke Kozuka

2020-06-09 | 鍔の歴史
猛虎図小柄 吉岡因幡介


猛虎図小柄 吉岡因幡介

 これも虎の川を渡る様子を描いたもので、先に紹介した虎の子渡しに通じるものであろう。赤銅魚子地高彫色絵。先に紹介した吉岡因幡介の鐔の虎は後藤に倣った風情があるも、この虎はちょっと様子が異なる。小柄の画面をいっぱいに描いているところが大らか。誰が考案したのであろうか詳らかでないのだが、虎の毛模様は縞であるものの豹のような斑紋の虎が描かれることがある。豹も虎の種と勘違いしたものか。

竹林に猛虎図鐔 吉岡因幡介 Inabanosuke Tsuba

2020-06-08 | 鍔の歴史
竹林に猛虎図鐔 吉岡因幡介


竹林に猛虎図鐔 吉岡因幡介

 吉岡因幡介家は徳川幕府に仕えた金工職。赤銅魚子地に高彫色絵を技法としており、正確な構成で精密な彫刻表現を専らとした。式正の拵に用いられるような家紋図金具を造るが、このような絵画的表現も間々見かける。しかも優れている。赤銅魚子地に澄明感があり、金による主題がくっきりと浮かび上がる。虎は高彫色絵象嵌。竹は金の平象嵌を施した後に魚子を打っている。それがゆえに竹の描写がシャープである。虎が活動を始める夕暮れ時、といった印象。

竹林に猛虎図鐔 小田直教 Naonori Tsuba

2020-06-06 | 鍔の歴史
竹林に猛虎図鐔 小田直教


竹林に猛虎図鐔 小田直教

 無銘だが薩摩金工小田直教と極められた鐔。鉄味がいい。鉄味がどうのこうのと言うのは判りにくいのだが、良く鍛えられているのであろうな、と感じる質感のことで、たくさんの作品を見ていないと判らない。図柄もいい。虎はふつう群をなさないのだが、一枚の鐔に三頭も描くと、縄張り争いの用にも見えて、それだけで迫力が増す。竹を噛む虎の図も好まれたようだ。竹という強靭な植物を噛み倒すところからのものであろうか。虎それぞれの表情も優れている。全体を鉄地高彫にし、目玉のみに金を入れている。暗闇に光る目玉。竹の背後には何も描かず、すうっと抜けるように感じられるのは闇であろうか。□

竹林に猛虎図鐔 薩摩 Satsuma Tsuba

2020-06-05 | 鍔の歴史
竹林に猛虎図鐔 薩摩


竹林に猛虎図鐔 薩摩

薩摩金工がこの図を得意としたことは先に紹介した。耳を竹で意匠し、これを踏み歩く猛虎の図であった。この鐔では湖水に竹林を背景とし、探るように竹を踏み歩く様子を描いている。精巧で精密な虎の姿ではないが迫りくるものがある。背をまるめて首を下にして鋭い目つき。獲物を狙う姿であろう。高彫、肉合彫、鋤彫、象嵌、様々な手法を用いている。薩摩の武士は、示現流という特殊な剣術を専らとしている。ごっつい刀を用いて一撃で断ち切る。そのため重い刀を扱えるように肉体改造行う。拵は簡素で、鐔は邪魔にならないよう刀身に比較して小振りなものを使う。それがためであろうか頗る人気が高い。

竹林に猛虎図鐔 常重 Tsuneshige Tsuba

2020-06-04 | 鍔の歴史
竹林に猛虎図鐔 常重


竹林に猛虎図鐔 常重

 常重は江戸中期の奈良派の金工。これも安親を手本として背景を竹林に変えた作だが、虎の表情がいい。何とも愛らしい。虎というと猫のように表現された作が多いのだが、その中でも猫に近い。こんな猫が家の近くにいるなあと思わせるそこが面白い。真鍮地を活かした奈良派の特徴的な作風。石目地の中にすっきりと浮かび上がってくる竹や虎の表情がいい。優れた作品だと思う。

龍虎図鐔 友善 Tomoyoshi Tsuba

2020-06-03 | 鍔の歴史
龍虎図鐔 友善


龍虎図鐔 友善

 水戸金工を代表する友善は龍神図で名高い。ここでは両者を鮮明に描き出して龍虎対峙の緊張感あふれる場面としている。虎の表情が、龍神との対比としてみてもひときわ厳しい。友善らしいといえばその通りだ。鐔の裏面に描かれている虎の尻や背中の様子を眺めているが、これも力があっていい。表の虎の鋭い目つきの連続と考えると、確かに友善らしい迫力がある。


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猛虎図鐔 玉川美清 Yoshikiyo Tsuba

2020-06-02 | 鍔の歴史
猛虎図鐔 玉川美清


猛虎図鐔 玉川美清

 これも絵画的だ。岩穴から出てきた虎は、自らを照らしている月に気付いて吠えかかる。櫃穴を洞穴に見立てる描法はままあるが、この鐔では、洞穴から這い出てくる様子を描いている。裏面の描写が、虎の尻の表情がいい。安親と比べる意味はないのだが、作者は、想いを新たな創造という方向で作品に挑んでいるのであろう。

猛虎図鐔 宗政

2020-06-01 | 鍔の歴史
猛虎図鐔 宗政


猛虎図鐔 宗政

 宗政の特徴は、ねっとりとした鉄の質感。黒く硬く艶のある鉄の質感を活かしているところにある。それが虎の描写にも現れている。全体の構成は安親に倣っているのだが、岩場をよじ登ろうとしている虎の姿が、表の印象と裏とではちょっと違う。きっとこのような様子だろうと考えたのだろうが、なんとも愛らしい。対して顔つきは凄い。鋭い爪の描写は安親にない。岩場の様子、木々、月を隠している雲の流れなども独特の情感を生み出しているようだ。虎の顔つきも厳しくていいが、鉄の質感があっての作品と言えるだろう。宗政は藤堂家の抱工。