鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

破れ扇図鍔 正阿弥金十郎 Kinjuro Tsuba

2014-12-02 | 鍔の歴史
破れ扇図鍔 正阿弥金十郎


破れ扇図鍔 正阿弥金十郎

 正阿弥派の真髄とでもいおうか、巧みな金銀布目象嵌により、優れた文様美を展開した作。背景は波。ここに投じられた扇が、水によって次第にほつれて破れてゆく様子が表現されている。布目象嵌の特質が効果的に採られた例である。象嵌の単体は、細筋状であったり面であったりと様々。壊れてゆく物の美観が、恐らく脱落するであろうという布目象嵌の特質を活かしている。

枯木に瓢透図鐔 古正阿弥 Ko-Shoami Tsuba

2014-12-01 | 鍔の歴史
枯木に瓢透図鐔 古正阿弥


枯木に瓢透図鐔 古正阿弥

 耳に枯れ枝を想わせる金の枯木象嵌を施し、秋の瓢箪棚にとり残された幾つかの実を陽に表現している。いいデザインである。具体的な物を心象表現しており、特に金の象嵌が活きている。古正阿弥と極められており、肥後金工に先立つ工の作と推考される。正阿弥派は捉えどころがないことから低く評価されがちだが、優れた感性を展開した流派であると、つくづくと感じる。手頃な価格であり、特に優良品と出会ったときはうれしい。□