鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

雪月花図鐔 壽矩 Toshinori Tsuba

2014-12-12 | 鍔の歴史
雪月花図鐔 壽矩


雪月花図鐔 壽矩

 幾つかの点で興味深い技術を利用している作例である。東龍斎派は、独特の画面構成と地造りで知られ、幕末に大流行して多くの金工が活躍している。この抑揚のある地造りがまず第一点。第二として、実は錆地漆が施されている。この鍔における質感はまさに雲。朧な三日月は銀の布目象嵌で、これまで説明してきた通りに霞むような朧な表現をこれによって行っている。加え、銀が滲み出ているのが判るだろうか、イオウなどと反応した銀が図柄からはみ出しているのである。これによってさらに朧な様子が際立ってくる。これが3つ目。布目象嵌の魅力の一つでもある。切羽台の素銅地の責金具は、刀身に鐔を合わせる際、鐔本体を傷めずに合わせることを目的で装着されている。その表面に施された朧な平象嵌あるいは金色絵の様子も作品の一部と考えて良いだろう。