鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

鷺図小柄 廉乗 Renjo Kozuka

2014-06-12 | 小柄
鷺図小柄 後藤廉乗


鷺図小柄 銘紋廉乗光晃(花押)

 後藤宗家十代廉乗の作であることを、同十六代光晃が極めたもの。古金工に通じるような古様式の表現で、雪の降り掛かる柳の枝に身を寄せる白鷺を描いている。赤銅魚子地高彫金銀色絵。色金として金を用いてはいるが、水墨画のような風合いがある。

海鳥図小柄 後藤光壽 Mistunobu Kozuka

2014-06-11 | 鍔の歴史
海鳥図小柄 後藤光壽


海鳥図小柄 銘後藤光壽(花押)

 後藤宗家十一代光壽の自身銘。カモメであろう、独特の翼の色合いを銀と赤銅で表しており、波の打ち付ける巌に翼を休めるその様子を、穏やかな風景として描いている。鳥を題に得た作品は比較的多いのだが、カモメの図はない。雪はないのだが、なんとなく冷たい空気のありようが感じられる作である。

巌上猛禽図小柄 岩本貞仲 Sadanaka Kozuka

2014-06-10 | 小柄
巌上猛禽図小柄 岩本貞仲


巌上猛禽図小柄 銘蟠龍軒岩本貞仲(花押)

 鉄地高彫に金象嵌。背景は河の流れであろうか荒波の打ち付ける巌にしっかりと爪を立て、獲物の到来を狙っている。水飛沫は銀の点象嵌で要所に散し、同様の銀象嵌で降り積もった雪を表わしており、寒々とした空気のありようが窺いとれる。爪の様子にも増して鋭い目つきが魅力である。貞仲は一宮長常の高弟。人物を題材に市井に見かける風俗を題に得た作品を多く見るが、このような自然の一場面を捉えた感動的な作品も遺している。

猛禽図縁頭 薩摩金工 Satsuma Fuchigashira

2014-06-09 | 縁頭
猛禽図縁頭 薩摩金工


猛禽図縁頭 無銘薩摩金工

 極肉高に彫り出された鷹。柏の樹の上で獲物を狙っている姿を頭に、縁には爪を隠して飛翔した様子を描いている。縁という金具を無視して表現しており迫力は常の数倍。彫口も高く鋭く精密で、特に嘴の表現がいい。

猛禽図鐔 石黒政美 Masayoshi Tsuba

2014-06-07 | 
猛禽図鐔 石黒政美


猛禽図鐔 銘石黒政美(花押)

 松上の鷹が狙っているのは雀ではなく、兎か鼠か、もっと大物ではないだろうか。それでも雀は鷹を恐れ、逃れようとしている。そんな自然の中の王者の目線を精巧な彫刻で表現している。石黒派の得意とする松上の猛禽を主題にしているのだが、雀を描くことによって、強さの印象は際立つ。朧銀地高彫に金銀素銅赤銅の色絵象嵌。

軍鶏図鐔 岩本昆寛 Konkan Tsuba

2014-06-06 | 
軍鶏図鐔 岩本昆寛


軍鶏図鐔 銘岩本昆寛(花押)

 鉄地高彫象嵌。雌雄の軍鶏が野に放たれている、その自然な姿を捉えている作。朧銀地で翼の色を出し、肉襞は素銅、足元を金で表し、背景は簡潔な描写。目から嘴にかけての表現が素晴らしいとはいうものの、喉の動き、翼の力強さ、体毛の描写、尾の柔らかさ、大地を掴んでいるかのような爪、それを支える脚、総てがいい。まさに生きているその生命感を巧みな肉取りで再現している。

鶫図縁頭 Fuchigashira

2014-06-03 | 縁頭
鶫図縁頭


鶫図縁頭 無銘

 岩本昆寛の同図を手本としたものであろう、畑におかれた鍬に翼を休める群れ鶫。ちょっと一休み、といったわずかな時間に、鶫に鍬をとられてしまった。追い立てることもなく、飛び去るのを待っている農夫の姿が想い浮かぶ。江戸時代には普通に見られた光景であったろうが、鶫は乱獲されて激減したそうだ。赤銅魚子地高彫色絵。□

菊に鳥図縁頭 銘石黒政守 Masamori Fuchigashira

2014-06-02 | 縁頭
菊に鳥図縁頭 石黒政守


菊に鳥図縁頭 銘石黒政守(花押)

 何の鳥か判断ができない。脱穀後の稲藁であろうか、あるいは菊を囲う藁であろうか、そこに残されたわずかな米粒を探しに集まる鳥。藁の隙間から菊が延び出て花を咲かせている。素敵な風景である。政守は二代目政常の若銘。朧銀地高彫色絵。

ススキに鶉図 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-06-01 | 小柄
ススキに鶉図 堀江興成


花鳥十二ヶ月図揃い小柄から 

ススキに鶉図 銘堀江興成

花…薄
花すすき草のたもとの露けさを
 すてて暮行く秋のつれなさ

鳥…鶉
人めさへいとどふかくさかれぬとや
 冬まつ霜にうずらなくらん

鶉も秋を感じさせる鳥。まるまると肥えた様子は冬の到来を暗示するのだが、ススキなどの陰に隠れて、鳴き声のみが聞こえてくる。特に意味を備えているというわけでもないのだが、この鳥も題に採られることが多い。