鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

貝に蟹図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2012-11-06 | 鍔の歴史
鍔の歴史 貝に蟹図鐔 古金工


貝に蟹図鐔 古金工

 こうして眺めてみると、殊のほか藻貝や水辺の風景に題をえた図が多いことに気付く。色合いが褐色を帯びた赤銅地、あるいは山銅か、魚子地を高彫にして金色絵を加えた手法。一見して時代の上がる風体だが、桃山頃であろう、新趣を加えながらも古風な味わいを残して面白い。元来は耳にも金の色絵が覆輪のように施されていて、拵に装着しては華やかであったと思われる。金の色絵も濃密で鮮やか。

鏃図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2012-11-05 | 鍔の歴史
鍔の歴史 鏃図目貫 古金工



鏃図目貫 古金工

 鋲の図であると思った。ところが、鏃の一種であると、読者から教えていただいた。矢の先端に装着して用いる武具の一種だが、実戦向きの、先端に鋭い刃が設けられた矢とは異なる。赤銅地容彫金色絵。
 このように、不明確な図柄が判明することはごく稀である。失われてしまった風習や事物について、調べる手立てと時間は少なく、もう少し勉強努力しなければいけないと思っております。読者の皆様からも、この図は違うんじゃないの?などと教えていただければ幸いです。

栗鼠図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2012-11-05 | 鍔の歴史
鍔の歴史 栗鼠図目貫 古金工


栗鼠図目貫 古金工

 赤銅地を極端な高彫に仕立て、濃密な金のうっとり色絵を施した、桃山時代らしい作。栗や団栗の描法は古典的。栗のイガの表現は、細い針の描写が難しいためであろうか、星状の鏨を打ち込んでそれらしい表情を生み出している。栗鼠が写実的な捉えかたを試みており、表情が愛らしい。背景の葉も肉高く葉脈は片切彫で線が整っている。

茘枝図目貫 古金工 Kokino Menuki

2012-11-02 | 鍔の歴史
鍔の歴史 茘枝図目貫 古金工



茘枝図目貫 古金工

 緑色のゴーヤーが成長して熟すと、未がオレンジ色に変り、ついには実が割れて中の赤い種が露出する。特に近年、この様子を御覧になっている方も多いかと思うが、十年数年ほど前、まだ関東でゴーヤーを栽培するという方も比較的少なかった頃、筆者は、茘枝と言われているこの図が本当にゴーヤーで良いものか、そして実が割れて種が現れる状態とはどのようなものなのか確認したくて自家栽培を試みたことがあった。夏の終わり頃、ようやく実ったゴーヤーが、見事に色付いて割れ、妙なる香りを漂わせて御近所の人々を驚かせたという記憶がある。まさにこの図の通りであった。
 この目貫も赤銅一色。先の作に比較して写実味も優れており、裏板の観察では前者のほうが古く、時代観の相違が分かる。

茘枝図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2012-11-01 | 鍔の歴史
鍔の歴史 茘枝図目貫 古金工



茘枝図目貫 古金工

 赤銅地容彫一色による茘枝(れいし)。茘枝とはこの図からも想像できるかと思うが、苦瓜、ゴーヤーのこと。この苦味は食欲増進にもつながり、栄養素が多いことから、古くは薬とされていた。まさに薬種図。この植物の場合にはなんら問題なく唐草文が下地として採られる。むしろ、真夏の陽を浴びて蔓の伸ばす様子は、まさに唐草の古典に通じる生命感を体現するものとして捉えられよう。上質の赤銅地を容彫にしただけだが、その表情は面白く味わい深い。