鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

筒井筒図縁頭 夏雄 Natsuo Fuchigashira

2012-11-21 | 
筒井筒図縁頭 夏雄

 
筒井筒図縁頭 銘 夏雄

 何度か紹介したことがあるのだが、何度みても心穏やかに楽しむことができる。癒しの材料として眺めてしまっては装剣小道具の作者は不満だろうが、そのような魅力充満の作品である。赤銅石目地高彫色絵。繊細な金平象嵌と緋色とも言える素銅の色調の妙味に溢れている。
 古典文学の一つ『伊勢物語』の一場面。男女間の心模様を描いた一連の和歌物語は、数百年の長い年月を経ても変わることがない。その文学を絵画表現した作例は様々な絵画工芸の分野において多々みられるも、わずか一寸強の画面に濃密なまでに心模様を展開している作品はどこにあるだろうか。高い彫刻技術があるがゆえの作であり、何度でもかまわない、夏雄の技と感性を確認したくなるのである。

お知らせ これまで十年以上、古美術雑誌『目の眼』において《装剣小道具の世界》と題して連載ページをいただき、刀剣に関わる金工芸術の魅力を紹介してきましたが、雑誌の内容を大きく変更する方針となり、連載が休止となりました。今後は、Web上にて同様に装剣金工作品の魅力を伝えてゆくつもりでおります。これまでは月刊雑誌という点から制約がありましたので、月一という紹介でしたが、今後は、掲載日を定めずに紹介して行く予定です。同様に、売品については価格を記載できなかったものを、Web上では価格表記も可能になりましたので、お求めをお考えの方にとっては、コレクションに直接つながる楽しみもあろうかと思います。このサイト同様に楽しんでいただければ幸いと考えております。

《鐔Tuba 装剣小道具の世界》