鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

卵倒形鐔 Tsuba

2011-06-12 | 鐔の歴史
鐔の歴史

 実用の時代の簡素で力強い道具としての鐔と、江戸時代に美術品して完成へと突き進む鐔とでは、存在理由が大きく異なる。とは言え、どちらも魅力的な存在である。
ところで、日本刀の鐔の歴史を説明することになると、古墳時代の直刀の鐔、卵倒形鐔にまで遡るのはどうだろう、適当であろうか。
 日本刀とは、我が国で創案され完成された彎刀、即ち反りのある刀のことであり、古墳時代の刀は大陸から伝播した文化の一部。更に突き詰めると、武士の台頭する平安時代から我が国の武器の歴史が始まると言い得る。
 それでも古墳時代の鐔を紹介する理由は、後に上杉拵に掛けられているような車透鐔があり、これに意匠が良く似ているからであろう。鐔を道具として、機能として考えると、このような形が基本ということなのであろうか。
 また、貴族が身に着ける儀式用の太刀も存在し、後にこれらが刀の意匠にも採り入れられている。我々がイメージする武士の姿やその時代とは遠く隔たりがあるも、やはり古墳時代から眺めなければならないのであろう。





卵倒形鐔 古墳時代

 素材は粗銅地を打ち叩いて車状に透かしを設け、金の鍍金を施している。このような銅に金鍍金の技法を金銅と呼んでいる。耳は打ち叩いて折り返すように高く仕立てている。腐蝕して緑青が生じ、欠落している部分もあるが、造り込みの様子は良く理解できる。写真例のような圭頭大刀などに用いられたものである。九三・五ミリ。


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