鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

車透図鐔  Tsuba

2011-06-11 | 鐔の歴史
車透図鐔  (鐔の歴史)



車透図鐔 黒蝋色塗鞘打刀拵

 上杉家伝来の打刀拵とその柄前である。この反り格好から、長寸の太刀が収められていたことが推測される。長い柄に大振りの金具、いずれも質素な造り込みで、藍鮫革着に皮巻柄。目貫も質素な鷹の羽図。鐔は鉄地丸形に放射状の透かしを施した、菊花透とも車透とも呼ばれる、この大太刀に相応しい作。透かしを施してあるのは重量を調子するためであろう。このような車透を意匠とした鐔の歴史はことのほか古い。
 先に紹介した小柄や目貫に描かれている拵とは雰囲気が異なる。上杉謙信の養子となった景勝もまた刀好きとみえ、名匠の手になる三十五腰を伝えているが、その中に鐔を設けない長寸刀の拵が何点か存在する。鐔を設けないという理由は、刀のバランスを考慮したもの。鐔とは、一般的に拳を保護することが第一の目的と考えられているようだが、本来は、命を預ける刀を、より使いやすくするためのものであることが、このような拵があることによって判明するのである。
 因みに、写真の質素な長柄の拵も上杉家三十五腰の一である。


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