鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

狐図鐔 壽松斎東意 Toui Tsuba

2019-10-28 | 鍔の歴史
狐図鐔 壽松斎東意


狐図鐔 壽松斎東意

 秋野に狐。狐は宝珠をくわえている。正確な図取り構成に精密な彫刻。奇麗な図柄だが凄みがある。艶のある毛並み。柔軟で跳躍力の高そうな身体の様子。漆黒の赤銅地は夜。月を銀で表し、その朧な様子は魚子地の中で自然味がある。「東意」は水戸金工元儔の号。つい先日長野県と山梨県の境目辺りに行ったとき、ふつうに人家の近くでも狐を見かけた。狐は、このようにしているのだと、改めて感じた。狐の図は謡曲の「釣狐」や罠にかかった狐の図が後藤家にある程度で、あまり見ることがない。月は夜を意味しているのであろうが、月の存在が絵画として強い印象を与えている。