goo blog サービス終了のお知らせ 

鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

宇治川合戦図鐔 後藤栄乗 Eijo Tsuba

2013-12-20 | 
宇治川合戦図鐔 後藤栄乗


宇治川合戦図鐔 後藤栄乗

 後藤宗家六代栄乗の作と極められた、桃山時代の特質が窺える鐔。大振りで人物も大振り。金銀を多用して華やかである点もこの時代の特徴。表は佐々木高綱と梶原景季による先陣争いを描いた図。裏面は同じ合戦で、木曽義仲の愛妻として知られる巴御前の、逃走の最中に追手を倒すという奮戦の姿を活写したもの。櫃穴が左右同じであることから、どちらを表にしても良い。巴御前の奮戦場面を拡大してあるのでご覧いただきたい。この馬は、重い甲冑を身にした二人の武者を背にして跳びはねていることになる。脚太くがっしりとした和産の馬での活躍に他ならない。


波に馬図鐔 Tsuba

2013-12-13 | 
波に馬図鐔 

波に馬図鐔

 波兎と同じ意味があるのであろう、波間を走り抜ける馬の様子を象徴的に表現している。襲い来るような波こそ敵軍であろう、その間隙を突いて攻撃する。こうして鑑賞すると、隠されているであろう意味への想いも広がり、図柄としても面白いのだが、実は波に馬の図は少ない。75ミリ。


波兎図鐔 遊洛斎赤文 Sekibun Tsuba

2013-12-11 | 
波兎図鐔 遊洛斎赤文


波兎図鐔 銘遊洛斎赤文

 波に兎は、波車と同様に剣術の背後にある真理を表現していると言われている。素早い動きを波と兎に擬えているのであろうか。鉄地に高彫、ごくわずかの金布目象嵌で両者を描いている。波飛沫が大きく宙に舞い、浜辺や磯を打ち付ける。兎はその間を走り抜けて行くのであろうか。83.3ミリ。

猩々留守模様図鐔 越前住記内 Kinai Tsuba

2013-12-03 | 
猩々留守模様図鐔 越前住記内


猩々留守模様図鐔 銘越前住記内作

 波に関わる図を紹介している。この鐔に描かれているのは、壺に波のかかる様子で、即ち、猩々の留守模様である。古代中国の伝説が元にある。目出度い時に謡われる謡曲にも採られている。壺は酒壺、波は猩々の棲む揚子江であったろうか。解題は別の機会にするが、素敵な構成である。陰陽を巧みに利用している。83.3ミリ。


波龍図鐔 崎陽山人若芝 Jakushi Tsuba

2013-12-02 | 
波龍図鐔 崎陽山人若芝


波龍図鐔 銘崎陽山人若芝

 若芝の龍神図。擦り付け象嵌とも呼ばれる独特の風合いの布目象嵌により、雲や霞などのぼかしを巧みに画中に採り入れた作風に特徴がみられる若芝。山水図を得意としたが、ここでは龍神を描いている。雲は金布目象嵌に処理しているのは良く分る。波は?というと、腐らかしによる地文でもある流文状の鍛え肌が判るであろうか。まさに渦巻く波を表現している。79.5ミリ。

波龍図鐔 加賀後藤 Kagagoto Tsuba

2013-12-01 | 
波龍図小柄


波龍図小柄

 造り込みが常に比して大振りな大小柄。桃山時代の影響が強く示された作で迫力がある。龍は竜巻を図像化したものと考えて良いだろう。海上に発生する竜巻は、まさに龍神が天に昇るように見える。近年多発している竜巻だが、古代にも当然被害を受けていた。風を巻き起こす龍は空を掻くようにして進むのだが、ここでは波の上をのし歩くような構成。波は古金工のようで地文風だが、龍神との見事な調和でここにも迫力が感じられる。



波龍図鐔 加賀後藤

 豪壮華麗な作風。太刀様式だが、打刀に備えた鐔。赤銅魚子地を背後に大きく揺れて崩れ落ちる波を文様風に描いている。

波龍図鐔 秋田住正阿弥 Akita‐Shoami Tsuba

2013-11-30 | 
波龍図鐔 秋田住正阿弥


波龍図鐔 銘秋田住正阿弥

 赤銅地高彫で流れるような波を掻き分けて姿を現した龍神を高彫金色絵の手法で彫り描いている。この構成になる波龍図は、実は長州鐔工にもみられる。もちろん他の金工にもあるのだが、この鐔では銘を見なければ長州鐔の作と見間違えてしまう出来。ただし、龍の顔つきや胴体の締まりなど仔細に観察すると異なる点は多々ある。正阿弥派は、京に興り、各地に移住して栄えている。多くは鉄地高彫や肉彫に金銀の布目象嵌を施すを得意としたが、時代が下っては正阿弥の特徴が薄れたこのような作も遺している。

波龍図鐔 静壽翁政知 Masatomo Tsuba

2013-11-29 | 
波龍図鐔 静壽翁政知


波龍図鐔 銘静壽翁政知

 長州鐔工には龍の図が頗る多い。これまで、正確で精巧な植物図や山水図鐔を紹介したことがあるも、龍の図も得意としていたようであり、意匠も様々。この鐔は、耳際に龍を這わせて平地部分に地透の手法で荒波を彫り出している。秀国の波図目貫を紹介したが、波の下の部分の表現は、波そのものを独立させて彫り描くと、大変に難しいと思う。この鐔では網目のように波を構成しているが、波の下の構成線も活かされており、優れた作品であることを改めて感じさせられる。政知は藩の御抱鐔工で、長州の中心的な岡田氏。この鐔には年紀もあり、特別の作であったと思われる。81.5ミリ。

波千鳥図大小鐔 福田政茂 Masashige Tsuba

2013-11-28 | 
波千鳥図大小鐔 福田政茂


波千鳥図大小鐔 銘福田政茂(花押)

 福田政茂は江戸後期の江戸金工。作品を多くは見ないが、この波も面白い。波頭が渦巻いている。騒がしいほどの波であり、今にも千鳥が呑み込まれそうな感じ。おそらく龍神の存在を暗示しているのであろう。この波の構成も巧みである。

寿老人図鐔 寶壽斎政景 Masakage Tsuba

2013-11-27 | 
寿老人図鐔 寶壽斎政景


寿老人図鐔 銘寶壽斎政景(花押)

 月を背後に地上を見下ろす寿老人。長寿を保ち、人それぞれの寿命を書きつけた巻物を手にしている図が多いも、ここでは宝珠を抱えている。波はゆったりと寄せて渦巻くように白波を立てている。月の明かりの飛沫が光る。東龍斎派の描く波である。画題そのものは、長寿を願う、あるいは長寿を祝って描かれた例が多いのだが、この鐔では殊に図柄構成が面白い。朧銀地高彫金色絵を主体とし、裏面を赤銅で斜に色を変えているのも洒落ている。69.4ミリ。□

浜千鳥に錨図鐔 壽明 Toshiaki Tsuba

2013-11-26 | 
浜千鳥に錨図鐔 壽明


浜千鳥に錨図鐔 銘壽明(花押)

 壽明もまた東龍斎清壽門下の名手である。干上がった浜辺に現れた錨、飛び交う千鳥。陽が傾いている穏やかな景色に取材した作品である。裏は一転して曇った空に荒海。激しく打ち付ける波、白波立って崩れ落ち飛沫が舞い散るその上を飛翔する千鳥。波の動きが特にいい。鉄地高彫象嵌。縦70ミリ。□


千鳥図鐔 一次 Kazutsugu Tsuba

2013-11-25 | 
千鳥図鐔 高橋一次


千鳥図鐔 銘高一次造之

 これも東龍斎風の作品だ。二重式の耳に構成して額縁効果を求めた特色ある表現。鉄地高彫象嵌。夕日を背に飛翔する千鳥、磯馴松の伸びやかな様子、ひたひたと砂浜を撫でるような穏やかな波。砂浜は真鍮地に貝殻を彫り出し、波は鉄地高彫。この波も東龍斎派の特質である。76.7ミリ。

波千鳥図鐔 龍青 Toshinori Tsuba

2013-11-24 | 
波千鳥図鐔 龍青(壽矩)


波千鳥図鐔 銘龍青(花押)

 なんて素敵なんだろう、東龍斎派の作品。的確な構図と彫口。鉄地に高彫金の象嵌のみ。雲も、千鳥も、夕日も、もちろん波も他流派とは異なっている。大きくうねるような波を中程に配し、手前には寄せ返す波によって乱れた波を描いている。頗る巧みだ。64.5ミリ。

波千鳥図鐔 後藤清乗 Seijo Tsuba

2013-11-23 | 
波千鳥図鐔 後藤清乗


波千鳥図鐔 銘後藤清乗(花押)

 江戸後期の後藤清乗の作。清乗家は後藤家の流れを汲むも、典型的後藤風とは離れた作品を専らとしている。この絵画風の鐔も色紙に描かれた墨絵を見ているようで、空気のありようも夕日も地の槌目を活かしているところがいい。砂浜に寄せては返す波は海を穏やかに印象付けている。83.8ミリ。

潮汲図鐔 信住 Nobusumi Tsuba

2013-11-22 | 
潮汲図鐔 信住


潮汲図鐔 銘應需信住作

 三日月が沈みかかる頃、浜辺に置かれた潮汲みの桶。砂浜を撫でるような波、沖の波も穏やかに、チチチと鳴く千鳥の声が風にのって伝わりくる。暗闇が迫って既に人気なく静寂に包まれている海辺の様子を印象深く彫り描いた作。上質の赤銅地を抑揚のある石目地に仕上げ、各々の要素を的確な構成と高彫に色絵で表現している。磯馴松を添景として構成が巧みである。信住なる金工については詳らかではないが、素敵な作品を遺しており、優れた技術者だと思う。66ミリ。□