今回も、デザートワインです。ピコリット種から造られます。このブドウは、雌雄異体で結実が悪く一時期忘れかけた品種です。効率が悪いワインではありますが。その魅力を記憶から消し去ることができなかったワインであると思っています。事実味わうと、静かに楽しい愉快な気の置けない人達とゆったりと時間を費やす場面を想定してしまいます。何もこのワインに限ったことではなく。まったりした空間を共有できる趣味志向を共感した時に登場するワインが甘口ワインであると思っています。香りは蜂蜜でコンポートをしたいくつかの果物を連想しました。リストのコメントにはフルーツとしか書いてありませんが。思い浮かんでは消え、浮かんでは消えして果物を特定ができず。蜂蜜でコンポートをした果物という印象だけが空回りして、それ以上のことを書けなかったのが事実です。今まで、蜂蜜で果物をコンポートした経験はありませんし、香りを嗅いだ経験もありません。想像の中で浮かんだ言葉が“蜂蜜でコンポートした”。このことだけが転げて出てきたようなものです。もうひとつはナッツの芳ばしい香りです。複雑で特定ができず、苦し紛れに一言で片づけました。しかし、適切なエイジングの後に、受ける印象は今の時点であまり深読みする必要がないと思いました。味わいは立体的な美しい酸とほろ苦さは、美しいと思う彫像を鑑賞しているような気分にさせてくれます。絶妙な展開を繰り広げる味わいは長い余韻へと続きます。
このワインはインポーターさんの終売に伴い、安く仕入れることができた売り切りワインです。マルヴァジ アイストリアーナから造られるワインに興味はあります。というよりフリウリの白ワインに最近は心惹かれる魅力を感じます。以前お客さに抜栓していただいた、ヴィエ ディ ロマンス社のマルヴァジア イストリアーナはトロピカルフルーツ、洋ナシの香りと特徴的な香りであると感じられたのが藤の花の香りです。生き生きとしてふっくらした香りや果実味に、とても滑らかな味わいであったと記憶しています。しかし、ヴィンテージの違いが反映しているのかもしれないがイ ピチェク社のマルヴァジアは酸がまだ固く、香りにまで酸が覆いかぶさっているように思えました。しかし、心配はいらないように思えます。2~3ヶ月くらいで殻から解かれるように柔らなく滑らかな酸と果実味が現れるような気がします。ワインショップで3000円を超えるワインは日常的だと思われないが。じっくりエイジングしてから味わいたいワインだと思います。
イタリアでは2003年は猛暑の年でしたが、このような年こそ造り手の真価が問われます。一般的には果実味が強く、酸の乏しい年といわれていますが。ポリツィアーノ社のヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノ2003はなかなか如何して、果実味だけが目立つワインではありません。骨格のしっかりした酸と優雅で滑らかなタンニン、味わいのバランスも良く。リリースされた当初はあいまいであったスパイシーな香りがジュニパーベリー、シナモンの香りであるとはっきり解るようになっています。そして、抜栓してから40分ほど経過してから酸に変化が現れ始めます。柔らかな温かさが燈るような表現しがたい、優しい温もりのある酸になり。それに引きずられようにタンニンにも、滑らかさにくっきりした輪郭が現れてきました。味わいも複雑さが増し、酔いも手伝って、いい塩梅に夢心地に。猛暑の年であっても、モンテプルチアーノの志向をしっかり見据えた造りは、お見事としか言えないと思いました。
一部の白ワインの掲載を保留にしていましたが。ようやく、すべてをリストに加えました。私の中にあるイタリアの白ワインはリリースをされた、その年に飲んでしまうが決まりのようになっていたからです。一時期の一部分のワインにはどうしようにもない苦みが全体のバランスを崩していたり、酸が急速に張りを失っていたり、魅力のないワインがありました。考え方を変えるのに、多少時間がかかりました。それは、セラーに寝かせて味わいの経過を記録する作業をどうしても経なければいけないと思っていたからです。古くはオリヴェートのように些細な造りのワインでも、瓶詰めしてから5年後に本来の飲み頃になるワインもありました。ソアーヴェにしかり、ヴェルディッキオにしてもリリースされてから僅かなコンディショニングで飲み始めてもよいワインはありますが。数年経過してさらに味わい深くなることもあります。造り手やヴィンテージの違いに問題はあります。保存さえ間違っていなければ、おおむねのワインは大丈夫です。
その中にあって今回はビジ社のオリヴィエート クラッシコ セッコ“トリッチェッラ”2006年です。約3年間セラーに寝かせていたワインです。香りはアプリコット、トロピカルフルーツ、缶詰のパイナップル(金属的な香りを伴っていたため)とかすかなハーブ。何といっても味わいに変化があります。とろっとした食感は1300円前後で売られているワインだとは思はないはずです。こなれた苦みに酸はちょっと心もない弱さがある部分が気にはなります。しかし今のところはバランスがよく保たれています。フルーティーなアフターテイストに心地よい余韻があります。比較的安価なワインをセラーで寝かせて熟成感を味わう、いいワインだと思います。