今回、抜栓したイタリアワインはカステル デル モンテ ネロ ディ トロイア “プエル アプリエ”(Castel del Monte Nero di Troia Puer Apuliae) 2003です。塩野七海著「フリードリッヒ2世の生涯」の中に、プーリアの少年(Puer Apuliae)と形容されているフリードリッヒ2世。塩野七海さんが感じている事と、エチケットの由来から付けられた名称が同じであるのは、なんだか意味もなく嬉しくなります。抜栓しコルクを確かめる、とワインに触れていた面に、何か風格のようなものを感じ、コルクがとても美しく感じました。ワインは、既に飲み頃を迎えています。
ワインの印象は、リストのコメントにあるとおりです。香りや味わいに奢り高ぶったところがありません。素っ気ないくらいです。とは言っても簡素な訳ではありません。コメントにあるように「幅広の木綿のリボンで束ねられたようなバランスの良さ」と書いてあり、まさにそのように感じました。テクスチャーに複雑な装飾は一切なく、構成要素の質感の高さを感じます。例えば、プラムの香りと味わいは、完熟し、梢から旅立つ瞬間をとらえたような感じです。その他に感じるフルーティーな香りと味わいも高級フルーツではないけれど、完璧な状態の完熟の瞬間を捉えているように感じました。柔らかな酸に好ましい苦みを伴った円熟したタンニン。円らな余韻が印象的でした。
フリードリッヒ2世の生涯の巻末には、塩野七海さんがフリードリッヒ2世の終焉の地である小さい丘にあるカステル フィオレンティーノの碑文までの行程が書かれてあります。その中の360度小麦の畑が広がっている丘の上の風景、とあります。まさに、味わっている最中に広がる風景は乾いた風の香りに広がる小麦畑。中間色の素っ気ない風景に広がる実り多い小麦が、風に揺られるままにザワザワと揺れる様が見えるような気がしました。