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イタリアワインかぶれの料理人

イタリアワインとコーヒーが大好きな料理人が、呆れるほど愉快に溢れるイタリアワインの魅力を伝えていきます。

ピノネロ “イル ラーロ ネロ”

2009-09-12 10:03:43 | 食・レシピ
オルトレポ パヴェーゼ ピノ ネロ“イル ラーロ”03は瓶の重さが920gもあります。ちなみに05は620gです。瓶熟が平年のワインより長くする必要性を、生産者からのメッセージとして伝わって来るような気がすることと、瓶の大きさに心惹かれ4年前に買い置きをしました。
2003年は猛暑で、夜になっても気温が下がらない地域が多く酸の少なさが懸念された年であると記憶をしているのですが。このワインに関しては、しっかりと酸があり果実味も豊かと言うより厳つい感じがします。しかし、今回の抜栓は3年ほど早かったように思えます。
酸はトゲトゲと角が立っていて、陰に隠れる様にタンニンがイジイジしているように感じます。焦がしたような果実味がしないのが救いですが。今はアンバランスな状態だけが目立ちました。数年後に嬉しくなるような状態になっているのか、酸の腰が抜けバランスを崩したままダメになってしますのかは解らないが。四隅を美しく折り畳んだ端正な酸と磨かれたようなまろやかなタンニン、果実味のグラデーションが鮮やかになっているように期待して3年間待ちたいと思います。

エトナ ロッソ “フェウド ディ メッツオ”

2009-09-03 10:36:20 | 食・レシピ
エトナ続きになります。テッレ ネーレ社のエトナ ロッソ “フェウド ディ メッツオ”2005を抜栓しました。完璧に開いているとは言い難いが楽しめる領域には入っていると思いました。スパイス(シナモン)とミネラルの複雑な香りが特徴的です。特にミネラリーな香りがエトナの特徴をよく表現していると思います。とはいっても頭の中を整理が出来ているほど数多くのネレッロを飲んで、固定したイメージをつかみ切れてはいませんが。
今回はミネラルの香りをどう表現すればいいのか言葉が見つけられずに、2週間あまりあれこれ思い悩んでいましたが。ようやく片隅にしまい忘れていた記憶が蘇りました。それは70年代の輸入盤のレコード ジャケットの香りです。油性インク特有の官能的な鉱物のような香りは、ビニールの袋から取り出すたびに鼻腔を刺激し、陰影の深い印刷はスピーカーから聞こえてくる音への想像力を否が応でも掻き立ててくれます。
しかし、インクの匂いはしても鉱物の香りは私の想像の中の香りであることは否めません。これを鉱物性の染料のある種の香りであるとすれば、エトナの特徴を私なりに説明が出来るのですが。表現がもどかしく気持ちがすっきりとせずにいます。
エトナが気に入っている理由は、酸の低めの展開の綺麗なワインに、動物的な香りや蒸れたような香りを私は避ける傾向があります。ここが好印象だからです。これから5年先10年先に洗練を重ねるごとに、この清楚な酸とタンニンがさらに輪郭をくっきりさせてくれることを期待しています。
ブログを書き上げた今日2日は、M社の試飲会があり、ネレッロ マスカレーゼ100%のパッソピッシャーロがありました。このワインは香りの印象がエトナに似ていますが。ヴァニラ、カモミラ、サクランボ、朝露をまとったプラムの香りとミネラル(鉛筆の芯)の香り、これは解り易いと思いました。印象が似てはいますが構成に違いがあり、これはこれでリストに入れたいと思いました。

大七 木桶 純米キモト

2009-07-09 09:17:57 | 食・レシピ

日本酒に生酛造りというのがあります。生酛造りと乳酸発酵というキーワードだけを記憶に日本酒好きのSさんに、このことを話していたことがあり。その事を覚えていただいて、大七酒造の木桶で醸した純米生酛をわざわざ持ってきて頂きました。私の記憶にある日本酒は、味わいに酸があったような気がしています。かれこれ、30年以上も真剣に飲んだ事がないので、日本酒事情がさっぱりわかりませんが。この大七は甘さの中におぼろな輪郭の酸が後口の最終章をクリアーに締めくくっています。若かりし頃教えられたうまい酒は、このような味がしていたような気がします。燗もいろいろ試してみましたが40度以上に温度を上げると、苦みがざらつくような気がしました。私は緩々としたダラ燗が好きなこともあり、人肌に温もった頃か、室温が美味しく頂けました。酔いを楽しみながら、思いついたことは、ヴェルディッキオに雰囲気が似ているなと思ったことです。それよりも、プロヴェンツァ社のルガーナがより似ているかなと考えながら。そう言えば、ソアーヴェを灘の剣菱に例えていたことを思い出し、懐かしく思いながら。あの頃の若気のいたれり、とピュアーな自分、そして苦さと温もり。器の中の風景が語り掛けてくれることは、ほろ苦い思い出を酔い心地の良いお酒が、楽しいことばかりを記憶の書庫から取り出してくれます。


リラの香りのラクリマ

2009-05-20 21:49:14 | 食・レシピ

つい先日、ピエルジョヴァンニ社のラクリマ モッロ ダルバ“ルイジーノ”を私の一存でお客様に抜栓して頂きました。札幌はライラックの花が咲く季節を迎えています。少し前のことなのですがライラックの花の香りと湿った土の香りが、ふと頭の中を過ぎっていきました。そのことがラクリマの印象とオーヴァーラップして、一気にもやもやした気分が晴れたような気にさせられました。それというのも、気持ちの中では気に入っているのだが。その事をうまく表現しきれずにいたからです。とても個性的なラクリマは好き嫌いが分かれるワインだと思います。タンニンと酸は中庸で、それでいて香りが個性的です。バランスが悪いと言えばそれまでですが。それを超えてなおかつ魅力的なワインだと私は思っています。

ラクリマの印象を整理している最中に、試飲会がありました。アルザスのジョスメイヤーです。リースリングのレ ピエレとヘングストはお約束の灯油の香りがします。この香りのよさはいまだ理解が出来ていないのでコメントのしようがありませんが。しかし、表現力の豊かさはラクリマより素晴らしいものがあります。試飲している最中に思ったことは、ラクリマの個性と、このリースリングの個性は似た者同士のような匂いがしたことです。

ジョスメイヤーの試飲会に出されたトラミネールは、私の知識の中で理解できたのですが。ピノ グリはとび抜けた印象を受けました。この会に関わっていたS氏の「お肉料理に合わせたい」の一言は確かにそう思いました。菩提樹の蜂蜜、白桃、ハーブの芳醇でグミのような弾力のある香り。洗練された酸に苦みは滑らかなタンニンのような印象があり、味わいは構成が豊かで骨格のしっかりしたボデイをしています。スパイシーなアクセントを添えられた優雅な果実味のアフターテイストにゆったり長い余韻が続きます。それなりのプライスが付いているので、簡単には手を出せないかもしれないが。知っておくべきワインだと思いました。


増毛のシードル

2009-05-09 21:52:52 | 食・レシピ

ゴールデン ウイークの期間中に、増毛にシードルを買いに行きました。場所は暑寒別岳登山口の手前にある、増毛フルーツワイナリーです。ここは、ネットである食べ物を探している最中に増毛の観光案内から見つけました。増毛町産のリンゴだけで造っているそうです。製造に際しては香料や着色料、補糖もせずに、タンク内発酵の炭酸だけでガスの添加もしていなそうです。

原料は今のところは町内のリンゴをセレクトしているそうですが。ワイナリーの隣には自社畑を造成しています。珍しいのは、今は流通していないリンゴをチョイスしているところにあります。増毛には今も昔のリンゴの木が残っているそうです、どうもそういった地域事情を大切にしながらのシードル造りを目指しているようです。この古い時代の苗は収穫までに長い時間がかかります。現在市場に出回るリンゴはほとんどが矮性台と言って木が大きく育てなくても収穫ができるタイプになっています。それは、木を低くして風の影響を低くする、収穫の利便性、新しい品種への早期の交代を考えているからです。

低アルコール飲料のワインもいいのだが、北海道という地理的条件を考えるとシードルも選択の一部であると思っています。今のところはニッカのシードル(製造は私が生まれた弘前)をメニューに入れています。私はイタリアワインと、同じくらいの比重で北海道の気候風土で造られていることを大事にしたワインをリストに載せたいと思う気持ちと、同じことをシードルについても考えています。そのため、今回ドライブがてら見に行きました。なにより、現場を見て肌で感じることが一番であると思っているからです。

シードルはとてもナチュラルな味わいをしています。ひとひねりしていない部分を複雑さに掛けていると表現するか。クリアーで無垢な味わいであると表現するのは、それぞれであるとも思います。何より、湧水のようにゆるりゆるりと湧き上がるような印象の味わいと林檎そのものもの風味があり。これからどう変わってゆくのか楽しみでもあります。