飲み頃を迎えたVino Nobile di Montepulciano Asinoneはその素顔をようやく見せてくれました。以前に抜栓した時は後悔の念にかられ、まだ見ることができないアジノーネに想像力は膨らむばかりでした。
想像していたことは間違いではありませんでした。鉛筆の芯を連れ添うようなスパイスの香りは緻密で抜きんでた優雅さがあり、森の黒い果実、カカオ、ミネラルの華やかな香りが取り巻いているようです。ぱっちりした輪郭の酸は柔らかさがほのぼのと薫るようです。タンニンはシルクのような滑らかさがあり、温かさが微笑むような果実味と相まって穏やかさを際立たせています。味わいの構成に感じられ調和のよい細密さは冷たさが無く、シンプルで明快に美味しいと感じさせてくれます。しかし、このシンプルさには複雑な迂路を潜り抜けた、複雑さが背景にあることは十二分にありながら、そのことを微塵も感じさせない。だからこそ気取りのない味わいと奥ゆかしいアフターテイストがとても心地よく感じられます。
何やら世の中をあえて難しく、そして曲げておいて直線に見せかけるつわもの達に、ぐちゃぐちゃにする楽しさより絡まった糸を解す楽しさ、この単純で明快な美味しさをワインが語っているようでした。
新しくワインリストに加えられたワイン、完熟し貴腐菌が付いたアルバーナ種から造られる甘口ワインです。以前から天候に恵まれた年に造られたワインをリストアップしようと考え、サンプルをいくつか候補に挙げていたのですが。扱いのあるワインが少なく、試飲できたのはこれだけでした。もうひとつ、積極的に探さなかったのは“アッロッコ”が貴腐ワインであり、それだけの理由であったことも事実です。
柑橘系や白い花を連想させる蜂蜜の香り、エニシダのような青い葉の香りもあります。しかし、甘口ワイン特有の濃厚な甘い香りは爽やかさを感じさせてくれます。わずかな酸と心地よいほろ苦さはひたひたとゆったりした広がりがあり、長い余韻と、名残にヴァニラの香りがします。
このワインは、輸入がなくなりとても残念なワインです。しかし、購入した時はシャボシャボのワインでしたが。エイジングをすることで、その真価を発揮してくれるで、あろう期待をしていたワインです。
色は黄色を帯びた若い琥珀色です。記憶にあるリリースされてから間もなく飲んだ時の色と比較して、熟成を感じさせてくれる色になっています。2006年は天候に恵まれた年です。それと、瓶の形状が変更された年でもあります。そのことは、造りを変えた可能性があります。変えましたというアナウンスが無かったので、今となっては確認のしようがありません。しかし、否が応でも期待感が高まります。トラミネールらしいライチとバラの無限大に押し広がる香りと、南国の果実の一瞬が心躍る香りがあります。輪郭をすっきりとシャープに描かれた柔らかな酸、張りのある艶やかな果実味はアフターテイストにも鮮明に軌跡を描き、まどろみの中に引き寄せられる様な余韻が続きます。
ワインを楽しみながら感じたことは、アッボッカート(Abboccato)と言う用語が見当たらなくなったような気がしたことです。口当たりのいい、甘めのという意味です。以前は意識をして飲んでいなかったので、漠然とオリヴェートとしか思い浮かびません。それにしても、ドライなのに果実味がよいので甘めに感じる白ワインはイタリアならではの特徴だと思います。
新しくワインリストに加えられた赤ワインです。今年の春に行われた展示会で一目ぼれしたワインです。産地はラツィオ州との県境、モレリーノ ディ スカンサーノとモンテプルチアーノの間に挟まれた場所に位置をしています。だからと言って単純に中間的な性格をしているわけではなく。これほどほっくりした酸のサンジョヴェーゼは、私の記憶にはありません。そこが気にいりリストアップを決めました。
桑の実、カシス、アイリスの輪郭のくっきりした素朴で豊かな香りを感じます。基本的な香りはサンジョヴェーゼだと思いますが。桑の実の要素が加わると香りと味わいがどうしてもゴツクなる傾向があると私は思っています。しかし、このサンジョヴェーゼに関しては、森の黒い果実そのままのイメージを感じさせてくれます。複雑で純朴な味わい、黒砂糖から甘さを除いたミネラリーなアフターテイストは、このワインの特徴だと思います。