井原慎一郎

ドラフト5位とあまり騒がれる事なく、ヤクルトアトムズに入団、その後スワロースと名称は変われど、昭和45年から59年までの15年間、同チームのみに在籍した右腕投手です。先発、中継ぎ、抑えと色々な役目を果たし、それぞれ一応の結果を残しているものの、もう一つインパクトには欠けている投手と言っていいかと思います。公称173cm,85kgと小柄、ずんぐりとした体躯ながらも、オーバースローから投じられる球の速さには、非常に見るものがありました。通算42勝、15セーブと成績的には物足りない為、その球速までが過小評価されている様な気がしますが、球の速さのみに拘れば、昭和50年代中頃には、同チーム、球速のやや衰えたエース松岡弘より速く、リーグでも屈指の速さを誇っていたと思います。その体型の為か、腰の回転にはやや鈍さが感じられ、又肘もあまり撓るタイプではなく、所謂伸びがあったり、切れ味を感じる球筋ではありませんでした。しかし球自体は、非常に重く剛球投手と言っていいかと思います。現役の投手では阪神タイガースの久保田智之投手が、腰の捻りこそ違うものの、イメージ的には近い様な気がします。速球投手を語る時、実績や印象に残るシーンを重視しがちですが、隠れた投手もいる事を知って欲しいものです。