大阪と神戸の間は鉄道が3路線も走っていてとっても便利だ。
海岸側から順に阪神電車、JR神戸線、阪急神戸線が走っている。
この3路線、乗る人の社会的層がまったく異なるという特長があることは多くの関西人の知るところである。
阪神電車は労働者。
JR神戸線は一般人。
阪急神戸線はハイソサエティ。
と言う具合に。
だからといって関西人は首都圏の人たちのように埼玉県を「ださいたま」なんて呼び方をするようなことはない。
つまり阪神電車が海辺の工業地帯近くを走っていて労働者や甲子園球場に向かうタイガースファンが多く利用していることを見下げた心で言っているなんてことは全くない。
親しみを込めて「労働者の路線」と呼んでいるのだ。
尤も、阪急電車のハイソサエティもある意味事実で、この路線の沿線には有名なお嬢様私学高が点在していたり、関西でも屈指の高級住宅街芦屋の、それも一番高級な地域を走っているのがこの路線でもある。
ターミナルになっている梅田の百貨店にしても阪神百貨店は「イカ焼き」と「タイガースコーナー」で有名だが、要はそれだけとも言えなくはなく、一方阪急百貨店は店の本質はどうであれ、関西では東の三越に匹敵する高ブランドでもある。(関西での三越ブランドは阪神百貨店はおろか京阪百貨店以下であることを関東の人に教えると大抵ビックリする。つまり丸井と似たり寄ったり。)
この阪神間を走る阪急電車に西宮北口という乗換駅があり、ここから北に向かって宝塚まで走っている阪急今津線もまた、ある意味上品な住宅街の中を通っている。
沿線には関西学院大学や仁川学園などの大学高校、宝塚市役所、図書館などの官庁関係。
そしてなによりも六甲山の東側の丘に広がる閑静な住宅街があり、終点の宝塚は歌劇ファンの聖地もある。
この阪急今津線が舞台の小説「阪急電車」はグランドホテル形式の傑作ドラマだった。
今津線に乗り合わせる様々な人たちの人生模様が軽快なタッチで、しかしピリッとスパイスの利いた奥深さで描かれており、読み始めたらグイグイ引き込まれてしまい最後まで一気に読み終わってしままった。
ここ最近まれに見ぬ面白い小説であったわけだ。
本の帯に記されているように宝塚から西宮北口までの15分間にこれだけの物語があると思うとなんとなく楽しくなってくる。
著者の観察眼も素晴らしいがそのアイデアにも脱帽だ。
それぞれの小さな物語の続きを読みたいという読者の気持ちにも心憎いような応え方をしていて、満足感があると同時に読後の爽やかさに、さらに先を読みたくなる欲求に駆られてしまう魅力がある。
タイトルに魅かれて買ってしまったが、買って損などまったくなく、むしろ出会えて良かった小説だった。
なお、本書は東京出張の移動中に読んでいたため実際に乗っているのが京急や都営地下鉄であるにも関わらず心の中は「阪急電車今津線」という不可思議にな感覚も経験できて一層面白かった。
~「阪急電車」有川浩著 光文社刊~
海岸側から順に阪神電車、JR神戸線、阪急神戸線が走っている。
この3路線、乗る人の社会的層がまったく異なるという特長があることは多くの関西人の知るところである。
阪神電車は労働者。
JR神戸線は一般人。
阪急神戸線はハイソサエティ。
と言う具合に。
だからといって関西人は首都圏の人たちのように埼玉県を「ださいたま」なんて呼び方をするようなことはない。
つまり阪神電車が海辺の工業地帯近くを走っていて労働者や甲子園球場に向かうタイガースファンが多く利用していることを見下げた心で言っているなんてことは全くない。
親しみを込めて「労働者の路線」と呼んでいるのだ。
尤も、阪急電車のハイソサエティもある意味事実で、この路線の沿線には有名なお嬢様私学高が点在していたり、関西でも屈指の高級住宅街芦屋の、それも一番高級な地域を走っているのがこの路線でもある。
ターミナルになっている梅田の百貨店にしても阪神百貨店は「イカ焼き」と「タイガースコーナー」で有名だが、要はそれだけとも言えなくはなく、一方阪急百貨店は店の本質はどうであれ、関西では東の三越に匹敵する高ブランドでもある。(関西での三越ブランドは阪神百貨店はおろか京阪百貨店以下であることを関東の人に教えると大抵ビックリする。つまり丸井と似たり寄ったり。)
この阪神間を走る阪急電車に西宮北口という乗換駅があり、ここから北に向かって宝塚まで走っている阪急今津線もまた、ある意味上品な住宅街の中を通っている。
沿線には関西学院大学や仁川学園などの大学高校、宝塚市役所、図書館などの官庁関係。
そしてなによりも六甲山の東側の丘に広がる閑静な住宅街があり、終点の宝塚は歌劇ファンの聖地もある。
この阪急今津線が舞台の小説「阪急電車」はグランドホテル形式の傑作ドラマだった。
今津線に乗り合わせる様々な人たちの人生模様が軽快なタッチで、しかしピリッとスパイスの利いた奥深さで描かれており、読み始めたらグイグイ引き込まれてしまい最後まで一気に読み終わってしままった。
ここ最近まれに見ぬ面白い小説であったわけだ。
本の帯に記されているように宝塚から西宮北口までの15分間にこれだけの物語があると思うとなんとなく楽しくなってくる。
著者の観察眼も素晴らしいがそのアイデアにも脱帽だ。
それぞれの小さな物語の続きを読みたいという読者の気持ちにも心憎いような応え方をしていて、満足感があると同時に読後の爽やかさに、さらに先を読みたくなる欲求に駆られてしまう魅力がある。
タイトルに魅かれて買ってしまったが、買って損などまったくなく、むしろ出会えて良かった小説だった。
なお、本書は東京出張の移動中に読んでいたため実際に乗っているのが京急や都営地下鉄であるにも関わらず心の中は「阪急電車今津線」という不可思議にな感覚も経験できて一層面白かった。
~「阪急電車」有川浩著 光文社刊~