とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた

2008年04月06日 15時11分33秒 | 書評
学生の頃、週刊朝日のデキゴトロジーの記事で、
「中学生の時に時代劇が大好きで、以後高校、大学と大好きなテレビも我慢して日本史を猛烈に勉強した大学の講師が改めて時代劇を見てみたら、至るところウソだらけでちっとも楽しめなくなってしまった。」
という話が紹介されていたことがある。
それを読んだ私は、
「ふ~ん、そういう人もいるもんだ」
と感心していたのだが、まさか自分がそういう人になってしまうとは思わなかった。

結論!
時代劇はウソばっかり。

話題のNHK大河ドラマ「篤姫」がまるでホームドラマなことは、それこそあちこちの雑誌に取り上げられ、それがまたまた高視聴率に繋がっているのは知られている。
篤姫がピョンコピョンコ跳ね回るようなお転婆姫で、篤姫ならぬあんみつ姫。
時たま海や山に向かって「バカヤロ~!」的な叫び声をあげるのは、青春ドラマの感さえある。
NHKの大河ドラマがこれだから、他の時代劇は言うに及ばず。
NHKの木曜時代劇もなんだかおかしいし、時々放送されるテレビ大阪の長時間時代劇なんか、サスペンス2時間ドラマとたいして変わらない。
里見浩太朗の「水戸黄門」に至っては、はっきり言ってひょうきん族のコントの様相だ。

時代劇と実際の江戸時代との違いを解説した、ちょっと楽しい時代考証解説本が古川愛哲著「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」。
もっとも、この古川さん自身が映画関係者なの、この本の中身もどれだけ本当なのか疑いたくなる部分も少なくないが、ともかく楽しい。

例えば、帯にも書かれているように鬼平こと長谷川平蔵はワーキンプア。
大奥の管理維持費用は年間600億円。
大工の賃金は現代の価格で約20000円。
エンゲル係数の非常に高い生活に、当たり前の古着の流通などなどなど。
ホントに面白い。
で、最も印象に残ったのは商家の継承システム。
現代や武家と違って女系が一般的だったこと。
武士と違って商家は本当の意味で実力を争う市場経済のまっただ中に立たされているので、店のかじ取りはアホぼんでは勤まらない。
そこでアホぼんの継承を避けるために、優秀な社員を選んで娘の婿にして、息子たちには生活に困らない程度の金を与え隠居させる。
それでもアホぼんが出てきたら座敷牢に閉じこめてしまえ、なんていうルールまであったというのだから驚きだ。
三越百貨店は1673年の創業で現当主は51代目。
このうち男子の継承は12代しかなく、いかに商家が合理的に生き残りを図っていたかが窺える。
ともかく、先に述べたようにどこまで真実なのか疑ってみる必要はあるものの、かなりお勧め、歴史エンターテイメントな一冊だった。

~「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」古川愛哲著 講談社+α文庫刊~



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