とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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ミス・ポター

2007年09月17日 20時48分06秒 | 映画評論
映画を観ると何だか知らないが勇気づけられることがある。
とりわけ幾人かの女優さんが主演をしてい映画では、私はその女優さんの熱演からエネルギーを貰うことがあるようだ。

映画「ミス・ポター」はピーターラビットの作者ビアトリクス・ポターの伝記映画だ。

物語は32歳になっても独身である主人公のミス・ポターが出版社に子供の頃から書き続けていたイラストを題材にした絵本を売り込むシーンから始まる。
その絵本こそ、現在にまで多くのファンを掴んで放さないピーターラビットの最初の物語なのだ。

32歳独身などというと今ではさして珍しいことではないが、20世紀の初めでは英国も日本と同様、世間様に申し訳ないようなことだったらしい。
言葉は悪いが、「いき遅れ」のミス・ポターが子供の頃から浸ってきた空想の世界をイラストにより具現化し、「売れて10冊程度だろう」と陰で言われて出版した絵本が空前の大ヒットに発展するのは、ある面から見ると一種のサクセスストーリーだろう。

このサクセスストーリーの私が勇気づけられたのかというと、それは違う。

何かを成し遂げよう、そして人を愛し、愛するという人には生のエネルギーが溢れていて、ミス・ポターからもそのエネルギーが溢れんばかりに輝き出ていたのだ。
そう私たち観客に感じさせるレニー・セルウェガーの名演はいつも私の心を打ちつづけるのだ。

思えば「ブリジット・ジョーンズの日記」では、いわゆるラブコメの主人公を演じ、「シカゴ」では少し足りない系の悪女を演じ、「シンデレラマン」では控えめな妻女を演じていた。
そしてどの役柄からもオーラのようにエネルギーが滲み出てきているのだ。

決して美人ではない。
しかし、エネルギッシュな要素が彼女の最大の魅力なのだろう。

それにしても「ミス・ポター」は大作映画ではないが、こじんまりとした洒落た映画だった。
まともな伝記映画ではなく、絵本の中のキャラクターたちが粋に動くイマジネーション溢れる作品で、そういうちょっとしたエッセンスが、物語の中の大きなうねりも悲壮感を打ち消してくれる手助けをしてくれているのだろう。

リアルでおどろどろしいCGに飽き飽きしている映画ファンにはオススメの一作であることは間違いない。

~「ミス・ポター」2007年 角川映画配給~