人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

フランクフルト歌劇場管弦楽団首席奏者サラ・ルヴィオン「フルート・リサイタル」を聴く

2015年05月21日 07時05分47秒 | 日記

21日(木).わが家に来てから224日目を迎え,メッカの方向を向いてお祈りするモコタロです 

 

          

            お祈りじゃなくて キックボクシングだってば・・・・古ッ!

 

  閑話休題  

 

昨夕,大手町の日経ホールでサラ・ルヴィオン「フルート・リサイタル」を聴きました これは第436回日経ミューズサロンとして開かれた公演です.プログラムは①モーツアルト「フルート・ソナタ第9番ハ長調K.14」,②ライネッケ「フルート・ソナタ ホ短調”ウンディーネ”」,③ゴーベール「フルート・ソナタ第3番」,④プーランク「フルート・ソナタ」,⑤ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」,⑥ヴィドール「フルートとピアノのための組曲」 ピアノ伴奏は村田千佳です

サラ・ルヴィオンはフランス生まれ.パリ国立高等音楽院を最優秀で卒業,2001年には神戸国際フルートコンクールで第1位,同年ジュネーヴ国際コンクールで第3位に入賞しています 2002年からフランクフルト歌劇場管弦楽団の首席フルート奏者を務めています

サラ・ルヴィオンの演奏を聴くのは今回が2度目です.初めて聴いたのは昨年7月27日にフェスタサマーミューザの一環として開かれた宮本文昭指揮東京シティ・フィルの演奏会で,モーツアルトの「フルート協奏曲第2番」を演奏しました あの時の演奏が良かったので今回聴こうと思ったのです

自席は1階G列20番,センターブロック,前から7列目の右通路側です.会場はかなり埋まっている感じです このホールは椅子だけでなく机が付いているので,正直言って把握しずらいのです

 

          

 

拍手の中,サラがグリーン系のドレス,ピアノの村田千佳がベージュ系の上下で登場します 1曲目のモーツアルト「フルート・ソナタ第9番K.14」は,もともとヴァイオリンとピアノのためのソナタをフルートで演奏するものです 当時はピアノ・ソナタにヴァイオリンの伴奏を付けたスタイルで,主役はあくまでもピアノだったのです.その意味では村田千佳の存在は大きいと言えます この曲は3つの楽章から成りますが,とても8歳~9歳の時に作曲したとは思えません 第1楽章が終ったところで拍手が起こりました.フライングです

2曲目はライネッケの「フルート・ソナタ ホ短調”ウンディーネ”」です.ライネッケは19世紀後半に生きたピアニスト・作曲家です この曲は1811年に出版されたフリードリヒ・ド・ラ・モット・フーケの「ウンディーネ(水の精)」の物語に触発されて作曲したものです

拍手の中,再度二人が登場し,まさに演奏に入ろうとしている時,私の右後方席の後期高齢者の男性二人組のおしゃべりが止まりません これだから年寄りは嫌われるのです.「私は会社を引退して,悠々自適の人生を送っています.自宅で盆栽をいじっていても飽きるので,たまにはコンサートでも聴いてみようかと思って来てみました」と顔に書いてあります

第1楽章「アレグロ」が終わった瞬間,会場のどこかでオルゴールのようなケータイの着信音が鳴り出しました 一難去ってまた一難です.まだまだいますね.こういう常識知らずが 困ったものです.二人は何ごともなかったかのように演奏を続行しました.大人の対応ですね

3曲目はゴーベールの「フルート・ソナタ第3番」です.ゴーベールは19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスのフルート奏者です.この曲を一言で言えば「流麗な音の流れ」です

 

          

 

プログラム後半の最初はプーランクの「フルート・ソナタ」です.フルート・ソナタと言えば,プーランクとプロコフィエフが頭に浮かびます この曲は1956年12月から57年3月の間に書かれ,同年6月にジャン=ピエール・ランパルのフルートとプーランク自身のピアノによって初演されました ジャン=ピエール・ランパルと言えば,その昔,東京文化会館でフルート・リサイタルを聴いたことがあります.今目の前で演奏されている音楽は本当に一人で演奏しているのか,と疑問に思うほど超絶技巧曲を物ともせず軽々と演奏していたのを思い出します

この曲ほどフランス情緒たっぷりの曲もないかもしれません.二人の演奏者は明るく,軽快に,ときにアンニュイに演奏,会場一杯の拍手を受けました

次もフランスもの.ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」です.フランス印象派音楽の幕開けを告げるメルクマールとなる作品です クラシック音楽史を塗り替えた作曲家の一人としてドビュッシーの名前を挙げる人も少なくありません 午睡から覚めた牧神のけだるい気分をフルートが鮮やかに描き出します

最後はヴィドールの「フルートとピアノのための組曲」です.ヴィドールは19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスのオルガ二スト・作曲家です.第1楽章は流麗な音楽が続きます.4つの曲から成りますが,ロマン的な曲想です

二人はアンコールにレイナルド・アーンの「ロマンス」を,次に「浜辺の歌」を演奏し喝さいを浴びました 先ほどの後期高齢者二人組は,「浜辺の歌」の演奏中もしきりにおしゃべりに興じており,音楽を聴く気など全くないようでした 現役の時は常識をわきまえたそれなりの人たちだったのでしょうが,”卒業”したら傍若無人を絵に描いたような老人になってしまったようです ああいう人にだけはなりたくないですね

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アリス=沙良・オットのピアノ・リサイタルを聴く~素足で弾く意味は?

2015年05月20日 07時01分28秒 | 日記

20日(水).わが家に来てから223日目を迎え,白ウサちゃんの新しい友達との関係を問い詰めるモコタロです 

 

          

             それで 君たち どういうきっかけで知り合ったわけ?

 

  閑話休題  

 

昨夕,初台の東京オペラシティコンサートホールで,アリス=沙良・オットのピアノ・リサイタルを聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第17番ニ短調”テンペスト”」,②J.S.バッハ「幻想曲とフーガ・イ短調BWV944」,③同・ブゾーニ編「シャコンヌ」,④リスト「愛の夢第2番ホ長調」,⑤同「愛の夢第3番変イ長調」,⑥同「パガニーニ大練習曲」です

 

          

 

自席は1階9列2番,左ブロック左から2つ目.会場はほぼ満席です 拍手の中アリスが鮮やかなブルーのドレスで登場,ピアノに向かいます ロング・ドレスなので足元が見えませんが,彼女のトレード・マークの素足なのでしょう ここでしまった!と思いました この席からは右斜め前の人が邪魔になってアリスの姿がまったく見えません もっと後方の席で良いからセンターに近い席にすべきだったと反省しました

1曲目はベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第17番」です.このソナタは「テンペスト」という愛称が付けられていますが,これは弟子のシントラーからこの曲について尋ねられた時に,「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と答えたと言われていることが,愛称の由来となっています

アリスはゆったりしたテンポで演奏を進めます.一音一音慈しむように丁寧に音を紡いでいきます この曲の第3楽章は一度聴いたら忘れられない曲想です この楽章でもアリスは少しも慌てずゆったりしたテンポで堂々たる音楽を展開します

2曲目はバッハの「幻想曲とフーガ イ短調」です.冒頭10小節だけ幻想曲が演奏され,次いで息の長いフーガが続きます アリスによる推進力のある演奏で聴くと,バッハのエネルギーのようなものを感じます

続いてバッハ作曲ブゾーニ編曲による「シャコンヌ」の演奏に入ります この曲はバッハの傑作「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004」の終曲である長大な「シャコンヌ」をイタリア出身の作曲家・ブゾーニが編曲したものです

普段ヴァイオリンで聴きなれている曲ですが,アリスのピアノで聴くこの曲は深く,力強い音楽であることを再認識させられます 時にペダルを踏む「ドン・ドン」という音を聴くに及んで,なぜアリスは靴を履かずに素足で演奏するのか,ということを考えました 

昨日のブログでご紹介した『世界最高のクラシック』の「文庫版のためのあとがきに代えて」の中で,著者の許光俊氏は次のように書いています

「たいへん残念なことに,21世紀においてクラシック音楽界は加速度的に芸能化している もちろん,そうした一面がクラシック音楽にもあるのは今に始まったことではない.だが,ミニスカート姿で客を驚かせたり,裸足で弾いたり,オオカミと仲が良かったり,あんなこんなの臆面もないキャラクター作りでベストセラーを作り出そうとする魂胆には,心底うんざりさせられる ものごとには限度というものがあろう.恥を知れ,と関係者には言いたい

補足すれば,「ミニスカート姿で・・・」というのはユジャ・ワンだし,「裸足で弾いたり・・・」はアリス=沙良・オットだし,「オオカミと仲が良かったり」はエレーヌ・グリモーで,いずれも人気の女性ピアニストです さて,許氏の言い分を頭の片隅に置きつつ考えてみると,あれ程大きな音を立ててペダルを踏み込んでいるということは相当の力が入っているはず 例えば他のピアニストが履いているようなステージ用の高いヒールの靴を履いて同じ演奏をしたら,ヒールが折れてしまうのではないか 彼女のピアノ奏法には素足で直にペダルを踏むことが不可欠なのかも知れない したがって,まだ世に出て間もない頃は他者との差別化を図るために素足で演奏していたかも知れないけれど,世界を股にかけて演奏旅行に明け暮れる現在のアリスにとっては,その方面は卒業しているのではないか,と思うのです それにしても,これからの季節は良いけれど,冬は床が冷えているのでどうしているのか・・・と他人事ながら心配になります

 

          

 

さて,休憩後の最初はリストの愛の夢第2番と第3番を続けて演奏しました 第3番の方が有名ですが,中間部の山場では,まるで宝石のような輝きに満ちた音が会場を満たしました

圧巻は最後のリスト「パガニーニ大練習曲」です.リストは20歳の時に,パガニーニの演奏を聴いて感動し,「おら東京さ行ぐだ,ピアノのパガニーニになるだ」と言って()超絶技巧曲を作曲し自ら演奏するようになりました その一つがこの曲です.全6曲から成りますが,アリスは順番を変えて第1番「トレモロ」,第2番「オクターヴ」,第6番「主題と変奏」,第4番「アルぺッジョ」,第5番「狩り」,第3番「ラ・カンパネッラ(鐘)」の順に演奏しました この内第6番はパガニーニのカプリース(奇想曲)第24番を主題に展開していますが,馴染みのある曲です さらに第3番の「ラ・カンパネッラ」はパガニーニの「ヴァイオリン協奏曲第2番」の終楽章のテーマを基に作曲しています.鐘が鳴り響く音を表したこの曲では,とくに高音部の煌めきに特徴があります.アリスは圧倒的な輝きに満ちた演奏で聴衆を魅了しました

鳴り止まない拍手とブラボーに,流暢な日本語で(日本人とドイツ人のハーフなので当然か)「皆さま,きょうはご来場いただきありがとうございました」とあいさつ,ショパンのプレリュード第15番「雨だれ」を演奏し,熱くなった聴衆をクール・ダウンしました それでも鳴り止まない拍手にグリーグの「抒情小曲集」から「小妖精」を軽やかに演奏し,再度聴衆を熱くしコンサートを締めくくりました

ロビーではCDが飛ぶように売れ,サイン会には長蛇の列が出来たことは容易に想像が付きます

 

          

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

許光俊著「世界最高のクラシック」を読む~独特の指揮者論を展開

2015年05月19日 07時01分31秒 | 日記

19日(火).わが家に来てから222日目を迎え,”耳がかゆくて”なんちゃってるモコタロです 

 

          

           写真ボケてね? へたくそが! なんちってね・・・・・・

 

  閑話休題  

 

昨日は娘がアルバイト先で正規採用になる日だったので,会社帰りにお祝いの花束 とケーキ を買いました.買った直後,娘から「今日は歓迎会があるので遅くなります」というメールが入りました 息子は息子で大学から帰るのが毎日10時過ぎ 結局,娘は11時過ぎに帰ってきました 関東地方には「ちょっと待て その一口が ブタになる」という格言があります.ケーキは翌朝(つまり今朝)に持ち越すことになりました

 

          

 

          

 

  閑話休題  

 

「サントリーホールスペシャルステージ2015~チョン・ミュンフン」の公演チケット3枚を手配しました これは日韓国交正常化50周年記念として開かれるコンサートで,10月19日から22日まで3+2の公演が予定されています サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行販売で「早割」が適用されました 一般販売は5月23日(土)午前10時からです.公演日程は次の通りです

10月19日(月)午後7時から「チョン・ミュンフン&ソウル・フィル」 ①ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調」(Vn:スヴェトリン・ルセヴ,Vc:ソン・ヨンフン),②同「交響曲第4番ホ短調」.

10月20日(火)午後7時から「チョン・ミュンフン&東京フィル」 ①ヴェルディ「オペラ”ラ・トラヴィアータ”」第2幕から(Sp:天羽明恵,バリトン:未定),②マーラー「交響曲第1番ニ長調”巨人”」.

10月22日(木)午後7時から「ピアニスト チョン・ミュンフンの室内楽」 ①ブラームス「ピアノ四重奏曲第3番ハ短調」,②同「ピアノ五重奏曲ヘ短調」(P:チョン・ミュンフン,Vn:スヴェトリン・ルセヴ,成田達輝,Va:ファン・ホンウェイ,Vc:堤剛) ※チョン・ミュンフンは1974年チャイコフスキー国際コンクール(ピアノ部門)第2位の実力者です

10月21日(水)午前11時からブルーローズで「スペシャル・コンサート」(70歳以上を対象にしたコンサート)

10月21日(水)午後7時からブルーローズで「公開マスタークラス(指揮)」

私は19日,20日,22日のコンサートを聴きます.10月が待ち遠しいです

 

          

          

 

  最後の,閑話休題  

 

許光俊著「世界最高のクラシック」(光文社知恵の森文庫)を読み終わりました 許光俊は1965年東京都生まれ.現在,慶應義塾大学法学部教授であり,音楽評論家でもあります このブログでは「クラシックを聴け」というクラシック音楽入門書をご紹介しましたが,非常に具体的で分かり易い入門書でした この「世界最高のクラシック」はクラシック音楽の指揮者の入門書とでもいうべき本です.過去から現在に至る大指揮者たちを5つのグループに分けて持論を展開しています

 

          

 

第1章では「ナイーヴ時代の大指揮者たち,または古典主義的幸福」として,ドイツのフルトヴェングラー,ワルター,クナッパーツブッシュ,イタリアのトスカニーニを取り上げています

第2章では「20世紀にあってなお幸福な指揮者たち,または擬古典主義の平和」として,ベーム,ケンペ,ザンデルリンク,クライバー,ロジェストヴェンスキー,フェドセーエフを取り上げています

第3章では「普遍化を目指した指揮者たち,または20世紀が夢見た美」としてセル,カラヤン,ヴァント,ブーレーズを取り上げています

第4章では「エキゾチックな指揮者たち,またはコスモポリタンの喜び」としてバーンスタイン,小澤征爾,チョン・ミュンフン,バティスを取り上げています

第5章では「懐疑に沈む指揮者たち,またはマニエリスムの退廃と人工美」として,クレンペラー,チェリビダッケ,ケーゲル,テンシュテット,インバル,アーノンクール,ブリュッヘン,ラトルを取り上げています

クラシック音楽について一家言も二家言も持つ著者が大きく評価している指揮者・演奏は最後の第5章で取り上げた指揮者たちですが,とくにチェリビダッケに対しては異常なまでの傾倒を示しています

この本で取り上げた指揮者・演奏の中で私とまったく同じ評価の作品が3つありました

一つはカール・ベーム指揮ウィーン・フィルとピアノのマウリツィオ・ポリー二によるモーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番K.488」(1976年録音)の演奏です この演奏について著者は次のように書いています

「私はこの演奏を30年以上聴いてきて,まったく飽きない.それどころか,聴くたびに,何と美しいのかと思う.ぐうの音も出ない ウィーン・フィルの録音はいくらでもあるけれど,これほどまでに美しい演奏をした記録は他にないかもしれない

まったくその通りです ぐうの音もでない演奏です

二つ目は,ギュンター・ヴァントによるモーツアルトの「ポストホルン・セレナーデ」です 許氏は北ドイツ放送交響楽団との晩年の演奏を評価していますが,私の場合はNHK交響楽団を振ったコンサートを生で聴いた時にヴァントという指揮者の偉大さを感じたのです

許氏は「第5楽章は,突然短調になる.セレナードとは,本来娯楽のためのお気軽な音楽だが,モーツアルトは悲劇的な音楽を1曲だけ入れたのだ.これが本当に深い色をしていて,猛烈にきれいに演奏されている」と書いていますが,生で聴いていて同じようなことを感じました

三つ目は,オットー・クレンペラー指揮によるグルックのオペラ「アウリスのイフィゲニア」序曲(1960年)の演奏です 許氏は次のように書いています

「これが猛烈にすごい演奏なのだ.速いテンポでじっくりしっかり弾かれているだけと言えば言える.だが,音楽は畏怖すべき気高さに達し,まるで巨岩のように揺るがない これを聴いていると,あらゆる表現の小細工も,作品研究も,何の意味もないのではないかと思えてくるのだ.それだけ衝撃的なのである.11分の長さだが,まるで巨大な宇宙が詰まっているかのようだ

この表現に付け加える言葉が見つかりません.まったくその通りです 実は,この曲はもともと,知る人ぞ知る今は亡き大指揮者・宇宿允人(うすき・まさと)が手兵フロイデ・フィルを振ったコンサートのアンコールで(いや,正確に言うと,正規のプログラムの直前に)演奏した時に聴いたのがこの曲との出会いでした その時の衝撃は忘れることが出来ません.「何だ,この狂気迫る音楽は」と慄いたものです それ以来,宇宿允人+フロイデ・フィルのコンサートに足を運ぶようになったのですが,残念ながら同氏は2011年3月,東北地方大震災のあった日の数日前に死去,コンサートは中止になりました

ところで,この本のタイトルは「世界最高のクラシック」ですが,これほど多くの指揮者による演奏が取り上げられていると,いったいどれが本当の「世界最高のクラシック」なのかという疑問が出てきます これについて著者は,

「あえて,万人が納得できる答が存在しない問いを発すること.それをしてみようと思ったのだ.この情報が溢れている時代だからこそ.モラルの絶対的基準が崩壊した時代だからこそ」

と述べています.著者の反商業主義の立場が鮮明に表明されています.クラシック音楽の,とくに指揮者に関する入門書としてお薦めします

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「超高速!参勤交代」を観る~理屈抜きに楽しめる時代劇

2015年05月18日 07時01分08秒 | 日記

18日(月).わが家に来てから221日目を迎え,箱に入っても風船を離さないモコタロです 

 

          

 

  閑話休題  

 

読売日響サマーフェスティバル2015「三大協奏曲」公演のチケットを読響会員先行発売で買いました このコンサートは8月21日(金)午後6時半から池袋の東京芸術劇場で開かれます プログラムは①メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」(Vn:服部百音),②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」(Vc:アンドレアス・ブランテリド),③チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」(Pf:HJリム)です

これはHJリムの演奏を聴くために買ったようなものです 昨年11月30日にリムのピアノ,垣内悠希+都響によりこの曲の演奏を聴きましたが,従来の演奏を覆す豪演に圧倒されました 今回,再度彼女の演奏で同じ曲が聴けるというので一にも二にもなく飛びついたと言う訳です 今のままのペースでいけば今年180回のコンサートを聴くことになりますが,その中で「マイ・ベスト5」には必ず入るコンサートだと今から確信しています

読響会員でない方は,一般発売開始が5月23日の午前10時からです 毎年開かれている読響の「三大協奏曲」と「三大交響曲」の公演はかなり早い段階でソルド・アウトになる可能性が高いです.聴きたい方は早めの手配をお勧めします

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

先日,池袋の新文芸坐で「太秦トワイライト」と「超高速!参勤交代」を観ました 先日「太秦トワイライト」について書いたので,今日は2014年公開の本木克英監督映画「超高速!参勤交代」について書きます

8代将軍・徳川吉宗の治世下の享保20年(1735年),東北の磐城国の小藩・湯長谷藩は,1年間の江戸での勤めを終えて湯長谷に戻ったばかりだったが,突然幕府から,通常でも8日かかる参勤交代を5日で行うよう命じられる それは藩にあるという金山を狙う老中・松平信祝(陣内孝則)の謀略で,貧乏な田舎の藩にとっては無茶な話だった 石高1万5千石の湯長谷藩は4年前の飢饉の影響もあって,再び参勤交代するための資金がない 藩主・内藤政酵(佐々木蔵之助)は憤りを感じつつも,家臣一の知恵者である家老・相馬兼嗣(西村雅彦)に”知恵を出せ”と命じる.相馬は,少人数で山中を走って近道をし,幕府の役人の監視のある宿場のみ日雇いの仲間を調達して大名行列を組んでごまかすことを考えつく 政酵と相馬が密談中,忍び・雲隠段蔵が現われ山中の道案内を申し出る.政酵はこれを受け容れ仲間に加える 一方,彼らの動きを察知した幕府の信祝は一行を亡き者にするため,配下の忍びを刺客として差し向ける 途中,段蔵の裏切り行為があったり,刺客に襲われ川に飛び込んで流されるといった事件が待ち構えている・・・・・果たして一行は5日間で本当に江戸に参上することが出来るのか,そして湯長谷藩には金山などないことを証明することができるのか・・・・

 

          

 

これは理屈抜きに面白い”痛快時代劇”です 天下の江戸幕府の老中を向こうに回して知恵と体力で勝負に挑む貧乏藩の闘いです 観ている分には面白おかしく笑っていられるのですが,これを現代に置き換えて考えると,東京対地方の戦いとも取れるような気がします

藩主・内藤を演じた佐々木蔵之助は,いかにも田舎侍丸出しで閉所恐怖症のとぼけた,しかし,闘うとなると本当は強い藩主を見事に演じています 家臣一の知恵者・相馬を演じた西村雅彦は頼りなげな顔付きながら,必ず難題の解決策を考えつく家老を味わい深く演じています 雲隠段蔵を演じた伊原剛志は素浪人や忍者が良く似合いますね お咲を演じた深田恭子もいい味を出しています

時代劇もこういう切り口で作られると古臭さを感じないで楽しめますね 要は脚本が良ければお客さんは付いてくるということでしょうか

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

川久保賜紀+東京ニューシティ管弦楽団でコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」を聴く

2015年05月17日 09時10分12秒 | 日記

17日(日).わが家に来てから220日目を迎え,白ウサちゃんに内緒話を持ち掛けるモコタロです 

 

          

 

  閑話休題  

 

昨日,池袋の東京芸術劇場で東京ニューシティ管弦楽団の第99回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「バレエ音楽”プロメテウスの創造物”から4章」,②コルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」,③ブラームス「交響曲第1番ハ短調」.指揮は曽我大介,②のヴァイオリン独奏は川久保賜紀です

 

          

 

定期会員として東京ニューシティ管弦楽団を聴くのは今回が初めてです.予想以上に聴衆が入っていたのにはちょっとビックリ 会場の後方が空いているのは他の在京オケも同じこと.在京オケで最少人数の楽団としては大したものと言うべきかも知れません

ということで,プログラムの最初のページにあるメンバー表を見て「あれっ?」と思いました.「本日の出演者」として第1ヴァイオリンに山口裕之とあり,名前の前に〇印が付いています.脚注を見ると「〇印は本日の首席奏者」とあります.山口氏は元NHK交響楽団のコンマスですが,今はフリーの立場なのであちこちから声がかかるのでしょう そこまでは分かります.他のオケだってコンマスの客員は珍しくありませんから.しかし,他のパートを見ると弦楽器も,管楽器もほとんどが最初の奏者に〇印が付いているのです これはどうい解釈すれば良いのでしょうか?このオケには首席はおらずその都度,客員として外から迎えるということでしょうか?それとも「本日の首席奏者」とあるので,楽員の中で交替で首席になるのでしょうか.よく分かりません

オケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラという態勢をとりますが,コントラバスは後方の壁に沿って横一列に並んでいます.十数年前,ロイヤル・フランダース・フィルがすみだトりフォニーホールで演奏会を開いた時にこの態勢を見て新鮮に感じたことを思い出しました

1曲目はベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」から「序曲」「嵐」「パストラーレ」「フィナーレ」が演奏されます この曲はイタリアの天才的舞踏家でウィーン宮廷バレエの監督でもあったサルヴァトーレ・ヴィガーノの依頼により,1800年~01年にかけて作曲されました 序曲の冒頭は力強い和音から入りますが,ベートーヴェンは冒頭から聴く人の耳を釘づけにする術をこの時すでに身に付けていなます そして,フィナーレでは交響曲第3番”英雄”の第4楽章の有名なテーマが流れます 初めて聴きましたが,良い曲です

2曲目はコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲です.ソリストの川久保賜紀が鮮やかなブルーのドレスで登場 指揮者の合図で第1楽章に入ります.出だしからロマン溢れる曲想を流麗に演奏します コルンゴルトはマーラーにも認められた神童作曲家で,ナチスの台頭によりアメリカに渡り,ハリウッドで多くの映画音楽を書きました

川久保賜紀は楽譜を見ながら演奏しましたが,この際,暗譜で弾くかどうかは重要ではありません.要はコルンゴルトのロマン性が伝わってくれば良いのです.その意味では,彼女は独特の”艶”のある音色でロマン豊かに演奏していました

演奏後,右サイドにあったハープが指揮台の前に運ばれ,ハープ奏者は舞台袖に引き上げました.何事が起こるのか・・・と思っていると,川久保とハープ奏者が舞台に登場して,アンコール曲の演奏に入りました マスネの「タイスの冥想曲」です.この曲でも川久保の艶やかな音色が生きていました 演奏の間,指揮者の曽我大介は指揮台に座り込んでリラックスしています.どうも指揮台に座り込むのはこの人の癖のようです 去年のフェスタ・サマー・ミューザでは演奏中に指揮台で寝ころんでいました.あれは明らかに優位的立場を利用した職場放棄で,本来なら機動隊を導入して改心するまで説教するところです

休憩後はブラームスの交響曲第1番ハ短調.オケの規模が拡大します.このオケ本来の楽員は極めて少人数のはずなので,多くのエキストラが動員されたと思われます

演奏は指揮者・曽我の情熱が,コンマスの山口裕之氏を通して楽員に伝わった熱い演奏でした 細かいことを言えば,何度か1人弦がハズレたり,管の入りが遅れたりといったところがありましたが,そうしたことを気にしていたら楽しくなくなるので聴き流しました

他の在京オケの聴衆と客層が違う,若い人が比較的多いのではないかという印象を受けました

 

          

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「太泰ライムライト」を観る~斬られ役をヒーローとした初めての映画

2015年05月16日 07時05分08秒 | 日記

16日(土).わが家に来てから219日目を迎え,どの風船で遊ぼうか悩んでいるモコタロです 

 

          

 

  閑話休題  

 

昨日,池袋の新文芸坐で「太泰ライムライト」と「超高速!参勤交代」の2本立てを観ました 今日は2014年公開の落合賢監督映画「太泰ライムライト(うずまさライムライト)」について書きます

京都・太秦(うずまさ)にある日映撮影所に所属する香美山清一(福本清三)は,斬られ役として長年大部屋俳優を務め,チャンバラ時代劇に出演してきた ある日突然,およそ半世紀にわたって放送されてきたテレビ時代劇「江戸桜風雲録」が打ち切りとなり,後番組として若者層をターゲットにした時代劇がスタートする しかし,若手で売れっ子の監督のもとではベテラン達の活躍する場はなかった 不本意ながらも映画パークのチャンバラショーに出演せざるを得ない状況に追い込まれた そんな中,香美山は伊賀さつき(山本千鶴)という新進女優と出会い,殺陣の師匠となり指導していく 新感覚の時代劇のヒロインの降板というアクシデントにより,代役と務めることになったさつきは何度もNGを出しながらも遂にチャンスをものにして女優の道を歩んでいく 一方,70歳という高齢になり左手が思うように動かなくなった香美山は自身の限界を悟り田舎に引きこもる そんな彼のところにスター女優になったさつきが訪れ,いっしょに時代劇に出てほしいと懇願する・・・・・・さて香美山はどうするのか

 

          

 

この映画は時代劇を支えてきた人々の姿をチャップリンの「ライムライト」をモチーフに描いた作品です 映画「ラストサムライ」をはじめ,時代劇の斬られ役の第一人者として活躍し,「5万回斬られた男」の異名を持つ福本清三が,等身大の”日陰のヒーロー”を演じています このヒーローの特徴は台詞が極端に少ないということです.いかに少ない言葉で言わんとすることを表現するかが斬られ役に求められる資質だと言うことでしょう 公開された2014年のファンタジア国際映画祭で福本は日本人初の最優秀主演男優賞を受賞しています 福本の皺のよった顔には,斬られ役なら誰にも負けないというプライドが刻み込まれています 一方,ヒロイン役の山本千鶴は世界ジュニア武術選手権大会優勝者で,スピード感溢れる殺陣に挑んでいます とても映画初主演とは思えないキビキビした動きが印象に残ります

さらに時代劇と言えば松形弘樹です 映画「江戸桜風雲録」の主役・尾上清十郎を演じていますが,顔つきと言い,殺陣といい,彼が出るだけで場面が引き締まります 今でも時代劇の大スターと言ってもよいでしょう

斬られ役という普段は目立たない役柄を主人公にしたこの映画のテーマは,「一生懸命やっていれば誰かが見てくれている」ということではないか,と思います

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユベール・スダーン+東響でモーツアルト「FlとHp協奏曲」,フランク「交響曲ニ短調」を聴く

2015年05月15日 07時04分45秒 | 日記

15日(金).わが家に来てから218日目を迎え,白ウサちゃんを従えて散歩するモコタロです 

 

          

 

  閑話休題  

 

昨日出勤前に,夕方フランクの「交響曲ニ短調」を聴くのでCDで予習しておきました 演奏はシャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団です

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで東京交響楽団の第630回定期演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト「交響曲第31番ニ長調K.297”パリ”」,②同「フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299」,③フランク「交響曲ニ短調」です.指揮は東響桂冠指揮者ユベール・スダーン,②のフルート独奏は高木綾子,ハープ独奏は吉野直子です

 

          

 

1曲目はモーツアルトの「交響曲第31番ニ長調K.297”パリ”」です.コンマス水谷晃の合図でチューニングが行われますが,オケは比較的小編成です スダーンがモーツアルトの交響曲を指揮する時は指揮台を使いません.いつものように指揮棒も使わず両手で指揮をします スダーンの合図で第1楽章「アレグロ・アッサイ」が開始されます.弦楽器の演奏はアクセントを強調したキビキビしたもので,古楽器奏法ではないか,と思いました それを裏付けるのはトランペットです.ピストンのない長いトランペットはバッハ・コレギウム・ジャパンでよく使われるピリオド楽器ではないかと思われます

スダーンのモーツアルトを聴くたびに思うのは,モーツアルトの生まれ故郷ザルツブルクのモーツアルテウム管弦楽団の音楽監督を13年も務めた実績に裏付けられた小気味の良いテンポ感です 18世紀のモーツアルトの音楽が21世紀の現代に躍動している,と感じます

オケが縮小して,”黄金のハープ”がステージ中央に運ばれます.あの輝きは純金100%の本物の金メッキではないか フルート独奏の高木綾子が鮮やかなグリーンのドレスで,ハープの吉野直子がマリン・ブルーのドレスで登場,舞台中央でスタンバイします

2曲目はモーツアルト「フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299」です.これほど優雅な曲があるのだろうか,と思うほど華やかで優雅な曲です その昔,知人から結婚式の二次会のBGMを考えてほしいと頼まれた時,何のためらいもなくこの曲を流すことにしました 高木綾子と吉野直子のコンビで聴くこの曲は最高です 吉野直子などは黄金のハープとともに存在そのものが優雅ですから とくに各楽章におけるハープとフルートによるカデンツァが素晴らしい演奏でした

 

          

 

休憩後はフランクの「交響曲ニ短調」です.オケが一気に拡大しフル・オーケストラでこの曲に臨みます 指揮台も準備されています.この曲の作曲者セザール・フランクはベルギー生まれですが,先祖はゲルマン系ということでドイツ人の血統を受け継いでいます.生涯サン・クロティルド協会の正オルガ二ストを務め,1871年からは名門パリ音楽院のオルガン教授に就いています この曲は1886年~88年に作曲されたといいますからフランクが64歳~66歳の晩年の作品です

スダーンの合図で第1楽章「レントーアレグロ・ノン・トロッポ」が開始されます.『循環動機』と呼ばれるメロディーが各楽章を支配します.コンマスの水谷晃は椅子を高く設定したうえで身体を後ろに反り返って演奏しています.コンマスはオケ全体を引っ張っていかなければならないので,身体を張って演奏に取り組んでいるのです

1890年11月8日にフランクは息を引き取りました.1900年に長男のジョルジュがダンディに手紙を書いていますが,その中で「父セザールは教会のオルガ二ストだという固定化したイメージを植え付けないでほしい.父セザールは『室内楽,交響曲,歌曲,オペラの作曲家でもある』」ことを強調しています.しかし,実際にこの「交響曲ニ短調」を聴くとオルガン的な響きが聴こえてきます

スダーンが指揮をとるとき,東響のメンバーは嬉々として演奏しているように見えます それは現在の音楽監督ジョナサン・ノットの前に,音楽監督だった際に培った信頼関係があったからこそだと思います.力強い中にも暖かい演奏でした

 

          

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ショスタコーヴィチ「交響曲第7番」を聴く~読売日響第548回定期演奏会

2015年05月14日 07時01分13秒 | 日記

14日(木).わが家に来てから217日目を迎え,小さい風船では物足りないモコタロです 

 

          

             ↓    ↓   ↓   ↓   ↓   ↓          

          

 

  閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊に,ベルリン・フィルの首席指揮者選任を巡るニュースの続報が出ていました 同紙のベルリン特派員と吉田純子編集委員の共同執筆の形をとっています.この中で,今回のラトルの後任首席指揮者選びの候補者の一部が挙げられています クリスチャン・ティーレマン(56),ダニエル・バレンボイム(72),アンドリス・ネルソンス(36),グスターボ・ドゥダメル(34)らです.記事は,音楽評論家の諸石幸生氏の『グローバル時代の先頭に立とうとするあまり,守るべきアイデンティティーを見失い,どんな”監督”が必要か見えなくなっている』というコメントを紹介しています 一方,ドイツの有力紙は『楽団の方針を巡る複雑な内部抗争が背景にある』と報じているとしています.1年以内に再投票で決めるとしていますが,さて,誰がサイモン・ラトルの後を襲うのか・・・気になります

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで読売日響の第548回定期演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト「ピアノ協奏曲第17番ト長調K.453」,②ショスタコーヴィチ「交響曲第7番ハ長調”レニングラード”」です.指揮はエイヴィン・グルベルグ・イェンセン,①のピアノ独奏はアンドレアス・シュタイアーです

 

          

 

指揮者のエイヴィン・グルベルグ・イェンセンは1972年ノルウェー生まれで,レオポルト・ハ-ガ-等に師事しています 経歴を見るとオペラでの活躍が目立ちます 今年11月には新国立劇場のオペラ「トスカ」にデビュー,2017年にはウィーン国立歌劇場にデビューが予定されているとのことです

ステージ中央にはグランド・ピアノが置かれています.オケのメンバーが入場,次いで拍手の中コンマスの長原幸太が登場します

1曲目はモーツアルト「ピアノ協奏曲第17番ト長調K.453」です.モーツアルトは1784年(28歳)にピアノ協奏曲第14番(K.449)から第19番(K.459)までの6曲を一気に書いています 第14番と第17番は当時ピアノの弟子だったバルバラ・ブロイヤーのために作曲した作品です

ソリストのアンドレアス・シュタイアーが指揮者イェンセンとともに登場します 初めて生で見た黒メガネのシュタイアーは”ちょっと見”フリードリヒ・グルダに風貌が似ていると思いました 彼はどちらかと言うとピアノ奏者というよりもチェンバロ奏者としての方が名前が知られています

この曲の第1楽章はオーケストラによる序奏から入って,後からピアノが登場するのですが,モーツアルト自身がやっていたかも知れないように,序奏の音楽に合わせてアドリブでピアノを弾きます とは言っても,メロディーを弾くと言うよりは,音楽の第1拍目をポン,ポンと弾く程度です.しかし,これがシュタイアーというピアニストの特徴なのだと思います メロディーの部分に入ってからも,どちらかと言うとチェンバロを弾いているような演奏スタイルが見受けられました.それが返って新鮮に響きました

シュタイアーはアンコールにモーツアルトの「ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330」から第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」を彼独特のスタイルで演奏しました

 

          

 

休憩後はショスタコーヴィチ「交響曲第7番ハ長調”レニングラード”」です.なぜこのようなサブ・タイトルが付いたのかと言えば,ショスタコーヴィチが「この交響曲はファシズムとの戦い(中略),そして我が故郷レニングラードに捧げる」と述べたからです ショスタコーヴィチはサンクトぺテルベルク(⇒ペトログラード⇒レニングラードに名称変更)に生まれ,1917年に2月革命,10月革命を経験しています 1941年にはナチス・ドイツのソ連侵攻による大祖国戦争(独ソ戦)が始まります.その時に書いたのがこの交響曲で,全15曲ある交響曲の中で最も長い曲(約70分)です

前半のモーツアルトからオケの規模が拡大し,フル・オーケストラで臨みます ホルン8人を見るとさすがに偉容を感じます.イェンセンのタクトで第1楽章が開始されます.出だしの演奏を聴いた時,「あれ?この曲はこんなに軽く明るい曲だったかな?」と感じました しばらくすると,小太鼓のリズムに乗って「戦争の主題」が12回繰り返されます.主題を奏でる楽器が変わり,次第に音量が増し,クレッシェンドしていく手法は,ラヴェルの「ボレロ」のアイディアを拝借したと言えるでしょう 「ボレロ」と同じように,聴いていると気分が高揚していきます

スゲルツォ的な第2楽章を経て第3楽章のアダージョに移りますが,ここでは読響の弦楽器の美しいアンサンブルが聴けます 第4楽章へは続けて演奏されます.管楽器,弦楽器,打楽器を総動員したフィナーレは圧巻そのもの レニングラード攻防戦におけるソ連の勝利を高らかに歌い上げます

マーラーにせよ,ブルックナーにせよ,今回のショスタコーヴィチにせよ,フル・オーケストラによる大管弦楽曲はやっぱり生演奏に限ります アイ・フォンや家のオーディオ装置でチマチマ聴いて満足する音楽ではありません

 

          

 

休憩時間に読響会員特典CDをもらいました カンブルランか小林研一郎かを選ぶことが出来ますが,収録曲を見ないでカンブルランを選びました  ドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界から”」で,今年2月15日に東京芸術劇場でのライヴ録音でした.あとでゆっくり聴こうと思います

 

          

          

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東川篤哉著「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?」を読む~読んで楽しいミステリー

2015年05月13日 07時01分07秒 | 日記

13日(水)。わが家に来てから216日目を迎え、大好きな風船に囲まれて仁義を切るモコタロです 

 

          

                    人呼んで フウセンのトラと申します 以後 お見知りおきを

          

  閑話休題  

 

昨日の朝日夕刊に「ベルリンフィル 異例の再投票へ 首席指揮者選考『1年以内に』」という見出しの記事が載っていました 記事によると

「ベルリン・フィルの幹部は11日夜,楽団員による選考会議で,2018年に任期切れとなる首席指揮者兼芸術監督サイモン・ラトル氏(60)の後任を協議したが,結論を出せなかったと発表した 1年以内に再投票を行う.団員代表のペーター・リーゲンバウアー氏は会議後,『楽団の方向性を話し合ったが,根本的に異なる意見があった』と説明.候補者を絞り込むため何度も投票が繰り返されたが,『大多数の支持』を受ける1人に決められなかったという 楽団員が首席指揮者を選ぶのは同楽団独特で,『帝王』と呼ばれたカラヤン氏の後任を選ぶ1989年に初めて導入.今回が3回目で16年ぶり.音楽関係者によると,結論が先送りされたのは初めてという

この記事を読んで,クラシック音楽好きは「いったい誰が候補になっているのか?」と興味を抱きます 日経の夕刊にも同様の記事が載っていましたが,日経にも候補者の名前が一人も書かれていません 指揮者中心の巨匠の時代はとっくの昔に終わり,オーケストラとうまくやっていくニュートラルでインターナショナルな指揮者が中心的な存在になって久しくなります

カラヤンの後を襲ったのは楽員投票でロリン・マゼールを破ったクラウディオ・アバード(イタリア人),その後がダニエル・バレンボイムを破ったサイモン・ラトル(英国人)です 団員の顔ぶれを見てもベルリン・フィルは今やインターナショナルなオーケストラの代表みたいな存在です さて,1年以内に再投票で選ばれるのは誰か・・・・個人的にはパーヴォ・ヤルヴィかチョン・ミュンフンが面白いと思いますが,皆さんはどう思われますか? 二人とも世界中で引っ張りだこの指揮者なので難しいでしょうが

 

  も一度,閑話休題  

 

今夕、読売日響の定期演奏会でショスタコーヴィチ「交響曲第7番”レニングラード”」を聴くので、昨日CDで予習しておきました 演奏はベルナルド・ハイティンク指揮ロンドンフィルです。「ショスタコーヴィチ交響曲全集」13枚組の1枚です。久しぶりにショスタコの”レニングラード交響曲”を聴きましたが,第1楽章のあのリズム感がたまらないですね 今夕の本番が楽しみです

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

東川篤哉著「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?」(文春文庫)を読み終わりました 東川篤哉は1968年広島県尾道市生まれ.「謎解きはディナーのあとで」が2011年本屋大賞を受賞し一躍有名人になりました.当ブログでも何冊かご紹介しましたね

 

          

 

若手の独身刑事・小山田聡介は「八王子署の椿姫」こと椿木綾乃警部(39歳独身)の部下 彼は椿姫に足蹴にされることに快感を覚えるドMだが,実はなかなかのやり手 一方,目の前に立ちはだかる難事件の現場に,何故か必ず現れる謎の家政婦(とはいえ美少女) 彼女こそ難事件の解決にヒントを与える重要人物.実は魔法使い「マリィ」

この本は「魔法使いとさかさまの部屋」「魔法使いと失くしたボタン」「魔法使いと二つの署名」「魔法使いと代打男のアリバイ」の4つの短編から成りますが,共通点は,最初から犯人が判っていて,二人の刑事が犯人のアリバイを崩していく過程が書かれています 謎解きの過程で”普通のミステリー”では登場するはずのない魔法使いが登場し,結果的に犯人逮捕に貢献することになります 本格派ミステリーの立場から言えば,「それってルール違反じゃん」というところですが,そこはユーモア・ミステリーの第一人者・東川篤哉.笑いに包んで事件を解決していきます

ミステリーですから,どういう仕掛けを用意しているかに興味が湧きますが,それと同じくらい期待するのは事件とは直接関係のない人物描写や情景描写です 例えば,椿姫の描写は次の通り

「光沢を放つグレーのスーツ.腰に張りつくタイトなスカートは,ギリギリ膝頭が覗く長さ,そこから伸びる二本の脚は見事な脚線美を描き,引き締まった足首は鍛えられた一流のアスリートのよう 実際,聡介の同僚の中には,彼女の逆鱗に触れた挙句に,渾身のローキックの餌食になった者が数名.それはそれで羨ましい いっそ自分もあの脚に蹴られたい,と密かに倒錯した願望を抱く聡介は,変態でしょうか.いいえ,誰でも

一事が万事で,こういった感じの語り口で読者を笑いに誘いながら,いつの間にか難事件を解決していきます 文句なしに読んで楽しいミステリーです.お薦めします

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズでモーツアルト「オーボエ四重奏曲」他を聴く

2015年05月12日 07時01分37秒 | 日記

12日(火).昨日の朝日夕刊に「リブロ 区切りの30年 池袋本店閉店へ」という記事が載っていました.西武池袋本店内にある書店「リブロ池袋本店」が6月末をめどに閉店するというものです リブロは埼玉県S市の実家に行った帰りによく寄っていた書店なだけに寂しいものがあります リブロに限らず,文化の発信地である書店が消えて行くのは非常に残念なことです ”活字離れ”というよりは”本屋離れ”とでもいうべき昨今のネット社会の中で,書店は生き残りをかけて頑張っています 当ビルにも書店が入っているので,応援の意味で出来るだけこの書店で本を買うことにしています いうことで,わが家に来てから215日目を迎え,いじけてこっちを向こうとしないモコタロです 

 

          

                だって だれも遊んでくれないんだも~ん

 

  閑話休題  

 

昨夕,紀尾井ホールでルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズの室内楽コンサートを聴きました プログラムは①モーツアルト「オーボエ四奏曲ヘ長調K.370」,②プロコフィエフ「五重奏曲ト短調」,③シューベルト「八重奏曲ヘ長調」です ルーツヴィヒ・チェンバー・オーケストラは2013年にヨーロッパで活躍する日本人若手演奏家とシュトゥットガルト放送交響楽団のメンバーを中心に結成されたグループです ルートヴィヒというのはおそらくルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの名前から取ったものでしょう

 

          

 

自席は1階11列5番,左ブロック右通路側席です.会場は1階後方がかなり空きが目立ちます 開演前,ロビーで先日の「東京・春・音楽祭」でスクリャービンのピアノ曲を演奏した東京藝大教授でピアニストの野平一郎氏の姿をお見かけしました.出演者の中に誰か知り合いがいらっしゃるのでしょうか

1曲目のモーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」は1781年の初め(モーツアルト25歳)に作曲されました マンハイム時代に知り合いになったオーボエ奏者ラムのために書いた作品で,3楽章から成ります

演奏は2011年9月から半年間,ウィーン国立歌劇場管弦楽団とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の契約団員として活躍したヴァイオリンの白井圭,2004年からシュトゥットガルト放送交響楽団に在籍するヴィオラのヤニス・リーヴァルディス,第59回ミュンヘン国際音楽コンクール第2位のチェロ・横坂源のバックのもと,2008年に18歳の若さでシュトゥットガルト放送交響楽団の首席に就任したオーボエのフィリップ・トーンドゥルがソロを務めます

第1楽章の冒頭からオーボエの明るく軽快な音楽が会場に響き渡ります モーツアルトは何と身軽で澄みきっているのでしょう こんなに素晴らしく,有名な曲なのに生演奏に接する機会は極めて稀です どこまでも続く澄みきった青空のような爽やかな演奏でした

2曲目のプロコフィエフ「五重奏曲ト短調」はオーボエ,クラリネット,ヴァイオリン,ヴィオラ,コントラバスという変わった組み合わせの珍しい曲です 1924年(作曲者33歳)の時に亡命先のパリで作曲されました.ヴァイオリンの白井,ヴィオラのリーバルディス,2007年からシュトゥットガルト放送交響楽団で活躍するコントラバスの幣隆太朗,オーボエのトーンドゥル,1985年からシュトゥットガルト放送交響楽団の首席を務めるクラリネットのディルク・アルトマンによって演奏されます

この曲は同時期に書かれたバレエ曲「空中ブランコ」と深い関係を持つ曲で,6楽章から成ります 各楽器の音色の使い分けが面白い曲で,サーカスのような雰囲気の曲です サーカスと言えばピエロが欠かせませんが,この曲を聴いていると,ただ楽しいだけでなく,どこか寂しげな音楽が聴こえてきます 5人の奏者はその雰囲気をよく伝えていました

1曲目のモーツアルトと2曲目のプロコフィエフを聴き比べると,同じ楽器なのにオーボエの使い方や音色がいかに違うか,と新鮮な驚きを感じます

 

          

 

休憩後はシューベルトの「八重奏曲ヘ長調」です.1824年3月の完成と言いますからシューベルトが27歳の時の作品です シューベルトは1828年に死去していますから晩年の作品ということになるのでしょうか 弦楽四重奏にコントラバス,クラリネット,ファゴット,ホルンを加えた8人によって演奏されます

ヴァイオリンは白井に加え東響コンマス水谷晃が加わり,2002年からシュトゥットガルト放送交響楽団のソロを務めるファゴットのハンノ・ドネヴェーグ,2004年から同交響楽団の首席を務めるホルンのヴォルフガング・ヴィプフラーが加わります.メンバーの中で出演しないのはオーボエのトーンドゥルだけです

この曲は6楽章から成りますが,1時間にも及ぶ,繰り返しの多いシューベルトらしい曲です クラリネットの名手だったフェルディナント・トロイヤー伯爵の依頼によって書かれた作品ですが,シューベルトは仲間内で演奏して楽しむ曲として作曲したのではないかと想像します 仲間内なら「このメロディーいいよね 何回繰り返して演奏しても楽しいよね」と言い合って演奏できますから.8人の奏者を見ていると,お互いに演奏を楽しんでいる様子がうかがえました

最も有名なのは第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」でしょう.今回は時間がなくて予習が出来なかったのですが,この楽章だけはすぐに思い出すことが出来ました

最後に全員がステージに登場しヨハン・シュトラウス2世の「フランス風ポルカ”野火”」を軽快に演奏し,コンサートを締めくくりました 終わってみて,やはりシューベルトは何とか時間を割いて予習しておくべきだったな,と反省しました

 

          

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする