人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アリス=沙良・オットのピアノ・リサイタルを聴く~素足で弾く意味は?

2015年05月20日 07時01分28秒 | 日記

20日(水).わが家に来てから223日目を迎え,白ウサちゃんの新しい友達との関係を問い詰めるモコタロです 

 

          

             それで 君たち どういうきっかけで知り合ったわけ?

 

  閑話休題  

 

昨夕,初台の東京オペラシティコンサートホールで,アリス=沙良・オットのピアノ・リサイタルを聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第17番ニ短調”テンペスト”」,②J.S.バッハ「幻想曲とフーガ・イ短調BWV944」,③同・ブゾーニ編「シャコンヌ」,④リスト「愛の夢第2番ホ長調」,⑤同「愛の夢第3番変イ長調」,⑥同「パガニーニ大練習曲」です

 

          

 

自席は1階9列2番,左ブロック左から2つ目.会場はほぼ満席です 拍手の中アリスが鮮やかなブルーのドレスで登場,ピアノに向かいます ロング・ドレスなので足元が見えませんが,彼女のトレード・マークの素足なのでしょう ここでしまった!と思いました この席からは右斜め前の人が邪魔になってアリスの姿がまったく見えません もっと後方の席で良いからセンターに近い席にすべきだったと反省しました

1曲目はベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第17番」です.このソナタは「テンペスト」という愛称が付けられていますが,これは弟子のシントラーからこの曲について尋ねられた時に,「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と答えたと言われていることが,愛称の由来となっています

アリスはゆったりしたテンポで演奏を進めます.一音一音慈しむように丁寧に音を紡いでいきます この曲の第3楽章は一度聴いたら忘れられない曲想です この楽章でもアリスは少しも慌てずゆったりしたテンポで堂々たる音楽を展開します

2曲目はバッハの「幻想曲とフーガ イ短調」です.冒頭10小節だけ幻想曲が演奏され,次いで息の長いフーガが続きます アリスによる推進力のある演奏で聴くと,バッハのエネルギーのようなものを感じます

続いてバッハ作曲ブゾーニ編曲による「シャコンヌ」の演奏に入ります この曲はバッハの傑作「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004」の終曲である長大な「シャコンヌ」をイタリア出身の作曲家・ブゾーニが編曲したものです

普段ヴァイオリンで聴きなれている曲ですが,アリスのピアノで聴くこの曲は深く,力強い音楽であることを再認識させられます 時にペダルを踏む「ドン・ドン」という音を聴くに及んで,なぜアリスは靴を履かずに素足で演奏するのか,ということを考えました 

昨日のブログでご紹介した『世界最高のクラシック』の「文庫版のためのあとがきに代えて」の中で,著者の許光俊氏は次のように書いています

「たいへん残念なことに,21世紀においてクラシック音楽界は加速度的に芸能化している もちろん,そうした一面がクラシック音楽にもあるのは今に始まったことではない.だが,ミニスカート姿で客を驚かせたり,裸足で弾いたり,オオカミと仲が良かったり,あんなこんなの臆面もないキャラクター作りでベストセラーを作り出そうとする魂胆には,心底うんざりさせられる ものごとには限度というものがあろう.恥を知れ,と関係者には言いたい

補足すれば,「ミニスカート姿で・・・」というのはユジャ・ワンだし,「裸足で弾いたり・・・」はアリス=沙良・オットだし,「オオカミと仲が良かったり」はエレーヌ・グリモーで,いずれも人気の女性ピアニストです さて,許氏の言い分を頭の片隅に置きつつ考えてみると,あれ程大きな音を立ててペダルを踏み込んでいるということは相当の力が入っているはず 例えば他のピアニストが履いているようなステージ用の高いヒールの靴を履いて同じ演奏をしたら,ヒールが折れてしまうのではないか 彼女のピアノ奏法には素足で直にペダルを踏むことが不可欠なのかも知れない したがって,まだ世に出て間もない頃は他者との差別化を図るために素足で演奏していたかも知れないけれど,世界を股にかけて演奏旅行に明け暮れる現在のアリスにとっては,その方面は卒業しているのではないか,と思うのです それにしても,これからの季節は良いけれど,冬は床が冷えているのでどうしているのか・・・と他人事ながら心配になります

 

          

 

さて,休憩後の最初はリストの愛の夢第2番と第3番を続けて演奏しました 第3番の方が有名ですが,中間部の山場では,まるで宝石のような輝きに満ちた音が会場を満たしました

圧巻は最後のリスト「パガニーニ大練習曲」です.リストは20歳の時に,パガニーニの演奏を聴いて感動し,「おら東京さ行ぐだ,ピアノのパガニーニになるだ」と言って()超絶技巧曲を作曲し自ら演奏するようになりました その一つがこの曲です.全6曲から成りますが,アリスは順番を変えて第1番「トレモロ」,第2番「オクターヴ」,第6番「主題と変奏」,第4番「アルぺッジョ」,第5番「狩り」,第3番「ラ・カンパネッラ(鐘)」の順に演奏しました この内第6番はパガニーニのカプリース(奇想曲)第24番を主題に展開していますが,馴染みのある曲です さらに第3番の「ラ・カンパネッラ」はパガニーニの「ヴァイオリン協奏曲第2番」の終楽章のテーマを基に作曲しています.鐘が鳴り響く音を表したこの曲では,とくに高音部の煌めきに特徴があります.アリスは圧倒的な輝きに満ちた演奏で聴衆を魅了しました

鳴り止まない拍手とブラボーに,流暢な日本語で(日本人とドイツ人のハーフなので当然か)「皆さま,きょうはご来場いただきありがとうございました」とあいさつ,ショパンのプレリュード第15番「雨だれ」を演奏し,熱くなった聴衆をクール・ダウンしました それでも鳴り止まない拍手にグリーグの「抒情小曲集」から「小妖精」を軽やかに演奏し,再度聴衆を熱くしコンサートを締めくくりました

ロビーではCDが飛ぶように売れ,サイン会には長蛇の列が出来たことは容易に想像が付きます

 

          

コメント (2)
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