人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ブレイディみかこ著「ほくはイエローで ホワイトで、ちょっとブルー2」を読む ~ 英国の公立中学校に通う息子が直面する様々な出来事:「社会を信じること」とは?

2024年07月14日 00時16分03秒 | 日記

14日(日)。当初の予定では週の後半は映画を何本か観る予定でしたが、腰痛が悪化する恐れがあるので控えました 毎日、家でベッドに寝転んで新聞や本を読んで過ごしています 腰痛が悪化してコンサートに行けなくなったら元も子もないので、ここは我慢のしどころです

ということで、わが家に来てから今日で3470日目を迎え、英国のシャバナ・マムード法相は12日、服役中の受刑者数千人を早期出所させる計画を明らかにしたが、受刑者の増加に刑務所の建設が追いつかずパンク寸前となっているためで、スナク前政権の失敗だと非難した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     プーチンと金正恩とトランプを収監してもらおうと思ったけど 満杯か  残念至極!

         

ブレイディみかこ著「ほくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」(新潮文庫)を読み終わりました ブレイディみかこは1965年福岡生まれ。県立高校を卒業後、音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、96年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務した後、英国で保育士の資格を取得。「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年「子どもたちの階級闘争」で新潮ドキュメント賞を、19年「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で、Yahoo!ニュース本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞を受賞 「花の命はノー・フューチャー」「ヨーロッパ・コーリング」「ワイルドサイドをほっつき歩け」など著書多数

     

2019年夏に発売された「ほくはイエローで ホワイトで、ちょっとブルー」は、ブレイディさんの息子である「ぼく」が地元の元底辺中学校に入学し、人種差別、貧富の差、ジェンダー問題などに直面し、悩み考えながら成長する姿を綴ったドキュメンタリーで、他者を理解するための想像力を意味する「エンパシー」という言葉が日本で人口に膾炙するきっかけになりました

本書では前作から2年が経過した2021年、中学2年生に成長した「ぼく」が日常や学校生活の中で出会った人々や新たに経験した出来事を描いています

最初のエピソードは、不用品の整理を始めたことから鉄のスクラップを集めるルーマニア移民の家族と出会う話です 古着をあげようと、息子さんが自分の服をゴミ袋に入れ始めた時、「あげる立場」と「もらう立場」の関係になると「うしろめたさがある」と違和感を感じます これについてブレイディさんは「『あげる』と『リサイクルする』は違うと思う 今回は、たまたま誰が使うか知ってるから『あげる』という感じになるけど、例えば慈善センターにリサイクルの服を持っていくときは、それを使う人が誰だか分からないし、不要なものを持ち寄ってシェアするという考えしかないから、『あげる』とは考えないでしょ。だから、これもリサイクルなんだから、不要なものは世の中に流せという感覚だけでいいんじゃない?」と伝えます 息子さんの感覚も鋭いし、ブレイディさんのアドヴァイスも素晴らしい

息子さんが通う中学校の国語のスピーチの授業を巡るエピソードには考えさせられます 5Sというメソッドを使い、5分間のスピーチの準備をするという課題に対し、同級生たちは、ドラッグ、摂食障害、LGBTQ、ポリティカル・コレクトネスなどのテーマを取り上げます。英国の教育レヴェルの高さに驚きます そんな中、息子さんはイギリスでも大きく報道された、大型台風が通過する中で、日本の避難所がホームレスの受け入れを拒否したというニュースを題材に「社会を信じること」をテーマに決めます 息子さんは、受け入れ拒否をした人がどんな気持ちでそうしたかについて考えます。「避難所にいるほかの人たちや、そこで働いている人たちは、みんなホームレスの人を受け入れたくないはずだと考えたから、追い返したんじゃないか。そうだとしたら、その人は自分勝手なのではなく『コミュニティの中で共に生活している人々の集団=社会』を慮っての判断だったのではないか」と考えます さらに「ホームレスを追い返した人は、避難所という社会を信じていないのではないか」と考察します これについて、ブレイディさんは、「ホームレスを受け入れなかった避難所はメディアや一般の人々からも激しく非難されることになった そうなることが予見できなかった避難所の職員は、社会を見誤っていた、というか、見くびっていたのだ 逆にその職員が、社会の人々と同じように感じるはずだと信じることができれば、社会には必ず自分の決断を後押しする人々もいると信じることができれば、たとえ規則や慣習がどうなっていようとも、現場や個人の判断で誰かの命を守ることはできるはずなのである」と語ります。ブレイディさんは、息子さんが選んだテーマが5分間のスピーチのテーマとしては大き過ぎることから、「難しいことはバシッと言い切れる結論にはならない、分からないって正直に終わるものリアルでいい」とアドヴァイスします

なお、スピーチ原稿の書き方の「5S」というメソッドとは次のようなものだと説明しています

①Situation (聞き手が想像できるようなシーンを設定して議論を始める)

②Strongest(演説の最も重要な主張を提示する)

③Story(個人の経験談を用いて自分の主張を裏付ける)

④Shut  down(反論を封じ込める)

⑤Solution(処方箋を提案する)

中学生が自分でテーマを決め、上記の「5S」に基づいて5分間のスピーチ原稿を書き上げて、同級生の前で読み上げるのです さすがは”グレイト” ブリテンです

一方、「ビートルズの全メンバーの名前を挙げよ」という問題が出るのは英国らしいな、と思いました ところが息子さんはジョン・レノンの名前を間違えてしまいます 音楽好きが高じて英国に渡ったほどのパンク・ロックのブレイディさんは「ニール・レノンって誰なのよ」と叫びます。彼女は「自分の息子がジョン・レノンの名前を間違えたという事実にわたしはとっさには対峙できなかった。12年間の養育法はすべて間違っていたのかとさえ思った」と嘆いています

「考えさせられた」と思った次には脱力系ギャグが待っている そんなところもこの本の魅力です

ブレイディさんが これまでさんざん批判してきた緊縮財政の「保守党」が政権を降り、「労働党」政権が誕生しました これから英国はどうなっていくのか、その中でブレイディさんと息子さんはどのように生きていくのでしょうか・・・早くも次の「3」が待ち遠しい思いです


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