人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭2日目②」~5月3日のリポートその2

2015年05月04日 09時22分32秒 | 日記

4日(月・休)その2.「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015」第2日目(3日)の後半3公演について書きます

 

          

 

午後3時45分からホールB7で開かれた「あふれる想い~シューベルトの最晩年」(公演番号224)を聴きました プログラムは①シューベルト「弦楽五重奏曲」です。演奏はアルテオ弦楽四重奏団+ヴィオラ=オーレリアン・パスカルです.弦楽五重奏曲と言えば,たとえばモーツアルトのように弦楽四重奏曲にヴィオラを加えたスタイルが一般的ですが,シューベルトはヴィオラの代わりにチェロを加えています つまりヴァイオリン2,ヴィオラ1,チェロ2という組み合わせです.この曲の完成は1828年8~9月頃と考えられていますが,この年の11月に彼は”腸チフス”らしい病気で死去しているので最晩年の曲と言うことになります.それにしても享年31歳とは早すぎます

アルデオ弦楽四重奏団は女性のみ4人のグループですが,2001年にパリ国立音楽院の中で結成されました.西洋人と東洋人各2人という珍しい組み合わせです 助太刀の黒一点パスカルはパリ国立音楽院に学ぶ若者です

自席は11列31番,右ブロック左通路側席です.会場はほぼ満席 拍手の中5人が登場,第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」に入ります.静かに始まりますがシューベルト特有の息の長いメロディーが綿々と続きます 第1楽章が中盤に差し掛かろうとした時,急に揺れを感じました.会場がざわつきます.隣の中年男性が「あ,地震だ」と声にします すぐに時計を見ると3時55分でした.ステージ上の奏者たちも気が付いたのだと思います.正面のチェロ奏者が不安そうな顔で演奏を続けています.震度3くらいではないか,と感じました

その後余震もなく,1時間近くもかかるシューベルト晩年の大作「弦楽五重奏曲」の演奏を無事に終えました とくに第2楽章「アダージョ」のナイーヴな演奏が印象に残っています.余震でなく余韻に浸ることができて良かったと思いました

 

          

 

次に午後6時半からホールCで開かれた「ロシアのパシオン~チャイコフスキーの超名曲」(公演番号245)を聴きました プログラムは①N.チェレプニン「遠き王女のための前奏曲」,②チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ長調」。出演は、ピアノ=ベアトリーチェ・ラナ、アジス・ショハキモフ指揮デュッセルドルフ交響楽団です

自席は3階4列39番,右ブロック左から4つ入った席です.会場は文字通り満席 この日演奏するデュッセルドルフ交響楽団はドイツで2番目に古い市民オーケストラとのことで,かつてメンデルスゾーンやシューマンが音楽総監督を務めていたこともあるそうです 指揮のショハキモフは1988年,ウズベキスタンの生まれで,マーラー国際指揮者コンクール2位に入賞しています

オケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという態勢をとります

1曲目の「遠き王女のための前奏曲」は,1873年サンクト・ペテルブルク生まれのチェレプニンが,「遠き王女」という劇のために作曲した付随音楽です.リムスキー・コルサコフの弟子ということもあって,色彩感豊かな曲想が展開します

ピアノがセンターに運ばれ,金ぴかのゴージャスな衣装に身を包まれたベアトリーチェ・ラナの登場です 1993年生まれといいますから弱冠22歳です.モントリオール国際コンクールで優勝,ヴァン・クライバーン国際コンクール第2位入賞など輝かしい受賞歴の持ち主です

ショハキモフのタクトで第1楽章がホルンによる勇壮なテーマで開始されます.この曲はスケールの大きさにおいてベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番”皇帝”と1,2位を争う名曲ですが,一定レベル以上の技術があれば,誰が弾いても”名演奏”に聴こえるので,どこで他者と差別化して個性を発揮するのかが難しいとも言えます

彼女をサポートするオケを見ると,確かに管楽器は「市民オケ」という性格上,抜群に上手いところまでは達していないかも知れませんが,それでもなかなか聴かせます 弦楽器では,局面で独奏チェロが活躍しますが,このチェロが素晴らしい活躍です

ラナの演奏は,速いパッセージのところはとにかく”速い”というのが特徴かも知れません とくに第4楽章の終盤におけるラナの演奏は,「これほど速く弾いた人は見たことがない」と思うほど,超高速でしかも正確でした

終演後は拍手とブラボーの嵐でしたが,指揮者が首席チェリストを称えて立たせようとしましたが,彼は立たずに,弓でラナの方を指して,「賞賛されるべきは彼女だよ」とでも言いたげの表情でした.ラナも良かったけれど,このチェリストも素晴らしかった

 

          

 

2日目の最後は午後8時半からホールAで開かれた「受難曲の傑作~バッハの金字塔”ヨハネ”」(公演番号216)を聴きました プログラムはJ.S.バッハの「ヨハネ受難曲BWV245」。演奏はミシェル・コルボ指揮ローザンヌ声楽・管楽アンサンブルです

 

          

 

私は毎年のようにLFJ音楽祭でミシェル・コルボの指揮でバッハの受難曲を聴いていますが,その都度,深い感銘を受けてきました 今回も楽しみにしていました

自席は1階19列11番,左ブロック右から1つ入った席です.会場は1階後方左右席が多少の空席がある程度でしょうか.5,000人規模の大ホールにしては良くぞ入ったと言うべきでしょう

LFJ音楽祭では会場入り口で,その公演のプログラム(ペラ1枚の簡単なもの)が配られますが,この公演のプログラムを見てオヤッ?と思いました 出演者=ローザンヌ声楽・管楽アンサンブル,ミシェル・コルボ(指揮)とありますが,ソリストの名前が書かれていません バッハ・コレギウム・ジャパンのコンサートでは「ソリストも合唱の一人」という位置付けを取っていますが,それでもソリストの名前は書きます.案内で「歌詞カードは別売りしている」旨をアナウンスしていましたが,そちらに書かれていたのでしょうか?誰もが手に入れるプログラムにソリストの名前くらいは入れるべきでしょう.スペースは十分にあるのですから

 

          

                 ホールAの入り口に向かう人たち  

 

と言う訳で,オーケストラと合唱のメンバーが登場し,ソリストの5人がコルボとともに登場したのですが,ソリストが誰なのか一人も分かりません 昨年まではこんなことはなかったと思います.非常に残念です.来年以降の改善に期待したいと思います

コルボの指揮で受難曲が始まります.曲の冒頭の合唱とオケの演奏を聴いていて,「いつもバッハ・コレギウム・ジャパンで聴いているヨハネとは違うな」と思いました BCJの場合は,音楽表現がより明確というか,合唱,オケの音が分離して聴き取れるというか,メリハリが効いているというか,そういう印象があるのですが,コルボによるローザンヌの演奏はオケと合唱が混然一体となって聴こえてくるという印象があります

考えてみると,そのように聴こえるのは①合唱はローザンヌの方が総勢33人で,BCJの方はその半数くらいであること,したがって人数が少ないBCJの方が透明感のある合唱が聴けるということ,②鈴木雅明+BCJの方は若干速めのテンポで進めるのに対し,コルボの方はかなりゆったりしたテンポで演奏している,というのが原因ではないか,と思いました.もちろん,これは聴衆ひとりひとりの受け止め方が違うと思います

名前は知らないけれど,あのエヴァンゲリスト(福音史家)を歌ったテノール歌手は素晴らしかった BCJで聴くテュルクに勝るとも劣らない素晴らしいパフォーマンスでした 小柄で黒髪のソプラノ歌手も澄んだ美しい声でバッハを歌い上げました もちろん,カウンターテナーを含めた3人のソリストも,それぞれがバッハに真摯に対峙し素晴らしい歌声を聴かせてくれました

バックを務めた器楽アンサンブルでは何と言ってもオーボエ(形を見るとコールアングレか?),ファゴット,フルートといった管楽器が抜群のパフォーマンスを見せてくれたし,弦楽器ではヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロからエンド・ピンを外したような楽器)が受難曲の悲しみを湛えた良い演奏でした

2時間に及ぶヨハネ受難曲が終わると会場は興奮の坩堝です そこかしこでスタンディング・オベーションが見られます 3日間のマラソン・コンサートの真っ最中の私も,途中で「休憩時間がないのは辛いな・・・」と弱音を吐きそうになりましたが,それでは弱音受難曲になってしまうぞ,と思い直して最後まで聴き通しました

やっぱりバッハは偉大である,ということをあらためて感じさせられたコルボ+ローザンヌの演奏でした

 

          

 

さて,速いもので今年のラ・フォル・ジュルネ音楽祭も今日で終わり.私は今日も6公演を聴きます.早ければ今夜のうちに前半の3公演をごしょうかいできると思います.合言葉は「オレは寝てはならぬ」

 

          

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「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭2日目①」~5月3日のリポートその1

2015年05月04日 01時27分51秒 | 日記

4日(月・休)。わが家に来てから207日目を迎え,風船を膨らませているモコタロです 

 

          

       風船を膨らませてんじゃなくて 食べてんだよ ああフウセンのトモシビ

 

  閑話休題  

 

「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015」第2日目の昨日も6公演聴きました ここでは前半の3公演について書きます

 

          

 

午前10時半から東京国際フォーラム・ホールB7で「恋の物語~シューマンによる恋愛物語」(公演番号221)を聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「無言歌」より4曲、②同「ロンド・カプリチオーソ」、③シューマン「クライスレリアーナ」。演奏はピアノ=児玉桃です

 

          

 

自席は9列14番,左ブロック右通路側席です.会場はほぼ満席 拍手の中,赤・黒・白を基調とする,分かり易く表現すれば”錦鯉”のような鮮やかな衣装に身を包まれた児玉桃が登場します この人はいつもセンスがいいですね 最初にメンデルスゾーンの48曲ある「無言歌」から,ゆったりとした曲と速めの曲とを交互に4曲演奏し,挨拶代わりとしました 次いで同じメンデルスゾーンの「ロンド・カプリチオーソ」を演奏しました.ちょっとショパン風な曲想ですが,終盤ではメンデルスゾーン特有の”妖精”が踊ります

最後に演奏されたシューマン「クライスレリアーナ」がこの日のメインです この頃20代後半だったシューマンは,クララとの結婚を彼女の父親から反対され,その苦悩を音楽にぶつけることによって数々の名作を生んでいきました この曲もその一つで,第1楽章に象徴されるように激情的な音楽が展開されます.児玉桃は鮮やかにシューマンの苦悩を表出します

 

          

          

          

次に正午からホールB5で「パシオンの邂逅~バッハと現代が交差する声楽空間」(公演番号232)を聴きました プログラムは①ペルト「鹿の叫び」、②J.S.バッハ「3声のシンフォニアより第11番ト短調」、③ペルト「そしてパリサイ人の一人が」、④同「アリーナのために」,⑤同「ヴィルヘンシータ」,⑥バッハ「イタリア協奏曲」より第2楽章,⑦ぺルト「カノンによる祈りの歌」です 演奏はピアノ:クレール=マリ・ルゲ、合唱:ヴォックス・クラマンティス,指揮:ヤーン=エイク・トゥルヴェです

会場のホールB5は,一昨年LFJで聴いた時はもっと広かったのですが,今回会場に入ってみたらすごく狭い感じがしました おそらく半分に仕切ったのだと思います 自席は5列41番,右ブロック右通路側席です.会場は満席 フランスのピアニスト,クレール=マリ・ルゲとヴォックス・クラマンティスの面々が,指揮者ヤン=エイク・トゥルヴェとともに登場します この合唱団は男8人,女6人から成ります.この日のプログラムはドイツの大家バッハ(1685-1750)とエストニアの作曲家ぺルト(1935~)の曲を交互に演奏する企画ですが,それぞれの時代を反映するかのように,メンバーの半数は楽譜を,半数は電子ブックを見ながら歌います ぺルトの曲は,いずれも合唱のみのアカペラですが,グレゴリオ聖歌を聴いているような錯覚に陥ります 間に挟まれたルゲのピアノ・ソロによるバッハの曲が違和感なく耳に入ってきます ぺルトの良いところは,同じ現代音楽でもシェーンベルクやベルクのような無調音楽に陥っていない所だと思います

 

          

 

次に午後2時15分からホールAで「恋する作曲家たち~ベートーヴェンの恋の至福」)公演番号213)を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」で、演奏はヴァイオリン=オーギュスタン・デュメイ、ロベルト・トレヴィーノ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィアです というのは当初発表のプログラムです

 

          

 

ところが,昨日「コンサートは何が起こるか分からない」と書いたばかりなのに,またしても有り得ないことが起こりました ホールAに行くと,下の案内が掲示されていました.

 

          

 

「何だこりゃ」です.はっきり言って,この公演はオーギュスタン・デュメイの演奏を聴くためにチケットを買った聴衆が多かったのではないかと想像します それが開演直前になって”出演者変更のご案内”で済まされるのですからたまったものではありません 「払い戻しに応じます」という掲示もありましたが,実際に行動に移した人はほんの一握りの人だったでしょう 苦労して手に入れたチケットを払い戻したって,空き時間をどう過ごしたらいいのよ?というのが本音でしょう

さて,そのピンチヒッターのオリヴィエ・シャルリエ氏ですが,上のお知らせでは,2011年にオーケストラ・アンサンブル金沢とベートーヴェンの協奏曲を演奏した程度のことしか分かりません.いつどこで生まれ,どこで学んだのかといった基本的な情報が一切明らかにされていません デュメイの代演ですからいい加減な人でないことは確かでしょうが,情報開示があまりにも不親切ではないでしょうか

ただ,代演者のシャルリエ氏の立場で今回のアクシデントを見ると,”他人のピンチは自分のチャンス”になるのです 音楽の世界では第一線のアーティストが急きょ出演出来なくなった時の代演によって世界的に名前が売れて急成長を遂げた人も少なくありません

さて,シンフォニア・ヴァルソヴィアのメンバーが登場し配置に着きます.指揮者トレヴィーノとともに登場したシャルリエ氏は髪を後ろで束ね精悍な顔をした,まるで日本の武士のような雰囲気のヴァイオリニストです 払い戻しをしなかった多くの聴衆にとっては「お手並み拝見」といったところです

マルタン氏はデュメイがフランコ・ベルギー派の音楽家であることから,お知らせでシャルリー氏は「フランコ・ベルギー派の美しい音」と紹介したのでしょうが,それはあながちウソではありませんでした とくに第1楽章と第3楽章におけるカデンツァは見事のひと言でした チケットをキャンセルしなかった聴衆の多くが「私はシャルリエ」というプラカードを掲げて歓迎した,かどうかは分かりません.が,私としては「新たな才能を見い出した」と自分を納得させています

 

          

 

3日に聴いた6公演のうち後半の3公演については,追ってご紹介します

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