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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイングでプッチーニ「トスカ」を観る~第1幕、第2幕の主役はスカルピアか!?

2013年12月13日 07時01分27秒 | 日記

13日(金)昨日休暇を取って、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、プッチーニ「トスカ」を観ました キャストはヒロインのトスカにパトリシア・ラセット(ソプラノ)、カヴァラドッシにロベルト・アラーニャ(テノール)、スカルピアにジョージ・ギャグニッザ(バリトン)、堂守にジョン・デル・カルロ(バスバリトン)ほか、指揮はリッカルド・フリッツァ、演出はリュック・ポンティです この映画は今年11月9日に米メトロポリタン歌劇場で上映された公演のライブ録画映像です

 

          

 

新宿ピカデリーの1番スクリーンは、平日朝10時からの上映とあってか、客足はちらほらといった感じです が、見るからにオペラが好きそうな高齢者揃いです。私はMETライブではいつも左ブロックの後部通路側席を選びます

フリッツァのタクトで第1幕が始まります。冒頭付近でカヴァラドッシ役のアラーニャが、トスカを想って歌う「妙なる調和」を聴いて背筋が寒くなるほど感動を覚えました この人は歌も演技も自然で説得力があります もちろん第3幕で歌う「星は光りぬ」も素晴らしいとしか言いようのない歌唱力でした

ヒロインのトスカを演じ歌ったラセットも、歌だけでなく感情移入した演技力が素晴らしく、観ていてハラハラドキドキさせてくれます 第2幕で歌う「歌に生き、恋に生き」は観ている方が思わず感情移入して身を乗り出してしまいます

演出で気が付いたのは、第2幕の最後の場面です。トスカが「これがトスカの接吻よ!」と言ってスカルピアを刺殺したあと、通常の演出ではトスカがロウソクをスカルピアの頭の両脇に立てて、十字架を彼の胸の上に置いて部屋の外に出ていきます ところが、この演出では、窓から飛び降りようとする仕草を見せますが、思い止まります。そして部屋に置かれていた扇子を発見し、意味ありげに眺め、ソファーに横たわって顔を仰ぐシーンで幕を閉じます

この扇子は、カヴァラドッシがマグダラのマリアのモデルとして壁画に描いていたアッタヴァンティ公爵夫人のものです 夫人は国事犯の兄アンジェロッティの逃亡を助けるため女装して逃走するようにと、その扇子を用意していたのです。ところが、それをスカルピアがトスカの嫉妬心を煽る材料に利用したのでした

トスカが意味ありげにその扇子を眺めながら思っていたのはどんなことだったのか?私は「スカルピアの部屋にこの扇子がある。ということは、彼が私を陥れるためにこれを利用したのだろうか?」と気が付いたのではないかと思います

もう一つの演出の特徴は、最後にトスカが城の見張り塔から飛び降りるシーンです 通常の演出では、足からどっこいしょっと下に飛び降りるのですが、この演出ではトスカが飛び降りようと身体を前方に傾けたところで照明がパッと消えます。観ていてハッとします これは、新国立オペラでノルマ・ファンティー二がトスカを歌った時、スカーフを頭上に掲げて直立不動で倒れ込んでいった演出と同様、鮮烈な印象を残す効果があります

前回ライブビューイングで観た「トスカ」はヒロインをマッティラが歌い、アルバレスがカヴァラドッシを歌いました。演出も今回と同じポンディによるものでした 主役級の3人の歌手のうちグルジア出身のギャグニッザだけが両方の「トスカ」でスカルピアを歌っています これは、権力を笠にトスカをものにしようとする警視総監スカルピアを演じる彼の迫真の演技とドスの効いた歌声を聴けば、誰だって文句の付けようがないでしょう 第1幕と第2幕に限って言えば、このオペラの題名は「トスカ」ではなく「スカルピア」であるとしてもまったく違和感がありません そう思わせるのはギャグニッザがスカルピアを演じ、歌っているからこそです

私は第1幕フィナーレで「テ・デウム」が厳粛に歌われる中、スカルピアが歌う「行け、トスカ」のシーンが大好きです このオペラの最初のクライマックスと言って良いでしょう。ギャグニッザのスカルピアは最高です

もう一人、忘れてはならないのが堂守を歌ったジョン・デル・カルロです 最初は気が付かなかったのですが、彼はMETライブの「セヴィリアの理髪師」でバルトロをコミカルな演技と歌で大喝采を受けたバスバリトンです 残念ながら「トスカ」ではバルトロほどの個性を発揮するシーンはありませんが、ちょっとした仕草が実に味があって好きです

この映画ではMETの看板ソプラノ、ルネ・フレミングが案内役を務め、歌手へのインタビューなどをしていますが、彼女の解説によると、メトロポリタン歌劇場における「トスカ」の上演は今回が929回目とのことです。まさに”苦肉”の凄い記録です また、このオペラでは大掛かりな舞台装置が使われていますが、舞台を動かしているスタッフは85人もいるそうです。一つのオペラを上演するためには多くの人の力が必要とされるのですね オペラの引っ越し公演の入場料が高くなるのも頷けます

METライブ「トスカ」は、幕間のインタビュー、休憩を含めて3時間ちょうどの上映。新宿ピカデリー、銀座東劇ほかで本日までの上映です

 

          

          

コメント (4)
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