人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

山上ジョアン薫のチェロを聴く~紀尾井ニュー・アーティスト・シリーズ

2011年12月14日 06時48分42秒 | 日記

14日(水).昨夕,紀尾井ホールで「紀尾井ニュー・アーティスト・シリーズ」第25回・山上ジョアン薫チェロ・リサイタルを聴きました 会場ロビーでクリスマスツリーが出迎えてくれました

 

              

 

このシリーズは,紀尾井ホールが,いま注目の新しいアーティストを紹介するシリーズで,ハガキで応募して抽選で当たると招待券が送られてくる仕組みになっています.幸い800名に入ったので招待ハガキが送られてきました

開演7時の45分前に紀尾井ホールに着いて指定席券と交換したのですが,すでに1階席はなく,2階席のC2列1番の席が与えられました.2階の2列目まではいいのですが,1番というのは通路から一番遠い奥の席です.最悪です まあ,全席招待なので文句は言えません.会場はほぼ満員です

プログラムは①シューマン「アダージョとアレグロ変イ長調」,②ベートーヴェン「チェロ・ソナタ第4番ハ長調」,③ドヴォルザーク「ボヘミアの森より”森の静けさ”」,④J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調」,⑤ブロッホ「バール・シェム」より第2曲”ニーグン”,⑥ポッパー「ハンガリー狂詩曲」の6曲です

山上ジョアン薫(かおり)は2歳のときにカナダに渡り,3歳からチェロを始め,6歳でソロ・デビューしました.13歳の時にカーティス音楽院に奨学生として入学,19歳で卒業,ボストンのニューイングランド音楽院,ケルン音楽大学で学びました.2010年からアムステルダム・シンフォニエッタの首席チェロ奏者を務めているとのことです

会場が暗くなり,舞台だけが明るくなります.主人公,山上ジョアン薫と伴奏ピアニスト草冬香(くさふゆか)の登場です.山上は白の上に黒のベールのような薄い衣装を纏い,ピアニストの草は濃紺のドレスで登場しました

1曲目のシューマン「アダージョとアレグロ」は,1849年に当初ホルンのための作品として書かれたものですが,チェロの演奏にピッタリの歌心を持った曲です.山上はゆったりと弾き始め美しいメロディーを歌わせます 彼女の演奏が素晴らしいことは言うまでもないことですが,チェロの音そのものが素晴らしいことがわかります 使用楽器は日本人の個人から貸与されている1682年製ジョバンニ・グランチーノとのことです また,ここで気がつくのは,ピアノの草冬香の演奏です.ただの伴奏ではなく,チェロと対等の立場で共に曲を作っていこうという姿勢が現れていて,存在感が際立っています 多くのコンクールに入賞し,現在,東京藝大でも教えているとのことです.

2曲目のベートーヴェン「チェロ・ソナタ第4番ハ長調」は,1815年夏に作曲されました.古典的な第1楽章,第2楽章という楽章構成を取らず.幻想曲のようなソナタになっています.後半のチェロとピアノの対話は絶妙でした

3曲目のドヴォルザーク「森の静けさ」はピアノ連弾用の組曲から編曲された曲ですが,幻想的な,チェロにピッタリの音楽です

休憩後の第1曲目,バッハ「無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調」は,プレリュード,アルマンド,クーラント,サラバンド,ブレー,ジーグから成ります.この曲は彼がケーテン宮廷楽長を務めていた1720年ごろの作品ですが,通奏低音楽器としてのチェロから,無伴奏のチェロ1本にメロディーを託し,無限大の宇宙を表現した曲として認められています

山上は頭を左右に振ってリズムを取りながらチェロを弾き,バッハの世界を表現します.チェロ1本によってバッハの深い世界が現れます

ブロッホは1880年スイス生まれでアメリカに移住したユダヤ人作曲家です.「組曲バール・シェム」から第2曲”ニーグン”は,もともとヴァイオリンとピアノのための曲ですが,このニーグン(即興)はしばしばチェロでも演奏されるとのことです.山上はこの曲でも,チェロをよく歌わせて聴かせます

ポッパーは,最初はヴァイオリンを弾いていましたが,プラハの音楽院で学生数が少なかったという理由でチェロ科に入れられたそうです しかし,目覚しい勢いで上達して25歳でウィーン宮廷劇場管弦楽団の首席チェロ奏者に就任したとのこと 最初のうちは情緒たっぷりに,そして後半はテンポアップしてチャルダーシュのような軽快な音楽「ハンガリー狂詩曲」を奏でます.チェロとピアノのコンビネーションが見事です

終演に際して,会場から花束  が演奏者に渡されました.赤い花が山上に,白い花が草に.そして,アンコールとなりました.山上が,多分英語でアンコール曲を言ったのですが,聞き取れませんでした.この時あらためて思ったのは,彼女は日本人の名前を持っているけれども日本語は話せないのではないか,ということです.2歳でカナダに渡って,それ以来日本に帰国して住んでいない訳ですから グローバルですね・・・・・・

あとでロビーの掲示を見て分かったのですが,アンコール曲はラヴェルの「ハヴァネラ形式による小品」でした.これもチェロにピッタリの曲でした

鳴り止まない拍手に,2曲目を演奏することになったのですが,ピアニストの草が山上に何やら聞いています.多分こんなやり取りだったのではないかと思います.

「2曲目は何を演奏するんでしたっけ?」「ラ〇〇ニ〇フのボ〇リ〇スよ」「えっ?大変!ここにないわ!楽譜取りに行かなくっちゃ

草が楽譜を持ってピアノに戻ったときは拍手喝さいでした 2人の楽譜が揃ったところで2曲目のアンコール,ラフマニノフ「ボカリース」が始まりました.この曲ほどチェロにピッタリの曲も珍しいでしょう.哀愁いっぱいのメロディーをしみじみと演奏しました

今回のコンサートは,主役の山上が素晴らしく,また,伴奏の草が,ただの雑草ではなく,名のある草だったことから,より一層素晴らしいコンサートになったのではないかと思います

 

              

コメント (2)
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