人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでプッチーニ「トスカ」初日公演を観る ~ ジョイス・エル=コーリー、テオドール・イリンカイ、青山貴、妻屋秀和、マウリツィオ・ベニーニ ✕ 東京フィルにブラボー!

2024年07月07日 00時13分05秒 | 日記

7日(日)。わが家に来てから今日で3463日目を迎え、バイデン米大統領(81)は5日、米ABCのインタビューに応じ、高齢不安が高まっていることに対し、「いまも体調は良い」と語り、選挙戦からの撤退を否定した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     トランプとの討論会での汚名を返上するには 腕立て伏せ10回位見せないとダメ?

         

昨日、新国立劇場「オペラパレス」でプッチーニ「トスカ」を観ました 出演はトスカ=ジョイス・エル=コーリー、カヴァラドッシ=テオドール・イリンカイ、スカルピア=青山貴(二カラズ・ラグヴィラ―ヴァの代役)、アンジェロッティ=妻屋秀和、スポレッタ=糸賀修平、シャルローネ=大塚博章、堂守=志村文彦、看守=龍進一郎、羊飼い=前川依子。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、児童合唱=TOKYOFM少年合唱団、指揮=マウリツィオ・ベニーニ、演出=アントネッロ・マダウ・ディアツ(イタリア出身。2015年8月没)です

     

「トスカ」はジャコモ・プッチーニ(1858-1924)がヴィクトリアン・サルドゥの同名の劇によるジュゼッペ・ジャコーザとルイージ・イリッカの台本に基づき1896年から1900年にかけて作曲、1900年にローマのコスタンツィ劇場で初演された全3幕から成るオペラです

物語の舞台は1800年6月、オーストリア支配下のローマ 共和派の画家カヴァラドッシは、脱獄した友人アンジェロッティを匿った罪で捕らえられる トスカをわがものにしようと狙う警視総監スカルピアは、トスカに分かるように恋人カヴァラドッシを拷問し、命を救う代償にトスカの体を要求する トスカは取引に応じたふりをして、カヴァラドッシを形だけの死刑とする約束を取り付け、出国許可証を手にするや否やナイフでスカルピアを刺し殺す 明け方、見せかけのはずの銃殺刑が行われるが、カヴァラドッシは実弾に倒れて死ぬ 追い詰められたトスカは城の屋上から身を投げる

     

私が新国立劇場で「トスカ」を観るのは2002年、2003年、2009年、2012年、2015年、2018年、2021年に次いで今回が8度目です 演出はいずれもアントネッロ・マダウ・ディアツです

ロビーに入ると「スカルピア役変更のお知らせ」が掲示されていました プログラム冊子には当初の二カラズ・ラグヴィラ―ヴァの名前が載っているので、急な変更だったと思われます

     

人気のオペラの初日公演ということもあってか、会場はほぼ満席です

指揮者のマウリツィオ・ベニーニは1952年イタリア生まれ。METライブビューイングでお馴染みのマエストロです 米メトロポリタン歌劇場をはじめパリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤルオペラなど世界各国のオペラハウスでイタリアオペラを中心に指揮を採っています 新国立オペラでは1998年「セヴィリアの理髪師」、2023年「リゴレット」で絶賛を博しました

ベニーニの指揮で「スカルピアの動機」の演奏により幕が開きます 最初のこの数小節でベニーニの凄さが伝わってきます まるでこのオペラの陰の主人公は悪漢スカルピアであるかのように響きます

歌手陣は総じて好調でした

トスカ役のジョイス・エル=コーリーはレバノン生まれ、カナダ育ちのソプラノです カルメン、トスカ、ノルマ、蝶々夫人、ヴィオレッタなど30以上の役で世界の主要な歌劇場で歌っています 第2幕のアリア「歌に生き、愛に生き」をはじめ、完璧な声量コントロールによるリリカルな美声で聴衆を魅了しました 演技力も十分です

カヴァラドッシ役のテオドール・イリンカイはルーマニア出身のテノールです ヨーロッパの主要歌劇場を中心に活躍しており、新国立オペラではオペラ夏の祭典「トゥーランドット」カラフを歌っています 声が良く通り、最強音も無理なく歌いこなしていました

スカルピア役の青山貴は東京藝大大学院修了、新国立オペラ研修所第4期修了生のバリトンです 急な代役でしたが、歌唱に説得力がありました 欲を言えば、悪漢スカルピアらしい狡猾さ、厭らしさが表現できれば完璧です

アンジェロッティ役の妻屋秀和は東京藝大大学院修了のバスです ライプツィヒ歌劇場、ワイマールのドイツ国民劇場の専属歌手を歴任。新国立オペラの常連歌手で、どんな役柄も安心して聴ける歌手です。この日も存在感を示しました

     

アントネッロ・マダウ=ディアツの演出・舞台作りは極めてオーソドックスで、好感が持てます 何回観ても感動するのは第1幕のラストです トスカが別荘に向かうために退場した後、「テ・デウム」が演奏される中、スカルピアが悪辣な心情をアリア「行け、トスカ」で歌い上げるシーンです 荘厳な合唱と極悪非道のソロという両極端が統合され、最後にスカルピアの動機が最強音で鳴り響いて幕が下ります その瞬間、照明が落ちますが、鳥肌が立ちました

また、この演出で印象的なのは第3幕のラストです カヴァラドッシが銃殺された後、屋上で追手に追い詰められたトスカが「おお、スカルピア! 神の御前で!」と叫んで城の屋上から身を投げるシーンです   この時、トスカは舞台の奥に向かって身を投げるのですが、足から飛び降りるのではなく、直立のまま前に倒れ込むのです    この演出の素晴らしさに気づかされたのは、一番最初に観た2002年5月の公演で、ノルマ・ファンティー二がトスカを歌った時でした この時は確か彼女は右手に赤いチーフを持ち、上に掲げて倒れ込んでいきました 今なお そのシーンが目に焼き付いて離れません その後、彼女は2012年にもトスカ役で出演しましたが、同じ演出でした その後、ヒロインは毎回変わりましたが、赤いチーフを使った演出は、今回を含めて見られていません 私にとってノルマ・ファンティー二のトスカは特別です

それにしても素晴らしかったのはマウリツィオ・ベニーニ指揮東京フィルの演奏です 歌手に寄り添いつつ、トスカの嫉妬や苦しみを、カヴァラドッシの正義感を、スカルピアの狡猾さを自ら歌い上げていました

ところでプログラム冊子(1200円)に推理小説作家の深水黎一郎氏が「『トスカ』の謎」というテーマで小文を書いています その一つに「スカルピアは何故食事をしているのか?」(第2幕冒頭シーン)という”謎”を取り上げています 彼は次のように書いています

「私見だが、それは作劇上の理由である この後トスカはスカルピアを刺殺するわけだが、トスカが最初から凶器を携帯していたのでは、犯行は計画的ということになり、観客のトスカに対する同情の念は薄れてしまう あくまでトスカは追い詰められて、窮鼠猫を嚙む形で犯行に及ばねばならない そう、このスカルピアの食事は、トスカにこの場で肉切り用のナイフを”現地調達”させるために必要だったのだ

この説はその通りなのでしょう オペラとは言えリアリティが必要です ところで深水黎一郎氏(1963年山形生まれ)はかなりのオペラ通で、「トスカの接吻」(講談社文庫)を著しています 同書を読んだ感想を2012年12月26日付toraブログに書いていますので、興味のある方はご覧ください

さて、初日公演のこの日は 幕間のカーテンコールもあり、終演は予定より15分超過の17時10分頃でした

     


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