人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

第17回江副育英会コンサートを聴く~イイノホール

2011年12月19日 06時29分53秒 | 日記

19日(月).昨日,内幸町のイイノホールで第17回江副育英会コンサートを聴いてきました イイノホールへ通じるエレベーターの手前でクリスマスツリーが出迎えてくれました

 

                 

 

出演者は第34回,40回育英会奨学生の田村響(ピアノ),第35回の宮田大(チェロ),同・高木竜馬(ピアノ),第36回の北村朋幹(ピアノ),第37回の黒川侑(ヴァイオリン),第40回の紅一点,二瓶真悠(ヴァイオリン)の6人です

イイノホールで聴くのは今回が2回目です.開演が午後1時半のため時間ぎりぎりに着くとロビーが多くの人でいっぱいでした.要するに,客席の後方にホワイエがあるのを知らない人が多いのです この点は,ホール側がもっとPRしてもいいと思います.ホワイエに行って広大なガラスを通して日比谷公園を見ると,紅葉が終わりかけている風景がみられました

コンサート会場に行って,何が腹が立つかというと,ホワイエでサービスされるコーヒーの高さです サントリーホールを始め,ほとんどの会場のホワイエではコーヒーが1杯400円ビールやワインは600円です.この高さがクラシック音楽から観客を遠ざける一つの理由になっていると思います.私は,眠気覚ましなど,特別な理由がない限り,コンサート前や休憩時間にホワイエでコーヒーやワインを飲むことはありません.その点,イイノホールでは紙コップとはいえコーヒーが1杯200円です.他のホールにない良心を感じます

プログラムを見ると,演奏者と演奏曲目の紹介だけで,「江副育英会」がどんな会でどういう趣旨でこのコンサートを開いているのかなどの説明が一切ありません.このコンサートを聴きに来る人は当然それを知っていることを前提にプログラムを作っているとしか考えられません 第一,江副とはだれでしょうか・・・・・・・・・・・・・その答えはすぐ近くにありました

自席は1階L列10番,センターブロックの前から12列目の通路側です.その2つ前の席にその人が座っていました.江副浩正氏.リクルートの創設者,リクルート事件の当事者.後で調べて分かったのは江副育英会理事長です あえて,名前は前面に出さないことにしているようですね

さて,コンサートのトップバッターは紅一点の出場者,1991年生まれで10年の東京音楽コンクール弦楽器部門第1位,現在東京藝大在学中の二瓶真悠(にへいまゆ)です.長い髪を後ろで束ね,薄紫のドレスで登場しました

演奏曲目はフランクの「ヴァイオリン・ソナタ」.この曲は1886年に作曲され,初演は同年,同じベルギーの名ヴァイオリン奏者イザイの手で行われました.二瓶は美しい一方で気だるい旋律を朗々と奏でていきます

第1楽章の途中,突然,左ブロックの真ん中あたりの席から,ケータイの「ブー,ブー,ブー」という着信音が鳴り始めました.なかなか鳴り止みません 張本人はまさか自分のケータイだとは思っていないのでしょう.幸い,フォルテの部分だったのでそれ程目立ちませんでしたが,迷惑です.若さ溢れる良い演奏だけに,こういうアクシデントがあると台無しになってしまい,がっかりします

2番手の高木竜馬は1992年生まれ.05年のキエフ第6回ホロヴィッツ記念国際ピアノコンクールの14歳以下で第1位,現在ウィーン国立音楽大学在学中です.舞台に登場しピアノの前まで来て,ピアノの上に譜面台を置く蓋が外されていないのを見て,自分で外して舞台袖に運んでいきました.再度登場した時は拍手喝さいを受けていました.その部分を外すと開放面積が大きくなって一層響きが良くなるのでしょう

演奏曲目はプロコフィエフの「ピアノ・ソナタ第7番」です.この曲は1939年に着手され1942年に完成,翌年リヒテルによってモスクワで初演されました.高木はピアノを打楽器のように扱い激しいリズムを刻みます

第2楽章の途中で,今度は右側後ろの席から「トゥルルル・・・・」というケータイの着信音が聞こえてきました.本当に信じられません まだ,こういう古典的な常識ハズレがいるのですね.情けないです.もう二度と来ないでほしいと思います

前半最後の出演者は1990年生まれで06年の日本音楽コンクールで第1位,現在ブリュッセル王立音楽院在籍の黒川侑(ゆう)です.演奏曲目は①イザイ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番」,②ラヴェル「ツィガーヌ」の2曲です.イザイもラヴェルも共通して感じたのは,鋭いテクニックと音色の美しさです 曲自体のもつ特性なのかも知れませんが,とにかくヴァイオリンの音が美しく響きます.ラヴェルを伴奏した北村朋幹のピアノも良かったです

休憩後の最初は1991年生まれ,05年の東京音楽コンクール第1位,現在ベルリン芸術大学在籍の北村朋幹(ともき)です.演奏曲目はバッハの「フランス組曲第5番ト長調」.アルマンド,クーラント,サラバンド,ガヴォット,ブーレ,ルール,ジーグの7曲から成ります.北村はピアノを弾くのが楽しくて仕方がないといった風情で生き生きとしたテンポで歌わせます

次の演奏者,宮田大(だい)は1986年生まれ.09年のロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで優勝しました.曲目はシューマンの「幻想小曲集」です.もともとクラリネットとピアノのために書かれたといいますが,実際聴いてみるとチェロにピッタリの曲です.宮田は抒情豊かにゆったりと情熱を持って奏でます

この日の”トリ”を務めるのは1986年生まれ,07年のロン・ティボー国際コンクールで弱冠20歳で第1位を獲得した田村響(ひびき)です.演奏曲目はラフマニノフ「ピアノ・ソナタ第2番」.この曲は1913年に作曲され,1916年にモスクワで作曲者自身のピアノで初演されました

冒頭から超絶技巧的な迫力ある音楽が押し寄せてきて,圧倒されます ピアニストに有利な大きな手の持ち主だったラフマニノフにとっては,自分の力を聴衆に見せ付けるのに十分な魅力を持った曲だったでしょう.田村は,ときにホールの残響特性を考慮してペダルを有効に使い分け,ラフマニノフの世界を展開します.20歳代中頃にして,もはや大家の風格です

この日のコンサートは,さすがに若手ながら実力者揃いで聴き応えがありました.ケータイの邪魔がなければもっと快適なコンサートだったと思います

 

                           

コメント (4)
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