人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

佐渡裕指揮東京フィルでベートーヴェン「第9」を聴く~第38回響きの森クラシック・シリーズ

2011年12月11日 07時05分07秒 | 日記

11日(日).昨日,文京シビックホールで,東京フィル第38回響きの森クラシック・シリーズを聴いてきました ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付」で,指揮は佐渡裕,合唱は東京オペラシンガーズです.

指揮台に,開かれたスコアが置かれています.佐渡裕ほどの指揮者がスコアを見て第9を演奏するとは思えません 結局,佐渡は最後までスコアをめくることはありませんでした.お守り代わりだったのでしょうか?

コンマスはソロ・コンサートマスターの荒井英治.佐渡の希望によるものかどうかは分かりませんが,佐渡を指揮者に迎えた東フィルの力の入れようがわかります チューニングが済んで指揮者の登場です.佐渡は背が高く大柄なので見栄えがします.最近ベルリンフィルの定期演奏会を振ってから,見るからに自信に満ちています

佐渡のタクトのもと第1楽章の始まり.どこからともなく音楽が湧き出てくるような神秘的な出だしから,徐々に壮大な宇宙が展開します.佐渡は大きなアクションでオケをドライブします

第2楽章は交響曲史に残る鋭いスケルツォ.弦楽器とティンパニとの掛け合いが特徴的ですこの楽章終了後,ソリストが入場します.ソプラノ=横山恵子,アルト=谷口睦美,テノール=西村悟,バリトン=甲斐栄次郎という面々.横山はグリーンのドレス,谷口はブルーのドレスで颯爽の登場です

そして,第3楽章「アダージョ・モルト・エ・カンタービレ」.佐渡はこの楽章では指揮棒を持たず,両手で楽員に指示を送りました(これは第4楽章の途中まで続きました.タクトがなくてもコンタクトは取れますからね).途中,両手を合わせ祈るような仕草を見せましたが,大震災の被災者に哀悼の意を表したようにも思えました  私は第9ではこの第3楽章が一番好きです.天国的な音楽といえばいいのか,穏やかな心安らぐ音楽がたんたんと続きます

ドイツが西と東に分かれていた頃,西ドイツの映画に「マリア・ブラウンの結婚」というのがありました.第2次世界大戦の終わり,マリアはプラットホームで,戦地から夫を乗せて帰るはずの汽車を待っています.そのシーンで流れていたのが第9の第3楽章でした.マリアにとって,第3楽章は第4楽章「歓喜の歌」=つまり夫との再会=の前触れであり,希望に満ちた楽章なのです しかし,夫は帰らなかった・・・.その音楽の選択は見事だと思いました

第3楽章が終わり,佐渡は,間を置かず第4楽章の”嵐の音楽”を開始します.いままで演奏した3つの楽章のメロディーが現れては打ち消され,チェロとコントラバスによって「喜びの歌」のメロディーが歌われます そして,バリトンの「おお,友よ~」と呼びかけがあって,合唱が加わります.ソプラノの横山,アルトの谷口ともによく通る声で,テノールの西村も好調です

フィナーレはベートーヴェンの指示通り「プレストーアレグロ・アッサイ」という演奏で,レーシングカーがゴールになだれ込んでいくようなスピードでした

佐渡の指揮を見ていると,やはり師匠のバーンスタインによく似ているな,と思います ときに指揮台の上で飛び上がります.そして,アレグロ楽章ではオーケストラの演奏の限界を試すかのごとくドライブをかけます.オーケストラのメンバーもついて行くのが大変だと思いますが,成功した時の喜びはひとしおでしょう

 

          

コメント (2)
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