人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

フォーレ四重奏団を聴く~モーツアルト、ブラームス、フォーレ

2011年12月09日 06時41分54秒 | 日記

9日(金).昨夕,浜離宮朝日ホールでフォーレ四重奏団のコンサートを聴いてきました そもそもこのコンサートのチケットを買った理由は,チラシに「フォーレ・カルテットを聞いたら,誰でも,もう一度聴きたくなる~マルタ・アルゲリッチ」と謳っていたからです アルゲリッチがそう言うからには期待できるアーティストに違いないと確信しました.また,プログラムも①モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番K.493」,②ブラームス「ピアノ四重奏曲第3番」,③フォーレ「ピアノ四重奏曲第1番」という魅力的な3曲だったので迷うことなく買いました

フォーレ四重奏団は,1995年,ドイツ・カールスルーエ音楽大学を卒業した4人=エリカ・ゲルトゼッツァー(ヴァイオリン),サーシャ・フレンブリング(ヴィオラ),コンスタンティン・ハイドリッヒ(チェロ),ディルク・モメルツ(ピアノ)が結成した音楽グル―プです.ケルンで,アルバン・ベルク四重奏団に師事したということです 今回の来日に際してヴィオラのフレンブリングが急病のため来日不能になり,代わりにフォルカー・ヤコブセンが演奏することになりました.

ヴァイオリンが女性で,他のメンバーが男性です.6月に聴いたパシフィカ・カルテットも同じ構成でしたが,違う点は「パシフィカ」が弦楽四重奏団で,「フォーレ」がピアノ四重奏団ということです.

ホワイエではフォーレ四重奏団のCDが”サイン会あります”の掛け声で売っていましたが,ほとんど見向きもされず,売り子の女性が一人寂しく立っていました

会場内に入り1階6列14番に座って舞台を見ると,椅子の高さが違うのに気がつきました.ヴァイオリンが一番高く,次にヴィオラ,そしてチェロという順番になっています.それぞれが演奏しやすい高さに調整した結果なのでしょうが,面白いと思いました

1曲目のモーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調K.493」は,1786年初夏にウィーンで作曲されました.ケッヘル番号でいえばK492の歌劇「フィガロの結婚」に次ぐ,作曲者30歳の時の作品です.明るく楽しい躍動する音楽です メンバーは決して力むことなく,肩の力を抜いてモーツアルトを弾いています.聴いていて「やっぱり,モーツアルトはいいなぁ」と思いました

2曲目のブラームス「ピアノ四重奏曲第3番ハ短調」の冒頭,ピアノの強奏で,頭をガツンと殴られて一気に目が覚めた感じがしました モーツアルトの音楽にいい気持ちでいたのが,一転,ブラームスの”慟哭の音楽”の世界に突き落とされ,あまりに集中力に溢れた演奏に魅了されて,ブラームスの音楽に正面から対峙せざるを得ない状況に置かれました.とにかく凄い演奏です

この曲は1854年から55年(ブラームス21歳)頃に構想され,1856年にいったん完成をみました.その後,改訂作業を行い,決定稿ができたのは1875年,ブラームスが42歳の時でした.この間約20年.彼が交響曲第1番を作曲した際にも同じように構想から完成まで長い年月を要しました.ブラームスは常に慎重ですね

第1楽章「アレグロ」,第2楽章「スケルツォ」の激しい慟哭,第3楽章「アンダンテ」のヴァイオリンとヴィオラの対話の素晴らしさ,これが本物の室内楽というものでしょう ヴァイオリンもチェロもよく歌っています.それに,ピンチヒッターのヴィオラが何と饒舌なことか 常設のグループに臨時に加入したとはとても思えないほど,よく解け合って見事なアンサンブルを実現していました それに,ピアノが音楽全体にアクセントを付けて,素晴らしい演奏を展開していました

休憩時間にホワイエに出ると,あれだけ閑散としていたCD売り場に人々が殺到していて,売り子の女性は孤軍奮闘していました

最後のフォーレ「ピアノ四重奏曲第1番ハ短調」は,1876年ごろに着手され,フォーレが34歳の時に完成,1883年に改訂されました.第1楽章冒頭の濃密なアンサンブルはノーブルと言ってもよいでしょう.全楽章を通じて,ドイツの演奏家にもかかわらず,フランスの香り,ロマンの香りが充満しています

会場一杯の拍手に応えて,メンデルスゾーンの「ピアノ四重奏曲第2番」から第4楽章をアンコールに演奏しましたが,そのスピード感溢れる爽快な演奏に,聴衆は酔いしれました

このカルテットの特徴は,フォルテッシモでも音が汚く濁らないということです.それと,「演奏の良し悪しは,うまいか下手かということではなく,キチンと音楽をやっているかどうかということ」という基準に照らせば,まさに「キチンと音楽をやっている」演奏家集団だということです

マルタ・アルゲリッチの言葉にウソはありませんでした.凄い演奏でした まさに,フォーレ四重奏団の演奏をもう一度聴きたいと思いました.とりあえず1週間以内に彼らのCDを何枚か買っていることでしょう

 

 

            

コメント (2)
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