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明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(430)直視すべき、4号機燃料プール崩壊の可能性

2012年03月19日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120319 23:30)

この間、僕はこの「明日に向けて」の紙面上で、4号機プールの崩壊の可能性
とその破局的な危険性について触れてきましたが、こうした内容をきちんと
報道したテレビ番組を見つけました。以下から見れますので、ぜひご覧になっ
て下さい。また周りの方にも勧めてください。7分37秒の映像です。なおタイ
トルはユーチューブにつけられていたものです。

小出裕章:4号機燃料プールが崩壊すれば日本は"おしまい"です
http://www.youtube.com/watch?v=CezLuBZqd8U&feature=youtu.be

この4号機の危険性について、小出さんは一環して主張してこられました。
とても大切な警鐘を鳴らし続けてくださっていることに感謝の念を感じます。
同時にこのことを単なる「杞憂」に終わらせず、現実的な対応・・・避難訓
練などに結びつけていきたいと切に思います。そのためにもまずはこの現に
ある危険性を、繰り返し周知徹底していく必要があります。


これに関する別の情報もご紹介したいと思います。『週刊文春』3月15日号に
掲載された「東京に『戒厳令』発動 極秘作戦書を独占入手!」という記事
です。昨年3月14日から16日にかけて菅政権が、福島原発の格納容器の崩壊
など「最悪の事態」を覚悟したことが「事故調査委員会」の報告でも明らか
になっているわけですが、このとき、実は自衛隊が極秘作戦をたてて実行に
向かっていたというものです。

しかもこの作戦は「菅首相のリーダーシップによって『最悪のシナリオ』へ
の備えが行われたのではない。折木統幕長の『オレの責任で作る』という言
葉によって、”決死の作戦”がきまったのである」とされています。週刊
文春によれば自衛隊の単独行動だったことになります。

ではその作戦とはどのようなものだったのでしょうか。まずフェーズワンで、
原発サイトから東電社員や作業員を救出することが書かれています。仙台に
スタンバイしているヘリコプーターチヌークが「決死隊」として現場に急行。
これと連動して戦車や装甲車を動かし、ショベル式のステップで作業員を
拾い上げ、ヘリのキャビンに放り込むという作戦です。

フェーズツーでは、陸海空の自衛隊が福島全域での避難作戦を実施。優先的に
原発から半径50キロ圏内で、自力避難できない住民を輸送支援。任務部隊は
中央即応連隊と第一空挺団を選定。避難民の除染は行わず、避難を優先する
とされています。

さらに「あらゆる輸送支援車を活用し、まず、郡山と福島駐屯地へ緊急輸送
支援を行い、さらにそこから宮城県、栃木県、千葉県の駐屯地への後方避難
輸送支援を図る。海上自衛隊と航空自衛隊は輸送機、ヘリポートをフル動員。
海上自衛隊は、護衛艦「ひゅうが」を含む全艦出艦命令を下す」のがこの
段階での作戦内容です。

フェーズスリーでは、「原発1号機から4号機までの原子炉で連鎖的な不測
事態が起き、対処不能となり、さらに膨大な核放射性物質の拡散の蓋然性
が高くなったとき、原発から半径250キロ圏内の治安維持活動を行う。その
範囲は、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県の全域と、神奈川県横浜市の
一部、さらに東京23区全域と多摩地区の一部を含む」とされています。
「週刊文春」は史上最大の避難作戦とこれを評していますが、しかし同誌
が入手した資料には、「治安維持活動」と書かれていることが気になります。

さらにフェーズフォーでは、「決死の石棺作戦」も明記されています。決死
隊を組織し、コンクリートで崩壊した原子炉の封じ込めを行うというのです。


これらを読んで思うことは、いずれもまったくの「絵に書いた餅」に過ぎな
いということです。これだけの大規模な作戦が、事前通告も、演習もなしに
円滑に行われるはずがないからです。しかもこれらの計画は放射線防護の専
門家抜きに急ごしらえで作られています。その意味で実現性の非常に薄い
作戦です。

当時はそれでもいざとなればやらねばならないと計画されたわけですが、幸
いにしてもその発動をまぬがれた今日、なさねばならないのは、こうした広
域の計画をもっと公開してきちんとたて、準備を重ねることです。

特におさえておくべきことは、実際の事故対処では、明らかに自衛隊よりも
東京消防署のハイパーレスキュー隊などの冷却作業の方が、目に見える成果
を上げていたことです。あれがあったからこそ、とりあえずはここまでの
広域避難はしなくても良かった。しかしそれと引き換えに、レスキュー隊の
隊員たちも自衛隊員もかなりの被曝をしてしまいました。被曝の備えなど
まったくなかったからです。

だとするならば、自衛隊の密室的な計画ではなく、消防隊や警察隊を広範に
動員し、作戦計画を作るべきだし、その際、放射線の高い地域に投入される
自衛隊・消防隊・警察隊の放射線防護をいかに行うのかを検討すべきです。
放射線防護を施した消防車や救急車を作る必要があります。今回もそれが
あったらどれほど隊員たちが守れたことか。またその分だけ作業が円滑に
進んだはずです。

そうしたことからはじまり、民間のさまざまな力も活用する相当の作戦計画
を立て、そのための装備を拡充し、訓練を積む必要があります。そもそも自
衛隊だけで運搬できる人員など圧倒的に少数です。民間のさまざまな力が
結集しないと、これだけ大規模な避難などできるわけがない。だからこそ、
一般市民にこうした内容を公開し、準備を進める必要があるのです。

これはどんなにお金をつぎ込んでもやる必要があることです。東日本崩壊、
いや日本崩壊への備えだからです。国民・住民の生命が大規模に危機にさら
されるもっとも蓋然性の高い事態だからです。それすらせずに、さしあたっ
ては可能性のない戦争への備えを続けるのはあまりに愚かなことです。

これに対して、「そんな最悪の事態など起こらない」と決め込んでしまうのは、
3月11日以前に私たちが戻ってしまうことを意味します。あの大震災の前から、
それこそ小出さんや広瀬隆さんなど、少数の方たちが、原発地震災害、津波
災害の危険性を訴えていたわけです。それを取り入れて対処をなしていたら、
今日の私たちのこの苦しみもなかったわけです。

それと同じことが今も言えるのです。4号機のプール崩壊の可能性を直視し、
それへの備えを作り出すこと、この困難な作業から逃げ出さないことこそが
最も大事です。

にもかかわらず、政府は「冷温停止宣言」で、この壮大な責任から逃れよう
としています。対処するのがあまりに困難なので、「ないことにしてしまう」
対処をとっているのです。これではいざとなったとき、再びただ右往左往す
るばかりで、避けられるべき多くの被害が避けられなくなってしまいます。

最低でも市民レベルで、4号機崩壊の可能性をしっかりと見つめ、同時に、
それぞれの原発サイトで、今回のような被害が出る可能性も見つめていきま
しょう。そうして原発災害への対処の学習会を持ち、見識を増やし、準備を
行なっていきましょう。そしてその連なりの中から少しでも行政を下から
動かしていきましょう。そのために紹介した映像等を活用していただけたら
と思います。

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明日に向けて(429)南相馬駅伝・マラソン大会の中止を求めます!(会場周辺は0.6~0.7μSV/h)

2012年03月17日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120317 23:30)

高線量地域のたくさんある福島県内において、昨年11月に強行された「東日本女子
駅伝大会」に続き、再びとんでもない企画が強行されようとしています。「南相馬
ふるさと復興駅伝・マラソン大会」です。しかも女子駅伝が、中学生と高校生と実
業団でチームをくんだことに対し、今度は小学生までもが参加させられようとしてい
ます。とんでもない虐待行為であり、絶対に行なってはならないことです。断固とし
て中止を求めます。

この企画が、子どもたちに対する虐待行為である最大の根拠は、大会主催者が、会場
周辺が放射線管理区域に相当する放射線量であることを知りながら、大会を強行しよ
うとしていることです。大会の案内には「制約事項」と「その他」の項目があります
が、その「その他」の8番目に次のように書いてあります。「会場周辺の放射線量は
0.6~0.7μSV/hです。」

放射線量0.6μSV/hは、放射線管理区域の目安となる数値です。放射線管理区域では
してはならないとされることがあります。1つ、飲み食いすること、2つ、寝ること、
3つ、18歳未満の青年・児童を連れ込むことです。その地域にわざわざ小学生まで招
いてマラソンをさせることは、明確な違法行為であり、傷害行為です。

しかも放射線管理区域にはそれを管轄する事業者に対する次のような規定もあります。
「放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労
働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を
測定しなければならない」。引用はウキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E7%AE%A1%E7%90%86%E5%8C%BA%E5%9F%9F

ところが大会主催者が作り、参加者に強制している「制約事項」の中には次のような
記述があります。「5.私は大会開催中に負傷したり事故に遭遇したり、または発病
した場合、さらにこれが原因で後遺症が発生した場合、その原因の如何を問わず大会
主催者および、大会企画者、関係者に関する一切の責任を免除し、私に対する保障は、
大会側が加入した保険の範囲内であることを了承します。」

では「大会側が加入した保険の範囲」とはどのようなものかを調べようと思っても、
何の記述もなくそれすら分からない。放射線管理区域に相当する地域で小学生らにマラ
ソンをさせ、「負傷したり事故に遭遇したり、または発病した場合、さらにこれが原因
で後遺症が発生した場合、その原因の如何を問わず」大会主催者等の一切の責任を免除
せよというのですから、これはもう本当にひどすぎます。事実上、放射線障害が出ても
関知しないと言い切っているのです。以上の記述は以下から読むことができます。
http://kizuna51.org/image/p1.pdf

このような暴挙は、原発大災害の前には、まったくありえもしなかったことです。ところ
がなしくずし的に「放射線管理区域」の規定が反故にされ、放射線防護のためのあらゆ
る規定が無視される中で、小学生までもが、高線量地域で走らされようとしています。
もちろん小学生たちには、「制約事項」を吟味すること等できないでしょう。それで
高線量地域で走らされようとしているのです。

空間線量が大会側が認めるだけでも0.7μSV/hもあるということは、周辺に確実に放射性
物質が存在しているということです。0.7μSV/hの外部被曝を受けることも危険ですが、
その放射線を発している放射性物質を吸い込み、内部被曝することが数百倍も危険です。
そのような地域では、防護体制を固め、厳重にマスクを着用し、ガラスバッチをつけて
被曝管理を行う必要があるのです。だから「管理区域」に指定されるのです。中身のある
規定なのです。

そこで小学生までにもマラソンをさせることは、明確な傷害行為であり、子どもたちに対
する虐待です。目の前でこんなことが行われることをとても座視できません。繰り返しま
すが断固として中止を求めます。南相馬の子どもたちをみんなで守りましょう!

以下、大会案内を貼り付けておきます。

******************

相双地区活性化を目指し、3月25日に福島県の鹿島カントリー倶楽部を
起点とした「南相馬ふるさと復興駅伝・マラソン大会」を実施します。
 
特定営利活動法人 ふるさと復興・絆協議会(理事長 佐藤信義)は震災後、相双地
区の子供たちをはじめとする地域の人々が力強く走る姿を発信することで、地域の人々、
仮設住宅で過ごしている人々、全国に避難している人々、そして世界から応援してくれ
ている多くの人々へ勇気と元気を届けたいと念じ「南相馬ふるさと復興駅伝・マラソン
大会」を企画しました。

サブタイトルに“Fukushima-51”を掲げ、相双地区の鹿島カントリー倶楽部から勇気の
夢をのせた次の1000年に向け元気と勇気を発信します。Fukushima50(“フクシマ・
フィフテイー“と世界が称賛)+1の “1”は勇気ある子供、地域、日本の未来を表現
し、地域の人々の復興にむけて走る姿を全世界に向けて発信することで、これまで手を
差し伸べてくれた世界中の人々への御礼と共に、力強く誇りある日本の姿と重なって、
地域復興への勇気と自信としたいと考えて実施します。

■イベント詳細; 実行委員会を立ち上げ、実行委員長に桜井勝延南相馬市長をお願いし
ました。子供から大人まで参加出来る内容で、マラソンに関してはどなたでも参加してい
ただけるように配慮し最大ハーフマラソン、最小は小学生の1000メートルまで広く
門戸を広げました。併せて地域の方々3世代で楽しんで頂けるよう出し物や物販などに加
え、援助物資の配布なども関係企業様に依頼中です。
中学生・小学生は参加無料です。

□実施;平成24年3月25日日曜日午前8時開会予定
□コース;
出発点:福島県南相馬市鹿島区塩崎字蛇沼のゴルフ場鹿島カントリー倶楽部
折り返し地点:福島県南相馬市鹿島区牛河内真野川河川敷付近

■問い合わせ
「南相馬ふるさと復興駅伝・マラソン大会」事務局
電話:03-5379-3700 FAX:03-3353-6881
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-24-7 ルネ御苑プラザ4F 
お問合せメールアドレス marathon@kizuna51.org

事務局では皆さんからの「支援物資」を同時にお願いしています。
全員への参加賞として、又近隣仮設住宅への物資として配布を致します。
子供たちへの支援、また大人たちへの心温まる品々をお待ちしています。

尚、今回は勝手ながら大会の参加賞が目的という立場からリサイクル品はご遠慮頂ければ
幸いです。大会事務局までお送りください。
http://kizuna51.org/
コメント (4)
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明日に向けて(428)花粉に放射性物質は含まれていないのか(東大発表の記事を精読する)

2012年03月16日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120316 23:30)

がれきの問題が重要な局面を迎えていますが、こうしたことともつながってい
るのではないかと思わざるを得ない情報が、東京大学アイソトープ総合センタ
ーから出されました。いよいよ飛散のピークに迫りつつある花粉を福島と東京
で調べたところ、放射性物質は検出されなかったという記事です。タイトルは
「花粉からは検出されず 東大助教」となっています。

本当にそうであれば、ひとまず胸をなでおろしたいところですが、記事を読ん
でいて、あれっと思いました。調査が2月19日から25日となっているからです。
なおかつ調査対象も20人とやけにすくない。とくにひっかかったのは時期の問
題です。そもそも福島はこの時期ならまだそれほど花粉は飛んではいなかった
のではないか。

それで花粉情報を調べてみました。まず環境省から今年2月24日に出ている花粉
(スギ・ヒノキ)の飛び始めの情報を見ると、東京は2月下旬ですが、福島は南
部が2月下旬から、北部は3月上旬からとなっています。となると福島での計測
は、花粉がまだ飛び始めてない地域のものが入っていることになります。最も
人口の多い福島市も県の北部にあります。なお参考にしたのは以下の情報です。

平成24年スギ花粉前線予測最新版(2月22日)
http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/attach/forecast_01front.pdf

さてそれでは花粉が多くなっていく時期、ピークの時期の予想はというと、
同じ環境省の2月24日発表の情報では、花粉が多くなってくるのは東京で3月上
旬、ピークは3月中旬。福島では3月中旬から多くなりはじめ、下旬にピークと
なっています。これは以下から見れます。

「平成24年春における都道府県別スギ・ヒノキ花粉の飛散ピーク時期予測」
http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/attach/forecast_02peak.pdf

これはあくまでも予想値です。実際はどうなのか。なかなかデータが見つかり
ませんでしたが、日本地球惑星科学連合という組織が、花粉のセシウム汚染
調査に本格的に取り組んでいて、刻々と情報を出していることが分かりました。
それを見てみると・・・なんと福島ではいまもなおそれほど花粉は飛んでいな
い!東京もはじまったばかりです。

この組織について僕は十分な知識がなく、このデータの見方もも今一つ自分で
咀嚼できていないのですが、ともあれこれを見る限り、少なくとも2月19日から
25日の調査では花粉調査としてはまったく意味をなさないことが見えてきます。
なお同団体のHPより、東京の花粉情報を記したページを紹介しておきます。

東京(港区)での大気中の放射性セシウムの放射能およびスギ花粉飛散数同時観測データ
http://157.82.240.167/fukushima/fuku_data/kafun/11.html

これらを見るならば、2月19日から25日にたった20人のマスクからサンプリング
したのでは、時期的にも検体数的にもまったくもって不備であるといわざるを
えません。またそれほど解析に時間がかかるわけでもないマスクの計測結果が、
20日もたって、今、この時期に出されていることも不可解さを感じます。

東大アイソトープ総合センターが、どうしてこんなにずさんな調査を行うので
しょうか。この調査もまた「安全宣言」のためのものではないかと思わざるを
えない。そう思わせるのはこの調査のあまりのすさんさのせいです。

ここから少なくとも言えることは、花粉がほとんど飛んでいない時期のこの調
査で、花粉の安全性が証明されたとはまったく言えないということです。依然、
十分な警戒が必要です。ぜひ関東の方、東北の方は、ぜひ花粉対策を継続して
ください。

・・・それにしても新聞各紙はどうしてこういう情報を、何の注釈もつけずに
「垂れ流す」のでしょうか。なぜ花粉の飛散時期ぐらい、調べようとしないのか。
記事に「花粉のほとんどないこの時期の調査に信用性はあるのだろうか」ぐらい
付け加えることはできないのでしょうか。ため息が出ます。

この国をまだまだ覆う「安全神話」を、私たちはひとつずつ、丁寧にひっくり返
していきましょう。

******************

放射性物質:花粉からは検出されず 東大助教発表
毎日新聞 2012年3月16日 18時40分

東京電力福島第1原発事故による放射性セシウムは花粉から検出されなかった
と、東京大アイソトープ総合センターの桧垣正吾助教(放射化学)が16日発
表した。本格的な花粉の時期を迎え、放射性物質が花粉に付着して広く飛散す
ることが懸念されていた。

調査は2月19~25日、福島県と東京都の住民計20人に日常生活でマスク
を着用してもらい、放射性物質と花粉の量を測定した。

その結果、放射性セシウムは福島県内で最大4.3ベクレル、都内で最大0.6
ベクレルが検出された。詳しく調べると、放射性物質が検出されたのは花粉で
はなく、ほこりやちりだった。4.3ベクレルは0.082マイクロシーベルト
に当たり、都内の屋外で浴びる外部被ばくの1時間程度に相当するという。

桧垣助教は「ほこりなどを取り込むことで微量だが内部被ばくの可能性はあるが、
マスクで防ぐことができる。現時点で検出されていないが、今後も推移を見守る
必要がある。気になる人は着用してほしい」と話す。【神保圭作】
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120317k0000m040029000c.html


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明日に向けて(427)京都市修学院児童館(15日)京都ライトハウス(18日)でお話します。

2012年03月13日 22時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120313 22:30)

講演会のお知らせです。3月15日午前10時半から12時まで、京都市修学院児童館
でお話します。また3月18日午後1時半から4時まで、千本北大路の京都ライトハ
ウスでお話します。

児童館にはみなさんお子さん連れでこられるようですので、とくにお子さんをど
う被曝から守るのかという点についてお話しようと思います。
以下、詳しい案内を転載します。

*************

子育て講演会
講師:守田敏也氏
内容:放射能汚染や内部被ばく、食生活などへの向き合い方など

日時:3月15日(木)午前10時半から12時まで。
場所:京都市修学院児童館
   京都市左京区一乗寺燈篭本町26

主催:京都市修学院児童館
連絡先:075-712-4443 担当 山本亜矢

*****

国際女性デー北区集会

日時:3月18日(日)午後1時半から4時まで。
場所:京都ライトハウス
   千本北大路下ル西側 市バス ライトハウス前

内容:オープニング ちょっちゃんコーラス みんなで歌おう。
  :おはなし 守田敏也さん (午後1時45分から3時まで)
   原発・放射能の影響をどうみるのか?どう考えるのか?食べ物は安全なのか?
   など分かりやすく話して頂きます。どなたでもご参加、お待ちしています。
  :しゃべり場フリートーク (午後3時から4時)

参加費:300円 コーヒー、資料付き
注意:駐車場はありません。

主催:3.8国際女性デー北区実行委員会
連絡先:075-493-2974(新婦人北支部)
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明日に向けて(426)読書之森:岩波ブックレット「内部被曝」(毎日新聞京都版書評)

2012年03月13日 15時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!
守田です。(20120313 15:30)

毎日新聞京都支局の大田裕之記者が、『内部被曝』についての書評を書いてくだ
さいましたのでご紹介します。この書評、見事だと思いました。よくもこれほど
短いスペースに、きちんとエッセンスを盛り込めるものだと感心しました。僕だ
ったらこの3倍以上書いても内容を盛り込めない。これまた職人芸ですね。

ちなみにブックレットはおかげさまで売れ行き好調です。とくに「バイバイ原発
310京都」の会場では実にたくさんの方が買ってくださり、用意した160冊が
ほぼ完売しました。みなさま、どうもありがとうございました。

『内部被曝』は自信作ですので、まだの方はぜひお買い求めください。必ず何か
のお役に立てると確信しています。ワンクリックで購入可能なアマゾンのページ
を記しておきます。
http://www.amazon.co.jp/%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E7%9F%A2%E3%83%B6%EF%A8%91-%E5%85%8B%E9%A6%AC/dp/4002708322/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1331619634&sr=8-2

***************

京都・読書之森:岩波ブックレット「内部被曝」 /京都
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20120311ddlk26070268000c.html

(矢ケ崎克馬・守田敏也著 岩波書店、588円)

東京電力福島第1原発事故で重要な問題の一つが、空気や飲食物を通じて放射性
物質を体内に取り込む「内部被曝(ひばく)」だ。科学的研究の第一人者である
矢ケ崎克馬・琉球大名誉教授に、京都市左京区在住のフリーライター、守田敏也
さんがインタビュー。物理的根拠のある危険性と、核戦略のために危険性が過小
評価されてきた歴史を平易に解き明かした。

「隠された被曝」として実態解明に努めてきた矢ケ崎さんは03年からの原爆症
認定集団訴訟で証言して19判決全てで原告側の勝訴に寄与。原発事故後は福島
県内で調査し、全国各地で百数十回講演してきた。守田さんも矢ケ崎さんや、
6000人以上の被爆者を診た「被爆医師」の肥田舜太郎さんを訪ねるなど取材
を重ねている。

本書はまず、アルファ線▽ベータ線▽ガンマ線の3種の放射線の特徴や違いから
内部被曝のメカニズムを説明。体内に入った放射性物質が血液やリンパ液に乗っ
て体中に運ばれ、外部被曝とは比較にならない高密度な分子切断でDNAの死滅
や異常再結合を招き、さまざまながんや病気を引き起こす危険性を指摘する。

だが、放射線のリスク基準を設定してきた米国主導の国際放射線防護委員会
(ICRP)は、外部被曝とは異なる内部被曝の危険性を無視。日本の科学者・
医師もその下で学び、福島事故での政府対応の誤りを招いてきたと本書は指摘する。

背景にあるのは米国の核戦略だ。広島・長崎での被爆者の調査から内部被曝を覆い
隠し、チェルノブイリ原発事故でも被害を過小評価。「経済的・社会的要因を考慮」
するICRPを通じて「科学がゆがめられ、政治に従属してきた」「日本政府も加
担してきた」(矢ケ崎さん)歴史を振り返る。

一方で、本書は恐怖をあおったり、悲観論に傾くことはなく、前向きな対策も提案。
矢ケ崎さんは「恐ろしさをきちんと知り、知恵を出して最大限の防護を尽くす」、
守田さんは「市民自らが科学していくことが問われている」と語る。本書を読むこ
とがその出発点となろう。【太田裕之】
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明日に向けて(425)写真展「大槌 被災後の一年」にお越しください!(京都市国際交流会館)

2012年03月12日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120312 23:30)

東日本大震災から1年を迎えて、昨日、この場で原発災害のこれまでとこれからに
ついて、「安全神話」からの脱却をテーマにコメントを書きましたが、やはり同時
にどうしても触れておきたいのは、あの津波の大被害から私たちが如何に立ち上
がっていくのかです。

そのために今回は、三陸海岸の被災地のひとつ、岩手県大槌町のことを紹介したい
と思います。大槌町は、岩手県の太平洋岸沿いにあり、釜石市の10キロぐらい北
に位置する町です。大槌川と小槌川が大槌湾に注ぐデルタ地帯を町の中心としてい
ます。井上ひさしの小説、『吉里吉里人』の名にちなむ土地でもあります。

この大槌町に非常に大きな津波が襲いました。そのため町は本当に壊滅的な被害を
受けました。建物がほとんど残っていないほどの猛威でした。そのため、とても
たくさんの方が亡くなりました。かなしい別れがたくさんあり、今なお、多くの方々
が、悲しい思いを胸に秘めつつ仮設住宅で暮らされています。

その大槌町を、僕は昨年の夏に、京都OHANAプロジェクトの自転車届けの一員に参加
させてもらい訪れました。被災した大槌中学校のグラウンドのすぐ脇に自転車を一
度仮置きし、そこから2箇所に仮設住宅に自転車を配りました。ちょうど被災者の方
たちが、避難所から仮設住宅に移られたときのことでした。

阪神大震災の経験から、避難所から仮設住宅に移ったときに、孤独感に襲われ易いと
聞いていたこともあって、少しでもみなさんが、自由に移動して出会えるようにとの
思いも込めた自転車配りでした。


そのときに協力してくださったのが、早くから大槌町に入ってボランティア活動を
していたNPO法人「パレスチナ子どもキャンペーン」と、大槌町の復興のために立ち
上がった地元のNPO法人「まちづくりぐるっとおおつち」でした。とくに「まちづく
りぐるっとおおつち」は、理事の半数近くが津波で命を落とすという悲劇に直面し
しながら、町のために奮闘されていました。非常に細やかな支援活動、あるいは自助
活動が行われていました。

そこに僕が滞在したのはわずかに2日間。自転車をお渡しし、それで町をさったまま
その後、一度も訪問できていないことに申し訳ない思いを抱いてきました。原発事故
に向き合う、放射線防護に奔走する・・・それで手一杯なのですが、いつも、そのた
めに津波被災者の方たちを後回しにしている気がして苦しい思いを感じます。いや、
明らかにそうなのです。そしてこれもまた政府と東京電力の重い責任なのです。


これに対して、この夏の訪問のときも、現地で受け入れのために奔走してくれた友人
で京都在住の千田悦子さんが、その後も何度も大槌と京都を往復しながら、大槌に関
わってくれていることが、僕にとっての心の救いでした。誰もがすべてを担えるわけ
ではない。でも僕は大槌とつながっている友人とつながることで、大槌につながって
いることができる。いつも大槌を身近に感じていられると、そう思ってきました。

千田さんは、「まちづくりぐるっとおおつち」にも参加して奮闘を続けているのです
が、その千田さんが、被災から1周年の今日、京都で大槌の写真展をセットしてくだ
さいました。展示される写真を撮られたのは、大槌町の伊藤陽子さん。津波でお兄さ
ん二人を亡くされてしまいました。陽子さんはお兄さんを探すために、津波でさらわ
れた町を歩かれた。歩きながら写真を撮った。そうして撮り貯めた写真を、復興に携
わった人々に感謝を込めてシェアしてもらいたいと提供してくださったのです。

ぜひみなさんに、この写真展に赴いて、大槌のことをシェアして欲しいと思います。
そうして大槌のことを少しでも身近に感じて欲しいと思います。そのとき、みなさん
もまた大槌の復興の当事者になります。この悲しい災害からいかに立ち上がるのか、
それは私たちの課題なのです。その思いを胸に落とし込むために、どうか写真の前に
立たれてください。可愛らしいおおちゃん人形(500円)を一つ買って、家にもち
返り、時々眺めてください。そうして大槌を起点にイマジネーションをひろげ、三陸
海岸全体に、いや東日本の太平洋岸全体に思いをひろげ、その復活への思いをシェア
しましょう。

写真展は京都市内で、明日より18日まで行われます。「まちづくり・ぐるっとおお
つち」の主催です。お近くの方、ぜひお越しください。以下案内を貼り付けます。


*****************

写真展「大槌 被災後の一年」+復興支援グッズ販売
Otsuchi: 1 year since 3.11 Tohoku Great Disaster

岩手県大槌町に県下でも最悪と言われる被害をもたらした東日本大震災から
まもなく1年。その間の町の様子を写した写真約80点の展示と、復興支援を
目的とした被災者の手作り品の展示即売を行います。

日時  2012年3月13日(火)~18日(日) 10:00~20:00
場所  京都市国際交流会館kokoka 京都市左京区粟田口鳥居町2-1
    姉妹都市コーナー・展示室(2F)
入場料 無料

撮影者:伊藤陽子さんより
「あくまで自分の記録としてとり始めたのがこれらの写真の原点です。
津波で兄2人が行方不明となり、探しながら撮って歩いたので、3月と4月は地域に
偏りがあるかも知れません。道路事情やガソリンの関係もあり、数ヶ月後にやっと
入った地域もあります。自分自身、以前の街並みなど記憶の薄れている部分もあり、
避難所にいて地震翌日の町の様子を見れなかった人たち、復興に向けて支援してく
ださった多くの方たちと、感謝の気持ちを込めて共有したいと思い、この写真展を
開催することにしました。

販売品リスト
おおちゃん(こづちちゃん人形)(大) 500円
おおちゃん(こづちちゃん)ストラップ 400円
復興ひょうたん島ストラップ      700円
その他、手作りたわしなどがあります。

主催 NPO法人 まちづくり・ぐるっとおおつち
   (財)京都市国際交流会館
問い合わせ NPO法人 まちづくり・ぐるっとおおつち(岩手県大槌町)
      TEL 080-3192-2125(担当:千田悦子)


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明日に向けて(424)東日本大震災・原発大災害から1周年を迎えて

2012年03月11日 23時00分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120311 23:00)

2012年3月11日の夜がふけつつあります。あの大変な大災害から1年を迎え、この震災と、
原発事故で亡くなられた全てのみなさま、ご遺族のみなさまに、心からの哀悼の意を述
べさせていただくとともに、今なお、苦しい思いをしている方、また原発災害で被害を
うけたみなさまに、お見舞いを申し上げます。

津波のことでも振り返ることが山ほどありますが、あえて原発事故を中心にこの1年間を
振り返ってみた時、日本政府と東京電力が、つねに現に目の前にある危機については明
らかにせず、事態が推移してから何が起こっていたのかを小出しにしてきたことが目に
つきます。

最も深刻だったメルトダウンについても、当初から把握されていたのに、発表は2ヶ月も
経ってから行われました。さらに当初、事故がとめどもなく進行しつつあり、最悪の事態
にいたれば、原発から170キロ圏内を強制避難区域にし、希望者も含めれば250キロ圏内の
避難が必要だという認識が政府内にあったことが、2012年の年頭になって明らかにされま
した。

つい先日は、昨年3月の事故の直後、4号機プールの水が蒸発し、大量の放射能が漏れ出す
寸前にまでなったものの、たまたま原子炉が水で満たされており、そこの水が仕切り板を
破ってプール内に流入したために、最悪の事態がまぬがれたことまでもが発表されました。
もちろん、必死の対処にも大きな意義がありましたが、核心部分は「不幸中の幸い」で最
悪の事態が回避されたのでした。

にもかかわらず、政府も東電も、リアルタイムには「安全」「安全」と同じことを繰り返
し、マスメディアの大半が、それに従いました。私たちの国の住民の多くは、破局的な
危機を前に、何の備えもなく、危機は過ぎ去ったと信じ込まされてしまいました。そうし
て全国的に作られたこの空気の中で、原発事故被災地に多くの人々が、被曝しながらとど
まることにもなってしまいました。

「安全神話」がこの国を覆いっていました。これに災害心理学に言う「正常性バイアス」
が付加されました。正常性バイアスとは、人が危機に瀕した時、危機を認識せず、「事態
は正常に推移していくのだ」という「バイアス=偏見」をかけて危機による動揺を超えて
いこうとする人間的心理をさす言葉です。いわば自分で自分を騙すのです。

そうした状態の中で、政府により「俄かに健康に被害はない」という言葉が連呼され、あ
たかも事故が早急に収束に向かっているかのような喧伝が繰り返されました。「そんなこ
とはない。私たちは今、大変な危機の前にあるのだ」と叫ぶものに対しては、「不安を煽
る悪質なデマだ」といった類の非難が繰り返されました。


そうして1年が経ちました。それでこの国の状態、原発の状態はどうなったのでしょうか。
これまでも述べてきたように、今なお、福島原発は大変な危機の前に立っています。冷温
停止宣言などはあまりのまやかしです。実態としてはとにかく今なお、ぎりぎりの努力で
冷却が続けられている状態です。いや冷却を試みている燃料体の状態すらよくわかってい
ないのです。

さらに懸念されるのが、1500本近い燃料棒が入った4号機のプールです。この建物は、上部
ではなく下部で爆発が起こっている。その上、数千回ともいわれる余震で度々揺らされてい
ます。これが倒壊してしまった場合、大量の燃料棒が外に飛び出し、まったく手の打ちよう
がなくなります。そうなれば他の原子炉も同じこと。結局、昨年3月に試算された最悪のシナ
リオが実現してしまうのです。

しかしこれほどの危機を前にしながら、私たちの国を再び、安全神話が覆っているのです。
多くの人が、大きな余震がきたら、福島第一原発が深刻な危機に陥ることはわかるはずであ
りながら、そんな大規模な余震はこないと思い込もうとしてしまっている。つまり今また
「正常性バイアス」がかかっているのです。その上に政府が乗っかって「安全宣言」を繰り
返しています。

「安全神話」はもうひとつの形もとっています。すでに露出してしまった膨大な放射能を、
「怖くない」といいなすキャンペーンです。このために「放射能は正しく怖がることが必要
だ」などという言葉が繰り返され、「実は放射能はそれほど怖くはないのだ。放射線管理区
域など、特別に厳しく決めていたのであって、実際にはそこに暮らしていても大丈夫なのだ」
といった言説がまかり通り、過去の法律が完全に反故にされてしまっています。

こうした状態を主導しているのも政府ですが、ここでもそれと「正常性バイアス」が結合し
てしまっています。そのため、少し考えれば容易に見えてくるはずの危機が見えなくなって
います。それが事故から1周年を迎えた私たちの国の現状です。だから私たちは二重の危機の
前にある。原発そのものの危機と、安全神話による危機です。


これを打ち破らなくてはいけない。そのために様々な努力が必要ですが、ここで強調したい
のは、本来、私たちの国が大きな力を投入して行わなければならないのは、最悪の事態、そ
れも抽象的な想定ではなくて、4号機が倒壊した場合を考え、その場合にどうするのか、
避難訓練を行うことだということです。これは主に関東・東北を中心としますが、3000万人
という広域の避難が必要なため、西日本や北海道でも受け入れ訓練が必要です。

繰り返しますが、これは起こる可能性がそれなりにあることなのです。首都圏で直下型地震
が高い確率で起こるうると言われていること一つとってもそうです。その地震で、ダメージ
がたまっている4号機が倒壊することもありえます。いや福島第二原発や東海村など、他でも
大事故が発生するかもしれない。それらを射程にいれた訓練が必要なのです。

同時に、各原発サイトでも、今回の事故と同規模の事故を見据えた訓練を行う必要がある。
少なくとも100キロ圏ぐらいの地域での訓練は必須です。とくに福井県の原発銀座から近い
中部、京阪神は、ここでの大規模事故を想定した原発災害訓練が行われる必要があります。
それこそが、昨年の原発大事故から私たちが引き出すべき教訓でなけれなならないはずです。

ところが、津波や地震への対策は検討され、大阪の難波の地下街で津波時の避難訓練がなさ
れたり、東京を襲う直下型地震の可能性が繰り返し指摘されているのに、この広域の原発
訓練だけはまったく話にあがってこない。なぜか。それをすれば原発がどれほど危険なもの
か、あるいは福島原発の今が、どれほど恐ろしい状態かが際立ってしまうからです。

そして、だから一切の訓練をしない・・・というのは、これまでこの国を覆い、今なお、け
しては過去のものになったのではない「安全神話」の正体です。危険性を明らかにしたくな
いために、安全と言い募る。それが事故の前も、事故の後も、今も、行われ続けていること
なのです。


この状態を打ち破るために、みなさんに、避難訓練の実施を呼びかけます。まずは自治体に
要望を出し、少しでも原発災害対策を見直していくことが大切です。実際に滋賀県などで
そうした取り組みが行われつつありますが、さらに市民の側でも独自に災害訓練を行なって
いくことが大事だと思います。

図上訓練でもいい。自分たちの住んでいる周りのどこに原発があるのか。逃げる場合には
どういうルートがあるのか。放射能から身を守るために、どんなものを身につけたらいいの
か。逃げる手段はどうするのか。いざというときに持ち出すものは何か。家族とどこで落ち
合うのか。友人とどう連絡を取るのかなどリアルに想定していくといいと思います。

いや仮にそこまでいかなくても、福島原発の危険な現状をしっかりと認識し、放射線の恐ろ
しさを学習して、防護の観点を身につけることもまた、重要な避難訓練の一環となります。
実際、昨年の事故時も、こういう学習会に参加していた人ほど、早い時期に危険地帯を離れ
ることができたのでした。その意味では放射線に関する学習会自身もまた、避難訓練の一つ
と言えると思います。

災害心理学では、こうした避難訓練こそが、人々を「正常性バイアス」というデッドロック
から救う道だと強調しています。事前に最悪の事態を想定していればこそ、危機に瀕した
ときに、人はそれと向き合い、合理的な退避行動が取れるのです。避難訓練はそのため、つ
まり心理的な混乱をふせぐためにも有効なのです。その意味で僕は、避難訓練こそが安全神
話を打ち砕く道だと思います。

みなさん。ぜひ原発災害訓練に取り組みましょう!それが3月11日から1年経って、私たちが
引き出すべき教訓の中の大きな柱の一つです。そのことを2012年の3月11日の夜に書き記し、
なおかつ、あの津波で亡くなったすべての方に再度哀悼を捧げて文章を閉じます。

事故の教訓から智慧をつかみましょう!かけがえのない、未来世代へと継承していける智慧を!


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明日に向けて(423)東日本大震災一周年追悼メッセージ(内部被曝研より)

2012年03月11日 09時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120311 09:00)

みなさま。東日本大震災発生から1周年にあたり、「市民と科学者の内部被曝問題
研究会」より、メッセージが発信されましたので、ここ転載させていただきます。
なお、現在発売中の『世界』4月号掲載の私のルポに、内部被曝研立ち上げの経緯
について触れてあります。ぜひお手にとってお読みください。

以下転載

********

東日本大震災一周年追悼メッセージ 
2012年3月11日 市民と科学者の内部被曝問題研究会 代表 澤田昭二

東日本大震災の一周年を迎え、あの巨大地震・津波によっていのちを奪われた1万数
千人の御霊とご遺族の皆さまに、心より哀悼の意を表します。

また、東電福島第一原発事故に際し、政府と東電の無為無策によって、原発事故現場
でいのちを奪われた作業員の方々、心血を注いできた農業や酪農の行く手を放射能汚
染によって阻まれていのちを絶った方々、産まれてこられなかった子どもたちとご遺
族の皆さまに、改めて衷心より哀悼の意を表します。

さらに、原発事故による土地や海や食べ物などの放射能汚染に苦しんでおられる地元
福島県をはじめ東北・関東の各都県の方々と全国の皆さまにお見舞い申し上げます。

福島原発事故により浮遊し堆積した放射性物質が放出する放射線による外部被曝の影
響以上に、飲食と呼吸によって継続的に取り込む放射能による内部被曝の影響は、こ
れからも継続し表面化する深刻な問題です。

事故当初より減ったとはいえ、原発事故現場から放射性物質は今なお放出され続けて
おり、福島・茨城両県の環境放射能水準は過去の平常時よりも高い水準を維持し続け
ています。関東と東北を含む広範な地域にも、堆積放射能によるホットスポット的な
高濃度汚染地があり、看過できない状況です。さらに、放射性降下物は水の流れとと
もに徐々に下流に移動するため、下流域の河川や湖沼・港湾ならびに海の放射能汚染
は、これから深刻になることが予想され、農林水産物の安全性が危惧されます。

福島原発が依然として不安定な状態にあるにもかかわらず、政府が「収束宣言」を発表
して幕引きを図ったことや、高線量下に置かれた住民に対する保護責任を果たそうとし
ないことは大問題です。

旧ソ連邦のチェルノブイリ原発事故で被曝したロシア、ウクライナ、ベラルーシでは、
住民の健康保護のために年間被曝線量5ミリシーベルト以上の地域は「移住義務区域」、
1ミリシーベルト以上の地域は「移住権利区域」として、住民の被曝を防護しています。
それに対して、日本では「避難指示解除準備区域」は 年間被曝線量20ミリシーベルト
以下、「居住制限区域」は年間20~50ミリシーベルト、「帰還困難区域」は 現時点で
年間50ミリシーベルト以上」と極めて高い線量を設定しています。このことは、国際
的にみても大問題です。日本の市民がチェルノブイリ原発の周辺の市民よりも放射線
に対する抵抗力が何十倍も高いはずがありません。私たちは、政府に対しては、市民
の健康を守る施策を緊急に実施することを強く求めます。

肥田舜太郎名誉会長の発足挨拶「内部被曝の被害と闘うために」(下記)にあるように、
当会は、市民と科学者が一体となって、内部被曝を含む被曝問題に積極的に取り組み、
子どもたちをはじめとする全国の市民を守るために努力してまいります。     

【市民と科学者の内部被曝問題研究会(略称:内部被曝研) 事務局】
http://www.acsir.org/


内部被曝の被害と闘うために 
「市民と科学者の内部被曝問題研究会」名誉会長 肥田舜太郎

2011年3月11日の福島第一原子力発電所の事故後、5月初め頃から子どもの症状などを訴
える母親からの電話相談が増え、広島、長崎原爆の特に入市被曝者に多く見られて放射
能による初期症状によく似た状況から、私は原発から放出された放射性物質による内部
被曝の症状だろうと直感し、その後の経過に注目してきている。

子どもを持つ母親の放射線被害に対する心配と不安は想像以上に大きく、全国的に広がっ
ている。これに対する政府、東電、関係学者、専門家の姿勢や発表の内容は、ほとんど
が国民の命の危険と生活に対する不安の声に応えるものでなく、原子力発電の持続と増
強を求める業界の声に応えるものと受け取らざるをいない実情である。筆者の経験によ
れば、学習し合い明らかにしなければならない課題は、

① 放射線そのものについて
② 外部被曝、内部被曝の意味
③ 自然放射線に対する人間の持つ免疫能力
④ 人工放射線(核兵器の爆発、原子力発電所で作られる)と人間との関係
⑤ 放射線被曝による被害の治療法はなく、薬も注射も効果はないこと
⑥ 放射線被害に対しては被曝した個人が自分の生命力の力と生活の仕方で病気の発病を
予防し、放射線と闘って生きる以外にないこと
⑦ 放射線の出ている原発からできるだけ遠くへ移住し、また放射線で汚染された食物や
水を飲んだり食べたりしないことといわれるが、それができる人にはよいことだが、でき
ない人はどうするかが極めて大事なことで、この問題にどう応えるのかが、この問題の最
重要課題である。

内部被曝研究会は今でもいろいろな職種の人が集まっていて、医師や弁護士や学者がいれ
ば、肩書きも特殊な技術もない一般職の方々もおられると聞いている。それらの方々が心
と力を合わせて放射線の内部被曝の被害と闘っていく方法や道筋を、話し合い、相談し
合って、少しでも有効な方向を見つけ、発信し、学習し、実践して、今まで人類が経験し
たことのない課題に立ち向かう出発点に立っている。何もかもが未知の新しい道を歩くの
だから、みんな遠慮なく発言し、みんなで考え、一致したことを確実に行っていくことに
なる。

市民と科学者の内部被曝問題研究会編『内部被曝からいのちを守る』(旬報社、2012)よ
り要約抜粋





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明日に向けて(422)『バベルの塔』上映会でお話します。(3月11日同志社大学)

2012年03月10日 11時00分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120310 11:00)

今日はこれから「バイバイ原発310京都」に参加のためでかけます。
会場でブックレット『内部被曝』を販売します。

明日、3月11日は、同志社大学今出川校舎で行われる『バベルの塔』上映会に
参加し、25分ほど講演をします。上映後に質疑応答も受けます。

みなさん、それぞれの場で、思い思いに声をあげましょう!

以下、案内を転載します。

*********************

311ドキュメンタリー映画
『バベルの塔』上映と講演のつどい

会場 同志社大学今出川キャンパス 明徳館1番教室

日時 2012年3月11日14時30分より

スケジュール
14時  開場
14時半 開会
挨拶  出原政雄同志社平和の会代表(同志社大学法学部教授)
講演  守田敏也(14時35分から15時まで)
映画  『バベルの塔』上映70分
意見交流など(16時10分から30分まで)
終了予定 16時30分

参加協力金 500円

主催 『バベルの塔』上映実行委員会・同志社平和の会
後援 同志社教職員組合連合 
連絡先 北上地区労 電話075-441-7624


ドキュメンタリー映画『バネルの塔』について

出演 安斎育郎 工学博士 安斎科学平和事務所
   小出裕章 京都大学原子炉実験所助教
   深尾正之 工学博士 元静岡大学教授

5時間を越えるインタビュー、20人に及ぶ証言者
10時間の取材テープの中から浮かび上がる真実とは?

同日、岩波ブックレット『内部被曝』も販売します!!

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明日に向けて(421)「放射線防護に市民と科学者が立ち上がった」(『世界』4月号)

2012年03月09日 18時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!
守田です。(20120309 18:30)

表題の「放射線防護に市民と科学者が立ち上がった」というルポを、昨日発売
された岩波書店『世界』4月号に掲載していただきました!ぜひお読みください!

書いた内容は、東日本大震災以降、続々と立ち上がってきた市民放射線測定所の
動きと、これにも呼応しつつ、本年1月27日に結成記者会見を行って立ち上
がった「市民と科学者の内部被曝問題研究会」結成にいたるいきさつなどです。

市民測定所については、昨年末で50箇所近く、今年になってからさらに各地に
準備会が立ち上がっているのですが、その中から何といっても福島で立ち上がっ
てきた測定所の動き、また僕自身も関わりを持ってきた、宮城県南部の二つの
測定所、さらに避難者支援の延長に測定所開設を決意した京都の動きを紹介しま
した。

これらの取材を通じて、たくさんのことを学びましたが、印象的だったのは、
福島の測定所の開設に、フランスのNPOのクリラッド(CRIIRAD)が大きな力を貸し
てくれたことです。同団体は、チェルノブイリ事故のときに、フランス政府が
何ら積極的なアクションを行わないことに対し、放射線防護のために立ち上がっ
た市民と科学者による組織です。

クリラッドは、1991年からはべラルーシーに対する支援に乗り出し、さらに昨年
2011年にわたしたちの国への支援を始めてくれたのでした。頭が下がる思いが
します。チェルノブイリ事故による深刻な放射能汚染を被る中で、それと立ち向
かってきた欧州の知恵が、わたしたちを助ける力として供与されたのです。

「素晴らしいことだ、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」も、そんな道を辿れる
といいな」と思っている時に、ある方から、外国人を含む大文字山ハイキングへの関
わりを求められて同行したところ、フランスの方ががいたので、早速この話をし
てみました。なにもフランス人のすべてがクリラッドの代表であるわけでもないこ
とは分かっているつもりでしたが・・・。

ところがなかなか話が通じない!なぜかというと、「クリラッド」というのは
CRIIRADを英語的に発音し、それがカタカナに転写された日本語なのですね。だから
相手がなんのことがわからなかったのです。途中から話が通じて、フランス語の
読み方を発音してもらいましたが、これがさっぱり真似できない。「フランス語の
Rは日本人には難しいです」とのこと。なのでカタカナに転写もできない。

それでも一度、話がCRIIRADのことだとわかると、相手の方もいろいろなことを
教えてくれました。この組織はフランスでも大きくて、代表的な組織で、放射線防護
に関して、実に活発な活動を繰り広げているのだそうです。その方が誇らしげに
語ってくれるので、なんだか嬉しくなってしまいました。

さらに僕が「フランスは市民運動が本当に活発で強いですね!」と語ると、「そう
なんです。フランスの市民は強いんです。それでフランスは闘争の国と言われます」
とこれまた誇らしげに語ってくれました。ここまでくると羨ましいというか、ちょっ
と悔しい気もしました。そんな風に自国の市民のことを誇れるのはいいなあ・・・。


そんなことがあってから後、ある講演会で知り合った女性と話をしていたら、実は
彼女が、フランス人のお父さんと、日本人のお母さんのダブルであることを知りま
した。彼女は何か放射線防護の関係で、フランスと日本をつなげることをしたいと
語っていたのですが、その彼女が、その後「在日フランス大使館」の放射線情報が、
日本政府などより、ずっと充実しているという知らせを届けてくれました。

実は昨年3月の事故時に、フランスがまっさきに日本にいる自国民に国外退去を訴え
たこともあって、3月から5月ぐらいまで、フランス関係の情報もよくチェックしてい
たのですが、彼女に促されて改めて在日フランス大使館情報をみて、そこには、食べ
るのを避けたほうがいい食品がリストアップされていたり、どうしても必要な用事以
外では、福島近県への旅行は避けるようにといったアドバイスなどが載せられている
ことを知りました。僕がチェックしたのは、昨年12月段階の情報です。

今後、こうした各国が出している情報についても、詳しく精査して紹介していきたい
と思いますが、こうした在日フランス大使館の対応は、けしてフランスが原発大国で
あるからではなく、まさにフランスの市民運動の強さに規定されているものではない
かと僕には思えます。市民が積極的に情報を集め、公開し、それを行動の指針として
いるので、政府もそれに対応せざるをえないのです。つまり在日フランス大使館の
インフォメーションもまたCRIIRADなどの活躍の中で生まれてきたように思えます。


ひるがえって私たちの国の政府をみつめると、本当に根深い情報隠蔽体質が目について
ため息がでます。残念ながらそれは、私たち市民の力の弱さの反映でもあるとも思いま
す。恥ずかしい気がします。しかし今、続々と立ち上がりつつある市民放射線測定所は、
そうした私たちの国のあり方を下から着実に変えていくものでもあります。

放射線防護に関する限り、フランスの市民とて、チェルノブイリまではけして大きな
力を持てていなかったのではないか。だからフランスが原発大国になってしまったの
ではないか。そしてそこからフランス、あるいはヨーロッパの市民たちは、大きな
あゆみを作り出してきた。だとするならば、私たちも今から、市民の力を強くしていけ
ばいいし、それはまったく可能だと思います。

・・・どうもフランスの話ばかりになってしまいましたが、『世界』のルポでは、
そんな私たちの可能性への思いを込めて、測定所と内部被曝研のことをルポしました。
フランスとの関わりは文章の中のごく一部で、もっといろいろなことが書いてあります!
どうか多くの方にお手にとって頂ければと思います。

なお4月号の『世界』のメインタイトルは「東日本大震災・原発災害1年 悲しもう」
です。僕は実に良いタイトルだと思います。「悲しもう」・・・そうです。意志を込め
て僕も悲しもうと思うのです。そしてその悲しみの中から、未来の可能性を、みんなで
紡ぎ出していきたいと思います。

岩波書店のHPから『世界』についての案内面をご紹介しておきます。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/index.html




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