明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日にむけて( 1 )放射線被ばくから身を守るために

2011年03月26日 14時33分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 14:30)

ここからメインタイトルを「明日にむけて」に変えます!


みなさま。

今、私たちは、放射線被ばく危機にさらされています。放射性物質がたびたび、
福島原発から漏れだし、各地で放射能汚染を拡大させています。
漏れ出した総量は、すでにチェルノブイリ事故時の1割から5割とも推定されて
います。(その多くは太平洋上に流れ、一部がアメリカやヨーロッパで観測
されています)

放射線被ばくから身を守るためにはどうしたらいいのでしょうか。
まず大切なのは、放射線をどれぐらい浴びると、どれぐらいの危険性が
あるかを正しく知ることです。今回はこの点についてまとめます。


放射線量をめぐる混乱

放射線量をめぐる考察を進めるにあたって、まずおさえておくべきことは、現在、
情報が非常に錯綜していることです。とくにマスコミでは、意図的に間違いやすい
情報や、数値を出した解説が行われている場合もあります。
例えば、読売新聞では、「健康への影響、100ミリ・シーベルトが目安」という
タイトルの記事を掲載しています(記事は最後に貼り付けます)

一方、私たちの国は、法律で、一般人が年間に浴びる放射線の許容量を
1ミリシーベルトと定めています。ここには100倍の開きがあります。
そしてまた、こうした許容量を超える被ばくが発生するたびに、それは「ただちに
健康には害のない値」という説明が繰り返されています。


社会的には、このことで、大きな混乱や、パニック状態も起きてきていると
思われます。規制値が決められているのは、何らかの根拠があるはずなのに、
それが守られなくなると「大丈夫」が繰り返されるばかりで、「ただちにでなければ、
いつから健康に害があるのか」という情報が出されません。

このことに、そもそも「絶対におきない」と言われていた大規模な原発からの
放射能漏れが起こり、今も継続し続けている事実や、こうした重大事故を
政府やマスコミが、あたかもすぐに終息できる事態で、大規模なものには
発展しないとだけ断言したにもかかわらず、すでにチェルノブイリの何割か
という膨大な放射能が放出されてしまったこともあいまって、ますます
疑心暗鬼と不安が広がっているように思えます。

これとともに言わゆる「風評被害」も広がり、何が安全で何が安全でないのか
多くの人がとまどっている状態にあります。聞きなれない値や数値も次々と
出て来て、ますます分かりにくい。このままでは不安が募るばかりで、放射線
から身を守るすべになかなか辿り着けません。

こうした社会的不安や風評被害をとどめるのに必要なのは、正しい情報を
流すこと、とくに政府や関係機関が、情報をきちんと公開することが肝心で
あると言われています。肝心なのはリスクがあるならあるで、それをきちんと
説明することです。

そこでここでは、放射線はどれぐらいの量を浴びると危険なのか、
あるいは危険とみなされているのか、またなぜ1ミリシーンベルトが、一般人が
1年間に浴びる放射線の許容量とされているのかを、まとめたいと思います。
放射線被ばくから身を守る第一歩が、安全と危険の境をきちんと知ること
だからです。


どれぐらいの放射線で、どれぐらいの害があるのか

ここでは「緊急被ばく医療研修のホームページ」を活用します。
http://www.remnet.jp/index.html
このホームページを運用している団体は、原子力安全研究協会であり、
僕は原子力行政を推進してきたこの団体に、批判的であることを
あらかじめ記しておきます。しかしそれでも、僕なりに読んでみて、このホーム
ページは有用であり、今、実際に被ばく医療が求められるつつある現状の中で
あらかじめ、こうしたまとめをしておいてくださったことには、感謝の気持ちが
あります。以上に踏まえて、「放射線影響を考えるときのポイント」と
されている内容を引用して、解説を行います。(HPでは4つが示されていますが
もっとも大事な1にしぼって解説します)


「線量の大きさ:急性の皮膚障害,造血臓器の傷害など身体的影響の早期
影響には「しきい値」(あるいは,「しきい線量」)があり,それ以下の被ばくでは
影響は発生しません。身体的影響の晩発影響のがん,および遺伝的影響に
ついては「しきい値」はないと考えられていますが,線量が少なければ発生の
確率も小さくなります。さらに,がんについては50mSv以下,遺伝的影響に
ついてはいかなる被ばくでも,疫学上は人での影響の増加が確認されて
いません。」

まず書かれているのは、すぐに皮膚や内臓に障害がでるにはある境になる値
(しきい値)があるということです。これらはおおむね100ミリシーベルト以上の
大きな値ですが、同じ症状は、ある境になる量を下回れば影響はでないと
いうことです。

次に書いてあるのは、ゆっくりと長い年月をかけて発生するガンについては
危険性と安全性の境になる数値がないということです。そのため放射線は
どれほど微量であろうとも、浴びた分だけ、長い年月が経った後にガンに
なるリスクを発生させます。この可能性は、線量が少ないほど、低くなります。

さらに、ここが少し分かりにくいのですが、「がん」について、つまり長い年月
をかけて発症するのではなく、もっと早く発症するがんのことだと思いますが、
これは50ミリシーベルトを境としているということです。これ以下の被ばくで
あれば、すぐにがんになったり、遺伝的影響が出ることは、確認されていない
ということです。(絶対にないとは言っていません。これは科学的に正しい
態度だと思います)。

これらをまとめるならば、少しでも放射線を浴びると、長い年月を経てガンに
なる確率が生じますが、50ミリシーベルトまでは、すぐにガンになったり、遺伝的
影響が生じることはないと今のところ考えられているということです。

また少しでも浴びると、長い目ではガンになる可能性が出てしまうため、どの
値までを許容するか、つまり非常に低い確率として、切り捨てようと考えるか、
国際的な基準や、専門家の検討の中で決まったのが、1ミリシーベルトという
値だということです。そしてこれらが1ミリシーベルトを超えても「ただちに健康に
害をあたえるものではない」と言われることの根拠であることも分かります。


1ミリシーベルトという許容値の中身

そうなると気になるのは、では1ミリシーベルトでは、どれぐらいの可能性が
生じるかです。

ここではフランスのクラリッド研究所のホームページを活用します。
クリラッド研究所はフランスの独立非営利団体で、放射能と原子力について
知る権利、放射性物質の危険から身を守る権利を擁護することを目的として
いる研究所です。チェルノブイリにときに、ヨーロッパの人がなかなか正確な
情報をつかめることができずに苦しんだことを背景にうまれたそうです。
日本語情報もあります。
http://www.criirad.org/

ここには次のような記述があります。

「なぜ1ミリシーベルトなのか
国際放射線防護委員会(ICRP)は いかなる量の被爆も、たとえ自然界にある
放射線量に比べられるほど少量だとしても ガンのリスクを増やすものだいう
見解を示しています。特に広島、長崎の原爆被害者の経過を見ても ICRPは
死至るガンにかかるリスクと被爆量には明らかに比例関係があり、 少量で
あってもリスクあるとしています。年間許容量1ミリシーベルトという単位は
専門家によると死亡リスクとしては「まだ容認可能な範囲で、10万人に5人の
割合」とされています。ですので、人々の健康を保護するためには、なんとして
でも被爆量を低くおさえなければならないのです。」

つまり1ミリシーベルトの被ばくで、長い年月を経てからガンになる確率は
10万人に5人だということです。
これを大きいと思うでしょうか。小さいと思うでしょうか。


まとめます。
放射線を1ミリシーベルト浴びた時、私たちが何年もしてからガンになる
確率は10万分の5、したがって2万分の1です。それより浴びる量が増えると
次第に確率はあがっていきます。

また長い年月をかけずともガンになったり、遺伝的影響が出る確率が
生じるのは、今のところ50ミリシーベルトからとされています。
これが科学的な数値です。これを一つの目安に安全と危険を判断していく
必要があります。

どこからが安全でどこからが危険がはっきりしないと不安かもしれませんが、
私たちは日常生活でも、実はリスクを考えつつ、行動しています。例えば
航空機に乗るときに、事故がおこる可能性があることは誰でも知っています。
しかし非常に低いものとして、ないものとみなしたり、あるいは、飛行機が
落ちる心配をすることの方が心臓に悪いと判断して、考えないことにする
場合もあります。

同じように、放射線被曝についても、リスクは確率的であり、その上で、
他のリスクと掛け合わせたうえでの判断を下すことが大事です。
とくに乳児に基準値を超えた水道水を飲ませるかどうかについては、
ほんの少しでも飲むとその分だけ、ガンになる確率は増すけれども、それが
1ミリシーベルトの時の、2万分の1よりも、非常に少ないところから始まって
いることも分かります。

どれぐらい飲むと、1ミリに達するか、計算をすれば出てきます。ただし水が
汚染されている場合は、他の多くのものも汚染されていて、被ばくが複合的に
おきることも考えて、リスクを見積もった方が良いですし、子どもの場合は
大人より厳しい基準を設ける必要があります。(厚労省は3倍の基準を課して
規制値をあげたので、それに従えば、1ミリの3分の1で計算できます)

これに関して、産婦人科の医師たち、小児科の医師たちが、繰り返しアドバイス
しているのは、不安になって水分を採らないことの方が、リスクが大きいと
いうことです。こうした点で、放射線被ばくを避けようとするあまりに、もっと
大きいリスクを背負ってしまうことには十分注意したいものです。

ガンになるリスクが、確率的に非常に少ないことを考えるならば、ミネラル
ウォーターが手に入らない状況であれば、水道水を飲んだほうがよい。
少なくとも、水分が足りなくなっていまう大きなリスクをおかしてはならないと
いうことが、医師たちから訴えられていることを踏まえておきましょう。
ストレスもまた、ガンの大きな因子であることもおさえておく必要があります。

以上を踏まえて、年間1ミリシーベルト以上の被曝を避けることを一つの
目安としていきましょう。ただしそれを超えてしまっても、その分、確率が高まる
けれども、まだまだいろいろな対処や挽回が可能であることも踏まえて
おきましょう。総じて私たちの免疫力、自然治癒力をあげていくことを大事に
することが大切だと思います。

こうした知恵を組み合わせ、不安を排除したうえで、出来る限り、被曝を避ける
こと、しかし避けられないときは、あわてることなく、リスクの大きさを判断して、
自分にとってもっとも有利な事は何かを考えていくこと。こうしたことの積み重ねで
放射線被ばくに対して、立ち向かっていきましょう。

みんなで知恵を合わせて、放射線被ばくから私たち自身を互いに守り合って
いきましょう!


【ここまで読まれた方ならば、以下の読売新聞の記事の誤りを、読み取る
ことができると思います。いわば応用問題として考えてみてください。ただし
ここでは、読売新聞よりも、原子力安全研究協会やクラリッド研究所が
語っていることの方が正しいという仮定に立っています】


***************************

放射線対策 健康への影響、100ミリ・シーベルトが目安
 放射線の身体への影響は、どうなのか?


 過去の放射線事故のデータなどから、3000ミリ・シーベルトの強い放射線を浴び、
何も治療を受けられないと、60日以内に約半数が死亡することがわかっている。

 長期的な影響で、唯一はっきりしているのは、
広島・長崎の被爆者の健康状態を追跡したデータだ。
1000ミリ・シーベルトの強い放射線を浴びた人は、がんを発症する確率が1・5倍高まる。

 被曝量が減るにつれて、がんの発症率は減る。
100ミリ・シーベルト以下の被曝を受けた約2万8000人のうち、
40年間にがんを発症した人は約4400人で、被曝をしていない人に比べ、
約2%(81人)多かった。

 ただし、この差はわずかであり、
100ミリ・シーベルト以下の低い線量の被曝でがんが増えるかは定かでなく、
専門家の間でも議論が続く。
健康に明らかな影響が出る恐れが出る目安が100ミリ・シーベルトとされているのは、
こうした結果などからだ。

 人は日常でも、自然界に存在する放射線(年間平均約2・4ミリ・シーベルト)を浴びている。
またCT(コンピューター断層撮影法)などの医療における被曝は、
病気を見つけて治す利点の方が上回るとの観点から、被曝量の上限は設けられていない。

 とは言え、低い線量の被曝の影響が不明な以上、不必要な放射線は浴びない方が無難だ。
原子力発電所については、敷地外にいる一般の人に、
年間1ミリ・シーベルトを超える被曝が起きないような環境を保つよう、決められている。

 現在、各地点で1時間あたりの放射線量を測定している。
21日午後4時~5時の東京・新宿では、毎時0・125マイクロ・シーベルト。
すぐに健康に影響が出る値ではない。

(2011年3月22日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38404
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地震続報( 46 )作業員の被曝と原子炉の状態

2011年03月26日 11時12分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 11:10)

今、原子炉はどのような状態におかれているか、ニュースから考察します。
24日に、3号機で復旧作業中の3人の作業員の方が、非常に高い値の放射線を
浴びました。

これは3号機のタービン建屋内に溜まっていた水に、高い濃度の放射性物質が
含まれていたためと報道されています。具体的には、「1立方センチ当たり
380万ベクレル(放射能の単位)の放射能」とされています。

意図的かどうかは分かりませんが、このニュースの出し方は分かりにくい
です。そこで水道水と比較してみると、1キロ当たり、100ベクレルが
乳児の規制値です。これに対してこの汚染情報は、1立方センチ当たりに
なっています。1キログラムは1リットル=10立法センチメートルなので、
この値は1000倍すると分かりやすくなります。

そうするとどうなるか、380万に1000をかけるので、38億ベクレルになります。
つまり1キログラムあたり、38億ベクレルの放射性物質を含んだ水が、炉内に
溜まっているということです。

問題なのはこれがどこから出て来ているかで、これだけ高濃度のものが
出てくるのは、原子炉内部からしかありえない。つまり原子炉の密閉機能が
破られていることを意味します。しかも1号機、2号機でも同様の水が
溜まっています。

これまで原子炉格納容器に破損があると思われるのは2号機だけでしたが、
1号機、2号機、3号機ともに、非常に高い値の放射性物質が、炉内から
どんどん出て来ていることが分かります。しかも原子炉や格納容器、および
配管の、どの部分から漏れが発生しているのかもつかめていない状況です。

このため、依然、原子炉が崩壊する危険性は去っていないし、今後さらに
放射性物質の露出が続くことも明らかです。そのため周辺地域への
放射能汚染がさらに継続します。

特に注意をしていただきたいのは、このような状態では、半減期を考える
ことはあまり意味がないということです。ヨウ素の半減期は8日で、16日目には
放射線を出す力が4分の1になりますが、今の場合は、あとからあとから、
新たに放射性物質が漏れ出しているので、半減を待つ計算は成り立たない
からです。

また、こうなってくると「高濃度」という言葉はもはや死語だと思います。
水の汚染で言えば、万の単位のベクレルだってかなりの高濃度です。
それに対して、今回は38億ベクレルなのですから・・・。

いずれにせよ、これだけの放射能漏れが続いていて、復旧に向けた
作業は非常に困難です。

ちなみに本来、新聞の記事でも、数値に関してはもっと分かりやすく書く
べきです。1立方センチメートルあたりという発表の仕方そのものが情報操作です。
ウソではありませんが、意図的に分かりにくくさせる数値の出し方で、東電や
保安院が繰り返してきたテクニックです。今となっても、そんなことに知恵を
回していることが残念ですし、新聞がそれをそのまま書いてしまうことも残念です。


さて非常に心配されるのが、被曝された方たちの容態です。
被曝線量は2から6シーベルトというとんでもない値です。全身に浴びたら
致死量になります。

主に漬かった足に集中的な被曝が起こったと解説されています。
水がたまっており、そこからは放射線は飛びにくいからでしょう。ただ他の
ニュースでは、その地域は、毎時400ミリシーベルトぐらいの放射線が
出ていたとも報道されているので、この方たちは、全身にも強い放射線を
浴びていると思います。

被曝された方たちのダメージが、少しでも軽微であることを祈るばかりです。


****************************

放射性物質、原子炉燃料破損し漏出か 3号機に被曝汚水

原子炉建屋とタービン建屋

東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)3号機のタービン建屋内で起きた
作業員の被曝(ひばく)で、経済産業省原子力安全・保安院は25日、
原子炉の燃料が破損して放射性物質が漏れ出た可能性が高いとの見方を示した。

1、2号機でも同じように放射線量の高い水がたまっているのが見つかった。
東電は地下のケーブル敷設作業を中止した。電源復旧作業がさらに遅れる可能性が出てきた。

東電や保安院によると、被曝した3人の作業員は、
3号機のタービン建屋でケーブルを敷設している最中に、足元にあった水につかったとみられる。
水からは通常の原子炉内の冷却水より約1万倍強い放射能が検出された。

保安院はこの水が、使用済み核燃料の貯蔵プールより、
原子炉内から漏れ出した可能性の方が高いとみている。
水にはセシウム137など燃料の破損を疑わせる放射性物質が含まれていた。

炉内は周囲より高圧を保っていることから、
原子炉圧力容器に亀裂などの大きな損傷があるわけではなく、
壊れた配管などから蒸気や水が出て流れ着いたのではないかという。
原子炉のある建屋はタービン建屋の隣にある。
作業員らがいた地下1階は直接通じていないものの、1階は扉を通じて行き来できる。

水たまりは1、2号機でも見つかった。
1号機のタービン建屋地下の水たまりで24日採取した水からは、
3号機とほぼ同じレベルにあたる
1立方センチ当たり380万ベクレル(放射能の単位)の放射能を検出した。

東電は25日、原子炉を冷やすための消防ポンプによる注水作業について、
1号機と3号機を海水から真水に切り替えた。
塩分によって炉の周りにある配管や機器が傷んだり、詰まったりするのを防ぐためだ。
2号機についても準備が整い次第切り替えるという。

電源関係では、1、3号機に続き、2号機の中央制御室の照明復旧に向けた作業が進められた。

(2011年3月26日3時0分 朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0326/TKY201103250550.html


被曝作業員の放射線量は2~6シーベルト やけど治療も

 福島第一原発で被曝(ひばく)した作業員2人が、
汚染した水につかっていた足に浴びた放射線量は、
約2~6シーベルトと推計されることがわかった。
2人を検査した千葉市の放射線医学総合研究所(放医研)が25日に発表した。
10日ほどして足にやけどの症状が現れ、治療が必要になる可能性があるという。

 労働安全衛生法などで、作業員らが緊急作業時に皮膚に受けていいとされる放射線の限度量
(1シーベルト)の2~6倍に当たる。
今回の原発事故で1シーベルト以上の高線量の被曝は初めて。

 国際放射線防護委員会(ICRP)によると、
今回のように皮膚の限られた部分に3シーベルト被曝した場合、一時的な脱毛が起こり、
6シーベルトでは赤い斑点ができる。
単純に比べられないが、全身の被曝量が3~5シーベルトだと半数の人が亡くなるという。

 放医研によると、2人とも現状では全身の状態に問題はない。
白血球の数の変化や皮膚の状態を観察する。
吸い込んだ放射性物質による内部被曝もあったが、治療は必要ないとみられるという。

 2人は24日、原発の復旧作業中に汚染された水が靴の中に入り、くるぶしから下に被曝した。

(2011年3月25日23時11分 朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY201103250508.html

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地震続報( 45 )いわき市のボランティアから

2011年03月26日 09時10分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 09:05)

昨夜、遅くに、いわき市にボランティアに入っている方からの報告が、
僕が新しく参加したMLに届きました。3月26日0時3分の着信です。

こうして原発の近くまで入って、人々を支えようとしている活動には
頭が下がります。今後、こういう方も念頭にいれて、避難の必要性に
ついての情報を伝え、同時に、避難できない場合に、少しでも放射線
被曝に対処できるあり方を発信していきたいと思っています。

そのためにもまずは情報のシェアが大切だと考え、投稿をした「よし」
さんと直接、連絡をとり、各地の様子を互いにシェアしていきたいので、
転送させて欲しいとお願いし、快諾を得ることができました。

今後、可能な限り、このような報告も行って、さまざまな被災地と
連携しながら、情報発信を行っていきたいと思います。
よしさんの報告をご覧ください。

(なお、よしさんがどういう方か、知らないのですが、いわき市に
ボランティアに入っている方というだけで十分だと考えて
みなさんにお知らせします)


*********************************

よしです。福島第一原発から40キロほど離れたいわき市に災害
ボランティアに来ています。

避難生活をしている人の数は16000人から3000人ほどに減り、
ボランティア不足はかなり解消されてきたようです。ガソリンスタンドに
長い列ができ、食品店も少し開いてきました。しかしまだ半分ほどし
か水が来ておらず、ガスも来てない家も多く、いわきの人々はかなり
疲れているように思えます。しかも原発の不安が色濃く、なかなか生活
再建に集中できない複雑さを抱えています。

支援物資はかなり集まってきて、今日は午前中に支援物資を病院に運び、
午後に公民館で市民への食糧配布、今は支援物資の集積場になってる
競輪場で夜中に着く荷物を下ろす仕事を手伝わせていただいています。

「原発が爆発したら東京も終わりだ!」

なげやりな言葉を何人かの人から聞きました。首都圏に送る電気を
作るために犠牲になった福島。東京の水道水から放射能が出たことを
「天罰」だと揶揄します。石原都知事の無神経な発言が被災者たちの
脳裏にこびりついているのでしょう。

しかし表立って東京電力や原発を非難する人があまりいないことを
不思議に思っていたら、一緒にボランティアをしたサーファーが
そのわけを教えてくれました。

「ほとんどの人が、親戚に一人ぐらいは東電に何らかの形で仕事を
もらってたから、堂々と非難できないんですよ。」

この文章を書いてる途中に東京からトラックが着きました。運転手は
水が少なくて…と何度もつぶやきながら、立川の市民がかき集めた
物資を下ろしてくれました。
「ずっと来たかったんだ。つまんねぇ仕事してるより、よっぽどいい。」

今夜の私はかなり複雑な気持ちです。


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地震続報( 44 ) 福島からの悲報についての追記がありました!

2011年03月26日 02時52分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 02:38)

先ほどの福島からの悲報に関して、その後の情報などないか
ネットを探し回り、3月21日づけて、「当事者の追記」というものが
出されていることをキャッチしました。

それによると、状況は改善されているそうです。良かった!!
しかし一時にせよ、このような状態にある地域が陥っていたことを
知ることは重要だと思います。

またこのような状況が再び生まれないためにも、原発に近い地域からの
可能な限りの避難を広げていく必要があると思います。



++++++当事者の追記 3月21日+++++

この震災直後の悲惨な状況は、
改善されつつあると追記が掲載されました。
以下です。


  この記事を読みに来て下さった方々へ

私が、上記の情報を、友人から受け取ったのは、
19日の朝8時頃ですが、実際に、このメールが書かれたのは、
それ以前のことで、更に、####先生が、**先生にメールを送ったのは、
それ以前のことで、△△△病院からのメールが発信されたのは、さらに以前のことです。

今回のような内容の情報は、
発信した時点では、できるだけ多くの人々に知って欲しい、という一点に尽きるのですが、
それが、いつの時点での現状なのか、
それから、その状況が改善されたのかどうか、改善されたのであれば、
この情報をそのまま広めることは、事実の伝達にはならないですし、
改善されたことも周知しなければならないと、思い至りました。

このメールを知らせてくれた私の友人Aさんは、
このメールを読み、某県警の関係者の知人に連絡を取り、
当該県警への警備強化を依頼したそうです。
また、テレビ等の情報により、自衛隊が派遣され、
状況が改善されつつあることを確認したそうです。

今後、この日記を引用される方は、
現状は改善されつつあることを、忘れずに付記して下さい。よろしくお願い致します。

(以上、3月21日 追記)

+++++++++++++++++++++



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地震続報( 43 )福島から悲報が

2011年03月26日 02時04分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 02:05)

みなさま。
福島から悲報が届きました。あまりのことに絶句し、涙がとまりません。
せめて、この事実をシェアしあい、私たちに何ができるか考え抜きたいと思います。
どうしたら、福島の人たちを救えるのだろう・・・。

僕自身は、さらに勇気を持って、情報発信を続けようと思いました。

このメールは転送しても良いそうです。
どうかお知り合いにお伝えください。


****************************

福島県の&&にいる、
4月末に当救命救急センターを見学にくる予定だった##先生(研修医新2年目)に、
心配で数日前にメールしましたが、先ほど返事がきました。
転送します。みなさんと、冷静に、今我々に何ができるか、考えたいと思います。

**先生
沢山伝えたいことがありますが、あまり時間がないので、実情をお伝えします。

まず、ERアップデートで賞をとった「△△△病院」の医師から
当院医師に届いたメールの内容は周辺に死体が浮いている状況(現在も)で、
病院には患者以外の人も押し寄せ、院内に住み着いている状態。
院内はアンモニア臭でたちこめ、スリ、強盗などが多発し、
メール には書けないような事件も多々発生しているとのことです。

ベッドが足りず、床に寝かせ、ストレッチャーで廊下に患者さんを並べながら
治療しているとのこと。
物資が圧倒的に足りず、薬、食料などなく、職員は一日おにぎり一個で働いているけれど、
疲労が蓄積し限界に近付いているとのことです。
物資が届いているのは約1割ほどの人だけだと。
一方、私たちにとっては災害に加えて原発による問題が非常に大きくのりかかってます。
(というか、もはや福島県だけの問題ではないのですが)
今、福島県内の病院では、50歳以下の医師を逃しているところが出ています。

しかし、病院としての方針はあくまで診療継続で、科長の判断で避難させているとのことです。
つまり、職務放棄になるから、科長の判断という形をとっているのです。

知人がいる$$$の病院の麻酔科について書きますと、
緊急オペのために部長が一人残り、麻酔科部長命令で若手医師に退避命令が出されました。
残ると言った若手医師達に対して部長は「命令だ、生きろ」と言ったといいます。

自分の実家は△△市内なのですが、父は△△の隣の△△△市という場所で開業しています。
職場近くの国道45号線では、津波に襲われ、
運転中に水死した人が今でも車の中にいるとのことです。
そしてそんな車がずっと続いてい る光景だということです。
△△出身の私ですら、正直話を聞いてもテレビを見ても
これは現実なのだろうかと思うこともあります。

職場は半倒壊で、危険なため職員には休業を宣言しましたが、
父は今日も病院の玄関で一人で患者さんに薬を処方しています。
(父は糖尿病専門医で、インスリンの在庫があるうちは続けるといっています)
皆、家族を失った人も、遠くから歩いて受診しに来るため、
できるかぎりやるといって動きません。

臨界になれば地区が封鎖されますが、
それでも福島県内にも一人で腹を決めて残って診療を続けている開業医が沢山います。
そういう人たちのことも、屋内退避になっている人のことも、国は実質見捨てているのです。

逃げたくても、高速バスは週明けまで満席、
ガソリンがなくて動きたくても動けない交通事情もあり、もし避難範囲が拡大しても、
全員が退避できるとは到底思えません。
どうしようもない状態です。
私たちの病院では、△△XX病院と関連施設ということもあり、
△△XXからの患者受け入れを行っていました。
実情としては放射線チェックがままならないまま患者が押し寄せています。
今日、院内で撮影されたフィルムに放射性物質が黒く写りこんでいたとのことです。

私個人については、おそらく今日の医局会で若手医師の動向が決まると思います。
私は避難許可が出たら避難します。
どんな言い訳をしても、その場合、私は職務放棄する医師になるのでしょう。
正直昨日までは心の踏ん切りがつきませんでしたが・・・・・今はもう覚悟を決めました。
でも、私達に生きろと言ってくれる年配の先生方は残ります。それが辛くてなりません。
でも、だからこそ、なんとしてでも、東北を支えるためにも、
医師としてなんとか還元するためにも、私は生きます。

最後にお伝えしたいことがあります。
数年前、福島原発の周辺住民への被ばく関係データを東京電力が改ざんした事件がありました。
そのとき、福島県知事は東京電力に抗議し、都民に節電をお願いしたらしいのですが、
実際節電は実施されましたが、都民の反発が尋 常ではなかったとのことです。
「なんで私たちが節約しなきゃならないの」
とあからさまに反発した人がほとんどだったとのことです。

そして、今、避難者に対する差別が東北の中ですら
(たとえば日本海側に逃げるなどで△△などに逃げた人に対しても)差別があるらしいです。
同じ日本人なのに、と私は本当に本当に悲しいです。
今こそ、日本全土の皆さんに考えなおして欲しいのです。
都知事の発言も絶対許せません。狂ってます。
もし彼が再選されたら、私は日本人を信じられなくなりそうです。

**先生、よかったら、誰かにこのことを伝えて下さい。お願いします。
以上です。




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地震続報( 42 ) 被曝線量をめぐる「争い」について

2011年03月26日 01時14分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日

守田です。(20110326 01:10)

Nさんという友人が、あるところに、今、なぜ自分がこの問題での発言を続けるのかという文章を書いてくれました。長いので、ここで紹介できないのが残念ですが、この機に、僕の動機も 書いておこうと思いました。

いろいろあるのですが、高木仁三郎さんという方が書いた最後の二冊の書物、岩波新書の『市民科学者として生きる』『原発事故はなぜくり返すのか』に深い感銘を受けたことがあげられます。そしてもう一冊、大変深い印象を受けた本があります。
同じく岩波新書で『原発事故を問う-チェルノブイリから、もんじゅへ』、七沢潔著です。本の謝辞をささげた相手の中に、高木仁三郎さんのお名前もあります。
 
同書の中で、七沢さんは、こう述べています。
「私にはもんじゅ事故の周辺に、チェルノブイリ事故が発していたものとよく似た「におい」が感じられてならないのである」。

同じ「におい」とは、事故の隠ぺい体質であり、人々の命よりも、国家のメンツを優先するあり方です。そのために、被曝を避けられた多くの人が放射能をかぶってしまった。放射性物質が降る中、共産党を讃えるパレードすら行われてしまいました。

いつか大事故が起こった時、この国では同じことが起こりうる。・・・僕はずっとそう思っていました。だから事故の一報を知ったときから、 ニュースにかじりつき、隠されいるものを解析し、それを人に伝えようとしてきた。今も僕を突き動かしている動機はそれです。
僕には、今、ここで僕が発言をしなかったら、僕は僕の生涯を裏切ることになるという思いがあります。だから切羽詰まってもいるのですが、たびたび緊急冷却装置を働かせて、「感情的」にならないようにしています。
 
さて、社会的な「論争」は局面が変わっていたように思えます。
初期的には、この事故が大事故に発展する可能性を持っているのか、ないのかでした。「チェルノブイリのようになるのか、ならないのか」です。僕は当然の話、まったくなって欲しくはありませんでしたが、なる可能性が高いし、むしろそれは隠ぺい体質で促進されると思ってきました。

これに対して、「大災害になるという脅しに屈するな」などという言葉が飛び交っていた。チェルノブイリにようにはならないという断言をする某大学名誉教授の見解などが、ネットにたくさん流れました。
事実は、残念ながら、事故の拡大の側に進んでしまった。そして国際的な声として、現状が、チェルノブイリの半分近くまで近づいていることが明らかにされるようになった。
 
そうしたら今度は、放射能の影響に、論点が移りだした。放射能は実はそんなに怖いものじゃない。規制値はかなり緩いので、それを超えても「ただちに健康に害はない」。さらにチェルノブイリでも大人はガンにかかってない。そんなに恐れることはないという言葉が語られています。

その際、論拠の一つとなっているのは、IAEAや、国連が行った調査です。IAEAの調査に日本は、団長として疫学の権威の重松逸造氏を送り込んだ。この方は、水俣病とチッソの関係を否定する調査報告を出したことで有名な方です。そしてこのときは、ソ連の意向に従う形で調査を進め、最も厳しい汚染地域の人々や、事故処理にあたった60万人の人たちが、調査から外されました。
そうして放射線被曝の影響が非常に小さく報告されました。そればかりか、被害はむしろ放射能の恐怖によってもたらされたという結論がトップに来ていました。
  
今から強まってくるのは、同じ論議ではないかと思います。現状では政府の見解が完全にわれだしています。厚労省は、子どもに対してのヨウ素の規制値を厳しくして、それを超えた水を飲まない方がよいと訴えた。
すると政府ではないのですが、ある医師の学会が、基準値を超えていても、妊婦が妊娠期間飲み続けてすら大丈夫だと声明しました。ちなみにこの学会は僕が尊敬する医師の方がたくさん入っており、これまで医療の改善を訴える、切々とした声明をたくさんだしてきたところでもあって、僕が長く支持し、学んできた学会です。

ここでもまた論議が複雑になってきている。
 
実際、医師たちの中に、「必要以上に怖がることの方が危ない」と思っている方がいることは事実でしょうし、そこには真実が含まれているとも言えます。しかしそれでは規制値とは何なのか。厚労省はなぜ厳しくしたのか。そこに重要な問題が横たわっている。「必要以上」の「必要」がどこにあるのかが問われている。

この点で再び、僕らは、「放射能の恐怖を強調して人々を苦しめるのか」、「放射能による脅しに屈するな」とかいう論議に向き合わざるを得ない。事実、場合によっては、怖がらせすぎになって、相手を苦しめてしまうかもしれないという苦悶が押し寄せてきます。

しかしだからといって、なし崩し的に、「チェルノブイリでは大人は大丈夫だった」とか、「人体に影響があるのは100ミリシーベルトから」などという論議を見過ごすことはできない。このデリケートな道が、ここから続いているのだと思います。僕はここに踏み込んでいかなければならないのだなと思います。
 
まとめましょう。
僕がこの情報発信を始めた動機は、七沢さんによって、この国が非常に深刻な情報隠ぺい体質を持っていることでした。しかしよく調べてみると、むしろこれは、原子力政策全体に共通することだと言えそうです。もともと軍需産業だからです。IAEAだって、核クラブが作っている組織です。

だからもともとここに放射能の恐ろしさを隠ぺいしようとする体質が組み込まれている。核兵器を持つことは、放射線被ばくのリスクを大きく持つことであることをいかに国民から隠すのかということが、重要な軍事的課題であったわけです。
 
こう考えると、課題はあまりに重く感じられますが、しかし重要な事実は、ソ連は、事故当初も事故後も、実態を隠し、あるいは過小評価することにやっきになったけれども、その結果として、ソ連邦の崩壊にいきついてしまったという事実です。チェルノブイリ事故は、ソ連崩壊の非常に大きなファクターだったと多くの社会学者が指摘しています。
  
同じように、今回の事故の中で、今、この国の人々は、原爆製造から生まれた原子力政策がどういうものか、身をもって体験している過程にあると思います。ソ連の場合は、逃げることができた人の多くが騙されて逃げることができなかったことが、政府不信の決定的要因になったわけですが、日本の場合は、その前に、政府の事故隠しに自ら気づき、自主的に対処を広げたという先例を作りたいものです。
  
実際、多くの人々は、政府が考えているよりは、ずっと賢いと僕は思っています。同時に、ずっとつつましやかです。だから再び、放射能の恐怖をあおるなという風が吹き出すと思いますが、(というかもう吹いていますが)、人々を信じ、また実際に、この点に十分気を配りながら、僕は僕の提言を続けようと思います。

みなさん、どうか引き続き、お力をお貸しください。
 

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