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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」74

2014年06月06日 | 物語「水辺ノ夢」

東一族の村。

病院。

突然、扉が開けられる。
医師は驚き、振り返る。

そこに、佳院がいる。

「あ、・・・ああ」
医師は、立ち上がる。
何か云おうとする前に、佳院が話しだす。

「成院は、どこへ?」

「成院?」
医師は、佳院を見る。
「ああ。成院、・・・は、どこへ行ったかな?」
医師は、動揺を隠す。
云う。
「成院に伝えることがあるなら、私が代わりに、」
「用があるわけじゃない」
佳院が云う。
「成院は、どこへ行ったかと訊いている」

さらに

「何か、隠しているか?」

「え?」

「例えば」

佳院は医師を、麻樹を、見る。

「西一族と接触した」
「・・・・・・」
「その西一族から、杏子の生存を確認した」
「・・・・・・」
「つまり、杏子は、西に捕えられている」
「・・・・・・」
「その確認のため、成院を西へ向かわせた」

「佳院!」

麻樹は思わず、声を出す。
「何の根拠があって、そんなことを!?」
麻樹は首を振る。
「杏子は私の娘だ。帰ってくることを願っているが、何も情報がない!」

佳院が云う。

「俺が気になっているのは、西一族と接触をしたかどうか、と云うことだ」

「まさか・・・」

麻樹は、目をそらす。

「西一族と接触、なんて、あるわけがない」

佳院は、麻樹を見る。
麻樹は、目をそらしたままだ。

「そうか」

佳院は息を吐く。

話を変える。

「屋敷に病人が出たから、医師に、診に来てほしい」
医師はゆっくりと、佳院を見る。
「・・・わかった」

医師は手を動かす。
往診の準備を、する。

佳院はその様子を見て、医師の部屋を後にする。

医師は

閉められた扉を、見る。

息を吐き、椅子に坐る。
額から、汗が流れる。

西一族と自分が接触したことも
娘が生きていることも

まだ、東一族の誰にも伝えていない。

はずだ。

そう、自分に云い聞かせる。


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