TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」198

2017年04月14日 | 物語「水辺ノ夢」

その日。

杏子は起きる。
支度をする。

自身の身支度をし、朝食を作る。
真都葉のお昼ごはんも。

その匂いで、真都葉が目を覚ます。

「とう! あさだよ~」

真都葉はいつも通り、元気だ。
自分で飛び起き、そのまま、母親のいる台所へと行く。

「かあ、あさだよ~」
「おはよう、真都葉。ほら、卵焼きね」
「あさだよ~だまぉやきよ~」
「卵焼き、ね」

杏子は笑う。

真都葉は自分で着替えようと、奮闘している。

杏子は食卓を準備する。

料理を並べ、
皿を並べ、
飲みものを用意し、

真都葉が使っているスプーンを、見る。
見つめる。

「おはよう」

圭も支度を終え、居間へとやってくる。

「とう~。これ、ぬげないよ~」
「真都葉、順番にやらないと」
「とう~」

杏子は真都葉の服を準備する。
それも、そっと見つめる。

真都葉の支度が出来ると、朝食をとる。

朝食が終わると、杏子は食卓を片付ける。
出かける準備を、する。

「杏子、その服・・・」
「ああ、これ?」

杏子は、東一族の衣装を着ている。

棄てたのかと思っていた。
けれども、しまっていただけだったのか。

「久しぶりに」

杏子が云う。

「だって、誰かに会うわけじゃないんだものね」
「うん・・・」

「かあ!」

真都葉が色紙やおもちゃを抱えてやってくる。

「さわこいつくるの?」
「もうすぐよ」

真都葉は机に、それらを並べだす。
沢子と遊ぶつもりなのだろう。
やがて、
沢子がやってきて、杏子は準備してある食事を説明する。

「じゃあ真都葉」

圭が先に家を出る。
杏子は振り返り、真都葉を見る。

「行ってくるわね」
「かあ」
「なあに?」
「まつばもいきたいよー」
「今日は、真都葉はお留守番」
「かあ~」

杏子は、真都葉に云う。

「台所に夕ご飯が準備してあるの」
「ゆうごはん?」
「沢子と準備していてくれる?」

真都葉は少し、考える。
考えて、云う。

「まつば、おかあさんするね!」

そして、手を振る。

「とう、かあ。行ってらっしゃい!」
「行ってきます」
「かあー!」

真都葉はニコニコと、手を振る。

杏子は、・・・真都葉を抱きしめない。

扉が閉められる。
杏子はその扉を見る。

「杏子・・・」
「・・・・・・」

中から、
沢子に「遊ぼう!」と云っている、真都葉の声が聞こえる。

「真都葉・・・」

杏子が呟く。

圭は、杏子の後ろ姿を見る。
東一族に戻った、杏子の姿を。


杏子は、わかっているのだ。
圭も、わかっている。

杏子はもう、ここへは戻ってこない。


西一族から、杏子を棄てるよう
命じられたのだから。


「さあ、圭」

杏子が圭に向く。

「行きましょう」



NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。