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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」196

2017年04月07日 | 物語「水辺ノ夢」

杏子は、真都葉の好きな食事を作る。
真都葉を起こし、黒髪をなで髪をとかす。
服を着せ、
顔を洗い、
食事を食べさせ

一緒に本を読み、
色紙を作り、

真都葉がひとりで遊びだすと

真都葉の服を縫う。

真都葉が歌うと

杏子も一緒に歌う。

この小さな家で
変わらない毎日。

いつまでも
いつまでも。

真都葉は外を覗く。

「かあ!」

杏子も窓の外を見る。

「いいてんきね!」
「そうね」
「おはなさんもわらってるね」
「ええ」
「むしさんもいるのかなー」
「暖かいから、きっといるわ」
「こんど、とおとさんぽいくの!」
「あら。楽しみね」

圭は仕事に出ていない。

真都葉は家の中をうろうろする。

杏子のところへ来る。
杏子の手元を見る。

「まつばのふく?」
「そうよ」
「すてき!」
「それはよかった」
「かあありがと!」

真都葉は微笑む。

それから真都葉は、杏子のことを手伝う。

洗濯物を畳んだり
食事を作ったり

「かあごはん、おいしーね~」
「お父さん喜ぶわね」

ふたりで夕食の準備をしていると、圭が帰ってくる。

「とう!」

真都葉が玄関へ走る。

「おかえりー!!」
「ただいま」
「ごはん!」
「真都葉は食いしん坊だな」
「えへへ」

圭は、真都葉の口を拭う。
真都葉の顔には、つまみ食いのあとが。

「とうたべよー!」
「真都葉、もう一回手を洗っておいで」
「はーい!」

真都葉が、台所へ行ったのを見て、杏子が云う。

「今日、村は静かだったような気がするわ」

村はずれの圭の家でも、村の雰囲気は感じ取れるらしい。

「もう少ししたら、にぎやかになるかな」
「そう」
「夕方には、みんな帰ってくるから」
「そう」
「今日、大きな狩りがあったんだ」

杏子が云う。

「なら、これから、帰ってきてからの作業があるのね」

圭は頷く。

けれども、その視線はどこか遠くを見ている。

杏子も外を見る。

日が傾いてきている。



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