トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

一歩進んで二歩下がる

2011-04-02 22:41:30 | 
良い事があったなぁってホッとしている次の瞬間には
ガクーッと落ち込む出来事が起こる。

本当に人生は『無情』だなぁと感じる。

お兄ちゃんにとって、最大の難関の『強いこだわり』と『強い衝動性』
これにストレスと環境とタイミングが揃った時、どんな常識も理性もやすやすと
乗り越えてしまうんだなぁと思う。

医者は言った。
『こだわりはなくならないです』『無理に止めると状況が悪くなります』
ずっと監視して縛りつけておく事はできない。
そしてどんな小さな状況も完璧に防ぐ事はできない。
ならば流れに任せるか。
運命の神様の導くままに。。。。

しかし、そういうわけにはいかない。
諦めてお兄ちゃんを後に人様に迷惑をかけて犯罪者になるような人間に
するわけにはいかない。
幸せになって欲しいと親心に思うのだ。

私が『お兄ちゃん、やったでしょ』と言ったら
お兄ちゃんは鬼の形相で『俺は!やってねー!疑いやがって!』と怒鳴り散らす。
その姿は過去の元夫そっくりだった。

やったのが見え見えなのに、自分を守るために必死に攻撃してくる。
まるで私が『そうだね』と言ったなら自分の悪事が帳消しになると思っているかの
ように。。。

こんな風に元夫の過去と重なると冷静には対処できない。
だから私はあーちゃんを連れて家出した。

あーちゃんの手を引いて街の中をウロウロと彷徨った。

なぜ。あんなに上手く行っていたのにまた、同じ事が繰り返されてしまったのだろう。
やはり、私に少しの油断があった。
大丈夫だと思う隙があった。
お兄ちゃんにとって、条件が揃った時それはやすやすと起こるのだ。
その事を忘れてはいけない。
そう悟った。

なぜそうなるかは大事だけど、そうなりたいからそうなってしまう事を受け入れなければならない。

家に帰りお兄ちゃんとあーちゃんに正座させた。
『また。おうちからお金がなくなるはずのない場所からなくなってしまいました。
これは、おうちが安全じゃないという大変な事が起こりました。』
するとお兄ちゃんはすかさず

『この家に引っ越したからだ!この家に引っ越してから悪い事が起こったんだ! 』

(これも過去、借金が発覚する度に、『このかばんを買ってからこんな事が起こるんだ!』とかばんのせいにしてビリビリとはさみで切り刻む元夫とダブる)

『お兄ちゃん。引越ししたからとか、方角が悪いとか関係ないんだよ!だれかが
何かしたからお金がなくなってしまったんだよ。
でもねどうしてなくなったかなんてお母さんには分からない。
それは、やった人しか分からない。何かをした人が胸に手を当てて反省する事なんだよ
。自分が関係ないなら知らん顔していれば良いでしょ。』

『じゃあ。探さないの?』
『探さないよ。』

複雑そうな顔で考え込むお兄ちゃん。
お母さんは、悪事の帳消し役はもうやりたくないんだよ。
自分で自分のやったことの責任を背負っていくんだよ。

過去の元夫の亡霊と戦いながら(冷静にな。と心に言い聞かせる)
大きく息を吸い込んで吹っ切るように言ってみる。
『さあ。しっかり聞いてちょうだい』
『あーちゃん!お兄ちゃん!人の物を盗ってはいけないってちゃんと知ってますか?』

『うん』
『当たり前じゃん』と2人で大きく頷く。

『そうですよね。人のものは盗ってはいけない。自分以外の人のお財布も触ってはいけないよね。お母さんも勝手にあーちゃんのお財布もお兄ちゃんのお財布も触らないでしょ。たとえ家族でも自分以外のお財布は触ってはいけないんだよ。
これは、この家族のルールだよ。ルールは守らなくてはいけないでしょ。』

『うん。そうだね』とあーちゃんが頷く。
お兄ちゃんは無言のまま頷く。

『これからも、このルールは守ろうね。そしてお母さんは過去に家のお金が
突然なくなって哀しい思いを沢山したから、こういう事が起こるととても哀しい気持ちになって、腹が立って酷い言葉をみんなに言ってしまいます。
でも、もうこんな哀しい気持ちには二度としたくないと思っています。
分かったかな?』

ふたりが頷いたところで
『はい!この話は終わりだよ』と言った。

それから、お兄ちゃんはホッとしたかのようにまた落ち着いた日々が始まった。
お手伝いも率先してやっていた。
これも、過去の元夫の行動にそっくりでフラッシュバック続きで本当に
精神力を奪われる。

元夫と似てる行動だけど元夫とは違う。
上手くいくのかいかないのか分からないけれど、あの手この手でお兄ちゃんに
基本的な大事な事を覚えてもらわなければいけない。

最初は親として、感情的に訴えてきた。
次に練習を重ねてみた。
今回は、先生風でやってみた。

数日たって、買い物に出かけた日、お兄ちゃんが言った。
『お母さん、あの日は家出したの?』

『そうだよ。とても悲しかったからね』

お兄ちゃんは、何も言わなかった。

今度はどんな手が残っているだろうか。
もう、悲しい思いはしたくないんだけれど。。。。。