「シノドスの過程はパンドラの箱 : 100の質問と回答」
The Synodal Process Is a Pandora’s Box: 100 Questions & Answers
ホセ・アントニオ・ウレタとフリオ・ロレド・デ・イズクエ著
目次
「通常」総会ではない
ドイツの「Synodaler Weg」(シノドスの道)
失敗した道
公会議主義から永続的シノダリティへ
「私は兄弟たちには他人となり、母の子らには見知らぬ人となった」
第一章 司教シノドス
1.司教シノドスとは何ですか。
2.シノドスの結論は拘束力を持ちますか。
3.教皇や司教シノドスはカトリック教会の教理や構造を変えることができますか。
4.教皇フランシスコは司教シノドスでいかなる変更を導入したのですか。
5.教皇フランシスコは司教シノドスにおけるこの急激な変化をどのように正当化しているのですか。
第二章 シノダリティに関するシノドス
6.今回のシノドスのテーマとプログラムは何ですか。
7.このシノドスの目的は、具体的な結論を得ることなのでしょうか、それとも過程を始めることなのでしょうか。
8.教皇フランシスコはなぜ集会を2回開催することを決めたのでしょうか。
9.相当数の信者がシノドスや教皇の決定に反対し、拒否したらどうなりますか。
第一章 司教シノドス
1.司教シノドスとは何ですか。
司教シノドス(Synod of Bishops)とは、カトリック教会の常設機関で、ローマ教皇庁の外部にあり、司教団を代表します。1965年9月15日、教皇パウロ六世が自発教令「Apostolica sollicitudo」によって創設しました。
シノドスは教皇によって召集され、教皇がテーマを設定します。シノドスには三つの形式があります。普遍教会の利益に関する事項のための通常総会、緊急の問題のための臨時総会、一つまたは複数の地域に関する事項のための特別総会です。総会は単なる諮問機関としての性格しか持ちませんが、教皇が許可した場合には意思決定機能を行使することができるとされています。これまで、司教シノドスの通常総会は15回ありました。今年、2023年には16回目を迎えます。
2.シノドスの結論は拘束力を持ちますか。
いいえ。かつて、司教シノドスの最終文書とは、教皇に提案する役割を担っているだけだったため、教導権としての価値はありませんでした。教皇はシノドスの考えをまとめ、シノドス後の使徒的勧告を発表し、シノドスの結論を全教会に提案しました。この教皇文書が教導権に当たります。しかし、2015年に教皇フランシスコによって導入された改革の後、ローマ教皇によって明示的に承認された場合、最終文書は直接的に通常の教導権の一部となるとされています。また、教皇が前もってシノドスに決定権を与えた場合、教皇によって批准され公布されれば、その最終文書は通常の教導権の一部となるとされます。
3.教皇や司教シノドスはカトリック教会の教理や構造を変えることができますか。
いいえ。教皇も、司教シノドスも、他のいかなる教会的、世俗的機関も、天主なる創立者によって遺産として定められ、委託された教会の教理や構造を変更する権限を持ちません。第一バチカン公会議はこう教えています。
13.天主が啓示された信仰の教理は、以下のようなものとして私たちに提示されている。
・人間の知性によって完成することが可能な哲学的発見としてではなく、
・忠実に守られ、不可謬的に公布されるようキリストの浄配に託された天主の遺産として。
14.それゆえまた、その聖なる教義の意味も、聖にして母なる教会によってかつて宣言されたように、常に維持されるべきであり、また、さらに深く理解するという口実の下に、あるいはその名の下に、この意味を放棄することは決してあってはならない(12)。
教理省はこう述べています。「すべての信者と同様に、ローマ教皇は、天主の言葉、カトリックの信仰の下にある。…教皇は自分の意志で決定するのではなく、聖伝によって生かされ、解釈される聖書の中で人に語りかける主のご意志を言葉にする。言い換えれば、総司教(Primate 首席司教)の「監督権」(episkopè)は、天主の法と啓示に含まれる教会の侵すことのできない天主由来の統治形態(constitution)によって定められた限界を持っている」(13)。
4.教皇フランシスコは司教シノドスにいかなる変更を導入したのですか。
2015年、教皇フランシスコは司教シノドス設立50周年を機に、このシノドス組織の大幅な変更を発表しました。
教皇は、シノドスの集会の準備において、天主の民全体の意見を求めるという望みを表明し、次の前提に基づく新しい「シノドスの教会」を創設する計画を提案しました。その前提とは、天主の民が超自然の信仰の感覚(sensus fidei)を持つために、天主の民全体は誤ることができず(天主の民全体は「信仰するにおいて」[in credendo]不可謬)、主が教会に対して開かれた道を見いだす「天賦の才能・直観的識別力」を持っている、という前提です。
シノドスの教会は、聖霊が「諸教会に言われる」(黙示録2章7節)ことを知るために、信者と司教団とローマ司教の間で相互に耳を傾ける一つとなります。この目的のために、すべての教会機関(小教区、教区、ローマ教皇庁)は、基底(=民)とのつながりを保ち、常に「人々と彼らの日々の問題から」出発しなければなりません(14)。
この仕事に取り掛かった教皇フランシスコは、使徒的憲章「エピスコパリス・コムニオ Episcopalis communio」(2018年9月15日)をもって、信者を参加させるように司教シノドスを変更しました。シノドスは現在、三つの段階に分けられています。それは、天主の民に意見を求める準備段階、司教の集会での会議である祝祭段階、そして教皇によって承認された集会の結論を全教会が受け入れる実施段階です。
5.教皇フランシスコは司教シノドスにおけるこの急激な変化をどのように正当化しているのですか。
教皇フランシスコによれば、司教は教師であると同時に弟子でもあるとされています。「かしらであり牧者であるキリストの御名において真理の言葉」を宣べ伝えるとき、司教は教師であるとされます。しかし、「洗礼を受けたすべての人に聖霊が授与されていることを知り、天主の民全体を通して語られるキリストの声に耳を傾ける」(15)とき、司教は弟子でもあるとされています。このように、シノドスは、司教を通して天主の民全体に発言力を与える道具となるとされています。
第二章 「シノダリティに関するシノドス」
6.今回のシノドスのテーマとプログラムは何ですか。
2021年4月24日、教皇フランシスコは、司教シノドス事務局長のマリオ・グレック枢機卿の謁見に際し、司教シノドス第16回通常総会のテーマとプログラムを承認しました。
こうして天主の民から意見を聞く地方あるいは国内ステージ【教区ステージ】が始まり、2022年に終了しました。その後、大陸ステージが始まり、2023年2月から3月にかけて大陸総会が開催され、「大陸統合」と呼ばれる結論がバチカンに提出されました。そこからシノドスは全世界的な段階へと進み、2023年10月に第1回、2024年10月に第2回の総会がローマで開催されます。2023年の総会に先立ち、参加者全員を対象とした霊的黙想会が開催されます。
選ばれたテーマは「シノドス教会のために:交わり、参加、そして宣教」です。教皇によれば、それは「信者、司牧者、ローマ司教が共に旅すること」(16)です。克服すべき最大の困難は、「司祭や司教を人々から切り離す聖職者主義です」。なぜなら、「指導者と従う者、教える者と教えられる者とに厳密に分けられた教会というイメージを超えていくことへのある種の抵抗があるからです。マリアが、『権力ある者をその座より降ろし、卑しき者をば高められた』(ルカ1章52節)と言ったように。共に旅をすることは、垂直よりも水平にしてくれます」(17)。
従って、次のシノドスで議論されるのは、通常このような集会で議論されるような特定の司牧的テーマではなく、教会の構造そのものなのです。この理由で、シノドスは「シノダリティに関するシノドス」とも呼ばれているのです。
7.このシノドスの目的は、具体的な結論を得ることなのでしょうか、それとも過程を始めることなのでしょうか。
他の一般的なシノドスとは異なり、この「シノダリティに関するシノドス」は、教理的あるいは司牧的な問題を議論し、具体的な結論を出すために開催されるのではなく、教会を改革するための過程を開始するために開催されます。その準備文書は、「参加的かつ包括的な教会的過程」(18)を開始することを提案しています。後述するシノドス準備文書では、「過程」(process)という用語が23回も使われており、それに「道」(path)、「旅程」(itinerary)、「経路」(route)などの似た言葉が伴っています。
この流動的なアプローチは、現教皇職の考えている広い視野のもとで理解されなければなりません。
つまり、現教皇は、「である」(being)ではなく「となる」(becoming)を、安定ではなく変化を、確実ではなく探求を尊んでいます。「私たちは、単にスペースを占有する【ずっしりと存在する】のではなく、過程を開始する【変化する】必要があります」(19)。
シノドス総代表のジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿は、「座って話すことだけでシノドスになるのは、話すのが旅についてである場合です。そうでなければ、シノドスは、概念の戦いになってしまいます」【=シノドスとは、変化を求めるためにあり、何が信仰の真理であるかと議論するところではない】(20)と述べました。
8.教皇フランシスコはなぜ集会を2回開催することを決めたのでしょうか。
当初の計画では、シノドス総会は2023年10月にローマで開催されることになっていました。しかし、2022年10月16日(日)のお告げの祈りの終わりに、教皇フランシスコは、総会を1年を隔てて2回開催すると発表しました(21)。
その理由は、「シノドスの教会のテーマは、その広さと重要性から、シノドス総会のメンバーだけでなく、教会全体が長期にわたって熟慮を重ねる対象となる可能性があります」というものでした(22)。ローマで代表団が話し合った内容について天主の民に耳を傾ける新たな段階が、第1回総会の後に続くことになります。
9.相当数の信者がシノドスや教皇の決定に反対し、拒否したらどうなりますか。
教皇フランシスコが司教シノドスを変更した使徒憲章「エピスコパリス・コムニオ」には、内部矛盾があるようです。5番は、すべての司教は「洗礼を受けたすべての人に聖霊が授けられていることを知りながら、天主の民全体を通して語られるキリストの声に耳を傾け、それを『〈信ずるにおいて〉不可謬のもの』とするとき」弟子であると宣言しています。この考えは、「シノドスの過程は、その出発点だけでなく、その到着点も天主の民の中にある」と主張する7番で補強されています。そして、シノドス事務局のウェブサイトが「シノドスの結論は、ローマ教皇によって承認された後、地方教会によって受け入れられる」(23)と示唆するように、シノドスの決定の実施は、信者がそれをうまく受け入れるかどうかにかかっているように思えます。
しかし、同じ「エピスコパリス・コムニオ」の第4章は、まさにシノドスの実施段階を扱っており、教区司教は「シノドス総会の結論がローマ教皇に受け入れられれば、その受け入れと実施を見守る」(第19条第1項)のであり、司教協議会は「その領域内で前述の結論の実施を調整する」(第19条第2項)と規定しています。
シノドスの方向性の具体的な適用に関して、天主の民と司牧者との間に意見の相違が生じた場合にどうなるかについては、何も書かれていません。もし司牧者たちの意志が勝れば、耳を傾けることの過程全体がむなしく見え、シノドスのレトリックはほとんど不誠実に見えるでしょう。もし天主の民の意志が勝れば、教会は事実上の(de facto)民主主義に変貌してしまうでしょう。