モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

サルビア・パテンス(Salvia patens)の花

2009-05-30 07:52:59 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・パテンスの花


昨年は、“自然が創った完璧なそらいろ”と表現したが、的を射ていることを今年も実感した。
ちなみに昨年のコメントを振り返ってみるとこうなる。

パテンシスの花は、サルビアの中ではとても大柄で4~5cmはある。
その巨体をキャンバスに
空の色を思わせる鮮明なブルーでやってきた。

日常見慣れないスカイブルーな色であり、
この花の色を表現するボキャブラリーのなさを痛切に感じてしまう。
非のうちどころのない色と形の調和。

            

ウイリアムス・ロビンソンの自然で野性的な庭
私と同様に感じたかどうかはわからないが、アイルランド生まれのガーデナーで園芸著作家としても世界的に知られているウイリアム・ロビンソン(William Robinson 1838 – 1935)が「英国のフラワーガーデン」1933年版で“園芸品種の中で最も素晴らしい植物のひとつ”とサルビア・パテンスを絶賛していた。

ウイリアム・ロビンソンの絶賛が何故今日でも語り継がれているかを理解するには、彼の庭造りの考えを知る必要がある。
ロビンソンは、様式化された人工的な庭造りを完璧に否定し、自然で野性的な庭造りを提唱し実践した。当時としては革命的な発想のようで、イタリア庭園、フランス幾何学庭園などの形式化された人工的な庭を嫌った。
ロビンソンが実践したのは、①ロックガーデンに高山植物を使う。 ②裸の土が見えないように多年生の植物とグランドカバーで庭を覆いつくす。 ③耐寒性の多年草と野生の自生している植物(原種)を使う。 ④自生しているように多年生植物の大きなかたまりをつくる。
などで、日本庭園を見慣れている現代の我々にはどこが革命的なのかピンと来ないが、東京駒込にある「旧古河庭園」の庭園入り口すぐにある洋風庭園を否定し、奥にある日本庭園を推奨していると解したいような気がする。

「旧古河庭園」を素晴らしいと感じたのは、ロビンソンが否定しそして推奨する対極的な新しい庭があるがゆえにこのギャップが素晴らしいと感じたことに改めて気づかされた。

ヨーロッパでは、野生の植物を庭に取り込む考え自体が新しく、その提唱者がサルビア・パテンスの花を賞賛し、この考えが今でも支持されているということだろう。

サルビア・パテンスは、大きな花を咲かせるがゆえになのか花数が少なく、1-2日で落花する。耐暑性に強くなく夏場は半日陰の場所が望ましい。しかも少し湿り気味の土壌が良い。
開花期は初夏から秋までと長いが、夏場は無理に花を咲かせないように、開花後の枝は切り落とした方が良い。
耐寒性はある程度あるはずだが、一昨年の株からさし芽で作った株が今年の冬にダメージを受け全滅してしまった。いま咲いている株は、三代目にあたる。

(写真)サルビア・パテンスの立ち姿
        

サルビア・パテンス(Salvia patens)
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある多年草。
・学名は Salvia patens Cav. 。英名はゲンチアンセージ(gentian sage)、和名ソライロサルビア
・原産地はメキシコ。
・耐寒性は強いが耐暑性は弱い。梅雨の時は花を出来るだけ雨に当てない、夏場は風通しの良い半日陰で育てる。
・草丈50~60㎝
・開花期は6~10月、大柄なブルーの花が数少なく咲く。
・夏場は無理に花を咲かせないようにすると秋に咲く。


サルビア・パテンスの歴史
メキシコ原産の花であり、英名でのゲンチアン・セージ(gentian sage)は、リンドウ色をしたサルビアということだが、1838年に園芸市場に登場したようだ。この説は、「The New Book of SALVIAS」に書かれていて、Web上ではこの引用が多く出典がよくわからない。

ミズリー植物園のデータベースに記録されているコレクター(発見・採取者)で最も早いのは、1863年に場所は不明だがメキシコで採取したエンゲルマン(Engelmann, George 1809–1884)で、パリー(Charles Christopher Parry 1823-1890)とパルマー(Edward Palmer 1829 - 1911)のパーティは1878年にSan Luis Potosíで採取している。

ということは、謎の或いは空白の25年間がある。

エンゲルマン、パリーはメキシコ原産のサルビアで何度が登場しているが、パリーの植物学の師匠の一人がエンゲルマンで、サルビア・グレッギーを発見したグレッグが太平洋までのルートを開拓するための探検で採取した植物を送ったのがエンゲルマンでもありミズリー植物園を創設した人物でもある。
<参照>
グレッグ、エンゲルマンに関しては:チェリーセージ②:サルビア・グレッギーの花
パリーに関しては:チェリーセージ③:S.ミクロフィラ“ホットリップス”の花と発見者のストリー

明快なのは命名者であり、サルビア・パテンスの原産地メキシコの宗主国スペインの植物学者Cavanilles, Antonio José(Joseph) (1745-1804)に献じられている

カバニレスは、僧侶でもあり、ラテンアメリカ、西インド諸島、オーストラリアの多数の植物の命名者となる。彼が命名したものは、パテンスのように「Lamiaceae Salvia patens Cav.」で“Cav.”と表記される。

パリ(1777-1781)での滞在の間に、彼はフランスの植物一家として著名なジュシュー家のロラン・ド・ジュシュー(Laurent de Jussieu 1748-1836)と勉強を一緒にしている。
ジュシューは、リンネの植物分類体系をより自然に近づけた「自然分類」を発表した。発表年がフランス革命の1789年であったため「植物学革命の書」とも呼ばれた。

パリから帰国後の彼は、メキシコ原産のダリアを1791年にヨーロッパで初めて開花させたことでも知られていて、1801年にマドリッドの植物園の責任者になり1804年に亡くなった。

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2 コメント

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大きな波 (花ひとひら)
2009-05-30 21:18:03
どこかで「シタダシゴンベエの花」と言う名を見たことが有るのですが、きっとこの花のことかしら。
それにしても大きな花ですね。
蟻が登ったら、北斎の波みたいです。
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花ひとひらさん (tetsuo)
2009-05-31 14:48:53
シタダシゴンベイは初めて聞く名前ですが、舌を出している様子が何となく名前の印象にあいそうです。
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