モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

ノアザミの花 と 命名者ド・カンドル

2009-05-09 08:53:00 | その他のハーブ
(写真)ハナバチとノアザミの花
       

ノアザミの花はいつ見ても不思議だ。
ハナバチが一生懸命に花粉を食べているところをしげしげと見ていると、雄しべが花粉を塊りとして噴出していて、ハナバチの尾の方では花粉を下からかきだした白い雌しべが顔を覗かせている。
こんな複雑なことをしているが、遠くから見ると懐かしい日本の野の景色となっている。

日本はアザミ王国のようだ。
古くから、その根を食用にしたり煎じて強壮・利尿・解毒剤として使用している品種があるという。身近な日本のハーブでもあるが、鑑賞の花として園芸品種がつくられるようになったのは江戸時代の文化・文政の頃のようで、日本初の植物図鑑といわれる『本草図譜』(岩崎灌園1786-1842著、1828年文政11年刊行)にも園芸品種が記載されているという。

ノアザミは、日本原産で学名にも日本のアザミと命名されている。しかしその学名の命名者と日本及びノアザミとの関係が良くわからない。しかしこの命名者はリンネに匹敵する人物のようであり興味がわいてきた。


ノアザミの命名者ド・カンドル
ノアザミの命名者ド・カンドル(Candolle, Augustin Pyramus de 1778-1841)は、彼が18歳の時からの1796-1808年のパリ滞在の間に運命的な出会いをし、いくつかの重要な作品の発表に参加した。それが彼を著名にし、1807年彼が29歳の時には医学部で著名なモンペリエ大学の医学部植物学教授、その後はジュネーブに戻り大学教授、植物園の園長などを勤め、植物学者としてあらゆる領域での基礎を築いたヒトのようだ。

パリでの運命的な出会いは、「ゼラニュウム論」を書き南アフリカのゼラニュウムを“ペラルゴニウム”に変更したレリティエール(Charles Louis L’Héritier de Brutelle 1746-1800)、そしてレリティエールが植物画を書く若者を探していて出会ったルドゥテ(Pierre-Joseph Redouté 1759-1840)この二人との出会いだった。

レリティエールからは、結果的にド・カンドルの最初の著作となった「Plantarum historia succulentarum」(1799-1803作)の構想と説明文を描く若いライターとして雇われ、植物画はルドゥテが描くことになっていた。しかし、レリティエールは1800年に暗殺されたので後を引き継ぐことになった。
この著作のルドゥテが描いた植物画はMBGライブラリーから見ることが出来る。)
※ “View illustration”をクリックするとルドウテが描いたそれぞれの植物画が表示されます。

レリティエールはルドゥテに植物学と植物画の描き方を教え、ルドゥテは19歳下の若者ド・カンドルに植物画を描いてあげ、そして彼が描いた「ユリ図鑑」(1802年)ではド・カンドルが植物の記述を書くいう素晴らしい関係が出来た。
コピー中心の植物誌がグラフィカルアートと融合していく最先端にめぐり会い、花が大衆化していく先駆けともなった。

ド・カンドルは、フランス・プロヴァンスの古い家系の子としてジュネーブで生まれた。プロヴァンスを離れたのは、16世紀中頃(1562~1598年)に新教徒と旧教徒の間で戦いが始まりプロテスタントの先祖が移住することになったためで、ジュネーブとパリが彼の活動地となる。

ド・カンドルの植物学への貢献は、「Elementary Theory of Botany(基礎植物学原論)」(1813年)を出版し、リンネの植物体系にも矛盾点もありこれに対するアンチテーゼを行った。理屈で無理に体系を作るのではなく自然の体系を尊重したほうが良いという提案であり、この頃の若い植物学者に影響を及ぼした。特に、ダーウイン(Charles Darwin 1809-1882)もエジンバラ大学で1826年にこの自然の体系を学び彼にも影響を及ぼした。アメリカの植物学者A.グレイ(Asa Gray 1810 - 1888)は、1839年にド・カンドル父子とも会って議論をしたという。

息子のアルフォン・ド・カンドル(Alphonse de Candolle 1806-1893)は、父の未完成の仕事を引き受け、古典的名著『栽培植物の起源』(岩波文庫三冊)を書いた。
どこかで見たなと思ったら、神田神保町の古本祭りで見つけて手に入れていていつか読もうと思っている未読の山に埋もれていた。
急に親近感がわくから不思議だ。

(写真)ノアザミの立ち姿
        

ノアザミ(Cirsium japonicum)
・キク科アザミ属の耐寒性がある多年草。
・学名は Cirsium japonicum DC.。和名はノアザミ、別名ハナアザミ。
・属名の“Cirsium”は、ふくれた葉脈を意味する“cirsos”から来ている。
・春に咲くのはノアザミだけで、秋咲きのノハラアザミと識別できる。
・日本原産で、本州から四国九州に分布する
・草丈は80~100㎝で切れ込みがありとげがある。

<Contents of the last year>
ノアザミ(Cirsium japonicum)の花の仕組み

野原・山道などを歩くと、赤紫色のあざみの花に出会う。日本の自然の風景を代表する花であり種類も多いようだ。しかも、牛などの大型の草食動物に食べられないように、
葉がチジれてその先にとげを持ち攻撃型のスタイルを形成している。

数多いあざみの中で、5月に咲くのはノアザミだけであり、(もうひとつあるけど・・・・<キツネアザミ>)
専門家でも識別しにくいあざみの中で唯一わかりやすいあざみだ。ノアザミによく似ているが秋咲きのあざみはノハラアザミという。

ノアザミの花は筒状をしており、たくさんの花が集まって形作っている。ということは、雄しべと雌しべの関係がどうなっているかということに注意が向くがこの花は賢くて近親結婚を防ぐ仕組みが出来ているという。

雄しべが成熟し花粉をだしているが雌しべは受粉できないようにガードされており、
潜水艦の潜望鏡が海上に伸びてくるように雌しべが上昇し花粉をかき出している。
他の花の花粉をつけたハチなどが蜜を吸いにくるとやっと受粉するという時間差で自家受粉を避けるようになっている。

さらにその先は、1個の果実に1個の種子とハングライダーの帆となる羽がつき
風に吹かれて拡散し子孫繁栄を実践している。
よく考えられており、かなり進化した賢い植物であることは間違いない。

ちょっとした偶然を選択し生存の確率が高い偶然が生き残る。ということで歴史をつむいできたのだろうか?それゆえに、他花受粉するようになっているので雑種が出来やすく種の判別が難しくなっているが、純血主義を採らないノアザミは、緑地が減少し生存環境が悪くなっているなかで混血に生き残りをかけているのだろう。

コメント (6)    この記事についてブログを書く
« ニーレンベルギア(Nierember... | トップ | チェリーセージ③:S.ミクロフ... »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
夏あざみの季 (花ひとひら)
2009-05-09 21:13:56
あざみといえば井上揚水の「夏が過ぎ風あざみ・・・」それに「あざみの歌」と大好きです。>5月に咲くのはノアザミだけであり、(もうひとつあるけど・・・・)>なんでしょう。
5月に咲くのを夏あざみと呼んでいます。初夏の野の風物詩の中で最も好きな花です。少年時代にぴったりの花です(と思う)刺が痛くとも朝早く野から頂いてくるのが(朝早く切らないと水揚げが悪い)好きです。(べつに刺が好きと言うわけではないですよ)
返信する
花ひとひらさん (tetsuo)
2009-05-10 01:18:35
アップしたつもりが消えてしまいました。遅れてすみません。
5月に咲くのを夏と言うのは大分温かいところですね。まあ連休の初めの頃の温度は確かに夏でしたが。
もう一つの5月頃から咲くアザミですが「キツネアザミ」と言います。
ご参考に写真リンク先です。
http://www.botanic.jp/plants-ka/kituaz.htm
返信する
画像みえました (花ひとひら)
2009-05-12 00:07:58
あざみは初夏の花の雰囲気かな。初夏といえばウノハナが咲き始め、土手ではアザミやキンポウゲが揺れている。なんかそんなイメージで、夏アザミというのかしら。
キツネアザミはとげがないのでしょうか。このアザミきっと子供の頃先に色をつけて火にあぶるとぼんぼん(帽子とかについている毛糸玉)のようになって遊んだ事あります。
返信する
花ひとひらさん (tetsuo)
2009-05-12 10:40:38
子供の頃野山を駆け巡って遊んでいたので、いろんなことをしましたが、ほとんど忘れてしまいました。つい最近に昔に戻った感じですが、ゼロからの出発で継続は力になること再認識しました。大東京が野山を忘れさせたのでしょか?はたまた田舎の野山を捨てたのでしょうか?
ということで、キツネアザミですが、棘は弱そうです。痛くないアザミがあったかすかな記憶はあります。
返信する
この春初めてアザミを取ってきました。 (kazuko)
2009-08-05 22:29:42
読ませていただきました。有難うございました。大好きなルドゥテも出てきて楽しく読ませていただきました。アザミ、近くの杉の木がたくさん切られ、日のあたるようになったところにアップルミントやスミレや他の花が咲きだしました。そこにアザミもあり、ついつい欲を出して2-3本取ってきてポットに植えました。春のことです。今、どうしてるか確認しないとわからなくなってしまいましたが、・・・。以前は花と思わなかったような花なのです(ごめんなさい)が、美しかったです。キツネアザミかノアザミかは区別がつきません。小さめのかわいらしい花でしたので、キツネアザミかもしれません。ルドゥテやカルドン、アザミとの楽しいお散歩を有難うございました。(^-^)
返信する
和さん (tetsuo)
2009-08-06 03:59:23
アザミだけでも素晴らしい物語がありそうですが、過去の歴史にはなるほどと気づかされることが多々あり、いい出会いがあったのだな~とつくづく思います。
返信する

コメントを投稿

その他のハーブ」カテゴリの最新記事