モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

その76:江戸を歩く ④日本の名庭園「小石川後楽園」

2009-03-22 16:52:51 | ときめきの植物雑学ノート

1時間も持たなかった『小石川後楽園』。
日本庭園の名園でもある。
何故持たなかったのかを述べる前に、作られた由来を簡単にレビューしてみる。

(写真)小石川後楽園の庭園地図


『後楽園』対『六義園』
現在地は、後楽園にある東京ドーム球場に隣接した場所にあり、
水戸徳川藩の中屋敷に1629年に作られたいわゆる大名庭園に該当する。二代目藩主光圀(水戸黄門)の代に中国風の改修がされ『後楽園』と命名され完成した。この庭園は、池を中心にその周りを回遊して風景を愉しむ「回遊式泉水庭園」の代表的な庭でもある。

柳沢吉保が作った『六義園』はこの『後楽園』の後に作られるが、明るく開放的な『六義園』に対して重々しい理屈っぽさを感じる対照的な庭園となっている。その造園の思想的なバックグランドは、明の儒教に対して古今和歌集があるという。

いつの世も、先進国から学びそれを取り入れて熟成させ我が物を作るという時間の流れがある。我が物をつくろうとする運動はルネッサンスもそうだったが古に回帰する。

『後楽園』の光圀は、先進国中国の儒学・朱子学を持って秩序を作ろうとした。柳沢の『六義園』は、中国文化を離れて独自の日本文化を目指した平安時代の国風運動期に戻り、その時に誕生した紀貫之などの古今和歌集をモデルに意図的に『六義園』を作ったのだろう。

一方が教養が必要な難解な漢詩、一方は「男もすなる、日記といふものを、女もしてみむとて、するなり」で始まる土佐日記を書いた紀貫之のかな文字とこのスタンスの違いが明らかに感じられる庭園となっている。天下の副将軍に対抗した政治家柳沢吉保の骨っぽさが感じられた。

(写真)園内の景観


『小石川後楽園』のいま
入り口の門を入ると、庭園の中心にある池とその周囲を取り巻く築山が目に入る。
その周囲を回遊することになるが、もうこれだけで十分という気になる。見るモノがなさそうな予感がするから恐ろしい。

この嫌な予感が当ってしまった。

日本庭園は、世界で評価されているが、自然に対する考え方の違いがその評価の違いとなっているようだ。自然は恐く危険なものなのでこれを克服・超越しコントロールするという考え方に対し、自然をあるがままに取り込みそれと調和していくというのが日本庭園の考え方にある。

平安時代以降は自然の景観の素晴らしいところに別荘・庭園を造るという時代もあったようだが、自然を縮尺して庭園に取り込むという技法が作られ、池を掘り大海と見立て、池中に土を盛り島を作り、山を作り、河を作るなど宇宙をも取り込んだのだろう。
この点で自然に思いっきり手を入れ幾何学的なフランス式庭園とは大きく異なる。

だが率直に見るものがないということは、この自然の縮尺がお金がかかったことは理解できるが、美しくない。ということに尽きる。ミニチュアで作るジオラマの方が魅力がありそうだ。

むしろ感動したのは、借景とでも言うべき『小石川後楽園』を取り囲む高層ビル、東京ドームに覆われた異空間にあった。
高層ビル群は人工的であり、庭園も人工的であり、まったく日本庭園が考えていない人工世界が目の前に広がっている。自然を模した人工空間が目線を高くすると感じられる。

(写真)高層ビルに取り囲まれた小石川後楽園



とはいえ、都市にこれだけの緑の空間があることは素晴らしいことなので残して伝えていく重要な財産であることは間違いない。

また、『後楽園』は、人生の後半を楽しく暮らすには若い時に苦労しろ。とでも言ってもよいだろう。だが、今の時代は人生の後半も制度改悪でいじめられ、人生の前半にある若者は社会の入り口を狭められはじき出されているから、是非とも『後楽園』というコンセプトを大事にするか、入り口を広げるために我々が納めた税金を使って欲しい。
官僚と与党の政治家で納めた税金は俺達のものという身内だけでの“花見酒”をやり「後楽園」天国を愉しまないで欲しいものだ。これでは自分の身を食う蛸足になっているので、そのうち税金が縮小する最悪の結果になってしまいそうだ。

なお正しくは、「士はまさに 天下の憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」(明の儒学者、朱舜水)からつけられているが、私訳もそうずれていないと思う。

江戸の名庭園を二つ見たが、正直に感じるのは、庭園は器であり、器に入る“み(実、味、美)”がないようだと気づいてしまった。“み”は器にある自然なのだろうが、自然がなかったのかもわからない。改めて、自然というものを考えることになった。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
« デュピタクサ・クリスタルリ... | トップ | その77:江戸と同時代のヨー... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「越すに越されぬ安下宿」 (taka)
2009-03-23 08:52:50
素晴らしい邸宅にお引越し、おめでとうございます。
機能が違うので迷っています・・・。
返信する
takaさん (tetsuo)
2009-03-23 10:53:29
交渉してらちがあかなかったので、嫌なことで我慢するよりは脱出することにしました。どこかさんの利益第一主義の弊害がでてきましたので、さらに次があると思います。見切りは早めに!です。
返信する

コメントを投稿

ときめきの植物雑学ノート」カテゴリの最新記事