モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

その29:タバコの煙で精霊との交信

2008-02-16 11:08:20 | ときめきの植物雑学ノート
タバコの煙で精霊との交信

ロスのダウンタウンから日本人街に行く途中は危険地帯で近寄らないようにとも言われる。
真夏なのに、焚き火を前に火に見いれられた男達がいる。
何をするでもなく、一日中火に取り込まれてしまっている。

確かに、チロチロ燃える炎の動きはジッと眺めていても飽きることがない。

この感覚のスモール版がタバコの煙にある。
照明を落としたバーで、ダウンライトの明かりを浴びた領域をタバコの煙が通り過ぎる。
青紫がかった一筋の煙。
数式では表現できない軌跡。
この美しさと不思議さを感じた瞬間から、浮世から離れ、表現しようも無い世界に入れる。
科学では表せない世界を直感し、この感覚と一体化したいという思いにはいる。
無私。滅私。忘却。逃避。・・・・・・
或いは、精霊との交信。
とでも言うのだろうか。

南米コロンビア・メキシコには、幻覚をもたらす植物が多いという。
代表的なものが、ナス科のチョウセンアサガオ属の植物で、毒性が強く幻覚作用をもたらす。
(最近は、日本の公道にも生えているというから注意を要する。)
これらの特性を熟知していた専門家によって儀式・治療などで使われていたという。
この専門家をシャーマンといい、霊との交信で最も多く使われた植物が実はタバコだったという。
タバコの煙は、霊への贈り物で、お願い事との互恵による交換という意味合いを持つ。
コロンブスへの乾燥した草の贈り物は、先住民の最高のもてなしの儀式だった
ということがわかったのは相当後のこととなる。

現在でも青森県の恐山には、イタコと呼ばれる巫女がおり、先祖の霊との交信を手助けしてくれる。
このようなシャーマニズムは、北アジア特有という説もあるが南北アメリカにもある。
自然の中に霊が宿るという一神教ではない精神風土の形成は、
モンゴロイドの大移動との関連があるのだろうか?

最近では、焚き火は環境問題を起こし、タバコの煙は健康問題を起こしており
精霊への贈り物という悠長な状況ではなくなった。
地球が狭くなったがゆえに、精霊の居所も無くなりつつあるのだろうか?
或いは、非科学の居場所がなくなりつつあるのだろうか?
シャーマンが有していた幻覚作用をもたらす植物の膨大な知識と使い方は、
コロンブス以降の500年間で煙のごとく消えてしまったという。

ただ新大陸の植物は、地中海を中心としたイスラム・ヨーロッパの植物学を
1000年以上も支えてきたディオスコリデスの見識では歯が立たないことが明確になった。
ようだ。

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